英海軍は再利用可能な無人機の艦艇運用に関心があり、強力な短距離離着陸能力を備えたMojaveをクイーン・エリザベス級空母でテストし、スキージャンプ勾配や特別な着艦支援整備を使用せず運用可能だと実証された。
参考:GA-ASI Redefines Maritime Operations with Mojave
MALE-UAVは有人機を置き換えるのではなく補完する存在、対地攻撃機ではなく多目的プラットホーム
米GA-ASIはMQ-1C Gray Eagleの航続距離を拡張したExtended Rangeを開発、このMQ-1C GE-ERはエンジン出力を強化(160馬力→180馬力)することで最大離陸重量を3,600ポンドから4,200ポンドに引き上げ、燃料搭載量も600ポンドから900ポンドに増加、450ポンドの追加燃料を外部携行することも出来るため48時間もの連続飛行が可能になった。
さらにMQ-1C GE-ERを再設計してインフラが整っていない前線運用に対応させた「Mojave」を2021年に発表、この機体は強力な短距離離着陸能力を活かして非鋪装の空き地で運用できるのが特徴なのだが、英海軍は再利用可能な無人機の艦艇運用に関心があり、GA-ASIと契約してクイーン・エリザベス級空母でMojaveの運用テストを実施。
Mojaveはスキージャンプ勾配を使用することなく発艦、特別な着艦支援整備なしでクイーン・エリザベス級空母に着艦することに成功し、強力な短距離離着陸能力が空母でも有効であると実証して見せた格好だ。
英海軍がMojaveを採用するかどうかは不明だが、ファンボロー航空ショーに参加したイスラエル航空宇宙産業は「英国で幾つかのビジネスチャンスを模索している。この中には空母での運用に対応した無人航空機が含まれており、HeronやTactical Heronを空母運用に対応させる作業を進めている」と明かし、GA-ASIも2022年5月に強襲揚陸艦で運用可能なMQ-9Bの短距離離着陸バージョン=MQ-9B STOLを発表している。
もし英海軍が採用するならProtector RG Mk1(英国向けのMQ-9Bカスタムバージョン)と共通性が高いMQ-9B STOLと言いたい所だが、こちらは実機が存在しないため能力が実証されておらず、イスラエル航空宇宙産業にもチャンスが残されているはずだ。
空母や強襲揚陸艦からの運用に対応したTB3の開発も順調に進んでおり、EUから離脱した英国は安全保障分野におけるトルコとの協力を深化させているため、クイーン・エリザベス級空母でのTB3運用に関心を寄せていても不思議ではない。
Mojave、MQ-9B STOL、TB3は中高度を長時間飛行できる無人機(MALE-UAV)に分類され、ウクライナ侵攻初期にはTB2がインパクトある戦果を残したため注目を集めたものの、前線が固定化されて地対空ミサイルが行き渡ると前線上空からスペースが奪われてしまい対地攻撃任務から外れてしまったが、ロシア人ミルブロガーが運営するRYBARは「ウクライナ軍がボズネセンスクとウマニの飛行場からTB2を毎日飛ばしている」「TB2はオチャコフやユジネの上空から我々を監視している」と報告している。
TB2は戦術通信を中継することも可能なので、SEA BABYやMAGURA V5を使用した黒海やクリミアでの作戦に参加している可能性があり、海外市場におけるMALE-UAVの関心も低下しているようには見えず、目立った戦果を挙げられなくなったTB2=MALE-UAVは「役に立たない」と考えるのは大間違いだ。
米国、中国、トルコはMALE-UAVにソノブイ・ディスペンサーポッドを搭載して対潜戦への活用を予定、徘徊型弾薬を戦場上空まで運搬するプラットホームとしても有望で、トルコは接近拒否の領域外から攻撃を可能にする小型巡航ミサイルの開発やTB2への統合、多連装ロケットシステムで使用する誘導ロケット弾のAkinci統合を進めており、MALE-UAVの対地攻撃能力は新たな変化を見せてくるかもしれない。
兎に角、MALE-UAVは有人機を置き換えるのではなく補完する存在で、カバーできる任務も拡張を続けているため「多目的プラットホーム」と捉えた方が良く、これを対地攻撃能力だけで評価してしまうのは本当に危険だ。
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※アイキャッチ画像の出典:General Atomics Aeronautical Systems
第二次世界大戦のソードフィッシュみたいに鈍間なことを利用して対潜哨戒任務に使えるかも。
ヘリコプターより滞空時間が長く、一般的な哨戒機のように陸地で離着陸する必要もないからオンデマンド性でも優れる。
(まあ素早く駆け付け、低速で飛行可能で、空母に離着陸できる機体と言えばオスプレイがピッタリなのだが、何故か対潜哨戒型が作られていない)
駆逐艦などに乗せる必要があるLAMPSの代替としては
そもそも格納庫の大きさ足りない、RAST対応しなきゃいけない、ヘリ甲板の構造変更・耐熱化、側面スライドドア必須
空母搭載の対潜型は活動範囲がLAMPSによる哨戒網の内側なのでそんなに速度も航続距離もいらない
ディッピングソナー使うには前進からホバリングまで迅速な転換
が必要なんでそりゃオスプレイでは……
ヘリコプターは対戦車型も対潜型も作れるのにティルトローター機は現在輸送任務にしか使われていない。あの巨大なローターのせいで武装の取り付け位置も限られるし、ホバリングモードの機動性はヘリコプターに劣るため待ち伏せ攻撃にも使いにくい。固定翼モードは攻撃任務に使えるかというと、(速度や運用コストの観点から)ジェット式VTOL機やCOIN機の方がずっと使いやすい。
輸送に特化するのなら民間利用も出来るはずだが、これも運用コストが高過ぎて絶望的(AW609は初飛行から20年経過したが型式承認されず)。アメリカ軍はUH60の後継機にティルトローター機を選定したが、UH60ほど多用途に対応できると思えない。
エンジン排熱の問題が解消されればオスプレイをそういう用途に用いるのもアリだったんでしょうけども。耐熱コーティングしたり、移動式の耐熱板を敷かないと甲板が変色したり歪んだりする機体を艦船上で積極活用はしたくないのではないでしょうか。
現代の哨戒機の対潜能力に求められるのは迅速に広範囲にソノブイをばら撒いて
そこから得られる膨大な水面下の音響データを大量かつ高速に処理出来る能力です
対水上監視であれば高性能なAESAレーダーやFLIR、ESM能力が必要です(MAD必須かは賛否両論)
それプラス無人機との連携も今後は必須でしょう。
オスプレイの機体規模ではどの面でも必要機材を詰め込むには中途半端で、帯に短し
たすきに長しでコスパが悪いです。
センサーや情報処理装置へ電力供給もエンジンパワーを発電に割く余裕は余り無いと
思いますが。
なんとなくシュトルヒみたいに見えた
航空機の価格が上がれば、パイロットの訓練コストが高くなり、それに連れて喪失コストも高くなりますから。
無人機で置き替えられるところは、どんどん置き替えていく流れは止まらないのでしょうね。
艦隊の上空を常時飛んでもらって、色々として欲しいことはありますよね。
E2Dのレーダー部分だけを積んで早期警戒任務についてもらったり、
洋上監視レーダーを積んで、水平線に隠れる部分の監視をしてもらったり。
対潜機の代替をしてもらったり。最近ですと、無人自爆ボートの捜索もですね。
樹脂製の船体が増えて、レーダーに映らないなどと言っていますから、
それならば、例えば、航跡を視るレーダーを開発装備してもらわないとですね。
運用する機体はやっぱりMQ-9B級の大きさでしょうか。
ならば、全通甲板型の艦が必要かもですね。
「TB2は戦術通信を中継することも可能なので…」もう陸自の無人機はTB2一択だろ
イスラエル製のやつは某界隈に嗅ぎつけられて大変なことになってるし
これから自衛隊が導入する自爆ボートのためにもTB2を導入したほうが圧倒的にお得だな
>これから自衛隊が導入する自爆ボート
これってなんか現実的な情報ありますか?
検討していないとあまりにもアホすぎますが、実際買えるかどうかはハードルが高そうで。
自爆ボート型を導入するかはわからないど、水上無人艇の情報なら航空万能論の日本関係に載ってる
どうにも、海外から輸入するようで
海自にも無人海上監視機が欲しい所
わいイギリス人だが、イギリスの空母って本当に問題。何度か故障するところはおいておいて、
根本的な原因は予算削減によりCATOBARからSVTOLへの変更だが、そのつながりでF35Bしか使えなくなってしまい、
米国側でも言われているが、F35だけ飛ばす空母はありえないのだと。F-18のようなコスパの良い飛行機(空母用Gripenは俺の一押し)を飛ばさないとますますお金がかかってしまい、すでに圧迫中の防衛費がこの空母でさらに圧迫。
その結果イギリス海軍はSTOBAR、後にCATOBARに移行するプロジェクトを立ち上げていて(”Project Ark Royal”)、直そうとしているが、予算がまたや課題となるところだろうね。
その裏、こういう無人機が低コストで短期間で上の課題解決に使えるのでは、と思っているわけね。。
なお、日本にも言えることだが、F35Bはいろいろ課題があって、特にアメリカの束縛があって、アメリカ側が引き渡し後でも厳しくセキュリティ要求することもあって、アメリカ製を買うのって課題だらけ。
コメントを読ませていただいて。
ハリアー2/AV-8Bの後継を作ることはあるでしょうか。
ペガサスエンジンの出力を大きくする形で。
F-35Bと組み合わせて使う形で。
CTOL空母は艦載機の性能条件は緩和されるものの、船の方が大規模・複雑・高価になってしまうのが難点。
現在実用化されているVTOL戦闘機はハリアーとF35Bだけで、新規製造だとF35Bしか選択肢が存在しない。これだと競争原理は働かないし、F35Bに深刻な欠陥が見つかった場合にVTOL空母が全部使い物にならなくなるリスクもある。
アメリカ以外の戦闘機開発計画としてイギリスが率いるGCAPとフランスが率いるFCASがあるが、両者共に双発のCTOL機を想定しておりF35Bの代わりになる有人戦闘機は当分開発されそうにない。GCAP計画ではかなり大出力のエンジンが想定されているので、このエンジンの単発でVTOL戦闘機を作れれば良いのですが(そんな余裕は無いだろうけど)。
コメントありがとうございます!
イギリスはHarrierを2010年に破棄してしまってるためもう無理かと。新たに製造となると、単独での製造となれば費用が懸念となるため、USMCとか、日本みたいなVTOl空母保有国が次世代Harrierに参加すればなんとかなるかもだが、デザインは古いので。。
発送はすきだか。。
あとGCAPが空母用作らないと言ってるらしく。。
日本のいずも型もF35搭載の軽空母化じゃ無くこういう無人機搭載型の無人機空母にしてしまえば良いのに。
・・・という願望を抱いている俺。
仮にやるとしても現実的にどう使えるのかわからないけど。
いずも型である必要もない(次級強襲揚陸艦)し、F-35Bが離陸出来るならSTOL型のMALE-UAVは離着艦は問題なさげ。
いずも・かがは容積の少なさが問題視されますが、試験艦と割り切りいろいろ運用実績を積んでみるのは悪くないのでは。
ひゅうが 「ワイは?」
いせ 「・・・」
無人機有人機に関係なく、手段を多様化させるプラットフォームであることが空母の1番の魅力だからね。
空母を使うので話が混乱してくる、空母は必要ない。
無人飛行機にはそれに対応した離着陸システムを対応させればいい。
空母は金食い虫、アメリカは特別な国。
中国の空母を見て、ああ狂っているね。
アメリカに対する劣等感がそうさせるのだろう。
戦前の日本海軍とと同じ発想だ。
英国は二つ作ってしまったが、一つが予備だとか言って、噂ではオーストラリアかどっかに売却するかも、と言っているね。国内の反発は激しいんで、簡単に判断できないが、売却したお金と運営費の節約、乗組員を開放することで、その他戦艦増やせるとか言ってるが、、政治家は信用ならんので結局減らすだけというのが予想できる。
成る程。空母に無人機を載せた中国は、アメリカに劣等感抱えた大日本帝國のような愚かな国だと。
戦闘機でいうところのマルチロール機ということなんだろうけど、まだまだ分化してカテゴライズするのが難しくなりそうな。