軍事的雑学

ロシアが仕掛けた罠? ステルス戦闘機「F-22」や「F-35」に共通する弱点

米国は現在、2つステルス戦闘機「F-22 ラプラー」と「F-35 ライトニングⅡ」で戦術航空戦力を構築しようとしているが、この2つのステルス戦闘機には共通した弱点がある。

参考:Big Problem: America’s F-35s and F-22s Are Reliant On 1 Thing

ロシアに空中給油機を狙われれば、F-22やF-35は実力が発揮できない?

第5世代戦闘機に分類されるF-22やF-35はステルス性能を高めるため、ミサイル等の兵器は機体に設けられたウェポンベイに収容し、増槽なしでも十分な航続距離を確保するため大きな機体内燃料タンクをもっているが、増槽を携行する第4世代戦闘機(F-15やF-16など)に比べると、やはり航続距離が短いのが現実だ。

出典:Ken Fielding / CC BY-SA 3.0 空中給油機「KC-46」

そのため米軍は空中給油機を使用し、F-22やF-35の航続距離を補う=延長することで、この問題をクリアしてきた。

米軍のステルス戦闘機は開戦初期、ステルス性能を活かし、接近拒否(高度な防空システムで守られているという意味)された空域に侵入するため、増槽が携行できないステルス戦闘機は空中給油機からの支援がなければ非常に作戦効率が悪くなる。

ロシアは、米軍のステルス戦闘機が空中給油機に依存していることに目をつけ、長距離空対空ミサイルR-37Mや、地上に配備された防空システムで運用する「40N6ミサイル」で、機動性の低い航空機=旅客機を改造した米軍の空中給油機を数百キロ離れた場所から撃ち落とすことを狙っている。

出典:Vitaly V. Kuzmin / CC BY-SA 4.0 ロシアの空対空ミサイルR-37

特に極超音速(最高速度マッハ6.0)で飛翔する長距離空対空ミサイルR-37Mは、使い捨てのロケットブースターと連結すれば、最大400km前後の射程距離を持っていると見られ、このミサイルを戦闘機に搭載し運用すれば、その脅威の範囲は1,000kmを超える。

40N6ミサイルは、ロシアの防空システム「S-300V4」や「S-400」、来年に実戦配備に就く最新型「S-500」に接続して運用するよう設計されており、射程距離は400km以上、マッハ12以上(マッハ14という説もある)で飛翔し、水平線下の目標を迎撃するための自律的センサーやデーターリンクを備えている。

要するに米国の空中給油機は、このような兵器が配備されている空域近くから後退する必要があり、これはF-22とF-35の脅威を後方へ押し下げる事と同義で、対処の難しいステルス戦闘機と直接交戦しなくても、ステルス戦闘機の脅威を軽減できると言う意味だ。

このような状況を米空軍が黙って見過ごすはずもなく、すでに空軍研究所やロッキード・マーティンがステルス空中給油機「KC-Z」のコンセプトモデルを公表している。

但し、これまでの空中給油機は開発費用を節約するため、専用設計ではなく民間の大型旅客機を改造し調達してきたため、大型のステルス空中給油機を一から開発した場合、調達価格が高騰するのは目に見えている。

そこで、もっと手頃な価格でステルス空中給油機を調達するには、ステルス戦闘機やステルス爆撃機に使用されているレーダー波吸収材料を、既存の空中給油機の構造に採用すれば専用設計の機体開発を回避することができる。

しかし、この方法もステルス機が性能維持のため要求する高額な保守コストを考慮すると、とても実現性が高いとは言えない。

最も現実的(コストの安い)な方法として米空軍司令部が検討中なのは、最低限の自衛として「レーザー砲」と「電子妨害装置」で敵ミサイルに対抗できる空中給油機を後方に配備し、海軍が開発中の無人ステルス空中給油機「MQ-25A」のような無人機が母船(大型の空中給油機)から燃料を受け取り、前線のステルス戦闘機まで燃料を届ける「分散燃料補給体制」だ。

出典:public domain 米海軍が開発中の無人ステルス空中給油機「MQ-25A」

確かに価格の安い小型無人ステルス空中給油機を大量に運用すれば、何機か撃墜されたところで大きな問題にならずロシアの意図を挫くのに十分だと思われるが、果たして、ここまで複雑な空中給油システムが機能するのか?戦闘機に空中給油するために掛かる膨大なコストが負担できるのか?非常に疑わしくなってくる。

結局、もっとこの問題をシンプルに片付けるには、ステルス戦闘機のように航続距離が短くない大型のステルス機、現在開発中の「B-21レイダー」や、長距離飛行が可能な無人ステルス機による攻撃に切り替えていくほうが、よりシンプルで目的達成のためのコストを抑制できると言え、空中給油機に頼った航空作戦を維持しようとすればするほど、ロシアの仕掛けた罠に嵌るだけではないだろうか?

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air National Guard photo by Senior Airman John Linzmeier

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 11月 13日

    F-35の作戦行動半径は1000~1300kmらしいとのことですが、エンジンのF135の改良が進んでいるそうなので、迎撃ミサイルの射程1000km辺りであれば問題はなさそうです。

    • 匿名
    • 2019年 11月 13日

    もう、ミサイルをステルス化すれば良い気もしますが
    手数を増やして相手側の工数をより増やすのも冷戦の鉄則ですから

    • 匿名
    • 2019年 11月 13日

    理論上はそれでいいんだろうが実際問題うまく行くものなのかな?

      • 名無し
      • 2019年 11月 14日

      ステルス機用追加タンクが開発されてる
      イスラエルのメーカーが開発した
      無問題!

    • 全てF-35B
    • 2019年 11月 13日

    デカイミサイルを遠距離から撃っても、容易に迎撃されるのでは?
    逆に空中給油機から、これ等のミサイルを発射して、F-35の露払いさせるのも良いかも。

    • 匿名
    • 2019年 11月 13日

    給油機の居場所を特定する必要もあるでしょ。
    逆に言えば給油機が居る場所からF-22とかの来る推測が出来る訳で、米軍がその程度の対策を考えていない訳がないと思う。

    • 匿名
    • 2019年 11月 13日

    逆にアメリカ側が同じ戦術を取った場合ロシアはどう対応するのか気になりますね。
    ステルスも給油機もAWACSも米国に比べ圧倒的に少ないロシアに対しての方がアクセス拒否戦術は効果的に思えます。

    • 匿名
    • 2019年 11月 13日

    単純に装着状態でも切り離し後でもステルス機能を損なわない増槽またはCFTまたは両方を開発すれば良いだけのように思えますが。
    給油機に自衛手段を持たせたいのなら、極短時間滞空可能な放出型電子妨害装置でもいいですね

    • 匿名
    • 2019年 11月 13日

    迎撃ミサイルをミサイルで迎撃しちゃうとか。
    落とせなくても、損傷与えるだけでも良いと思うのですが。
    ペレグリンのような小型ミサイルで、手数増をやせたらなお良いかも。

    • 匿名
    • 2019年 11月 13日

    ど素人が得られる情報より遥かにまともな戦略を進めてるよ。日本の尺度で海外の情報集めて記事なんて作るもんじゃない。

    • 匿名
    • 2019年 11月 13日

    1,000キロ先をまともに探知できるのか
    電子戦機はどうするのか
    そろそろレーザー実用化とか
    ミサイルだけでは厳しいのではないかなあ

    • 匿名
    • 2019年 11月 14日

    F22、F35共にステルス性を必要としない場合、F22でも600ガロンドロップタンクを機外に装備。F35も8tも機外に装備可能。
    空中給油機が前線近くまで出て来て、敵の認識範囲内でのんびり給油なんてしないと思いますが。

    まあロシア軍の攻撃範囲が広くなったのは脅威ですが、索敵能力の差でアメリカ軍側が先にレーダーを感知して退避させるし、レーダー照射したロシア軍軍の方が危険では?

    • 匿名
    • 2019年 11月 14日

    まぁ、上の方々が言ってる通り遥か彼方の給油機をロシアは探知できるのか、探知したとして即応的に大型AAMを搭載した迎撃機を上げられるのか、そしてそれは1000Km先の移動目標に命中するのか等々疑問は尽きませんなぁ。
    そもそもこの状況設定は侵攻してくる米軍に対する接近拒否を想定してる訳で、その場合米軍は事前に巡航ミサイル等で滑走路やレーダーサイトを攻撃するだろうから探知出来ず迎撃機も上がれない可能性の方が高い。
    理屈の上では成り立つのだろうが現実的に上手くいくとは思えない。

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