本ブログでも何かと取り上げる機会が多いインドネシアの国防政策や海軍の近代化計画について管理人も正直よく分かっていないので理解するのに苦労していたが、米シンクタンクの外交政策研究所はインドネシア海軍の近代化に関する分析結果を発表した。
参考:At a Crossroads: Indonesia’s Navy Modernization
海洋国家構想を掲げたジョコ政権は歴代の政治指導者とは異なり、軍近代化プロセスを加速させる意思と財源を示そうとしている
インドネシアは日本と同じく海洋国家で伝統的に1万7,500もの島々を隔てる海域や水路(群島シーレーン)の保持を安全保障上の要に据えてきたが、今まで一度も十分な海軍力を構築したことがなく「国防上の欠点だ」と散々指摘されてきたものの歴代の政治的指導者達は同問題を軽視して先送りし続けてきた。
しかし中国が九段線に基づく南沙諸島の基地建設を開始(2009年頃)すると当時のユドヨノ政権(2004年~2014年)は東南アジア諸国の中でいち早く軍の近代化に着手、政治的指導者のバックアップ(国防予算の増額)を受けてインドネシア軍は2024年までに自国の国益を保証するだけの戦力(最小必須戦力/MEF)強化に乗り出すことになる。
当初の構想(Green-Water Navy/地域海軍)ではインドネシアの国益に直結した海域や水路を保持するため2024年までに274隻の艦隊(110隻の打撃艦/66隻の哨戒艦/98隻の支援艦)を整備する計画で、直近の10年間で新たに整備された艦艇(現地建造を含む)はオランダから調達したシグマ型コルベット×2隻、ディポネゴロ級コルベット×4隻、韓国から調達した209/1400型潜水艦×3隻、マカッサル級揚陸艦艦×2隻、国産の高速攻撃艇×16隻、戦車揚陸艦×5隻で海軍が保有する艦艇の総数は155隻(タンカーなどの補助艦艇を加えればもっと増えるが正確な数字は不明)だ。
米シンクタンクの外交政策研究所はインドネシア海軍の近代化計画について「2024年までに274隻という目標を達成するのは難しく、インドネシア海軍は既存の老朽化艇の交換を先延ばしにするため比較的低コストで行えるアップグレードで誤魔化してきた影響で2020年代後半には40%~50%の艦艇が満足な稼働を行えない状況に陥るだろう」と指摘したが、インドネシア経済から見て海軍の規模(中・小型艦中心の274隻)は決して過剰ではないとも言っているのが興味深い。
同じ海洋国家の日本は約5兆ドルの経済規模で22隻の潜水艦と50隻の大型水上艦艇を保有・維持しており、経済規模が1.2兆ドルのインドネシアなら少なくとも5隻の潜水艦と12隻の大型水上艦艇を維持できるはずだと指摘したが、外交政策研究所は「南シナ海で中国と対峙する可能性が高いインドネシア海軍にも最も多くの近代的な艦艇や装備が必要になるのは明らかで、今後3年間(2022年~2024年)で約1,250億ドル/13.7兆円分の武器を購入すると発表したのもインドネシア自身が中国の脅威を理解している証拠だ」と述べている。
つまりジョコ大統領に国防政策の見直しを命じられ、2019年に国防相へ就任したプラボウォ・スビアント氏が既存の調達計画を否定して大胆な行動を見せているの2024年までの近代化計画を強化・拡張するためであり、これを後押しするためのバックアップ(約1,250億ドル/13.7兆円の資金供給)も行われることが予想(まだ確定ではない)されるため、不可解に見えたイタリア、英国、日本の3ヶ国から新造フリゲート×16隻+中古艦×2隻の調達は実行に移される可能性が高いのかもしれない。
関連記事:国防予算が約1兆円のインドネシア、今後3年間で13.7兆円を軍の近代化に投資か
インドネシア国防省は今年6月にフランスのダッソーとラファール×36機調達に関する契約を締結したとの噂があるが、この契約は事前の情報通り調達資金の供給がインドネシア政府によって保証されていないため契約自体に署名を行ったものの契約の効力は今年の12月に発効する=つまりインドネシア政府による調達資金の保証を12月までに確保しなければ契約自体が不成立になると言われており、恐らくラファール調達資金は現在調整が進んでいる約1,250億ドルの資金供給が正式決定するかどうかにかかっているのだろう。
果たしてインドネシアの取り組みが実行に移るのかは今後の推移を見てみないと分からないが、外交政策研究所は「海洋国家構想を掲げたジョコ政権は軍近代化プロセスを加速させる意思と財源を示そうとしており、インドネシアにとっては悲願とも言える群島シーレーン実現に不可欠な海軍力獲得の機会だ」と言っている。
因みにインドネシアメディアはAUKUS成立を受けて南シナ海の緊張感はさらに高まると予想、さらに原潜+巡航ミサイルの組み合わせは地域の軍拡競争と火力投射を悪化させるため地域の問題解決を外交力だけに頼るのではなく「軍事力にも頼る必要がある」と述べており、インドネシア国内でも軍近代化の必要性を叫んでいるのが興味深い。
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※アイキャッチ画像の出典:fincantieri
オーストラリアと微妙な関係のインドネシアに艦艇を輸出する予定の国家と、オーストラリアとの関係にどういう影響を及ぼすんでしょうね。
複雑過ぎる。
フランス
つまり、インドネシアには過剰ではないか?というのは我々の思い込みってことか。
中国は急速に発展して他国を脅かしてきたが、自分がしたのと同じことを今度は受ける側になるのかな。
インドネシアはぐだぐだに見えるし、実情その通りだけど、ああいう旧植民地で戦争被害も受けてる国が人口国土のポテンシャルまんまに強大化すれば関係国にとってはどうなのか
単純に見下すよりもよく考えてから発言して欲しい
日本の政商との癒着、共産党や中華系への残虐行為、旧ポルトガル領やニューギニアとの関係
なめてかかると痛い目に遭いかねないブラックな国なんだから
アジアのトルコみたいになりそう
インドネシアがボンクラでいてくれるお陰で日本は安穏としていられる面がある
むしろ感謝していいくらいw旧いけど第三世界という立ち位置の国家であることを念頭に接さないとな
なんか上から目線のコメントだね。
インドネシアがボンクラ?どれだけインドネシアのことを知って言ってんのか知らないけど、考え方も表現も下品だね。
なぜ釣られるのか
実際地域大国目指してるフシがあるからまんまトルコと同じ指向に見えるね
おおすみ型を供与して、国防関係を作ろう。
代艦は強襲揚陸艦と掃海母艦とDDHを兼ねる艦を導入。
インドネシア海軍は、すでにドック型揚陸艦 5隻を配備済み
マカッサル級 :標準排水量11,300トン(満載15,994トン)
LSTタイプの小型揚陸艦(4200トン) 6隻も配備しているので、陸軍揚陸能力は すでに海自に匹敵するレベルである。
恥ずいコメントは控えめにしようぜ
匹敵というか超えてますね
同じ島嶼国家と言っても、大きな島4つが纏まってる日本とは揚陸能力の重要性がまた違うんだろうなぁ。
こうやって無知ゆえに軽んじるから勘違いする
とりあえずもがみ型輸出して実績作ってほしい
あと自衛隊以外が使った時の率直な感想が聞きたい
インドネシアの国力や成長性を考えると軽武装もいいとこ
あの辺は平和だったからノホホンとしてられたがもうそんな時代じゃない
もがみ型を24年度までに4隻ってそういう理由もあったんだね
オーダーに応えられれば後に繋がる案件になりそうだけどインドネシア仕様の策定、設計変更、着工から就役まであと2年ちょいは流石に…
ただまぁ、もがみ型の輸出自体は結構期待出来そうなので受注に向けて頑張ってほしい
もがみ型は習得しないんじゃないですか?
この間の出典は、インドネシアの地元新聞社の飛ばし記事から、インドネシアはもがみ型を習得するのだろうとおっしゃっていましたが、公式発表がないと到底信用できません。
何よりフリゲート調達予算は、前回の決定で埋まったそうですよ。
>何よりフリゲート調達予算は、前回の決定で埋まったそうですよ。
何処からの情報ですか?
この間、もがみ型を巡ってインドネシアと日本が協議をしたと報じられた件で『そうそう、ツイッターで現地の軍事系の記者が、本当かどうか怪しいって言ってたよ。もがみ型調達するにしても予算の枠がもうないって。習得するにしても、財務省的なやつがその枠を拡大するかどうかであって、まだ先の話だろうってね。みんな、公式発表があるまで一旦落ち着こう』と書き込んだ人が居たから、それがソースか、あるいはこの書き込みをした本人からの発言じゃないかな
艦を「習得」という独特の日本語からして同一人物の可能性が高いかな?
元のTweetで使われてる言い回しそのままなだけ?
てかインドネシアのもがみ型調達とその予算の枯渇、公式発表がないのはどちらも同じなのに
何で前者は到底信用できなくて、後者は確定事項扱いなのかね?
予算の上限は分からないけど現時点で必要な予算はかなり高額になってるのは事実だからでは
んで、もがみ導入に懐疑的な見方が多いのは過去の約束を守らない姿勢が原因かと
インドネシアに新幹線の約束を反故にされたと言うけど契約を結んだ後に反故にしたわけじゃないよね?
契約が中国に持っていかれただけでしょ?
何で約束を守らない姿勢になるわけ?
強いて言えば勝手に期待して勝手に失望するパターン?
日本の価値観であそこまでしてあげたら契約するもんだと思ってたら中国に横取りされて怒る気持ちも分かるけど、約束を守らない姿勢というのは違う気がする。
日本人的な商取引の習慣や価値観と合わなかっただけ
韓国とのKF-21とか潜水艦とか結構傍若無人じゃない?
むろん、どちらもお金払ってないだけで破棄やキャンセルしてないだろっていう擁護は可能だが、契約を結ぶ前も後もあまり信用はできないと思う
「インドネシア、遂に韓国と締結した潜水艦導入契約キャンセルについて言及」
リンク
*↑の記事が最新の記事っぽいからこれにしたけど関連記事も読んで
地元のジェーンズ記者です。
できればフリゲート調達予算は前回の決定で埋まったという地元ジェーンズ記者の記事か、Tweetへのリンクをお教え願えませんか?
この人じゃないかね。
Twitterで30FFMって調べたら、似たようなこと言ってる人が出てくる。
ジャカルタのシンクタンクに所属してるらしい。
リンク
>インドネシア政府による調達資金の保証を12月までに確保しなければ契約自体が不成立になると言われており
フランス政府にも喧嘩売ってるのか
インドネシアは地域の大国であり、地政学的に日本にとっても重要な国。
敵に回したら日本の南方シーレーンが完全に閉ざされる。
日本にとって最上型輸出は単なる商売以上に、安全保障面での連携強化につながる大事な意味があると思う。
シーレーン防衛というと、中国と正対している南シナ海での水上優位というよりは、ジャワ・バンダ海みたいな内海とジャワ島南岸やその沖合での制海権確保というニュアンスなのかな。ネシアが日本と違う点があるとすれば領海がいずれも陸地から近い点で、水上優位を取りたいだけなら地対艦ミサイルや対艦攻撃機でも導入するほうが安上がるな気もする(それが今まで海軍整備を先延ばしにしてきた理由でもあるんだろう)
誰がそんな事できるのかはさておき、インド洋東端のマラッカ・スンダ海峡に繋がる海路を封鎖されてしまうとインドネシアは事実上干上がるし(インドネシアだけじゃなくて東南アジアとインドシナと北東アジアの国も全部干上がるけど)シーレーン防衛を志向するなら内海で水上戦や警戒監視をするフリゲート艦隊よりむしろ、インド洋に出張って封鎖艦隊と決戦できるミサイル駆逐艦や場合によっては軽空母を調達するべきじゃないか。
率直な疑問なのだがAWACSが無力化されたのに何故戦闘艦は残るんだろうか。
地球が丸いからですかねぇ…(雑
AWACSも飛行機の一種で空を形を変えながら飛行機が支配してるように、戦闘艦だって一見進化してなさそうでも旧式は最新に太刀打ちできないでしょ。
AWACS(特にE-3のような)は大艦巨砲主義みたいなもんだよ。
戦闘艦を補助艦•支援艦以外って意味で捉えたけど違ってたらごめん。
戦闘艦はレーダーやSAM等の強力な防御兵装を標準装備しているから
戦闘態勢に入った戦闘艦にはミサイルを使っても少数では撃沈するのは難しい
逆に防御兵装を装備できないミサイル艇はほとんどが姿を消してしまった
インドネシアは、オーストラリアと中国の中間に位置し、どちらからも圧力を受けている。
日本は、自国のシーレーンを護るために、インドネシアともオーストラリアとも友好関係を保ち、
求められる武器輸出を行えばいいだろう。一方だけに肩入れすることは止めるべき。
中国の前はインドネシアとオーストラリアって仮想敵国の関係でインドネシアを発展させようとしただけでオーストラリアから苦情きたし日本も結構苦労したのよね…。
インドネシアとオーストラリアが互いに潜在的な脅威と見なす事は無くならないと思う。
今は両国とも中国がより大きな脅威だと認識してる。
だから安全保障上の協力協定を結び合同演習も予定するほど表立った対立関係は緩和されてる。
経済面でも両国の貿易額は拡大していて既に1兆円を超えている。
共通の脅威である中国の圧力が解消されることになれば、対立再燃は有り得るわけだが・・・
オーストラリアもインドネシアも中国そっちのけで、隣国相手に増強してるようにしか見えない
それはそれで都合がいいのでは
中国名指しで軍拡すると角が立つけど「オーストラリアが」かたや「インドネシアが」で軍拡する分には角は立たない(オーストラリアは対中強硬姿勢を隠そうとしてないけど)
逆にインドネシアをはじめとしたASEAN諸国が中国陣営に組み込まれないよう注意しないといけないけど