米国関連

米国防総省、極超音速滑空体を迎撃するため新型ミサイル「GPI」開発を本格的に開始

米国防総省は19日、噂されていた極超音速滑空体(HGV)迎撃用ミサイル「グライド・フェーズ・インターセプター」の開発をノースロップ・グラマン、ロッキード・マーティン、レイセオンの3社に発注した。

参考:Missile Defense Agency selects Raytheon Missiles & Defense to develop first-ever counter-hypersonic interceptor

ついにHGVの迎撃手段開発が本格化、グライド・フェーズ・インターセプターはイージス・ウェポン・システムに統合されて運用される予定

ロシアや中国が実用化した極超音速滑空体(HGV)は古典的な弾道ミサイルとは異なる飛行経路を経由して目標に接近してくるため既存のシステムでは迎撃難易度が高く、これに対応するためには新しい迎撃システムの開発が不可欠と言われている。

出典:米国政府説明責任局 弾道ミサイルと極超音速滑空体の飛行コースの違い

上昇用のロケットブースターから切り離された弾道ミサイルの弾頭部は非常に高速で落下してくるものの飛行経路はシンプルなので目標の発見や追跡、インターセプトコースの計算はHGVに比べると単純で迎撃手段もSM-3やサードなど複数の手段が実用化されているが、HGVの最高高度は弾道ミサイルとは異なり宇宙空間に到達せず大気圏上層に沿って飛行を行い「唐突に予測不可能な飛行コースの変更」を行うため弾道ミサイルの特性に合わせたセンサーや迎撃手段では対応が難しい。

特にHGVは極超音速と呼ばれるマッハ5.0以上のスピードで接近してくるためレーダーレンジが比較的長いSPY-1や後継のSPY-6をもってしても単体でHGVを処理するのは難しい=要するにSPY-1やSPY-6の最大探知距離よりももっと遠距離でHGVの検出と追跡を始めなければ十分な対処時間が確保できないという意味だ。

これに対処するため米軍は地球低軌道上に赤外線センサーを搭載した小型衛星を数百基配備してHGVの検出と追跡を行う予定だが、問題は迎撃手段で今年6月に米ミサイル防衛局が公開したHGV迎撃のコンセプト動画にはGPI(Glide Phase Interceptor/グライド・フェーズ・インターセプター)と呼ばれる新しい迎撃ミサイルが登場して注目を集めていたが、国防総省はノースロップ・グラマン、ロッキード・マーティン、レイセオンの3社にGPIを本格的に開発するための契約を与えたと報じられている。

今のところノースロップ・グラマンとロッキード・マーティンはGPI開発について何も声明を発表していないが、レイセオンは「GPIと呼ばれる兵器は音速の5倍以上の速度で飛行し、飛行中にコースを変更する新世代の極超音速ミサイルを撃退するもので、この脅威に対処するため求められるスピード、耐熱性、機動性を兼ね備えた初めて備えたミサイルになる」と声明を発表しており、GPIは米海軍のイージス・ウェポン・システムに統合されて運用されるらしい。

出典:Missile Defense Agency

因みにHGV迎撃のコンセプト動画に登場したGPIはSM-6が届かない遠距離でのHGV迎撃を担当するように描かれているので、GPIの交戦距離は400km以上(開発を進めているSM-6BlockIBの交戦距離は推定300km以上)に設定されている可能性がある。

関連記事:HGV迎撃で最も重要なのはセンサー、米ミサイル防衛局が極超音速滑空体の迎撃コンセプトを公開

 

※アイキャッチ画像の出典:Raytheon GPIのイメージ

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 11月 20日

    速度だけならマッハ20とかでもいずれ対応できるようになると思うけど
    ランダムな起動に関しては、流石にレーザーなりマイクロ波じゃないと無理な気がするが…
    仮に出来るようになったとしてもミサイル価格が高くなりそうだ

    10
      • 匿名
      • 2021年 11月 20日

      迎撃ミサイル1発の値段が5億円とかになったら、さすがの米軍でも多数揃えるのは金銭的に難しいでしょうね。

      3
    • 匿名
    • 2021年 11月 20日

    このレベルになると機械が自動的に対応するのかな
    人間の指示待ってたら遅そう

    2
    • 匿名
    • 2021年 11月 20日

    日本はレールガンを是非とも完成させてこれとの二段構えに持っていきたい。

    1
      • 匿名
      • 2021年 11月 20日

      いくら従来砲より高弾速でも実体弾での極超音速兵器の迎撃は実現に時間かかりそうだな…
      高出力レーザーの方が実用化時期でも性能でも勝りそう

      2
        • 匿名
        • 2021年 11月 20日

        問題は進路の特定じゃない?
        レーザーなら光学センサーで捉えて発射でも間に合うだろうけど

        2
        • 匿名
        • 2021年 11月 21日

        極超高速での圧縮熱に耐えうる耐熱性を持つ弾体に対してはレーザーでの対処は難しいと思われ

        1
          • 匿名
          • 2021年 11月 22日

          むしろレーザーで小さな穴を開けるだけで、コロンビア号事故のように内部から破壊できるんじゃないか?

            • 匿名
            • 2021年 11月 22日

            まず超高温に耐えうる極超音速滑空体に対しては熱で穴を空けることができないということなんだけど
            コロンビア号の事件も穴は物理的破損によるものだし

    • 匿名
    • 2021年 11月 20日

    どうせ失敗するでしょ

      • 匿名
      • 2021年 11月 20日

      失敗は成功のもとだから
      ミサイル迎撃が無理と悟ればレーザー兵器迎撃の推進に弾みがつく
      また、多数の衛星展開による探知システムは転用できる技術的基盤になり得る
      本命は、同じような極超音速兵器によるパワーバランス戦略としても、当の中国ロシアは西側相手の極超音速迎撃システム構築は、開発の目処すらないではないか?
      つまり矛を持ってても盾の無い相手なんだから、研究したほうがモノにならなくても有利を得る

      19
    • 匿名
    • 2021年 11月 20日

    射高500kmのSM-3を低空用に改修したら、射程1000kmとかいかないかね?
    高いから推進部だけ頂いてシーカーはパトリオット。目標1発5億円

    2
    • 匿名
    • 2021年 11月 20日

    そんなに高速で突入してくるなら、空中に砂撒いたら、摩擦で壊れそう。

    1
      • 匿名
      • 2021年 11月 20日

      散弾あたりは試したんじゃないかねぇ?
      おそらくあらかじめ撒いておくぐらいじゃないと、速すぎて対応できないんじゃないかと
      だったら直接ぶつけた方がってのが現状なんじゃないかと

    • 匿名
    • 2021年 11月 20日

    いづれ日本も極超音速兵器に対抗するミサイルを装備するだろうが
    相当高いミサイルになるだろうな

    2
    • 匿名
    • 2021年 11月 20日

    花火の弾幕で防げるんじゃね?

      • 匿名
      • 2021年 11月 20日

      花火って高度は案外低いんですよ。スカイツリーから「見下ろせる」くらいには。

      1
      • 匿名
      • 2021年 11月 21日

      戦国時代になんで使わなかったのかね?
      敵上空20メートルくらいで炸裂。関ケ原とかだったら1発で数十人の鼓膜は破ったろうに
      大砲弾なんかより安く済みそうな。鉄球仕込むより白燐かな

      1
        • 匿名
        • 2021年 11月 21日

        花火の玉ってすごいでかいんだぞ
        しかも飛距離は大したことない
        晴れの日しか使えない
        だから、使えるわけない

        1
        • 匿名
        • 2021年 11月 21日

        その花火を飛ばす炸薬で石とか松ぼっくり飛ばせばいいのさ

        2
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