中東アフリカ関連

トルコへの圧力か? ロシア、リビアに戦闘機MiG-29や戦闘爆撃機Su-24を配備

米軍アフリカ軍(AFRICOM)司令部は26日、ロシアがリビアに戦闘機を持ち込んだと発表して注目を集めている。

参考:Russia deploys military fighter aircraft to Libya

ロシアがリビアに戦闘機を派遣した理由はシリア内戦が原因か?

まずはリビアの状況を軽く説明すると2011年までカダフィ大佐(ムアンマル・アル=カッザーフィー)による独裁政権によって統治されていたが内戦によって崩壊、2012年に国民全体会議選挙が行われ60年ぶりに選挙によって選出された議員による内閣が発足したのだが、なんやかんやあって首都トリポリを拠点とする国民合意政府(国連承認)とトブルクを拠点とするリビア国民代議院(反体制派)の間で内戦状態に陥っている。

出典:United States Africa Command リビアで確認されたMiG-29

これまでロシアは反体制派に対して露民間軍事会社を通じた支援を行ってきたが正規軍による支援は一切行ってこなかった。しかしロシアは戦闘機MiG-29 6機と戦闘爆撃機Su-24 2機をリビアの反体制派が支配する基地へ派遣したことが衛星写真を通じて26日確認(実際に到着した日時は不明)されたのだ。

しかも同機の派遣にはロシア空軍の戦闘機Su-35 2機が護衛についていたとも言われており、もはや反体制派支援を隠す気がないロシアの行動に注目が集まっている。

出典:United States Africa Command シリアのフメイミム空軍基地にあったMiG-29 4機とMiG-35 2機が消えている

海外メディアの報道によれば、同機の派遣はトリポリ占領を狙う反体制派支援に暗躍する露民間軍事会社に対して近接航空支援を行うためだと言われており、リビアに到着したMiG-29とSu-24はシリアのフメイミム空軍基地(ロシア軍が駐屯する基地)でロシア空軍機だと認識できないように塗装が塗り替えられたとも報じられている。

果たしてロシアの動きは誰に何のメッセージを送っているのだろうか?

恐らく国民合意政府を軍事的に支援しているトルコに対してだろう。

トルコはキプロス近海の天然資源開発で生産した天然ガスをパイプライン経由で欧州に輸送する構想を持っているのだが、ギリシャなどの国がパイプライン敷設に反対しているためリビアの排他的経済水域(EEZ)を経由して欧州へのパイプラインを敷設することを狙っているため国連が承認したリビア政府(国民合意政府)に肩入れしているのだが、今年になってロシアはリビアに露民間軍事会社を通じて大量のシリア人傭兵部隊を送るなど反体制派の支援強化に動き出している。

このロシアの動きはシリア内戦に連動しており、シリア政府を支援しているロシアは反政府組織「シリア解放機構」を支援するトルコに圧力を加えるためリビアの反体制派支援を強化していると見てまず間違いはない。

トルコも最近、ロシアのリビア関与の拠点となっているシリアのフメイミム空軍基地近くに地対空ミサイル「MIM-23 ホーク」を配備してやり返すなど両国の対立はエスカレートするばかりだ。

関連記事:リビアに傭兵を送り込んだ報復? トルコ、ロシア軍基地近くに地対空ミサイルを配備

果たして、両国の争いはどこまで行くのだろうか?

 

※アイキャッチ画像の出典:jamsi / stock.adobe.com

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 5月 27日

    トルコはロシアとアメリカの両方とも良い関係を築くバランサー国家を目指すのかな?

    あれれ?

    アメリカと中国のどちらとも良好な関係を築いているバランサー国家を自称していた国が何処かに有った様な…

    1
      • 匿名
      • 2020年 5月 27日

      何でもかんでも韓国に絡めるなようっとおしい
      せめて記事に韓の文字がなければ黙ってろ

        • 匿名
        • 2020年 5月 27日

        えっ?韓国と一言も書いていないのだけど、自覚が有るの?

        1
          • 匿名
          • 2020年 5月 27日

          一本!

          2
          • 匿名
          • 2020年 5月 27日

          いやー、語るに落ちるとはまさにこのこと
          いいサンプルですわ
          笑わせてもらいました

          1
      • 匿名
      • 2020年 5月 27日

      曲がりなりにもシリアやリビアでそこそこ成果上げてるトルコと国内すら北朝鮮と中国にシェイクされてる組織を比べられてもなあ。
      相手は無口でも誤射とか言っちゃう組織具合らしいぞ

      1
      • 匿名
      • 2020年 5月 27日

      バランサーの考え方は面白いですね。
      ここで、一途に民主主義を貫く国家と、西側陣営に属しながら時々の都合で共産・社会主義とも組んでしまう国家の盛衰を比べてみるのも面白いですね。
      トルコの場合は民族問題が発端で状況を作り出したという、止むを得ない事情は理解できます。

      2
    • 匿名
    • 2020年 5月 27日

    というかなんで地理的にも近くて対立する可能性が高い国からミサイルシステムを輸入しようと思ったんだ?代案がないわけでもないだろうに。
    クルド人問題を穏便に解決してアメリカと友好的になる方がはるかに楽に思えるんだが。

    あと今トルコの味方ってどこなんだろうか…お隣さんもあれだけどエルドアンさんも国際政治下手くそすぎない?

      • 匿名
      • 2020年 5月 27日

      トルコはアメリカとロシアを噛み合わせて大国の介入を減らしたいんじゃないかな?

      その間に中東地域に親トルコ政権を増やして、中東の盟主として準大国になろうとしている。という見方はどうだろう?

      バランス外交下手過ぎて、干されそうになってるけど

      • 匿名
      • 2020年 5月 27日

      批判されようが国際社会の無力ぶりをよく知ってるし、外国に攻め入ってる時点である程度は成功してる。
      エルドアン切ろうがトルコがなくなろうが問題は悪化するだけってことをEUが自覚した上でのワガママよくやってるよ

      • 匿名
      • 2020年 5月 30日

      情報筋によると危機のトルコは、親韓の韓国に通貨スワップ打診してるみたい。その内親日の日本にも来そうだとさ。そうするとややこしくなりそう。トルコを通して、日韓通貨スワップ完成みたいな話も。やれやれ。

      1
    • 匿名
    • 2020年 5月 27日

    ハフタル側の劣勢から正規軍も繰り出す必要に駆られたロシア。
    正直かなり苦しいだろう、よくやるよ

    • 匿名
    • 2020年 5月 27日

    ロシアのリビア軍事協力が始まっていたことで、東西の代理紛争に向かっているということか。
    これでトルコは対抗上、アメリカの支援にすがるのは時間の問題かと。
    新たな条件が加わって、トルコのS-400導入をめぐるトラブルはどう推移していくのだろうか。

    • 名無し
    • 2020年 5月 27日

    トルコも大変だな、米ソの間でジェンガをやってるようなもので一つのブロックを取るのに失敗すると大変なことになりそう、しかも時間と共に対応は困難になってくる。
    遠い国のことだし、見てる分には楽しいんだが当人は眠れないだろうな。
    近くの半島にある二国も似たようなことをやってる、コウモリの末路は決まっている。

    • 匿名
    • 2020年 5月 27日

    次の戦場はトルコになりそうだな

      • 匿名
      • 2020年 5月 27日


      かつてPKKがトルコで戦ってた
      今はアメリカの切り捨てでイラクやシリアで瀕死
      リビア侵攻は最悪だったとオバマも回想してる。
      好き嫌い関係なくトルコは強硬路線を続け、EUはお茶を濁す程度しか出来ん。
      本気で関わるなら中東全てを植民地する気迫がないなら何やってもムダ。

    • 匿名
    • 2020年 5月 27日

    >韓の文字?

    正しくは大奸民族ですね‼️(笑)

    • 匿名
    • 2020年 5月 27日

    奇妙だがバランスは取れてる
    トルコはハフタル軍を打撃したが、一方でワーグナーグループは脱出させた。
    一応はロシア配慮

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