ミャンマーは空軍近代化のため、ロシアが開発した第5世代戦闘機「SU-57E」導入を検討しているという。
ミャンマーがSU-57を導入すれば、日本の安全保障に影響を与えることも
ロシアからSU-30SMEを購入する契約を結んだばかりなのに、SU-57導入話まで浮上してきた。
ロシアが開発した第5世代戦闘機「SU-57」は最近量産に入ったばかりでロシア空軍でさえ、まだ十数機の試作機しか持っておらず、8月にロシアで開催された「MAKS国際航空ショー」で輸出向けバージョンの「SU-57E」が発表されたばかりだ。

出典: Dmitry Zherdin / CC BY-SA 3.0
では、なぜミャンマーはSU-57に興味を示すのか?
ミャンマーは、これまでも長距離攻撃能力の獲得のため北朝鮮の弾道ミサイル開発を支援(2012~2017)し、核兵器開発も実際に行ってきた過去(現在は開発が放棄されたと見られている)がある。さらに化学兵器に関しても禁止条約に署名はしているものの、批准には至っておらず未だに化学兵器の破棄は行われていないと見られている。
このようにミャンマーは「抑止的効果」の高い兵器保有に関心があり、実際、北朝鮮から短距離弾道ミサイル「火星6(スカッドC)」を10基程度、入手し運用している可能性が高い。
SU-57は第5世代戦闘機に加え、空中給油を受けなくても推定戦闘半径2000km~2700km(機外に増槽携行時)と言われる広大な航続距離を持ち、マッハ10で飛翔し地上の固定目標や水上を移動する空母や巡洋艦、駆逐艦を攻撃することが可能な極超音速ミサイル「KH-47M2 Kinzhal(キンジャール)」を搭載すれば、その抑止効果は4,000kmを超えるだろう。
※参考にした記事では4,000kmではなく4,500kmと主張しているが、流石に4,500kmは言い過ぎではないかと思う。
補足:ロシアが開発した極超音速ミサイル「KH-47M2 Kinzhal(キンジャール)」は、2018年3月にプーチン大統領が行った演説の中で、初めて存在が明らかにされた攻撃用ミサイルだ。このミサイルの射程は少なくとも1,000km以上と言われており、MiG-31Kで運用した場合は2,000km以上、Tu-22M3で運用した場合は3,000km以上の攻撃範囲を持ち、さらにマッハ10.0、時速12,240kmで飛翔することが可能で母機から発射後、数秒から十数秒で目標に到達する。因みに現在、SU-57に搭載するためKH-47M2を小型化する作業が行われている。

出典: kremlin.ru / CC BY 4.0 KH-47M2 Kinzhalを搭載したMiG-31K
もちろん、4,000km離れた移動する目標を捕捉する技術や装備がなければ、SU-57+KH-47M2の組み合わせも意味がない。しかし、地上に設置された価値の高い固定目標に対しては、十分脅威を与えることが出来る上、日本もその射程圏内(大阪から西の地域)に入ってしまう。
果たしてロシアが輸出向けの「SU-57E」に加えて、極超音速ミサイルの「KH-47M2」まで提供するのかは不明だが、過去、ロシアはミサイル技術を中国やインドに移転したことがあるので、絶対に無いとも言い切れない。
現在、ミャンマーと日本は政治・軍事的に大きな対立点はないが、中国との結びつきが強いだけに、このような兵器を保有されると日本の安全保障に影響を及ぼす可能性も出てくる。
日本は中国や北朝鮮といった周辺国の脅威に対処することも大切だが、ミサイルの長射程化が進み、これまで脅威の対象として捉えていなかった国が今後、日本の安全保障に関わってくることを認識し、防衛や外交政策に厚みを持たせる=周辺国という範囲(認識)を拡大させる必要があるかもしれない。
もしかすると十数年後、日本に影響を及ぼす周辺国と言う定義は、世界中を指す言葉に変わっているのかもしれない。
※アイキャッチ画像の出典:Moose / stock.adobe.com
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