ロシアは旧ソ連構成国が「ロシア式地名の改名」を行うと「反露的政策だ」と批判して攻撃するが、チェチェン共和国の歴史的な名称変更が連邦内の政治的対立に発展し、ロシア人は「カディロフが英雄のシャマノフ将軍を戦争犯罪者扱いした」と激怒して大問題になっている。
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参考:Kadyrov_95
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参考:Нам пишут десантники
ロシア人の「解放してやったという認識」を全て人々が有り難く思っているわけではない
ロシアは180以上の異なる民族で構成されているため各民族の歴史や言語を尊重し、異なる宗教を信仰する権利を保証しているが、同時に国家としてのアイデンティティー追求にソ連の痕跡=ロシア式の地名、記念碑、政策を重要視しており、これはロシア連邦内の共和国、自治管区、自治州だけでなく旧ソ連構成国に対しても同様で、ソ連から独立した主権国家が独自の判断で「ロシア式地名の改名」や「旧ソ連軍の功績を称えた記念碑の削除」を行うと反露的と結びつける。
つまり多民族国家を自認して民族独自のアイデンティティーを容認しても「ソ連時代の歴史を否定することは許さない」という意味で、カザフスタン人でロシア文学が専門のアイナシュ・ムスタポワ准教授は「ソ連から独立した国々は脱植民地化という共通の苦難と戦っている」「これはソ連の支配を受けた人々=カザフスタン人と多くの国々をソ連の一部として同化した人々=ロシア人の意識改革で構成されている」「ロシア人のメンタリティーに刷り込まれた帝国主義から脱却できるかどうかが最大の問題」「これが改善しない限り再びロシア人が戻ってくる」「ウクライナ侵攻はロシア人の帝国主義脱却が進んでいない証拠」と指摘している。
エストニア、ラトビア、リトアニア、ポーランド、ウクライナでもソ連時代の痕跡を消し去る作業が非常に活発で、反露的な政策を抑制させるため「ロシア語を話す住民の権利=ロシア系住民の保護」を名分に状況への介入を正当化させるのだが、チェチェン共和国でも歴史的なコサックの名称を関する町の名称変更で大騒ぎになっているのが興味深い。

出典:РосБизнесКонсалтинг
ロシア下院はチェチェン議会が提出したナウルスカヤ、シェルコフスカヤ、セルノヴォツコエの改名法案を第一読会で可決し、これにロシア下院議員のウラジーミル・シャマノフ元大将が激怒して「チェチェン共和国では歴史的なコサックの名称を関する町の名称変更が提案されている」「ロシア語を話す住民を追い出しただけではなく歴史的な名称まで消し去ろうとしているのだ」「これは我が国の歴史そのものでチェチェンは一体何をしたいのか」と厳しく批判。
チェチェン共和国の首長を務めるラムザン・カディロフ氏も「チェチェンは日々良い方向に変化しているものの、これを連邦レベルで好ましく思わない人々もいる」「チェチェンで名称の変更が始まると卑劣で悪党のシャマノフが声を荒げた」「彼はチェチェン国民に対して最も残酷な将軍だった」「彼は犯した罪で法廷に送られるべきだ」「我々は自身が作り上げた町の相応しくない名前を変更しているだけだ」「我々はこの土地の正統な所有者だ」と反論。
さらにTelegramにも「貴方にとって愛国者という言葉が空虚なものでないなら仲間の支持者を集めて特別軍事作戦の最前線に向かうべきだ」「シャマノフが民間人を苦しめることで蓄積してきた豊富な経験を我々は身を以て知っている」「貴方は下院で人民の守り手を装う道徳的権利はない」「議会の権限と大きな政治的レットリックの影に隠れるのは止めろ」「もう貴方に状況を変える力はない」「貴方に出来るのは怒りぶち撒ける試みだけでチェチェン人の功績を覆すことは出来ないし、貴方とは法廷で争うことになるだろう」「もし正義が実現すれば貴方は全ての発言と行動の責任を問われることになる」と投稿。
特別軍事作戦中に多くの兵力を提供しているチェチェン共和国とシャマノフ元大将の衝突はロシアメディアが公に報じるほど注目を集めており、ロシア人ミルブロガーのДва майора(Two Majors)は「我々の国には大統領がいる」「その名はウラジーミル・プーチンだ」「誰も能力を超えることは出来ないし誰かに何処へ行けと命じることも出来ない」「最も重要なことは特別軍事作戦中に街の名称変更を行うべきではないという点だ」「このような議論は平和な時期に行われるべきで同議論に費やされる時間や労力は特別軍事作戦に費やされるべきだ」と訴えた。
シャマノフ元大将は2009年~2016年まで空挺軍司令官を務めていたことがあるため、空挺軍もTwo Majors経由で「ロシアの英雄であるシャマノフ将軍とカディロフの間で激しい政治的対立が続いている」「シャマノフ将軍はチェチェンの脱ロシア化の決定を激しく批判した」「カディロフは命を危険に晒してチェチェンに秩序をもたらし、祖国をテロリストから解放したシャマノフ将軍を激しく批判した」「カディロフが現在の地位にあるのは多くの点でシャマノフ将軍のお陰である」と批判している。
“ラムザン・カディロフはシャマノフ将軍から受けた恩を忘れてしまったようだ。シャマノフ将軍を侮辱し、チェチェンで行われたテロリストとの戦いを戦争犯罪と呼ぶことで自身の支持者にアピールしようと決めたようだ。チェチェンで起きた戦争犯罪とは一体何のことなのか?民間人を殺害していたテロリストのことか? 森に潜んで麻薬を注射していた連中のことか? それともロシア人兵士の首をかき切った連中のことか? このような連中をシャマノフ将軍は何千人も排除した。そのことでカディロフはシャマノフ将軍を侮辱するのか? それならチェチェンの作戦に参加した将校全員も処刑するよう要求するのか?”
“この状況は極めて危険で愚かだ。チェチェン人の裁判に関する不満で内務省のバストリキンとコロコルツェフを侮辱した時と同じだ。ロシア人に強く出ることで出来事を理解していない無知な聴衆を味方に付けたいだけなのだ。さらに3つの街の名称変更に関するシャマノフ将軍の指摘は事実だ。歴史的な名称を変更する意味に挑発以外の何があるのか?”
ロシアは東欧諸国を脅す材料として「ロシア式の地名変更」を反露的と散々活用してきたが、よりにもよってチェチェン共和国からも「ロシア式の地名が相応しくない」と突きつけられ、ロシアの英雄についても「民間人を苦しめることで蓄積してきた豊富な経験」と侮辱され、もはや「ロシア式地名の改名」や「旧ソ連軍の功績を称えた記念碑の削除」は反ロシア連邦的な政策ではなく、多くの国々をソ連の一部として同化した人々の気分を害する政策、つまり反ロシア共和国的であり、その対象は連邦内の共和国、自治管区、自治州、旧ソ連構成国の全てに適用されるのだろう。

出典:Kremlin.ru/CC BY 4.0
ロシア人が自国の影響力をどう定義するのかは自由だが、ロシア人の「解放してやったという認識」を全て人々が有り難く思っているわけでもなく、ソ連もしくはロシアの功績を称えるため自主的に街や通りの名前をロシア式に改めたわけでもなく、ソ連軍の偉大さを後世に伝えるため記念碑を建設して大切に守っているわけでもないのは誰の目にも明らかで、この辺りがロシア連邦の歪さなのかもしれない。
因みにエストニア、ラトビア、リトアニアの防諜担当者も「ソ連時代にロシア人と対峙した経験から言えば連中の意思に屈すると奴隷に落とされる」「ウクライナの戦争はプーチンの戦争ではない」「戦場で見せるロシア人の残虐行為もプーチンの命令によるものではない」「これは多くのロシア人が慣れ親しんだ行為を戦場で再現しているに過ぎない」「戦場で見せる残虐行為はロシア人に共通する国民性だ」「21世紀に帝国主義的な考え方と残虐性が許容される社会が生き残っているのは一度も責任を問われたことがないため」「これがロシア人を無敵の存在にしてしまった」と説明している。
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※アイキャッチ画像の出典:Kadyrov_95





















ソ連書記長を見ると、モスクワ周辺の都市部で生まれた人はいないわけで。
ロシア帝国時代、日露戦争の将軍にも、今のウクライナ出身がいたりするんですよね。
多種多様な民族を統治するのは難しいわけで、特にアイデンティティの絡む問題は、複雑なんでしょうね。
プーチン大統領の統治下で、経済政策が上手くいって抑えられてきたわけですが、ウクライナ戦争により変化が生じるのか見守りたいと思います。
ぶっちゃけソ連の成り立ちからしてテロリストの集まr(窓から落ちる)
革命だー!
多民族を統治してやっていくには強権的な政治体制の方が相性いいのかもしれないですね、民主主義で多民族国家のアメリカは政治分断酷く移民の多い西欧は移民問題に歯止めかからずで右派台頭という有様、中国は多民族で共産党独裁国家であるけども国内不満は力技でどうにか出来る強権的体制で現状経済停滞していても何とかしていると、ロシアはプーチンの求心力と経済的な繁栄や粛清の恐怖で多民族纏めていたのでしょうけど構成国としてもアイデンティティは譲れない所でしょうからロシアの言う特別軍事作戦終わったらや名称併記等で沈静化させる感じでしょうか。
正直中国が民主主義中国であれば全く怖く無く、勝手に中国内で割れて分裂し大陸で遣り合ってるだろうなとは思う所で西側が望む中国はそんな感じの中国なんでしょうね、それなら日本としても現状より相手にしやすいでしょうしね。
民主主義の中国、この観点は仰る通りでしょうね。
アメリカ指導層は、中国を冷戦後(平成)に成長させて、民主主義化+グローバル企業のマーケットとするのが大戦略だったんだろうなと。
中国は、世界最大の大国だった期間が長かったのに侮っていたとも言えるわけで、覇権国の地位を脅かされるとまでは考えていなかったんでしょうね。
でもカディロフに戦犯扱いされたらそりゃお前が言うなってなるような···
ロシア連邦に属していながらもチェチェン共和国はすっかり独立国の様相になってしまっていますね。それにしても国内で暗殺、拷問、抑圧を行ってきたカディロフがチェチェン住民を数万人殺害したロシア軍を批判するんですね…
チェチェンは元々独立志向の強い連邦構成国ですからね…
有名な多数の人質ごとテロリストを毒ガスで制圧した事件もチェチェン独立派が起こした事件ですし
これは反露感情の発露というよりはカディロフの顕示欲に根差したものに思える
ロシア人の中に刻まれた文化の一つに過ぎない。いつもの日常。
ほぅ?
意外とロシアというやつは自由に物が言えるのか窓から落ちる直前なだけなのか
ジャーナリストみたいな暴力を持たない者は兎も角、カディロフは何千何万も武装した手下に守られていますからね
まぁ油断したらプリゴジンされる可能性がありますけど
ウクライナ平定に成功してもまだ他の急ソ連構成国が有るし
国内の構成国の維持も必要な訳で国力や兵員が持つのかね。
プーチン帝が死んでモスクワが後継争いに明け暮れる様に成るとヤバいのでは
まるで古代や中世の帝国の勃興を見ている様だな。
やったことは必ず返ってくる、中国の覇道王道という話を思い出します。
国家が他民族を力で支配したって長い目で見るとあんまり意味はないんですよね、
やられた方はずっと覚えてるし、力が弱くなった途端に離れていくだけで。
結局ソ連をちゃんと維持する、というのがロシア人がやるべき王道だったと思います。
ソ連を維持して身内にそれなりの生活をさせとけば良かったのに、それが出来ない
で覇道に乗り出すから碌なことにならない。
ソ連の維持自体が結構な覇道な気がします
チェコの改革をソ連軍を派遣して潰したり、今も昔もやってることは同じに思える
カディロフ藩王国潰したらチェチェン独立派が復活すんじゃねえの
>因みにエストニア、ラトビア、リトアニアの防諜担当者も「ソ連時代にロシア人と対峙した経験から言えば連中の意思に屈すると奴隷に落とされる」「ウクライナの戦争はプーチンの戦争ではない」「戦場で見せるロシア人の残虐行為もプーチンの命令によるものではない」「これは多くのロシア人が慣れ親しんだ行為を戦場で再現しているに過ぎない」「戦場で見せる残虐行為はロシア人に共通する国民性だ」「21世紀に帝国主義的な考え方と残虐性が許容される社会が生き残っているのは一度も責任を問われたことがないため」「これがロシア人を無敵の存在にしてしまった」と説明している。
これ、ロシア人をアメリカ人や中国人に置き換えても、話が通じますね
バルト三国は毎回ポジポジトーク披露してくれるから楽しい
特にアメリカ人の無敵の人っぷりはヤバすぎるだろ
ラムザン・カディロフの権力は父親であるアフマド・カディロフから継承したもので、アフマドは元はチェチェンの分離独立派に連なる宗教指導者でした。二度のチェチェン紛争の過程でアフマドは祖国も民族も裏切ってモスクワに対して「最も忠実な敗北者であり、ロシア的な価値観を常に完全に受け入れるもの」として振る舞い、モスクワもそれに満足したことがカディロフ一家とモスクワの良く知られる関係の土台でした。つまり最も弱く最も忠実で常に下手に出てくるものでさえ、最近のモスクワに対して反抗的な態度を見せ始めているということで、これはロシア内政の視点で見ると相当おもしろい変化だと思います。普通に考えれば民族の裏切り者であるラムザン一味はモスクワの没落と一緒に消される側な気もしますが、そうしないために地元に忠実な振る舞いをする必要があるのだとすれば、やはり連邦内の自治共和国に対する中央の軍事や経済に関する影響力や統制が相当に弱まっているのではと感じます。
ロシア人(の内の圧倒的少数派)がチェチェンの反露政策に激怒かぁ
カディロフが死亡したって話が出てきてるけど、マジで死んでたらチェチェンはどーなるんだろう……
ロシアへの反攻は流石にやらんよなぁ