日本関連

日本、極超音速ミサイル対策としてレーダーの能力強化や早期警戒機を新規取得

朝日新聞は21日、極超音速ミサイルの迎撃能力を向上させるため防衛省は固定レーダーの能力強化や早期警戒機の新規取得に乗り出す方針だと報じている。

参考:「極超音速ミサイル」迎撃へ、防衛省が予算要求で調整 北朝鮮も保有

ウクライナの戦いで「GLONASS誘導は精度に問題がある」と指摘されているため北朝鮮はHGVの誘導に問題を抱えているかもしれない

北朝鮮が繰り返すミサイルの試射の中には極超音速滑空体(HGV)を搭載する極超音速ミサイルが含まれており、防衛省の関係者は「もし日本に着弾することが見込まれる場合、これを迎撃するのは相当難しい」と述べており、来年度予算案の概算要求で「固定レーダーの能力強化」や「早期警戒機の新規取得」などの予算を事項要求する方針らしい。

出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. James Richardson

新規取得する早期警戒機が何なのかについても興味を惹かれるが、マッハ5.0以上の速度で変則的な飛行コースを滑空するHGVを迎撃する手段をどうやって確保するのかが日本にとっての課題だろう。

米ミサイル防衛局長官を務めるヒル海軍中将は今年2月「現時点でHGVを迎撃できる可能性があるのはSM-6だけ」と明かしており、日本は2019年度予算でSM-6の取得費を計上しているが、ヒル中将が言及したSM-6は日本が導入すると思われるSM-6BlockIAを指すのか、弾道ミサイル識別能力を向上させ特殊モデルのSM-6DualI/DualIIを指すのか、2024年以降に実用化が見込まれているSM-6BlockIBを指すのかは不明だ。

出典:Raytheon GPIのイメージ

さらに言えば「SM-6はHGVを迎撃できる初期段階の可能性を示しただけでGPIが実現する迎撃速度や機動性には及ばない」とヒル中将は述べており、米国でもHGVを想定したターゲットをSM-6で迎撃できるかテストしたことがないので、SM-6は正真正銘「HGVを迎撃できるかもしれない」というレベルでしかない。

開発が始まったばりのHGV迎撃用ミサイル=GPI(グライド・フェーズ・インターセプター)の実用化時期も不明なので日本としてはSM-6に頼るしかないのだが、現行のSM-6BlockIAは最高到達速度がマッハ3.5止まりなのでインターセプターコースに誤差が生じると目標に接近するのが難しく、やはり最高到達速度がマッハ5.0以上に向上するSM-6BlockIB(最大射程も240km→370kmに拡張)が本命だろう。

出典:U.S. Navy photo SM-6

果たしてSM-6BlockIBはGPIが登場するまでの繋ぎとしてHGVを効果的に迎撃できるのか気になるが、香港メディアは「北朝鮮が弾道ミサイルの誘導にロシアのGLONASSを使用している」と明かしており、ウクライナの戦いで「GLONASS誘導は精度に問題がある」と指摘されているため北朝鮮はHGVの誘導に問題を抱えているかもしれない。

関連記事:米国防総省、極超音速滑空体を迎撃するため新型ミサイル「GPI」開発を本格的に開始
関連記事:HGV迎撃で最も重要なのはセンサー、米ミサイル防衛局が極超音速滑空体の迎撃コンセプトを公開
関連記事:米ミサイル防衛局、現時点で極超音速兵器迎撃の可能性があるのはSM-6だけ
関連記事:北朝鮮、28日に試射したのは極超音速滑空体を搭載した極超音速ミサイル「火星8」だと発表
関連記事:香港メディア、北朝鮮の弾道ミサイルは慣性誘導以外にロシアのGLONASSを使用

 

※アイキャッチ画像の出典:조선중앙통신

韓国の尹政権、関係改善のため海自の国際観艦式に艦艇派遣を検討中前のページ

キプロス、トルコに対抗するためイスラエルからアイアンドームを導入次のページ

関連記事

  1. 日本関連

    自衛隊の弾薬・スペアパーツ不足、予算配分で直ぐに解決するとは限らない

    日本政府や防衛省は「自衛隊の弾薬備蓄が不足し、航空機などのスペアパーツ…

  2. 日本関連

    英国主導のテンペスト参加に傾く日本へ圧力? 日本の次期戦闘機「F-3」を巡る米英の戦い

    米メディアは、日本が英国が主導する「テンペスト」プログラム参加に傾いて…

  3. 日本関連

    日本政府、海自潜水艦への巡航ミサイル搭載や垂直発射装置採用を検討中

    読売新聞は30日、日本政府が海上自衛隊の潜水艦に12式地対艦誘導弾ベー…

  4. 日本関連

    日本、次期戦闘機のステルス性能を計測するため実大模型製造か

    日本政府は24日、次期戦闘機(F-X)のRCS計測用途と見られる小型航…

  5. 日本関連

    陸自、タリスマン・セイバーで03式中距離地対空誘導弾の実弾射撃を実施

    オーストラリア軍は自衛隊が参加している豪米二ヶ国間演習「タリスマン・セ…

  6. 日本関連

    日本、防衛装備品の価格をチェックする部署があれば調達費用の高騰は防げたのか?

    東京新聞は財政制度分科会の資料に基づき「国産航空機やライセンス生産を行…

コメント

    • お!?
    • 2022年 8月 22日

    ほんとアメリカ海軍のSMシリーズは”夢と理想”があるな。どんどん新しいバージョン出現して凄いわ。

    3
    • sundaycameraman
    • 2022年 8月 22日

    欧米は長距離空対空ミサイルに対し脆弱なAWACS を退役させ、ネットワークや無人機による監視に置き換えようとしてるのに、今更AWACS の追加導入ですか、、、一周遅れで心配になりますね。

    10
      • 2022年 8月 22日

      想定運用が違うでしょ
      向こうがAWACSを退役させようとしてるのは純粋に空戦運用したときの話で、日本の今回のはHGV監視用だし
      ただ日本のこの使い方だと冷戦期のような空中パトロールを常時しないと行けなくなるからそっちの負担がヤバそうな気がする

      44
        • δ
        • 2022年 8月 22日

        リンク
        この産経の記事にあった赤外線センサーを積んだ滞空型無人機による早期警戒に事項要求で予算をつけるのではと思ってる

        17
          • 下僕
          • 2022年 8月 22日

          この絵だとHGVは無人機の下を飛んでるけど巡航ミサイル?なのかと混乱しますね。上を飛んでくイメージが正しいですよね?

            • δ
            • 2022年 8月 22日

            確かにこのイメージ図自体は間違ってますね
            無人機はHCMないしHGVの下を飛ぶはずです

            2
      • てつ
      • 2022年 8月 22日

      記事の通り「早期警戒機」ならAWACS(早期警戒管制機)ではなくAEW&Cでは?
      まあ、そろそろE-767の後継探しを始めてもおかしくない時期ですけど。
      ただ来年度予算で取得ならば機種選定する時間がないので、E-2Dの追加しかないと思いますが。

      あとAWACSことE-3が退役するのは機体の予備パーツ確保が難しくなったためですよ。
      E-3もアメリカでは全機退役する訳じゃないし、後継は脆弱性では大差ないE-7ですし。
      早期警戒管制機の脆弱性が問題になっているのは確かですが、解決策とされる無人機とネットワークを用いた警戒システムは未完成ですしね。

      8
        • δ
        • 2022年 8月 22日

        E-767はアップグレード改修を受けたばかりだから当分退役しないと思うけど

        9
          • てつ
          • 2022年 8月 22日

          2035年まで耐用と判断されている本家のE-3Gが退役すると予備パーツ確保が難しくなります。
          F-4EJはライセンス生産なので米軍で退役した後も長く運用できましたが、E-767は輸入機ですから同じことは難しいでしょう。
          機種選定に数年かかることを考えると、E-3Gと同時期に退役するならタイムスケジュール的に数年後に後継機の選定に入ってもおかしくないでしょう。
          まあ機体の方は切羽詰まっていないでしょうから、レーダー等の電子装置の予備パーツを大量購入しておく事で、E-3Gが退役してから10年程度は運用できるかと思いますが。

          9
            • 匿名希望
            • 2022年 8月 23日

            母機が737だからはよ後継だせだな>E-737

        • 名無し3
        • 2022年 8月 22日

        多分記者の人そこまで考えてないと思うよ
        早期警戒機つったら一般には有人のAEWを指すのも知らんと思う

      • ナイトアウル
      • 2022年 8月 23日

       ミサイル探知と追跡にどのように欧米が動いているか書くべきじゃないの?AWACSがオワコンなら当然対策しているよね。

       小型機体ならば電力消費や搭載レーダーの出力やサイズの制約あるし、航続距離の問題だってあるんだからな。それに対北だけ考えるとミサイルの効果上げるためにAWACS撃墜の長距離対空ミサイル運用してくるのかってのもあるし。

      1
    • すえすえ
    • 2022年 8月 22日

    まぁ北朝鮮のミサイルが精度に問題があったとしてもどこに落ちるかわからないはないで対処がめんどくさい

    13
    • 匿名
    • 2022年 8月 22日

    北朝鮮や中国のHGVを迎撃することがほぼ不可能なら、相手にHGVを発射させなければいい。
    つまり「HGVで日本を攻撃するのなら、日本も報復攻撃する」というメッセージを伝えるのだ。
    その為には日本も強力かつ迅速な攻撃能力を早期に獲得する必要がある。日本がウクライナの様な「反撃に出遅れる国」になってはならないのだ。

    42
    • hogehoge
    • 2022年 8月 22日

    SPY7をイージスアショアに戻せよ。ミサイル抜きのサイト運用で良いから。
    で、イージス艦建造するならそっちはSPY6にしろ。

    18
      • Mob
      • 2022年 8月 23日

      SPY-6はしばらくは米軍需要でいっぱいで入手困難になる可能性があって、もしかするとアショア代艦だけでなくこんごう型後継もSPY-7になるんじゃないかって意見を軍板あたりで見かけるんだがどうなのかね。

      1
    • 774rr
    • 2022年 8月 22日

    日本関連のニュースが俄に増えてきた
    巡航ミサイル1000発体制(ホントに出来るかは謎)に相応しい探知能力を持ってほしいね

    19
      • Mob
      • 2022年 8月 23日

      巡航ミサイル1000発以上は地対艦ミサイル連隊のミサイルを更新するだけで達成可能。
      地対艦ミサイル連隊には各射撃中隊に即応弾24発と予備弾24発の計48発、これが4個中隊で1個連隊192発になり、これが第1~3および第5連隊の4個連隊があって768発になる。
      第4地対艦ミサイル連隊は射撃中隊2個なので96発。
      これに加えて現在第5地対艦ミサイル連隊の傘下に入っている300番台の独立地対艦ミサイル中隊が3つあるので144発。
      これで合計1008発となる。
      あと300番台の中隊は来年度にさらに2個中隊を編成した上で300番台5個中隊を新連隊に再編予定なのでミサイル数はさらに増える。
      あと巡航ミサイルではないが今後高速滑空弾の配備も控えてる。

      2
    • アクアス
    • 2022年 8月 22日

    レーザーやビームじゃだめなのだろうか?

    1
      • ネコ歩き
      • 2022年 8月 22日

      今後暫くの間は最終突入段階で撃破できるかどうかの出力に留まると見込まれます。
      ミサイルが高速だけに出来るだけ遠方で撃破したいのですが、それが可能になる高出力レーザー兵器の登場は実現しても大分先の話になりますね。

      13
    • anon
    • 2022年 8月 22日

    遠距離探知センサシステムを搭載した国産機かもしれない。 F3のスケジュールを考えると来年から基本設計することが妥当。

    1
    • 月虹
    • 2022年 8月 22日

    米空軍は既に弾道ミサイルの光学/電子情報収集機としてRC-135Sコブラボールを配備していますが日本もその様な機体を導入するということなのでしょうか?航空自衛隊にはAEW機であるE-767やE-2、海上自衛隊にはP-3Cを改造したEP-3(電子情報偵察機)やOP-3C(画像情報偵察機)が既にありますが超音速ミサイルや弾道ミサイルへの対処を考慮すると専用の偵察機が必要ですね。

    3
    • 2022年 8月 22日

    迎撃に力点置いて100%なんて不可能なので、効果を考えたら目には目を歯には歯をで対応するほうがいいと思う。

    9
    • 世界常識の半分の防衛費の国から
    • 2022年 8月 22日

    新型ミサイル(HGV)は動きが読めないので、エンゲージオンリモート機能(自分以外のレーダーを使ってミサイル攻撃)を使って迎撃していかないと間に合わないのと急に動きを変えて来るので迎撃ミサイルも急に動きを変えれるように開発中の技術の自分以外のレーダーを増やすという内容ですよ。ABM条約失効から20年‥

    参考
    アメリカミサイル防衛局

    GPI Scenario Animation

    リンク

    Homeland Missile Defense Scenario

    リンク

    • 匿名希望
    • 2022年 8月 23日

    SM-6との連携とか考えたらE-2DかE-2Dのシステムを積んだ何かでしょね。

    • 匿名希望
    • 2022年 8月 24日

    C-2にE-2Dのシステム積んで、EC-2とか?

    • 幸運雪風
    • 2022年 11月 09日

    いいこと考えたぞ!PAC3の弾頭を小型核にじて、爆発半径を上げてやれば精度とか関係なくなるね!!(バカ)
    でも普通に考えて、迎撃できないなら撃たせない力、核弾頭積んだ弾道ミサイル保有も考えなきゃと思うんだがなぁ

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  2. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
  3. 軍事的雑学

    4/28更新|西側諸国がウクライナに提供を約束した重装備のリスト
  4. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  5. 北米/南米関連

    カナダ海軍は最大12隻の新型潜水艦を調達したい、乗組員はどうするの?
PAGE TOP