コロンビアは空軍の近代化=クフィルC10/C12の後継機選定に取り組んでおり、ペトロ大統領は3日「グリペン導入に関する意向書に署名した」「我々が取得するのは最新のグリペンだ」と発表し、SaabはF-16Vとラファールを抑えて優先交渉権を獲得した格好だ。
参考:Colombia picks Saab Gripen for next fighter jet
F-16Vとラファールを抑えて優先交渉権を獲得したのはSaabにとって快挙
コロンビアは緊張感が高まる隣国ベネズエラとの関係を懸念して空軍の近代化=クフィルC10/C12の後継機選定に取り組んでおり、Lockheed MartinはF-16Vを、Airbus(窓口はスペイン)はトランシェ1のリース(当初はトランシェ3を提案)を、Saabはブラジルでライセンス生産されているグリペンEを、Israel Aerospace IndustriesはクフィルC10/C12のエンジン換装(J-79→F-414)を含むアップグレードを提案し、この中でもっと費用が安価だったのはクフィルのアップグレードだったと報じられている。

出典:Public domain コロンビア空軍のクフィル
政府や空軍は対米関係を重視してF-16V導入(約14機)交渉を水面下で進めていたものの、国民が実質的な増税=税制改革に反対してカラスキジャ財務相が辞任、それでも怒りが収まらない国民はドゥケ大統領の辞任を要求し、後任のマヌエル財務相は「不要な出費」と批判を集めていたクフィル後継機調達計画への資金供給を「行わない」と表明したためF-16V導入計画は頓挫してしまうが、新しく大統領に就任したペトロ大統領は2022年12月「クフィル後継機調達計画を進める」と発表した。
ペトロ大統領は「現在検討されているオファーはF-16V、グリペンE、ラファールの3つ」「空軍が希望するF-16Vには米国による制限(詳しい内容は不明だが同機が使用するミサイル入手に関するものらしい)が懸念事項として浮上」「最も安価な選択肢であるグリペンEは他の候補よりも性能が劣るという点と支払い条件(猶予期間と支払い期間がタイト)が最も厳しい」「フランスが提案してきた融資条件=20年間の分割+支払い開始まで5年の猶予期間付きが最も有利」と説明。
El proceso de renovación de la flota de superioridad aérea es un asunto de soberanía nacional, lucha contra el crimen organizado e interdicción aérea. ¡Ojo, infórmate bien y no caigas en noticias falsas!👀
🧵 (1/11) pic.twitter.com/SMm2A9Zxbe
— Presidencia Colombia 🇨🇴 (@infopresidencia) December 22, 2022
そして「ラファールの飛行コストは老朽化の影響で運用・維持にコストがかかるクフィルよりも30%も少なく、フランス案は価格、効率、操作性の面で最も優れたオファーの1つだ」と述べたが、コロンビアは最終的にラファールではなくグリペンEを選択し交渉を進めていたものの、今度は現地メディアが「米国がF-16を導入させるためコロンビアへのF414再輸出を認めないだろう」と報じ、再びクフィル後継機調達計画は振り出しに戻るかに見えた。
Saabは「戦闘機の調達は事実と異なる噂に直面することがある」「我々はコロンビアにグリペンEを提案するのに必要なライセンスを全て取得済みだ」「そのための今回の噂にこれ以上付き合う必要ない」と述べて現地メディアの報道を否定、ペトロ大統領も3日「コロンビアとスウェーデンはグリペン導入に関する意向書に署名した」「我々が取得するのは最新技術が搭載され、ブラジルに配備されているものと同じグリペンだ」と発表したが、これはコロンビアとスウェーデンの間でグリペン導入に関する契約が成立したという意味ではない。
Después de la carta de intención firmada por el gobierno del Reino de Suecia, y de aprobar la defensa aérea estratégica del país como proyecto priorizado informo:
Los flota de aviones que se adquirirá, es completamente nueva, ultima tecnología, ya implementada en Brasil, y son…
— Gustavo Petro (@petrogustavo) April 2, 2025
スウェーデンのジョンソン国防相も「ペトロ大統領がグリペンを選択したと発表したことは本当に喜ばしい。我々はコロンビアにとって長年のパートナーであり、グリペンを選択したことは戦闘機分野でも戦略的な協力が可能になったことを意味する」と述べたものの「(契約に向けた)交渉はこれからだ」と付け加えている。
Breaking Defenseの取材に応じたSaabも「今回の発表は当社とスウェーデンにとって非常に前向きなことだ」「コロンビアとの交渉が完了することを楽しみにしている」と述べ、まだ契約締結に至っていないことを強調したものの、それでもF-16Vとラファールを抑えて優先交渉権を獲得したのはSaabにとって快挙だ。
Det är glädjande att president Petro meddelat att Colombia väljer Gripen som stridsflyg. Förhandlingar tar nu vid. Sverige är en långsiktig partner till Colombia och valet av Gripen innebär att en strategisk samverkan på stridsflygområdet blir möjlig.
Foto: Saab pic.twitter.com/GQUMEyQGFi
— Pål Jonson (@PlJonson) April 3, 2025
因みにペトロ大統領はグリペンE導入にはオフセット契約=太陽光パネル生産工場や水道建設、医療機関のインフラ整備など商業的な相殺義務が伴うと述べている。
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※アイキャッチ画像の出典:SAAB
グリペンが契約を勝ち取りましたか。
コロンビアは人口5000万程度、出生率が1.7程度ですから人口減少が進みそうな国です。
薬物戦争によるコロンビア内戦に、グリペンが使われる事があるのか注目したいと思います。
内戦が早く集結すれば、投入される事もないとは思いますが、物凄い長期間続いていますよね…
>これはコロンビアとスウェーデンの間でグリペン導入に関する契約が成立したという意味ではない。
ですよ。
あくまで「交渉権獲得」ですね。
売れない売れないと嘆いていたグリペンが、ここに来て一躍脚光を浴びているというのも皮肉なものですね
それだけアメリカ製兵器の市場シェア・影響力が大きかったという事なのですが、世界はどんどん変わっていっていますぬね
EJ200やアメリカ製部品外したりしないと大差ないんじゃないかな>グリペン
そう思われてたけど「そんな必要ない。必要なライセンスは確保済み」とSaabからコメントが出た、というのがこの記事の大きなトピックの一つです。
この状況だとアメリカが勝手に話をひっくり返しそう
訴訟大国アメリカだけに「取得済みのライセンス」をひっくり返しはしないでしょう。
「輸出関税」という大技はあるかもですがGEが反発しそう。
グリペン有利の理由は結局不明か
>コロンビアへのF414再輸出を認めないだろう
自前でエンジン作れないと、そういう事になるんでしょうね……
GCAPガンガレ、ロールス製XF9でマジガンガレ!
※個人的に、XF9のコアにロールスの発電技術が載る事を強く期待するものです。異論は認める。
あれ?グリペンEのエンジンは、F414-GE-39Eですよね。
おフランスだけには許さないって事なんでしょうか。グリペン程度なら大目に見るってこと?
>コロンビアへのF414再輸出を認めないだろう
に対する
>Saabは「戦闘機の調達は事実と異なる噂に直面することがある」「我々はコロンビアにグリペンEを提案するのに必要なライセンスを全て取得済みだ」
という記事ですね。
まあ正直驚きではありますが。
なおGCAPのエンジンはRR製ではなく日英伊によるエンジンJVの開発による製品になるとの報があったかと。
ソースはすぐには見つからなかったけどユーロジェット社と同じ形式ですから特に不自然な話ではないでしょう。
昔、なんかで読んだ記事でグリペンってタイフーンのエンジンも積めた気がします。最悪それでいくのかな?
「グリペンE導入にはオフセット契約=太陽光パネル生産工場や水道建設、医療機関のインフラ整備など商業的な相殺義務が伴うと述べている。」
アホな質問だったら申し訳ない。
つまりグリペンを導入したいならコロンビアのインフラ整備にスウェーデンの企業を参加させろ、ということでしょうか…?
意味合い的には、スウェーデン主導でコロンビアのインフラ整備を「しないといけない」ということなのでしょう。
それをやるのはコロンビア企業でないと、万全ではないですけど。
教えて下さりありがとうございます。
つまりアンタの国の戦闘機を買うから、パネル工場や水道建設等の支援よろしく、という契約だったのですね。
なんというか個人的には売り手が払うコストが多すぎるように感じてしまいます…。
そこまでして北欧の国が南米に戦闘機を売るメリットがみえてこない。
スウェーデン(Serb)もメリットがあると判断したから契約したのでしょうけど。
1番現実的な選択をした感じはする。ラファールはサポート体制に期待は持てても南米での運用実績に乏しいし双発で性能が高くてもコストが高く付く。F-16は性能や価格トータルのバランスは素晴らしいがアメリカの影響を受けすぎる。
グリペンは隣国ブラジルでの運用実績やそこまで整った環境で無くとも運用出来そうな感じを受ける。取得コストも運用コストも低い。少ないと言われる航続距離に関しても戦闘行動半径で1300km、仮に1000kmであったとしても国の中心から飛行するなら全然カバー出来る。
武装に関してもイスラエル製や南ア製等、SAABの対応次第だが望むならば幅広い選択肢がある。イスラエル製のクフィルを運用しているならイスラエルとの繋がりはあるのだからいざと言う時に輸入も可能だと思う。隣国ベネズエラ空軍の米国からのF-16部品の供給規制のリスクや今後導入するかも知れないSu-35相手なら性能が低いと言われるグリペンでも対応は出来そうだし、このまますんなり決まる気はする。
戦闘機ビジネスっていつもここからが本番というか、長くかかることが多い印象があるけどなぁ
”「戦闘機の調達は事実と異なる噂に直面することがある」
「我々はコロンビアにグリペンEを提案するのに必要なライセンスを全て取得済みだ」”
これが正しく、グリペンの輸出に支障が起こらないと良いですね。
なにしろ、相手はトランプ政権!?でしょうから。
最悪、エンジンの換装ができるように計画をしておくべきでは?。
BAEはその辺りの調整をするべきでは?。
EJ200は停滞?しているように見えますが、EJ230/260の製作に進むべきでは?。
あまり言われませんが、トルネード戦闘機のエンジンだって換装が必要では?。
などと思います。
何でBAEにそんな「べき」が課せられるのやら。RRがそこを「狙うべき」なら分かるけど。
動く「べき」だとしたらSaabでしょうが当のSaabはキッパリはっきり要らんと明言してる訳で。
まだ二転三転しそう