米国は「生産上の問題」を理由にM109A6の納期変更(引き渡し開始2023年→2026年)を台湾に通知したが、M109A6を製造するBAEは「予定通り台湾にパラディンを提供できる製造能力がある」と表明して注目を集めている。
参考:BAE Systems, Pentagon question reports of howitzer delay for Taiwan
予定通り台湾にパラディンを提供できる製造能力があると主張するBAE
2021年に台湾はM109A6×40輌、支援車輌、砲弾(155mm砲弾にGPS誘導能力を後付するM1156キット×1,700を含む)、関連機器などを7.5億ドルで発注、2023年に引き渡しが開始される予定(23年に8輌/24年に16輌/25年に16輌)だったのだが、米国は「生産上の問題」を理由にM109A6の引き渡し開始を2026年に変更すると台湾に通知した。
これを受けて台湾はギャップを埋めるための代案検討に入っていると報じられており、この納期変更はウクライナでの戦いに武器を供給する米防衛産業界の努力(需要の高い武器の製造に注力)に関連するものだと報じられていたが、M109A6を製造するBAEは「予定通り台湾にパラディンを提供できる製造能力がある」と表明して注目を集めている。
米陸軍は今後3年間に調達するパラディンの数を削減しており、BAEの製造能力には十分余裕があるにも関わらず台湾に納期変更を通知したので「米国はウクライナに陸軍の在庫からM109A6提供を検討しており、早急にギャップを埋め戻すためBAEの製造能力を確保しておきたかった」のかもしれない。
ウクライナに対する米国の武器支援は米軍備蓄や在庫を取り崩す形で行われており、これを早急に元のレベルまで回復させることをオースティン国防長官が約束している。
特にスティンガーは備蓄分の約1/4、ジャベリンは備蓄分の約1/3をすでにウクライナに提供済みで、直ぐに増産を指示してもリードタイムなどの要因で3年~5年はかかると見積もられているが、半導体不足の影響で更に時間がかかるとも指摘されており「米政府が国防生産法を発動してスティンガーやジャベリンの製造企業に半導体部品を優先供給しなければならない」という声も上がり始めている。
つまりウクライナに提供されギャップが生じた武器の在庫を埋め戻すため半導体部品の供給バランスを国防生産法でイジると、他の武器の製造にも影響が出る可能性があるので海外市場で入手する武器の納期スケジュールは今後乱れていくのかもしれない。
因みに台湾国防部は発注済みのスティンガー×250発(2026年までに引き渡し完了)についても「需要が急増しているため引き渡しが遅れる可能性が高い」と発表している。
関連記事:台湾外相、ウクライナでの戦いから学ぶべき教訓は非対称戦と民間防衛
関連記事:ウクライナ支援で減少した米軍備蓄、ジャベリン7,000発の補充に最低でも3年
※アイキャッチ画像の出典:U.S. Army photo by 1st Lt. Henry Chan, 16th Sustainment Brigade, 21st Theater Sustainment Command
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メーカーの言う「増産にも対応可能」は追加費用がドサッと乗ってくる可能性もある訳で、その辺を加味した上での延期打診だったのかもしれないですね。
ところで米陸軍の自走砲といえばXM1299が既に試験中ですが、こちらはM109からの置き換えに言及する段階にはまだ達してないという感じなんですかね。何やら非常に高度な長射程砲弾プログラムを複数やっているようですが、あまり目標を高くしすぎて企画倒れにならなければいいですが。
XM1299はM-109A7の39口径砲を58口径長砲身155mm砲に換えて射程距離を70kmにする計画なので、重量増加と砲身寿命が気がかりですが、堅実なプランなのでそう失敗は無いんじゃないですかね。
他も改造ハンヴィーに105mm砲を牽引させようとかですし、最悪BAEのアーチャー(米軍テスト済らしい)を採用するんだと勝手に思ってます
アメリカでは既にウクライナへの「レンドリース法」が上院・下院で可決され、法案成立に必要なバイデン大統領の署名待ちの状態。バイデン大統領は3日にウクライナに供与している対戦車ミサイル「ジャベリン」を製造するアラバマ州のロッキード・マーチン社の工場を視察しており、「米国が派兵し、第3次世界大戦になるリスクを避けながらウクライナの自衛を可能にしている」と従業員を激励し、ウクライナに対する支援として総額4兆3,000億円の追加予算承認を議会に訴えている。
バイデン大統領はレンドリース法の署名の後に国防生産法を発動すると見込まれ、軍需企業を中心としたアメリカの工業力の桁違いの生産能力が発揮されるのはこれからだろう。
グローバル化という甘言に乗っかった投資家や経営陣が短期的利潤を追い求めてアウトソーシングの限りを尽くした結果、果たして今の米国にどれだけの生産力が残っているのか、極めて疑問なのですが…
本来なら「ラストベルト」と呼ばれている地域が底力を発揮する場面の筈ではありますが、現実はあまりに厳しいかと
双方、総力戦の様相を呈してきましたね。
この戦争の最大の受益者は中国だという見方がありましたが、現実になりそうだ。
中国とロシアのパワーバランスが中国側に傾くのは嬉しいでしょうが、結果としてロシアの弱体化と、仲裁に動かなかったことによるウクライナとの関係悪化は、第三国からのイメージ悪化を招く外交的ダメージだと思います。許容範囲内かどうかはわかりませんが。
ロシアの代わりになる国があれば安全保障は安泰ですが、イランとパキスタンと北朝鮮でロシア弱体化の穴を埋めれるかと言われたらちょっと無理じゃないかと
それどころか、未だに中国はロシアの軍事技術を頼りにしている面も有るのに、そのロシアの軍事技術に頼れなくなり(現在導入済から将来まで)、それどころか自身が支援する立場になるというのも困りものでしょう
というか、あのロシアが中国やインドはおろか、イランや北朝鮮からすらも援助を必要とするなんて事態、余りにもダサすぎて完全に予想不可能でしょ
いや、そうとも言えないかと。
ソ連崩壊の時だって、原爆の技術者の流出が問題になったぐらいだし、中国なら主要な技術者を亡命させて、身分と生活の保障ぐらいできるでしょう。だから、一時的に低迷は起きるでしょうけど、元通りどころか技術向上のペースが上がる恐れすらあります。
もっとも、中国に亡命させると後腐れが残るので、中国の息のかかった第三国に亡命ってところでしょうか?
>ロシアの代わりになる国があれば安全保障は安泰ですが、イランとパキスタンと北朝鮮でロシア弱体化の穴を埋めれるかと言われたらちょっと無理じゃないかと
核兵器を大量に保有している中国にとって、安全保障でロシアの軍事力に頼る面はほとんどないと思います。
それに、いざとなれば、相手国に対して脅しに使える国(北朝鮮)がありますから。
中国にとって、安全保障面での脅威は、外部より内部からのほうが大きいと思いますよ。
>仲裁に動かなかったことによるウクライナとの関係悪化は、第三国からのイメージ悪化を招く外交的ダメージだと思います。許容範囲内かどうかはわかりませんが。
ウクライナとの関係悪化は、ロシアと天秤にかけるしかない中国にとっては、避けられないことです。
それよりも、外交的には、中国よりアメリカのほうが負の影響が大きい。
アメリカ国内の嫌戦ムードにより、アメリカが他国に直接介入しないイメージを与えてしまった。
それに、今回の西側によるロシアへの制裁により、金融や技術など各方面での西側への依存を下げようとする国が出てくる。(サウジアラビアなど)
現時点で見ても、中国は大きな利益を得ると見ます。
また、万が一にもウクライナ戦争が泥沼化した場合、中国にとっては台湾統一の千載一遇のチャンスになる可能性もありますから。
アメリカが直接介入しなかった事は中国にとっては米ロ直接対決で双方が疲弊して貰う目論見が外れた事で致命的なダメージと思いますよ。
米軍は介入しなかった事で対中戦とウクライナの2正面になる事を避け、対中一択のフォーメーションを崩しませんでした。
これは中国の世界戦略的に致命的にマイナスに働きます。
ウクライナに米軍が直接介入することは、アフガニスタンから恥かきながらも全面撤退した事で得るメリットを全て台無しにしてまた米軍の疲弊を積み上げる行為です。
ロシアによる侵略行為に対して米軍が直接介入したら、世界最強のロシア陸軍と直接対決する事になり、それは米軍の2正面能力を超える為、台湾側に隙が出てきてそこで台湾侵攻の芽が出てくるわけです。
そうは問屋が卸さなかったのが今回のアメリカの態度で、バイデンはウクライナ不介入の姿勢について総バッシングされた後にも改めて不介入のアナウンスをしました。
つまり、不介入という姿勢について迷いはなく確信的に発言してるという事で、中国の目論見は完全に読まれてたと受け取れます。
他の記事からも、中国は多分侵攻計画はロシアから聞かされており、そして、それに対して米ロでの消耗戦に期待して賛成していたでしょう。更に言えばそれ以前からプーチンまたは、プーチンの周囲のロシア議会議員にに今こそウクライナに侵攻すべきだとけしかけてたかもしれません。
しかし、
1.ロシア軍が余りにも弱かった事(=自国の兵器性能もドクトリンもやばい)
2.米軍が介入する目論見が外れた事で、台湾側に軍事的な隙が生まれなかった事
3.ロシアに寄り添わざるを得なかった故に枢軸側にされてしまった(=弱体化したロシアの領土切り分けゲームに参加する資格を失った)
4.第三国から中国には有事になれば国際政治のゲームコントロールする能力が無い事がバレた(=平時だけ大国気取り)
の4つも大きな失点を重ねています。
特に3と4の影響は大きく、今後ロシアという国が崩壊分裂した場合に中国が沿海州をゲットする事は国際社会が認めないどころか、西側自由主義陣営側の国が沿海州に誕生した場合、西と東から挟撃される形になりそれこそ中国は世界覇権どころか存続を脅かされる防衛側に立たされます。
唯一のメリットといえば、ロシア軍が弱い事がバレた事で北からロシアにいきなり裏切られて刺される心配はしなくても良くなった事ぐらいでしょうか。
今回は中国がロシアをけしかけたか暗黙的にロシアの仕掛けに乗っかった結果、目論見が外れてこれまでの有利なカードを失いまくった展開に見えます。
遅レスですが
中国を北朝鮮の宗主国だと思われているようですが、北朝鮮は北朝鮮で体制維持のために金正男や張成沢のような親中派を排除したり、ロシアにすり寄ったりなど、時に中国を無視して行動しています。核開発にいたっては中国は完全にノータッチでしょう。
盾が欲しい中国と、経済面の支えが欲しい北朝鮮で成り立っている関係なので、互いに利用することはあれど主従関係では決してないです。
宗主国とは思ってませんが、特攻役になれなくても、従来通り、敵国の視線を逸らすための脅しになってもらうだけで、中国の安全保障に十分役立っていると思いますよ。
これまでも中国の安全保障において、ロシアより北朝鮮のほうが役立ってると思いますので、ロシアの穴はそれほど大きくないと感じます。
中央Asia諸国は
・安保はロシア
・経済は中国
だった。
ウクライナ戦争後は中国が中央Asia諸国の経済、安保を独り占めだろうか。
あそこは鉱物資源が豊富だし、西側も影響力維持しておきたいところ。
アフガニスタンも中国に渡ったし、
中央アジアで西側の足場となる国が思いつかないんだけどな・・・
中国がロシアに対してハゲタカ、ハイエナ的な行動に出ないか警戒することが中国に不快感を与える。中国がロシアの神経を逆撫でする言動、行動で中ロ対立が復活するんじゃ?
西側との関係悪化と制裁により、ロシアの再建には中国の資本と技術が必要不可欠になるはず。
だから、もうロシアは中国と対立なんて考えられなくなったと思う。
台湾は、手持ちのM109の改修が先でしょ。
でも、まだM109は新造してたのか。
M109A6の製造は既存のM109を改造しているので、新造ではないです。
中華民国のM109A6の購入はおそらく自走砲の純増でありますが、すでに保有しているA2とA5の改造を行うとしても、アップグレードキットの生産が米軍に優先され、結局調達が遅れるのです。
(冗談100%)
M109が調達が難しくなりキャンセルする場合、代替品を模索するなら何を選ぶか。
韓国K9か、インドK9か、トルコT155か、ポーランドKrabだろうか……。
韓国が台湾向けのライセンスを発行したがらない? 大丈夫。Krabなら砲塔はイギリスのライセンスだから。
01式や91式が売れたりしないかな…
製造キャパが足りないか