カナダ海軍は今月9日、AN/SPY-7を搭載する次期フリゲートの詳細情報を発表して注目を集めている。
参考:Canada’s New Frigate Will Be Brimming With Missiles
参考:Royal Canadian Navy Unveils New Details On CSC Frigates
米海軍以外の水上艦艇として初めてトマホークを搭載するカナダ海軍の次期フリゲート
カナダ海軍は2017年、イロクォイ級ミサイル駆逐艦4隻(退役済)とハリファックス級フリゲート12隻の後継艦調達プログラムを開始、複数提案された中から英海軍のフリゲート26型をベースに設計されたBAEシステムズとロッキード・マーティンの採用して約600億カナダドル(約4.7兆円)の契約を与えた。

出典:ロッキード・マーティン カナダ海軍の次期フリゲート
カナダ海軍が今月9日に発表した詳細情報によれば次期フリゲートの基本仕様は全長151.4m、全幅20.75m、排水量7,800トン、航続距離7,000海里、速度27ノット、127mm砲×1門、30mm機関銃システム(MGS)×2門、垂直発射システムMk.41×36セル、SeaCeptor専用垂直発射システム×6セル、対艦ミサイルNSM発射基×8基、対潜水艦用短魚雷Mk.54発射管、CH-148×1機という内容だが、より詳しく見ていくとカナダ海軍の次期フリゲートが非常に重武装であることが良く分かる。
まず次期フリゲートの対艦ミサイルにノルウェーのコングスベルグが開発した対艦ミサイル「NSM(Naval Strike Missile)」を採用している点だ。

出典:public domain Naval Strike Missile
この対艦ミサイルは米海軍も沿海域戦闘艦やコンステレーション級フリゲートに採用予定で対艦攻撃だけでなく対地攻撃にも使用でき、日本の調達を予定しているF-35A搭載用の巡航ミサイル「JSM(Joint Strike Missile)」のベースとなったミサイルとしても有名で、開発国のノルウェー以外にも米国、ポーランド、ドイツ、マレーシアが採用している。
さらに西側標準の垂直発射システムMk.41は「Strike-Lengthタイプ」を搭載しており、水上艦艇発射型の巡航ミサイル「トマホーク」を米海軍以外で初めて搭載する予定(潜水艦発射型は英海軍が使用しており26型フリゲートにもトマホークを採用予定)なので、カナダ海軍の次期フリゲートは遠距離からの対地攻撃能力を非常に重視した設計と言えるだろう。
あと気になるのは艦対空ミサイルとして艦隊防空用のSM-2以外に個艦防空用のESSMとSeaCeptorを採用している点だ。

出典:public domain ESSMを発射するスペイン海軍のフリゲート
一応、カナダ海軍はESSMを個艦防空用としてSeaCeptorを近接防空として採用したと説明しているが、カナダ以外のSeaCeptor採用国は個艦防空用の艦対空ミサイルして運用しているため「SeaCeptorを近接防空として採用した」という話には無理がある。
個艦防空用の艦対空ミサイルとして見た場合、ESSM(最大射程50km+)の方がSeaCeptor(最大射程25km+)よりも射程が長いのだが、誘導方式(ESSM:SARH/SeaCeptor:アクティブRF)が異なるために同時対処能力の観点から言えばSeaCeptorの方が優れているため甲乙つけ難い。
ただ低率初度生産が始まった最新型のESSM BlockⅡは誘導方式をSARHからアクティブRF方式に変更しているため同時対処能力でSeaCeptorに劣ることはなく、BAEシステムズが開発したMk.41のVLSを拡張する「Mk.25クアッドパックキャニスター」を使用すれば1セルの4発のESSM BlockⅡを搭載することが可能で、Mk.41を装備する艦艇のESSM携行弾数を飛躍的に向上させることができる。
補足:因みにカナダはESSM開発を主導するコンソーシアムに参加(米国、カナダ、オーストラリア、ベルギー、デンマーク、ドイツ、オランダ、ノルウェー、ポルトガル、スペイン、トルコ)している。
逆にSeaCeptorを無理やり近接防空として評価した場合、競合してくるのが米国製のRAMだ。

出典:public domain RIM-116 RAM
RAM(誘導方式:PRH+IIR)の最大射程は8km程度なのでSeaCeptorに比べて短いが、SeaCeptorと同じ様に外部からの誘導指示を必要ないため同時対処能力が高く、RAMはSeaCeptorよりも小型なので大量に装填(ランチャー1基で21発)するのに有利で、SeaCeptorに劣る射程に関しては同時対処能力が向上したESSM BlockⅡで補えば十分だろう。
なぜカナダがESSMとSeaCeptorの両方を採用したのか謎だが、もしかするとカナダなりの深い事情があるのかもしれない。
あとカナダ海軍の次期フリゲートには日本が新型イージス艦に搭載することを検討しているロッキード・マーティン製のAN/SPY-7を採用することが決定しており、今月11日にカナダ海軍がロッキード・マーティンとAN/SPY-7供給に関する契約を締結したと発表した。
因みにカナダ海軍の次期フリゲートに採用される戦闘管理システムは、ロッキード・マーティンが開発を担当している「イージス・システム」から派生した「CMS 330 with AEGIS」らしい。
※アイキャッチ画像の出典:カナダ海軍
CAMM採用のカナダなりの理由…
カナダも女王陛下を戴く国だってことくらいですかね
カナダこそ韓国よりも原潜を運用すべき立ち位置にあるのに、アメリカの反対で立ち消えしたままなのが引っかかる
北極海に利害関係あるのは、韓国よりもカナダだろうに
32セルじゃなくて36セルなのけ?>VLS
mk41が4セット32セルで、それとは別にシーセプター専用の小型VLSが6セル搭載予定だから計38セルのはず。
8セル単位なので5組積んで、内1組を廃れたストライクダウンモジュール付にしても
・・・37セルか。
しかし、32セルでトマホークもスタンダードもESSMも運用するとか、FFG(X)といいセルの配分に悩みそうだな
7000t級で32セルということは、海自のDD群は船体規模に比して決して弱武装という訳ではないと証明された訳でもあるが
そういう意味じゃ、16セル(?)で07USMとA-SAMを運用するFFMも割と世界平均か?
カナダの仮想敵は、ロシアなのかな?
SPY7を運用予定の日本には朗報だね
スペインのF-110フリゲイトに続いてですしね。
日本ではSPY-6を採用せよとの声が強いですが、これらの国がなぜSPY-7を採用したのかを知りたいところです。
米ミサイル防衛局が、米軍向けと輸出用で2社の住み分けを図っているのでしょうか?
知りたいですね。
一説によると、SPY6は輸出出来ないと聞きました。
まあ、SPY-6は当分は輸出は許可されないでしょうね
海軍は昔から言ったもん勝ちの世界ですが7800トンのフリゲート艦とか感覚狂っちゃいますね…
我が国には27000トンのDD(駆逐艦)がいるんだが、という突っ込みのお誘いかな?w
日本のAN/SPY-7をカナダに譲ってあげたら丸く収まるんじゃない?
SPY-6派もそろそろだな…
ESSMは
1つ目の記事では(barrages of cruise missiles)弾幕的な巡行ミサイルって書かれてるので、NATO軍として参加する戦闘(カナダ本土の防衛では無く)での陸からの巡行ミサイル、UAVなどによる攻撃を想定かな?
Mk 41-VLSにセットできるから、SM-2とフレキシブルな構成で使う計画かな?
最近の西側のフリゲート・駆逐艦ってみなフランスのラファイエット級の末裔みたいに見える。
先進性と堅実性をバランスさせつつ洗練されたカタチにまとめ上げるフランスのセンスって結構すごいな。
飛ばし過ぎてズッコケたズムウォルト級とは対照的。
ステルスを意識したらどこも似たり寄ったりになって行くんでしょう
「あきづき」「あさひ」も横から見たらごちゃっとしてるけど、真正面から見たら結構ステルスしてるんですよね
ズムウォルトは…LCSと共に教訓になったのです、意識するは良いがやり過ぎは良くないと
どれも似たようなものになるってのは賛成ですね。
ただ、バランスさせたって言うより、艦としての能力が低いからこそできたデザインってことじゃないかな。元々が軽フリーゲートだからあの形にできた。兵装や機関の配置なんかはごく標準的なものだし、単にそれを囲いで覆ったと。
台湾海軍は結構手を入れての導入だし、囲い(先進シルエット)の分、本家のラファイエットって使いにくい(堅実性に劣る)んじゃない?
なので、本当に先進性を求めた艦はずいぶん違ったものになってるし、堅実性を求めた艦は囲いでラファイエットに似たシルエットになってるけど、後発の分使い勝手がよくなってると。
日本のSPY7を値引きしてカナダに転売したらお互い助かるが、そうもうまくいくまい
アメリカも日本がSPY7に日本企業が参加したから導入したのに
選定から外してアメリカはSPY6を採用するとはね
ここら辺は仕方ないのかアメリカの嫌がらせか分らんが
足並みをそろえてほしいな
日米ともにSPY6で揃えればミサイル防衛での運営がスムーズにいくのに
ここ管理人が前に記事にしていたけどSPY6は輸出準備が整うのが2024年~2025年頃になるらしいので、そこから購入要請→国務省による法的要件の審査→FMS方式による契約締結→レイセオンに発注→SPY6納品という流れを考えると実際にSPY-6を日本が入手出来るのは2030年頃になるらしい。
これは米国の嫌がらせじゃなくてSPY6は地上試験しか終わっていないから、これから実際に搭載して評価を行い実用化にむけた作業を考えると妥当なタイムスケジュールじゃないかな?
まぁ自主開発すれば日本の都合で動けるけど、弾道ミサイル防衛のコアシステムやレーダーを米国に依存してるので日本の都合までは考慮してくれないだろうね。
米海軍だってSPY6が実用化してない段階で日本に輸出して、あれもこれも直さないといけないといけないと言ったら日本が「不良品だ」と言い出すのが目に見ているから輸出準備が整うまで出さないんじゃないかな?
そうすると、防衛省では2023年度までにレーダーの設計・製造を完了し、2024年度以降のなるべく早期にイージスアショアを稼働させたいとしていたので(イージス・アショアの配備について―防衛省・自衛隊)、SPY-6は全然間に合わなかったということですね。
残念だがBMD性能はSPY-7のが高いのよ
米ミサイル防衛局が選ぶのは当然
むしろなんで米海軍が6選んだ
だからこそのAN/SPY-6
イージス艦にとってはBMD(弾道ミサイル防衛)はオマケ的なもの、って言うか、限定された場所でのみ必要な機能だし、弾道ミサイルが最も高い高度になった時(速度が遅い)のみに迎撃できるだけ。 中国(四川)~アメリカ大陸・西海岸なら、その中間点付近でだけ使えるのがBMD
これでスペインのF110に続いて2ヵ国目のSPY-7導入が確定ですね。
こうなると「米ミサイル防衛庁は防衛省に対し、日本政府の負担でハワイにLMSSRのテストサイトを建設するよう求めており、膨大な追加費用がかかる懸念がある」とさせていた事がどうなるのか気になります。
そういえば極超音速ミサイルにSPY6・7も対応できるのか?
出来たとしても対抗する兵器は?
それはいつになるのか?
まさか中露に日米が対抗する手立てが無い日が来るとは
>151m
フリゲート、フリゲートって何だ。(哲学)
SPY-7がカナダで採用とは聞いていたがこれの事か。
戦列艦の次にデカくて強いフネじゃね?(帆船時代並感)
巡洋艦が事実上ほぼ消滅(デロガ級は元駆逐艦の駆逐艦船体だし)して、駆逐艦が空母を除く最大最強艦艇になっているから、戦列艦相当と考えれば問題無いな
セル数少ないのにそんなミサイルの種類てんこ盛りで大丈夫なものなのか?
一隻3900億もかけるならもっとセル数増やしたほうがいいのではと思うが、セル数少なくするのが最近のトレンドなのかね。日本のイージス艦は90セルくらい積んでたのに。
ミサイル駆逐・フリゲート艦は艦隊防空の観点からセルを多くして対空ミサイルを積む必要があるけどそうでもないDDとかFFなら32セルが妥当かと。
Mk.25?キャニスター使えば個艦防空ミサイルのESSMを1セルで4発装填できますからね。
1隻3900憶円!!高くない?
日本では2隻建造のまや型でも1800憶円くらいだったと思うけど。
セル数も少ないし、ぼったくられてるのか?
それとも、自国に製造技術がないと、そんなもんなのかな?
それとも、SPY7が異様に高いのか?
プログラムコストだから建造費用の合計ではないよ。
日本の護衛艦建造費用は純粋な艦艇取得費用のみなので、開発費用や設計費用が別会計になっているのとライフルサイクルコストが含まれていないから海外の艦艇プログラムコストを単純比較すると安価にみえるだけ。
自衛隊は建造費用しか公開していないから正確な数字は分からないけど、護衛艦1隻の総費用は同じぐらいかもしれない。
間違えた16隻だから2900億だ
でもほぼイージス艦クラスなんだから積んどきゃいいのに