米国関連

勝つのは人間かAIか? 人工知能がドックファイトで現役米空軍パイロットに圧勝

米国防高等研究計画局が開催した「Alpha Dogfight Trial」で優勝したドックファイト用のAIにはトップガン出身者相当の腕前をもつ米空軍戦闘センター出身の現役パイロットでさえ歯が立たなかった。

参考:AI Slays Top F-16 Pilot In DARPA Dogfight Simulation

米空軍の中でもトップクラスの腕前を持つパイロットでさえ寄せ付けないAIの戦闘能力

米企業のサイバネティックスが開発したAI(人工知能)は2016年、戦闘機を使用した空中戦のシミュレーション対戦で米軍の元パイロットに圧勝したが、今度はヘロンシステムズが開発したAIが現役の空軍パイロットに挑み5対0のスコアで圧勝したと報じられている。

米国防高等研究計画局(DARPA)が進めている「Alpha Dogfight Trial」は8つのチームが開発したAIを持ち寄り、まずはDARPAが用意した5種類のAIと総当たりで対戦、その後8つのチームのAI同士で総当りで対戦、このまでの評価で上位4つのAIがトーナメント方式で対戦して勝者を決定、最後にF-16を操縦する現役空軍パイロットと対戦すると言う内容だ。

出典:DARPAが公開したYouTube動画のスクリーンショット

このトライアルに参加したチームの顔ぶれはロッキード・マーティン、ボーイング(子会社のオーロラ・フライト・サイエンス)、米工科系大学の中でMITと肩を並べるジョージア工科大学という有名所から、余り名前を聞かない防衛産業企業(EpiSys Science、Heron Systems、Perspecta Labs、PhysicsAI、SoarTech)で構成されており、どこが勝利して現役空軍パイロットと勝負するのか注目されていたが実際に現役空軍パイロットへの挑戦権を獲得したのは非常に規模(従業員が数十人)が小さいヘロンシステムズが開発したAIで、ロッキード・マーティンが開発したAIを含む対戦相手を倒して優勝した。

AIと対戦した現役空軍パイロットは通称「バンカー」と呼ばれる米空軍戦闘センター(旧:米空軍兵器戦術センター)の出身者で、レベル的には米海軍戦闘機兵器学校(通称:トップガン)出身者に相当する実力を持っていたがヘロンシステムズが開発したAIは5対0のスコアで圧勝、超人的な照準能力を披露したと評価されている。

出典:Public Domain 米空軍戦闘センター所属のアグレッサー部隊

ただDARPAは、今回のトライアルで使用されたAIは特定条件のシナリオに基づいてのみ機能するため、この結果をもってAIが人間を完全に上回る空中戦の能力に到達したとは言えないと語っており、今回のシミュレーションを持ち帰り他の条件下でAIがどのような能力を示すのかテストを行うと明らかにした。

来年の夏にはAIを搭載した無人戦闘機とパイロットが操縦する有人戦闘機が実際に対戦を行う予定で、AIが自律的に状況を判断して人間を上回る戦闘行為を披露するのも時間の問題なのかもしれない。

関連記事:勝つのは人間かAIか? 米軍、有人戦闘機と無人戦闘機とのドックファイトを実施予定

 

※アイキャッチ画像の出典:DARPA

エストニアが韓国製自走砲「K-9」を追加発注、累計輸出台数は600輌超え前のページ

弱みを握られたEU、リビア停戦合意の裏でトルコは戦略的要衝を確保次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    米国、ウクライナ向けに総額20億ドルの安全保障支援を発表

    米国はウクライナに対する総額20億ドルの安全保障支援を発表、この支援に…

  2. 米国関連

    あと20年は戦える! 米空軍、第5世代レーダー「SABR」に換装したF-16完成

    米空軍は9日、本土防衛のためメリーランド州兵空軍が装備するF-16C/…

  3. 米国関連

    米国、総額30億ドルの追加支援をウクライナの独立記念日に発表予定

    米当局者は23日、AP通信に対して「ウクライナが今後何年も戦うために必…

  4. 米国関連

    西側関係者が参加したK9A1のテスト、米陸軍が開発中の新型砲弾試射を披露

    ハンファディフェンスがユマ試験場で実施したK9A1のテストに「米軍およ…

  5. 米国関連

    米GA-ASI、複数の空対空ミサイルを運搬可能なLongShotのフェーズ2に選定

    米ジェネラル・アトミックスは6日「DARPAに選定され、詳細設計と地上…

コメント

    • 匿名
    • 2020年 8月 21日

    マクロスプラスの時代が来るのが思ったより早かったな

    1
      • 匿名
      • 2020年 8月 22日

      まぁ初代マクロスからGhostは実戦配備されてたんですけどね

      1
    • 匿名
    • 2020年 8月 21日

    スゲ~、エスコン7の世界もう目の前じゃん!

      • 匿名
      • 2020年 8月 21日

      あの機体は絶対に墜とさなければなりません!

      1
    • 匿名
    • 2020年 8月 21日

    I have control

    • 匿名
    • 2020年 8月 21日

    戦闘妖精雪風メイブきたか!

    1
      • 七面鳥
      • 2020年 8月 24日

      どっちかってーとフリップナイトですね。

    • 匿名
    • 2020年 8月 21日

    戦闘妖精雪風か

    • 匿名
    • 2020年 8月 21日

    AI搭載無人戦闘機と聞くとマクロスプラスのゴーストX9みたいなのを想像するがどの程度の作戦能力を持つのか気になる

    1
    • 匿名
    • 2020年 8月 21日

    意外に空戦で勝つ要素というものは少ないのかも知れないなあ。
    複雑性がないのであれば機械学習程度の能力でも人に十分勝てるのだろうね。
    あと、高Gの影響下でも疲労しないし判断力も鈍らないところは強み。

    1
    • 匿名
    • 2020年 8月 21日

    日本もF-3戦闘機開発の際はAIを活用した無人機も同時並行で開発した方がいいと思うがな
    搭載兵器は開発する予定だろうが

      • 匿名
      • 2020年 8月 22日

      AI開発で日本は米中欧どころか後進とされるロシア、インドにすら遅れを取ってる
      研究開発予算の少なさ、企業を支配する老害、社会の硬直性が原因

      1
    • 匿名
    • 2020年 8月 21日

    逆にパイロットの補助システムとしてAIに戦闘を任せるという使い方もあるよね
    AIによる無人兵器はどこかの段階で規制される気がする
    ターミネーターじゃないけどあまりに危険すぎる

    1
      • 匿名
      • 2020年 8月 21日

      >AIによる無人兵器はどこかの段階で規制される気がする

      核と同じで、規制されるほど危険なものとなれば、
      抑止力・恫喝の手段として欲する国々が出てくると思う。

      1
      • 匿名
      • 2020年 8月 21日

      それこそ戦闘妖精雪風みたいに
      高G機動するのに邪魔な存在だからいらねぇよとイジェクトされる未来しか見えん…
      規制したとこで中国やロシアが素直に従うはずもなし
      どこかが抜け駆けする以上絶対に開発競争止まらんわ

      1
      • 匿名
      • 2020年 8月 22日

      自律型無人兵器はIFFが不調になると無差別攻撃をする事になるからな。
      そうでなくても敵と非戦闘員をどう見分けるという問題がある、訓練を受けた人間でさえ戦場では誤射なんて珍しくもないし。

      1
      • 匿名
      • 2020年 8月 22日

      アメリカでも自律型の無人戦闘機は2040-50年くらいに実現するプランで検討してますからね。
      交戦規定の問題もあるので、国際的なコンセンサスが取れて国際法が成立するまでは有人機の僚機や空飛ぶウェポンベイ、空中給油機や輸送機など無人機単独で交戦しないところからの活用でしょう。

      1
    • 匿名
    • 2020年 8月 21日

    ある意味将棋みたいなもの、しかも単純だからAIが人間に負ける要因なんてないわな

    • 匿名
    • 2020年 8月 21日

    興味深い記事をありがとうございます。

    記事のドッグファイトは、シミュレーターベースでの結果とのことですので、実際に機上で行った場合は実機の限界旋回性能(F-16では9Gが公式記録)を引き出せるAIが有利と考えられます。パイロットがAIに勝つにはAIの経験値(データ)に上回る戦術を一戦毎に用いていく方向性となります。
    ただし、一戦毎のパイロット側の操縦データが記録されるため、AI側の経験値に蓄積・対策の強化がなされ次回対戦時はパイロット側が負ける可能性が増加することが将来、現実となることを示唆しています。

    生身のパイロットは現場(戦闘空域)でAI搭載の僚機に敵機との対戦を指示する、役割分担を想定します。

    ML/AI用プロセッサとソフトウェアの需要が、車の自動運転のみならず戦闘機用でもあるという例と考えます。
    我が国でも本分野は技術者養成の必要ありと考えます。

    • 匿名
    • 2020年 8月 21日

    地上と違い、不確定要素が少ないから、AIに有利かもしれない。
    実際、旅客機はオートパイロットで離着陸までこなすが、タクシーやバスはまだまだだからね。

    1
      • 匿名
      • 2020年 8月 21日

      > 旅客機はオートパイロットで離着陸までこなすが

      実験レベルでは実績があるが、旅客を乗せての実用レベルでは実績が無い。

      1
        • 匿名
        • 2020年 8月 21日

        とても複雑な操作を伴う離陸はともかく、着陸は「旅客を乗せての実用レベル」でオートパイロットで行ってますよ~。パイロットは状況を見て手動と自動を切り替えます。

        1
    • 匿名
    • 2020年 8月 21日

    興味深い記事をありがとうございます。

    記事のドッグファイトは、シミュレーターベースでの結果とのことですので、実際に機上で行った場合は実機の限界旋回性能(F-16では9Gが公式記録)を引き出せるAIが有利と考えられます。パイロットがAIに勝つにはAIの経験値(データ)に上回る戦術を一戦毎に用いていく方向性となります。
    ただし、一戦毎のパイロット側の操縦データが記録されるため、AI側の経験値に蓄積・対策の強化がなされ次回対戦時はパイロット側が負ける可能性が増加することが将来、現実となることを示唆しています。

    生身のパイロットは現場(戦闘空域)でAI搭載の僚機に敵機との対戦を指示する、役割分担を想定します。

    ML/AI用プロセッサとソフトウェアの需要が、車の自動運転のみならず戦闘機用でもあるという例と考えます。
    我が国でも本分野は技術者養成の必要ありと考えます。

      • 匿名
      • 2020年 8月 21日

      2重投稿、大変失礼致しました。削除して頂けますと幸いです。

    • 匿名
    • 2020年 8月 21日

    エヴァのダミーシステム相当はもう出来あがってるとか凄い
    規制かけるのは難しそうだし、パイロットオワタ

    • 匿名
    • 2020年 8月 21日

    変な例えだけど、人間がミニガン持ってファランクスと撃ち合うようなものか。
    無理ゲーだなこれ

      • 匿名
      • 2020年 8月 21日

      例えが全く分からんw

      1
    • 匿名
    • 2020年 8月 21日

    シミュレーション環境でAIvsAIでディープラーニングさせてみたい。
    今までにない空戦機動や戦術が見つかるかも!

    • 匿名
    • 2020年 8月 22日

    ゴルゴ13でAIが操作する戦闘機と戦う話あったなあ
    めっちゃ懐かしいわ
    やっぱゴルゴってリアルな話なんだな

    1
    • 匿名
    • 2020年 8月 22日

    ようつべのライブ生で見てたけど、ヘロンのは射撃できる機会があったら確実に当ててた印象。
    記事の通り照準能力が非常に秀でてたんだなぁと。
    結局照準するためにはうまいマニューバが必要なわけで、ヘロンのは究極的にそれが一番だったのでは、と見ていて思った

    2
    • 匿名
    • 2020年 8月 22日

    無人機もピンキリ、最強の無人機は最強の有人機からパイロットの必要とする装備を抜いて軽量化し再設計した機体。
    その無人機が未来の空を支配する。
    だかたまずは最強の有人機を作る能力を持つ必要がある。

    • 匿名
    • 2020年 8月 22日

    無人くん同士のドッグファイトになるんだろうね
    ハッキング能力が決め手になりそう
    中国、朝鮮が有利か?

    • 匿名
    • 2020年 8月 22日

    新しい内は素晴らしい戦績を残せるだろうが、空戦毎に気軽に9Gを掛ける様な使い方を為ていたら機体が持たないのでは?
    劣化して遣れた機体を更に酷使すると空中分解もあり得る。
    帰投後の整備は常に重整備を強いられ兵站が疲弊しそう。お金が有れば使い捨ての如く大量生産するのか?

    1
      • 匿名
      • 2020年 8月 22日

      実際はBVR戦闘が殆どだから実験的な意味が強いのでは。
      BVR戦闘でもAIが強そうだけれども…

      1
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
  2. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
  3. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
  4. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
  5. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
PAGE TOP