インド国防省は17日、空対空ミサイル「ASRAAM」の国内製造に関する契約を欧州のMBDA(実際にはMBDA UK)と締結したと発表して注目を集めている。
参考:BDL, MBDA Sign Pact to Set Up Facility for Air-to-Air Missile in Telangana
わざわざ英国がASRAAMの製造作業をインドと分け合う形をとったのはテジャスMK.2の海外輸出で生じる需要に期待しての判断か
インド国防省は17日、弾薬やミサイルの開発・製造を手掛けるバーラト・ダイナミクス(BDL)が空対空ミサイル「ASRAAM」に関する製造契約を欧州のMBDA(実際にはMBDA UK)と締結したと発表、この契約に基づきMBDAはBDLに技術移転を行いインド国内にASRAAMの最終組立・統合・試験施設を2023年までに設立することになった。
つまり英国とインドは今後共同(インドは最終組立のみ)でASRAAMを製造するという意味なのだが、なぜ英国はASRAAMの製造に関わる作業をインドと分け合う形をとったのだろうか?

出典:Geoffrey Lee/MOD / OGL v1.0 ASRAAMを発射する英空軍のタイフーン
英国のBAe(現:MBDA UK)が開発した赤外線誘導の短距離空対空ミサイル「ASRAAM」は米国やドイツなどの採用が見込まれていたのだが、諸事情によって両国とも開発計画から離脱してしまい最終的にASRAAMを採用したのは英国(タイフーン)、オーストラリア(F/A-18A/B)、インド(ジャギュア)の3ヶ国だけで、オーストラリア空軍はF/A-18Fから短距離空対空ミサイルをASRAAMからAIM-9Xに切り替えたため現在の運用国は英国とインドのみになってしまった。
英国は引き続きF-35BでもASRAAMを運用予定(70億円の費用をかけて統合作業が進められている)だが、インドは空軍の標準的な短距離空対空ミサイルとしてASRAAMの運用機(Su-30MKI×272機やテジャスMK.1×22機/MK.1A×83機発注中)を大幅に増やすことを計画しており、これを背景(ASRAAMの大量調達)にインドは英国に共同製造を要求したのだろう。
ただ英国にとって今回の話には続きがあり、ASRAAMの統合が確実視されているインドの国産軽戦闘機「テジャスMK.1A」は海外輸出に積極的(マレーシア空軍に提案中)で仮に輸出に成功すればテジャスの搭載兵器としてASRAAMの供給先も増加し、副次的に英国の安全保障上の影響力も増すだろうという計算が働いている可能性が高いと管理人は思っている。

出典:Venkat Mangudi / CC BY-SA 2.0 国産戦闘機「テジャス」
インドにしてみればASRAAMの調達に投資する資金の一部が国内に回り「調達後の保守も国内で行える」というメリットは軽視できないものがあるので、今回の取引は両国にとってWin-Winの関係だと言えるがテジャスにはイスラエル製の短距離空対空ミサイルも統合されるので海外輸出される際に英国とイスラエルは天秤にかけられることになるかもしれない。
勿論、ASRAAMの製造にはインドも関与するため英国有利は間違いないのだが、イスラエルも同じような契約をインドに持ちかけてくれば熱い戦いになるかもしれない。
関連記事:インドがマレーシア空軍の軽戦闘機調達に挑戦、テジャスMK.1Aを4,150万ドルで提案か
※アイキャッチ画像の出典:Geoffrey Lee/MOD / OGL v1.0
そういえばJNAAMの開発はどうなったんだ?
最近めっきりと聞かなくなったが
予定通り来年試作の再来年試射では?
予算も通ったはず。
特筆するようなトラブルも遅延もなく、まだ完成したわけでもないからネタにしようがない
そもそもJNAAMって、AIM-120Dみたいなデータリンク誘導できるんだろうか?
ミーティアにデータリンク誘導機能があるって聞いたことが無いような…
もしなかったら、さほど使い物にならないんじゃないか?
とりあえずミーティアについては
>第三者を含めたデータリンク誘導が可能
との記事があるね。
リンク
ああ、すまん、管制誘導のデータリンク誘導ではなかった。書き方が悪いかった。
タイフーンとかには火器管制レーダーのデータをデータリンクで直接飛ばして誘導するなんてことはできなかったよね?
F-35とAIM-12D、AIM-9Xの組み合わせではセミアクティブによるデータリンク誘導も可能らしいんだけど、ミーティア等々は管制誘導までしかデータリンクに対応してなかったようなってこと
「AIM-9X」で「セミアクティブ」による「データリンク誘導」ってますますさっぱりイメージが湧かんのだが…
この場合のセミアクティブ、ってのは発射母機とミサイル(と第三者?)はそれぞれ何をするの?
発射母機なら、火器管制レーダーの情報を送信
第三者なら、その第三者の火器管制レーダーのロックオン情報をデータリンクで伝達
うーん、それ発射母機にとってはアクティブで
ミサイルにとってはパッシブですらないですよね。
それを「セミアクティブ」と表現してる報道なり技術資料なりがあるなら教えてもらえるとありがたいです。
ググったくらいじゃ見つけられなかった。
中国としちゃ、些細な情報でも欲しいよねえ。
あるよ。双方向通信できるデータリンクが備わっている。
兵器のコストダウンの為、海外でのアウトソーシングも進める傾向もあるから一概には言えなさそう
F16も一部インドでやってたよね確か
ソフトのアウトソーシングは結構進んでる模様
>英国は引き続きF-35BでもASRAAMを運用予定(70億円の費用をかけて統合作業が進められている)
ステルスを生かしたアウトレンジ攻撃がメインのF35にわざわざ金かけて標準装備じゃない短距離空対空ミサイルを統合する価値あるのだろうか
今時の短距離ミサイルも、射程が50kmぐらいあるから、匍匐飛行高度だと水平線を超えるんで、全然アウトレンジが成り立つよ
AIM-9Xと違って、ASRAAMはちょっと射程短いんで、これは成り立たないかもだけど。
改良でもするんかな?
見通し通らん状態で赤外線誘導ミサイルって使えるの?
今時の短距離AAMって発射後ロックオンって言って、データーリンクで母機から中間誘導してシーカーが効く距離まで近づいたらシーカーが作動して対象をロックオン、終末誘導が開始されるって仕組みだからやるかどうかは別として見通し線外でも使えるよ
うーん、母機から見通し線外なのに何でどう中間誘導するのかイメージ出来んのだが。
単に「相手方の探知距離外で」と言うなら分かるけど、
水平線の向こうの相手に対してだよね?
目標の情報は、他機からのデータリンクの情報から得られるから、見通し線外でも中間誘導は成り立つ
AIM-120Dと同じデータリンクシステム対応という触れ込み通りなら、発射母機以外の火器管制レーダーともリンクできるので、誘導指令を他機に引き継ぐこともできる
ASRAAMもAIM-9Xもオフボアサイト発射型の短距離ミサイルで、中間誘導は慣性誘導+指令誘導ですが、私は発射時の照準に他機の取得したターゲットデータを使用できるという明確な話は見聞きしたことがありません。
AIM-9Xの場合は大幅に延伸された射程からいって可能性はあるのかな、という程度の認識です。
そもそも中距離AAMには最短有効射程があり交戦距離が短い場合に備えるため短距離AAMが搭載されていると理解したつもりでいました。
信頼できる情報源があるなら教えていただけると幸いです。
35Bだから空母か強襲揚陸艦の艦載機で艦隊防空か上陸支援用でしょう
消耗品のミサイルを毎回買ってたら必要な時に肝心の弾が足りないというのは良くある事なので
自前で生産できるミサイルが使えるならそれに越したことはないかなと思います
ミサイルに関しては大は小を兼ねないから状況によっては短距離ミサイルも必要
近距離戦闘になったらステルス機に対しても赤外線誘導ミサイルは有効だからな、接近戦になったらの話だが一応万一に備えるのは悪くない。
そいや、米第五世代機は、尾翼等々で排熱隠したりと赤外線対策も熱心らしいな
日本はAAM-5の後継どうするんだろうな
F-35で使用するには、日本単独での開発だとアクセス権の問題で統合できない。
とりあえず、AIM-9Xを購入するけど、F-3でも引き続きAIM-9Xまたはその後継を運用するのかね
AAM-5Bっていうミサイルがあってですねぇ・・・
それはF-15JとF-2用でしょ
F-15JSI、F-35では使えないものだよ
F-3の話じゃないの?
F-3がでたころにはAAM-5Bはとっくに陳腐化しとるでしょ
技術水準的にもデータリンク対応のAIM-9Xにも負けてるし
それの後継機の話をしてるんだけどねぇ
日本も限られた防衛予算、人材をハードルの高い兵器開発に使うより、各種のミサイルの開発に廻した方がコスパいいんじゃないか。
ミサイルだけ作っても他所の機体に統合してもらうのには結構なコストが掛かるし、そもそも試射すら難しいから開発コストも上がる。
そうまでして開発・統合しても、母機の開発に絡んでない国のミサイルなんて売れる可能性は低い。
米英欧から買えなくなったから代わりに、って需要はあるかもしれんが、イスラエルやインドと違って日本はその需要には応えられないんじゃないかな。