インド太平洋関連

中印国境紛争以来の大規模衝突か? インドと中国が戦争に備えて準備を開始

インドと中国は1962年に発生した中印国境紛争以来の大規模な衝突に備えはじめており、両国の国境沿いは恐ろしく緊張感が高まっている。

参考:PM Modi meets military top brass over LAC tension with China

インドと中国が戦争に?エスカレートする国境沿いの争い

チベット付近のインドと中国の国境沿いで5月9日、両軍のパトロール部隊が偶然出くわし殴り合いの衝突が発生した。この衝突でインド軍兵士4人と中国軍兵士7人が負傷したと伝えられているが現地指揮官同士の話し合いで双方とも部隊を引き上げた終息したかに見えたが、両国は互いに衝突が起きた地域の軍を増強してにらみ合いの状況が続いている。

このような両軍の兵士による衝突は両国の国境線が未確定なので日常茶飯事の出来事なのだが、なぜか今回に限っては双方とも一歩も引く気がない。

インドメディアによれば互いが自国領と主張する国境付近のインフラ整備(道路や橋など)を進めており、その不満が今回爆発したのだろうと言っている。インドと中国の間には世界有数の長さ(約3,500km)誇る国境線が存在しているのだが多くの国境線は未だに未確定で、両国ともこの地域の開発を進めて支配の実績づくりに熱を上げているのだ。

出典:Public Domain 中国空軍の戦闘機J-11

特に中国のインフラ整備は軍事的要素が強く、軍事利用可能な地下トンネルの建設や戦闘機を配備できるガリ空港の整備などインド側からすればとても見過ごせる問題ではないというのが本音だ。

補足:中国のガリ空港は軍民共用で使用されており、最近の衛星写真によれば中国空軍の戦闘機J-11もしくはJ-16が4機配備されているのが確認されている。

一応インドは中国に対して軍を撤退させて国境地帯の現状維持を要求しているが、中国は軍を撤退させる条件にインド側が国境沿いのインフラ開発を停止することを求めているため軍を引くための合意形成は難しいとの見方が強い。

出典:Cpl Rob Kane / OGL v1.0 インド陸軍

そんな緊張状態が続く中でインドのモディ首相は26日、中国との衝突に備えて安全保障会議を招集して対応を検討したと報じられており、一方の中国も習近平主席も26日、インドとの衝突を考慮して戦闘準備を行うよう人民解放軍に対して指示を出したらしい。

もし双方が軍事的緊張を高める決定を繰り返せば引くに引けない出来ない状況が生まれ、最悪1962年に発生した中印国境紛争以来の戦争に発展するかもしれない。

果たして、両国の指導者はどのようにして今回の危機を回避するのだろうか?

 

※アイキャッチ画像の出典:Ajai Shukla / CC BY 2.5 IN インド軍の戦車アージュン

トルコへの圧力か? ロシア、リビアに戦闘機MiG-29や戦闘爆撃機Su-24を配備前のページ

中国軍がインドとの国境に兵士1万人以上を動員、一部は既にインド領へ侵入次のページ

関連記事

  1. インド太平洋関連

    FA-50輸出拡大、米国経由で日本のT-4後継機調達に参加は可能か

    韓国の文化日報は16日「新たにウズベキスタンがFA-50導入を検討して…

  2. インド太平洋関連

    力に基づく平和こそが真の平和、韓国が2023年の武器輸出額を約2.7兆に設定

    韓国防衛産業界は昨年「歴代最高額の海外輸出額(170億ドル=約2.3兆…

  3. インド太平洋関連

    韓国、KF-21のプロトタイプ1号機が初飛行に成功

    韓国の国産戦闘機開発が浮上してから21年4ヶ月後、KF-21のプロトタ…

  4. インド太平洋関連

    インドネシア、国産UCAV向けの精密誘導兵器をトルコと共同開発

    インドネシアは開発を進めている国産UCAV「Black Eagle」向…

  5. インド太平洋関連

    インドのラファール導入に対するパキスタンの回答、中国からJ-10Cを25機導入

    パキスタンのシェイク・ラシード・アーメド内務相は29日、現地メディアの…

  6. インド太平洋関連

    今後5年間で約27兆円を投資、韓国が発表した国防中期計画の中身|前編

    韓国国防部は10日、今後5年間の防衛力整備の方針をまとめた「2021〜…

コメント

    • 匿名
    • 2020年 5月 27日

    紛争が起こるようなら経済制裁が必要かと。

    • 匿名
    • 2020年 5月 27日

    流石に両国ともコロナ禍で戦争する体力は無いと思うけど。

      • 匿名
      • 2020年 5月 27日

      「殴り合いの衝突」でコロナ感染とか。

      • 匿名
      • 2020年 5月 27日

      個人としては善人な思考だが
      政治家や軍の指揮官が致死率1%以下のウィルスに狼狽すらなら辞めた方がいいと思う。
      クズとして生きるか善として死ぬかが問われてる状況で自国最優先は当然。
      悪口で相手が死ぬなら中国やアメリカは存在してない。

        • 匿名
        • 2020年 5月 27日

        仮想敵国がコロナで苦しんでる
        それっ今がチャンス
        お互いこんな感じだろう

          • 匿名
          • 2020年 5月 27日

          単にそれはそれ、これはこれというだけだろ

    • 匿名
    • 2020年 5月 27日

    間に挟まれたネパールとブータンは怖いだろうな(チベットも)。

    1
      • 匿名
      • 2020年 5月 27日

      でもネパールもブータンも国土蚕食されてんじゃなかったっけ?
      自力で取り戻すのは無理だし取り戻す機会があるとすれば印中激突後のドサクサしかないわけで
      縮こまってりゃいいとは思ってないんじゃないかな?

      1
        • 匿名
        • 2020年 5月 28日

        両国ともかなり中国に食われているようですね。
        しかしネパールは王制を廃止し議会制となったら毛沢東派が勢力を伸ばしてしまったと記憶しております。
        またブータンはあの穏やかな国王ですから状況に応じて力ずくでってのは考えにくいですね。
        もちろんなんらかの行動はするでしょうがあの中国に対抗できるような軍事力がないと現状維持が精いっぱいでしょう。
        下手すると逆にチベットのようになってしまいかねません。
        両国とも厄介なことに巻き込まれないといいのですが。

    • 匿名
    • 2020年 5月 27日

    今の世界中の経済が停滞した状況で中国とインドが衝突してしまうと、これまで世界が経済成長に利用してきた上客の2ヶ国が抜けて、コロナ恐慌がさらに深刻になる可能性が高い
    対中感情が歴史的レベルで悪化してる中で表立って仲立ちする国もいないから、中国に自力で泥沼化を防ぐ覚悟があるかどうかが焦点かなぁ

    1
      • 匿名
      • 2020年 5月 27日

      中国が今の方向性から軌道を変えることなんてありえないよ
      不況でもなんでもいいから弱体化させないと
      資金引き上げれば未開拓の投資先なんて腐るほどある
      悩むところは中国の次はどこにするかってくらい

    • 匿名
    • 2020年 5月 27日

    一番怖いシナリオは中印が突発的に軍事衝突した後、中国と関係が深いパキスタンがカシミール地方で軍事行動を起こしてしまうケース。

    • 匿名
    • 2020年 5月 27日

    インドに勝ち目あるのかな?他国からの支援次第?

    • 匿名
    • 2020年 5月 27日

    止めて欲しい感じ
    いま仲介役はロシアしかいないからプーチンの得点になるし

    • 匿名
    • 2020年 5月 27日

    (ノ∀`)アージュン

    • 匿名
    • 2020年 5月 27日

    いつものカシミール地方でしょう? 
     いつもとの違いは「バッタ」がパキスタン側から参戦してるぐらい?
    バッタ軍は強力でパキスタンの1/3の国土、金額にして約5,500億円(日本円換算)の農産物を飽食済み
    編成は400万羽/群れで、10群れぐらいでインド方面に侵攻中。
    アラビア半島が異常気象で雨のためエジプトーー>アラビア半島で死滅ってルーチンが破れて、6月には更なる援軍がパキスタンに補充される予定。

    • 匿名
    • 2020年 5月 27日

    コロナ渦で中国も失業率20パー言うし、インドも変わらないだろう
    失業者による社会不安を外敵に目を逸らさせるというのが増えてくるかもね

    1
    • 匿名
    • 2020年 5月 30日

    画像の一枚、印度軍兵士が抱える小銃のブルパップ独特な輪郭、イスラエル製タボールをインド軍は採用だっけか、と思うも、どう見てもL85なんで???となったw。
    リンク
    画像で検索すると英国軍の上記のページが見つかり、英国訓練所に送られたインド兵士と判り、納得(9枚目にそのもの画像在り)。

    記事の「殴り合い」からの連想で、英国伝統芸 チャーーージッ! を習得して強くなった印度軍ってのを想像したw。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 米国関連

    米空軍の2023年調達コスト、F-35Aは1.06億ドル、F-15EXは1.01…
  2. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  3. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  4. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
  5. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
PAGE TOP