軍事的雑学

中東の気候に耐えられるか? 英海軍、ホルムズ海峡へ機関の欠陥で停電する「45型駆逐艦」派遣

英国は4日、イラン革命防衛隊精鋭「ゴッズ」部隊の司令官を米軍が殺害したことで緊張が高まっているホルムズ海峡に、45型駆逐艦「ディフェンダー」と23型フリゲート「モントローズ」を派遣することを発表した。

参考:Royal Navy vessels sent to protect shipping in Strait of Hormuz

水上艦が不足している英海軍がホルムズ海峡に2隻も派遣

英海軍が運用中の主力水上艦は空母2隻、駆逐艦6隻、フリゲート艦13隻、ドック型輸送揚陸艦5隻しかなく、ホルムズ海峡へ貴重な水上艦を2隻(その内1隻は虎の子の45型駆逐艦だ)も派遣したということは、水上艦(特に駆逐艦)が不足している英海軍にとって非常に厳しい決断だろう。

出典:Hammersfan / CC BY-SA 4.0 45型駆逐艦

英海軍が運用中の45型(D級)駆逐艦は、2009年から就役が始まった比較的新しい艦だが、1隻あたり10億ドル(約1,100億円)以上もの費用が掛かり当初12隻調達予定だったが、6隻を建造しただけで調達が打ち切られていまい、その上、この駆逐艦は機関に致命的な問題を抱えているため稼働率が非常に悪い。

この艦は完全な電気推進方式を採用しており、発電用の機関として米国のノースロップ・グラマンが設計した中間冷却器(インタークーラー)が取り付けられたロールス・ロイス製のガスタービンエンジンが採用されているが、この中間冷却器の設計に欠陥があり、予定していた電気の発電量を賄えず艦全体が頻繁に停電を起こすという致命的な欠点がある。

この問題の原因は、ノースロップ・グラマンが設計した中間冷却器が極端に高温の気候条件に対応できておらず、中東や東南アジア地域で活動すれば発電能力が壊滅的に減少するせいで、2019年から船体を切断し、不足する発電量を補うためディーゼル発電機を追加する作業が行われており、修理に要求される期間は約2年で2番艦「ドーントレス」が2021年に復帰予定、1番艦「デアリング」が近々修理に入る予定だ。

当初45型駆逐艦は、世界中のどこででも活動が可能で保守性に優れ稼働率が高く、6隻中5隻が常時稼働すると英海軍は言っていたが、実際には限定された地域でしか活動できず、全く信頼できない機関のせいで稼働率は最悪の状態だ。

これ以外にも、45型駆逐艦の水中放射雑音レベルは160km離れた場所にいるロシアの原潜に届くと言われるほど無対策で、45型駆逐艦の設計は失敗だった可能性が高い。

出典:Tony Hisgett / CC BY 2.0 23型フリゲート

このように英海軍には、空母に随伴し艦隊防空を提供できる駆逐艦が6隻しかなく、残りは全て旧式の23型フリゲートで、この艦には個艦防空用のミサイルしか搭載されていないため空母に随伴しても対潜警戒が主な任務となる。

現在、23型フリゲートを更新するため26型フリゲート(8隻調達予定)の建造が始まっており、それを補完するため新たに31型フリゲート(5隻調達予定)の設計が進められているが、これも個艦防空用レベルの能力しか持っていないため、当分の間、駆逐艦レベルの戦力補充は計画されていないと言う意味で、まだ本格的な運用に入っていないため単艦運用されている空母「クイーン・エリザベス」や、就役したばかりの空母「プリンス・オブ・ウェールズ」が本格的な運用に投入すれば、当然、艦隊を編成することになり45型駆逐艦はギリギリの運用を余儀なくされる。

もし、その段階でも45型駆逐艦の稼働率問題が改善していなければ、最悪、個艦防空用レベルのフリゲートで守られた空母打撃群が出港することになるかもしれない。

本来なら、フリゲート艦を削減してでも駆逐艦を増やすべきだが、世界各地に点在する海外領土や、今回のホルムズ海峡派遣のような任務のためには、これ以上、水上艦の総数を減らすわけには行かないので、比較的割安なフリゲート艦で数を増やすしか無いのだ。

心配なのは、今回ホルムズ海峡に派遣された45型駆逐艦「ディフェンダー」はディーゼル発電機の追加工事を行っていないので、いつ停電に襲われてもおかしくなく、不名誉なニュースが飛び込んでこないことを祈っている。

 

アイキャッチ画像の出典:Brian Burnell / CC BY-SA 3.0

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 1月 06日

    ホルムズ海峡だと対潜より対空能力の方が重視されそうだから対空能力の高い艦が何時トラブルを起こすか分からないのは嫌だろうな。

    • 匿名
    • 2020年 1月 06日

    空母機動部隊なら、十分な数のF-35Bを搭載運用していればCAPで対空は補えるので、どちらかというと対潜が重要かと
    45型は殆ど対空オンリーの仕様で、対潜は哨戒ヘリ1機に依存する設計ですから(短魚雷すら無し)。海自艦艇を見慣れていると、極端すぎる性能に思える

      • 全てF-35B
      • 2020年 1月 07日

      F-35Bを24時間上げ続ける事もできまい。
      どうするつもりなんだろう。

    • 匿名
    • 2020年 1月 06日

    》45型駆逐艦の設計は完全作だった可能性が高い。
    皮肉かな?
    不名誉で止まればいいけど、最悪スタークやらシェフィールドの二の舞とか考えたくも無い
    これもケチったはいいけど、余計高くつくってなりそうだね
    あと、ガスタービンをメイン動力にした統合電気推進艦の騒音が酷いって、目的の半分が達成されてなくね?
    減速用のギヤが無くなって騒音減らせるってのも売りのはずなのに、何がどうなっているのかw

    • 匿名
    • 2020年 1月 06日

    >45型駆逐艦の設計は完全作だった可能性が高い。

    ???
    失敗作の誤字?

    • しゅしゅ
    • 2020年 1月 06日

    イージスシステム積んだアルバロ・デ・バサン級が700億円くらいだった事を考えると高いな…

    まだ統合電気推進はリスクが高いのでしょうか?ズムウォルトもお高くなりましたし。

      • 匿名
      • 2020年 1月 06日

      最近の欧州軍艦の例に漏れず「船体を複数のブロックに分割して複数の造船所で建造し接合」という雇用維持策をとっているので、余計に予算がかかっているのかと

        • 匿名
        • 2020年 1月 07日

        なにこのバカな建造方法w

      • しゅしゅ
      • 2020年 1月 06日

      気になったんで調べてみたけど10億ドルではなく10億ポンドじゃない?

      https://www.cnn.co.jp/world/35077114-2.html

      CNNソースなら信頼できるかと

      10億ポンドなら今は1ポンド140円位だとして1400億円ともっと悲惨な事に…

      • しゅしゅ
      • 2020年 1月 06日

      ソースが見つから無いので信頼性に欠けるけど、イギリス本土近くでも停電が発生してるみたいですね。

      ロールスロイスやBAEあたりが温度が原因と言ってるけどどうなんだろう?

        • しゅしゅ
        • 2020年 1月 07日

        頑張って探したけどソースが見つからないのでこれは忘れて下さい。

        • 匿名
        • 2020年 1月 07日

        >温度が原因

        それって海の上にいる限り直らないってことじゃ?

    • 匿名
    • 2020年 1月 07日

    「本艦に接近する未確認飛行物体アリ!」つって対空レーダーに灯入れたらブラックアウトとか洒落にならんな…

    • 匿名
    • 2020年 1月 07日

    「45型駆逐艦の設計は完全作だった可能性が高い。」は、どう読んだら良いのか分かりません。
    修正をお願いします。

    • 匿名
    • 2020年 1月 07日

    イギリス見てると、日本が軍事費増やさずに核兵器装備体系や空母を導入すると、どういう悲惨な事態になるのかがわかるなあ。

      • 匿名
      • 2020年 1月 07日

      全くです。

      核兵器の維持に予算を取られていなければ、もう少しマトモな陣容になってるでしょうね。

      それにしても海軍でこれだと、陸軍はどれだけ悲惨なことになているやら。

    • 匿名
    • 2020年 4月 23日

    45型駆逐艦 「北極海なら、、、北極海なら!」

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