ロシア関連

緊迫するウクライナ情勢、ロシア軍8.3万人とNATO軍4万人が睨み合い

ウクライナ東部(ドネツクとルハーンシクにまたがるドンバス地方)を巡る武力紛争は欧米の介入によって停戦していたのだが、ロシア国防省は演習目的でウクライナとの国境沿いに軍を移動させると先月始めに発表したことで再び緊迫の度合いが高まっている。

参考:Moscow Takes Measures in Response to ‘Threatening’ NATO Actions
参考:NATO concentrating over 40,000 troops near Russian border

ロシアとNATOが兵力を集結させつつあるウクライナ東部ドンバス地方を巡る駆け引き

ウクライナ大統領府の発表によればロシアは国境沿いに計8万3,000人(東部国境近くに約4万1,000人/クリミア方面に約4万2,000人)の兵士を集結させており、いまだにロシア軍部隊の移動は終了していない=つまり国境沿いに集結するロシア軍兵力は増加するという意味でNATOに緊急支援を要請したがロシアはNATOに「ウクライナの支援要請に応じて軍隊を派遣するな」と警告していた。

しかしNATOはロシアの恫喝に屈することなくバルト海や黒海に艦艇を派遣中でロシアのショイグ国防相は13日「NATOがバルト海や黒海を含むロシア国境沿いに計4万人の兵力と装備を集中させており、昨年と比較して航空偵察の回数は2倍、艦艇による偵察は50倍に増加している。ロシアはウクライナと戦争を行う意図はないがドンバス地方に住む親ロシア勢力の運命には無関心ではいられない」と主張して軍に対抗措置を命じたらしい。

ロシアがどの様な対抗措置に出るのかは不明だが、興味深いはジェーンズのアナリストはロシア軍がウクライナ方面に短距離弾道ミサイル「イスカンデル」のランチャーを移動させたと報告している点だ。

出典:Vitaly V. Kuzmin / CC BY-SA 4.0 短距離弾道ミサイル「イスカンデル」

ロシア軍がウクライナ方面に移動させたイスカンデルはM型ではなく巡航ミサイル「R-500」を運用する最新のK型で表向き射程は500kmと公表されているが、これは中距離核戦力全廃条約(現在は失効)の関係で射程を控えめに公表しているだけと米国防総省は疑っており実際の射程は2,000kmを超えると指摘している。

要するにロシア軍はイスカンデルKをウクライナ方面に移動させることでキエフをR-500の射程圏に収め軍事的な圧力を強めているのだろう。

これに対して米国は前政権の決定を覆してドイツに新たな陸軍の部隊を派遣すると発表、この部隊は500人と小規模だが非常に先進的な構成でロケット砲や野砲による長距離攻撃やAIを用いたサイバー戦や電子戦を実行する複合的な構成で同部隊の能力は陸軍上層部からはゲームチェンジャーだと評価が高い。

出典:DVIDSHUB / CC BY 2.0 米陸軍の高機動ロケット砲システムHIMARS

一先ずドイツに派遣される部隊がウクライナ方面に移動するとは発表されていないが、ロシア軍の動きによっては配属先のドイツから移動する可能性を秘めているのでNATOとロシアの緊迫の度合を図るバロメーター的存在といえるだろう。

果たしてウクライナ東部ドンバス地方を巡る睨み合いは武力衝突に発展するのか、それとも外交によって緊張状態が緩和する方向に向かうのか注目される。

関連記事:米軍は最高レベルの警戒、ロシア軍とベラルーシ軍がウクライナに向けて部隊を移動中
関連記事:ウクライナはNATOに支援を要請、ロシアは支援に応じれば追加措置を取ると恫喝

 

※アイキャッチ画像の出典:Hargi23 / CC BY-SA 4.0 T-90

潜水艦ではなく「潜航可能な巡視船」を発表したロシア、顧客の要求に応じて魚雷も搭載可前のページ

海自、もがみ型護衛艦のシステム開発を担う「システムインテグレーションセンター」を開設次のページ

関連記事

  1. ロシア関連

    ロシア、兵士が構えた携帯式防空ミサイルが暴発する恐ろしい動画

    ロシア製の携帯式防空ミサイル「9K38イグラ」を構えた兵士の肩で暴発し…

  2. ロシア関連

    ロシア失態か、第5世代戦闘機「Su-57」に関する機密情報がNATOに漏れる

    露メディアは8日、国営企業「ロスコスモス」の顧問を務めるイワン・サフロ…

  3. ロシア関連

    露メディア曰く、第5.5世代戦闘機相当の新型戦闘機「Su-57M」開発完了

    露メディアは26日、戦闘機Su-57ベースに開発していた第5.5世代戦…

  4. ロシア関連

    今月4件目の不祥事、ロシア海軍のコルベットと冷凍船がバルト海で衝突

    ロシア海軍のコルベットとマーシャル諸島船籍の冷凍船が22日、バルト海で…

  5. ロシア関連

    ロシアのペテンが中国にバレた? S-400は極超音速兵器と交戦できない

    中国がロシア製防空システム「S-400」に不満を述べている原因について…

  6. ロシア関連

    今月3件目の不祥事、ロシア空軍「Su-35S」が味方の「Su-30SM」を撃墜か

    ロシア空軍の戦闘機Su-30SMが定期訓練中に墜落したと報じられている…

コメント

    • 匿名
    • 2021年 4月 14日

    睨み合いになった時点でたぶん何も起こらないだろうね
    時間をかければNATO軍に米軍も合流するだろうしロシア軍が不利になるだけと見ていい
    東アジアが物々しくなっているから別方面で牽制をかけていると予想

    12
      • 匿名
      • 2021年 4月 14日

      実際に軍事行動を起こす気なら部隊の集結をもっと早く、かつ秘密裏に行うだろうしね。
      今回は余りにも見せすぎている。

      10
        • 匿名
        • 2021年 4月 14日

        ためされるバイデン大統領、そんな感じもしますね。

        8
      • 匿名
      • 2021年 4月 14日

      空間を別にする手もあるけど、時間を別にする手もある。
      今回は演習で、オリンピック中に呑気にプーチンが観戦してる時に、ウクライナ軍が暴走して、今回の演習通りにロシア軍が動いて演習が無駄にならないとか。
      なんか、ジョージアでも起こった気がする。

      4
    • 匿名
    • 2021年 4月 14日

    「​バイラクタルTB2」でどうこうできる規模
    レベルの話ではないってのは、こういうのを指すんだろうな。

    6
      • 匿名
      • 2021年 4月 14日

      欧州安全保障協力機構(OSCE)が運用している監視用の無人ヘリコプター(S-100)が、ロシア軍のジャミングでもう使い物にならなくなっている。

      10
      • 匿名
      • 2021年 4月 14日

      ロシア軍が集結したら、無人機の通信とレーダーに使う周波数全体域に10倍以上の出力で無意味な信号を送れるから、光学と慣性で行って帰ってこれるやつで無いと動きそうに無いね。

      5
      • 匿名
      • 2021年 4月 14日

      ロシアも同じような兵器を運用し開発してることをお忘れ無く、無人機とはあくまで戦場ネットワークの端末のひとつですから。
      現代戦において、単独で機能する兵器って無くなりつつありますから。

      1
    • 匿名
    • 2021年 4月 14日

    ロシアはいつも良くも悪くもヤクザやなぁ…

    20
    • 匿名
    • 2021年 4月 14日

    そもそもの疑問なんだけどウクライナってNATOじゃないしどういう法的根拠で支援してんの?

    1
      • 匿名
      • 2021年 4月 14日

      法的根拠があるんかしらんが、実態としてはボスニア・ヘルツェゴビナ紛争とかコソボとかリビアとか、あいつらなんぼでもNATO域外で戦争してるぞ。

      9
      • 匿名
      • 2021年 4月 14日

      NATOにとっての潜在的脅威に対する危機管理、かな?
      そのくせウクライナのNATOへの加盟には消極的なのよな。
      今回も加盟要求から1週間、特に動きないよね?

      2
        • 匿名
        • 2021年 4月 14日

        ウクライナは緩衝地帯として、どちらの領土にもならない中途半端な位置づけであることに、最大のNATO側のメリットがあるので、ロシアと引っ付くこと防止のために思わせぶりはしても、絶対NATO自体には入れたくないんでしょ。
        ロシアとNATO加盟国が直接国境を接するなんて、嫌すぎる。東西ドイツ時代の悪夢がよみがえる。

        6
          •   
          • 2021年 4月 14日

          ロシアが牽制しているからNATOもウクライナ受け入れに及び腰が正解だろう
          ウクライナは準同盟国みたいな位置付けでNATO入り間近かってところでウクライナ侵攻が起きたんだよ

          1
        • 匿名
        • 2021年 4月 14日

        だいたいそうなんだけど、厳密には、加盟国のポーランドが旧ドイツ領カリーニングラード(ロシア)。加盟国のリトアニア、ラトビア等でロシア本体に接してるので、これ以上、ロシアと接したく無いだよね。

        ウクライナも、深く付き合ってもいいことないって思われてるのもありそう。(金銭の貸し借りにルーズとか)

        1
      • 匿名
      • 2021年 4月 14日

      NATOじゃないけどNATOに入りたいと前から言ってた。NATOは加盟を保留してたけどね
      ウクライナは西はヨーロッパ人とウクライナ人、東はロシア人が主に住んでいる
      ロシアは2014年にウクライナのクリミア半島の独立を承認
      ロシアはウクライナを少しずつ切り取っていくつもりだとEUとアメリカが大反対してロシアに経済制裁
      そしてクリミアでは紛争が発生。このクリミア紛争が周囲に拡大。ドンバスはそのうちの一つ
      ロシアのドンバス介入を放置するとウクライナ東部がロシアに軍事的に占領される
      NATOはそれを阻止したい

      4
    • 匿名
    • 2021年 4月 14日

    プーチン「習近平陛下に石炭を貢納せよと命じられたので臣下として仕方なく攻め入った次第」

    1
    • A
    • 2021年 4月 14日

    これを機に戦闘機や戦車の開発が急ピッチで進むといいのだが。

    • 匿名
    • 2021年 4月 14日

    対峙しているNATO軍の構成国はどんなんだろうか。調べても出てこなかったわ。
    ロシアの目的はウクライナへのバイデン政権の対応を見ることなんだろうけど、あわよくばナゴルノ・カラバフで落ちたロシア兵器の汚名返上も狙ってそう。

    1
      • 匿名
      • 2021年 4月 14日

      4万人が集結してるっていうのはロシアの主張だから、実際のところはねぇ

        • 匿名
        • 2021年 4月 14日

        ウクライナ領内に展開してるわけでないから、ロシア軍とはかなり時間差があることを考慮しないとね、

          • 匿名
          • 2021年 4月 14日

          ウクライナ領内に数百人規模だがドイツなどの軍がすでにいるよ
          ドイツ以外は知らん

    • 匿名
    • 2021年 4月 14日

    見つめ合ってるうちに恋が生まれる予感(ドラマあるある)

      • 匿名
      • 2021年 4月 15日

      初めはかんちがいだと思っていたけど、
      やっぱり故意だった。

    • 匿名
    • 2021年 4月 14日

    クリミア・ドンバス・ドネツク・ルガンスク・モルドバ東部にロシア軍が展開している。ウクライナは半包囲されたも同然でゼレンスキー氏が狙っていた国際協調を軸にした東部・クリミア奪還は事実上頓挫した。
    800輌以上の戦闘車両と200以上のミサイル・ロケット砲。航空戦力は不明だが必要とあれば200以上の軍用機を展開する能力が有るのは確実。ロシアはこれ等をウクライナ東部に投入する準備を着々と整えているので、近日中に親ロシア派の動きが再び活性化したら第二次ドンバス戦争が始まる。

    既に数的・質的優位を達成しているロシアに対しNATOができる事は交渉の仲介か他のNATO加盟国への軍事支援の増強くらい。今更黒海に艦艇を派遣しても再び電子攻撃の的にされるだけだろう。バルト海は不明でも黒海とバレンツ海?におけるNATOの展開(影響)能力は極めて低いのが現状。 来年の今頃にウクライナ中央を流れる河を挟んでロシア軍とNATO軍が対峙してない事を祈る。

    6
      • 匿名
      • 2021年 4月 14日

      ウクライナ中央を流れる河>
      ドニエプル川の事だな…独ソ戦中の1943年夏、クルスク戦で勝利したソ連赤軍に対してドイツ軍はこの大河を頼みに防御線を敷こうとしたが、勢いに乗ったソ連軍は渡河に成功し、これ以降ソ連軍はベルリン占領まで戦略的には負ける事が無かった
      果たして、歴史は繰り返すのだろうか?

      3
    • 匿名
    • 2021年 4月 14日

    訓練名目でウクライナ領内へのNATO諸国部隊が数百人規模で滞在中
    各国持ち回りで交代で常駐していくだろう

      • 匿名
      • 2021年 4月 15日

      ジェスチャーまんまだよ、仮にロシアがウクライナ侵攻してきても、NATOが参戦する法的根拠が無いし、数的に比すると話にならない

        • 匿名
        • 2021年 4月 15日

        でしょうねー。
        数的な劣勢だけではなく元々その意思もなさそう。
        しかもウクライナは非加盟国。
        今のNatoは戦争することができなくなっているのかも。
        (アメリカが積極的に参加すれば別だけれどね)

        • 匿名
        • 2021年 4月 15日

        本当にNATO次第でしょうね
        ウクライナ政府がロシアを挑発しすぎるともしかしたらが起こりかねない
        何個師団かでも派遣できればロシア軍もかなり手出しがしにくくなるとは思うのだが

  1. この記事へのトラックバックはありません。

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 軍事的雑学

    ようやく本領発揮、世界最強の戦闘機F-22Aが「神の視点」を味方に提供
  2. 軍事的雑学

    空飛ぶスナイパー? ロシアの戦闘機「Su-57」は米軍の航空支配を効果的に破壊す…
  3. 軍事的雑学

    リチウムイオン電池採用艦!日本のそうりゅう型潜水艦11番艦「おうりゅう」就役に世…
  4. 軍事的報道

    国産防衛装備品の海外輸出が実現!フィリピンが日本製警戒管制レーダー「J/FPS-…
  5. 軍事的雑学

    着実にレベルアップを果たす日本の対潜哨戒機P-1、2020年度から「能力向上型」…
PAGE TOP