アルゼンチンメディアは7月末「米国はデンマークからアルゼンチンへのF-16売却(38機)を議会に通知した」と報じたが、米ディフェンスメディアは25日「売却を議会が承認したものの、デンマークはアルゼンチンとウクライナのニーズを満たす在庫を持っていない」と指摘した。
参考:In Argentina’s fighter competition, Washington and Beijing fight for regional influence
ウクライナのニーズを満たすF-16を誰か提供するのかという問題に関連する興味深い話
アルゼンチンのLa Nación紙は7月末「デンマークが保有する38機のF-16AMをアルゼンチンに売却するとバイデン政権が議会に通知した」と報じ、デンマークからのF-16AM提供に期待しているウクライナのシンクタンクも「アルゼンチンには時間と選択肢があるのでデンマークのF-16を譲ってくれ」と訴えていたが、どうやらLa Nación紙が報じた内容は本物でBreaking Defenseも「議会も通知内容を承認した」と報じており、同メディアの説明を要約すると以下のようになる。

出典:Ministry of Defence / GODL-India テジャスMK.1
“アルゼンチン政府は空軍近代化のため新しい戦闘機の取得を検討、昨年9月「空軍保有の空中給油機と互換性を有し、AESAレーダー、戦術データリンク、電子戦装置を搭載する多用途戦闘機の調達に約6億8,400万ドルを費やす予定で、中国のJF-17、米国のF-16、ロシアのMiG-35、インドのテジャスMK.1Aを検討している」と明かしていたが、MiG-35とテジャスMK.1Aが検討候補から外れてJF-17とF-16の二択になり、現地メディアは「中国の影響力拡大を阻止するため米国がF-16採用に圧力を加えてきている」と報じている”
“7月下旬に国務省は『デンマークが保有する最大38機をF-16を総額3.38億ドルでアルゼンチンに売却する可能性を承認した』と議会に通知、Breaking Defenseの取材に国務省の関係者は『アルゼンチンへの売却は承認された』と明かしたが、通知された内容や金額は取引内容の上限であり、この関係者は具体的な取引内容について明かさなかった”

出典:Public domain パキスタン空軍のJF-17
“アルゼンチンがデンマークからF-16を取得するためには『(米国との)微妙な政治的立場の違い』を解決する必要があるものの、国防総省を担当する経験豊富なアナリストは『このオファーが水面下で静かに進められているのは中国のJF-17売却を阻止するためだ』と、別の軍事アナリストも『国防担当者が最も恐れているのは米国の裏庭に中国製航空機を運用する国が現れることで、特にアルゼンチンに提案されているJF-17にはWS-13が搭載している。このエンジンはJ-35にも採用される予定(WS-19搭載搭載する可能性もある)で輸出に成功すればエンジン産業基盤の強化に直結する』と述べている”
“ただデンマークはアルゼンチン(38機)とウクライナ(19機)のニーズを満たすF-16の在庫(30機+予備機)を持っておらず、この問題を最終的にどう解決するかは不明だ”

出典:PRESIDENT OF UKRAINE
以上がBreaking Defenseが報じた内容の要約で、どのような配分になるかは謎だが、もしアルゼンチンとの取引が成立すると「ウクライナは19機以上のF-16AMをデンマークから引き出せなくなる」と、逆にアルゼンチンがJF-17を選択すると「ウクライナは19機以上のF-16AMをデンマークから引き出せる」という意味になり、ウクライナのニーズ(100機以上)を満たすF-16を誰か提供するのかという問題に関連する興味深い話だ。
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※アイキャッチ画像の出典:Public Domain
バイデン政権は、ウクライナに対して煮え切らないですね。
国防産業にとって、武器輸出先は競争力確保のために重要な事は理解できます(日本の国防産業は、言い換えれば、競争力がありません)
アルゼンチン経済を考えると、長期的に戦闘機やエンジン部品を買い続けられるか疑問です。
アメリカやデンマークが、対中国を建前にして(もちろん重要ですが)、ウクライナ武器支援を調整してるように少し感じています。
アメリカ議会の動きが関係している可能性があります。
連邦政府年度予算は10/1から開始するが本予算が議会の対立で期限内に決まらない事が常態化しており、政府閉鎖を回避するためにひとまず1ヵ月のつなぎ予算を9/30までに議決しなければなりません。しかし下院共和党保守強硬派(トランプ派)は国境警備強化の予算を要求、これは上院を支配する民主党が確実に受け入れないものですのでつなぎ予算ですら行き詰まった状態です。
そんな中議会が唯一超党派で団結できるのは中国の脅威に対しての行動ですので、バイデン政権が対中政策で少しでも共和党をなだめようとしている動きなのかもしれません。
gepardさんの仰る通りかもしれないですね。
Its the economy stupid 民主党が、これを言われそうなのが、皮肉な情勢に感じます。
アメリカの富裕層は、政府閉鎖されても、生活に困る事はないですからね。
フードスタンプ受給停止など、低所得者向けの各種政策が止まる事になりそうです。
米国人の多数派にとって、海外にばら撒く事が自分達(一般国民)の生活向上にどのように役立っているのか、疑問に感じる事は理解できます(日本ですら効果が怪しいと感じています)
F-16AMにはAESAレーダーが搭載されていないけどアルゼンチンは妥協するのかしら。
そしてF-16AMにイギリス製の装置が搭載されていたらイギリスが反対しそうだけど。
JF-17 Block3の方がカタログスペック的には優位ですが、2020.03.3の記事を見ますと色々と高性能なようで、
リンク
お得なお値段ですが開発費を負担しているパキスタン向け価格かと思われますので、輸出仕様は高くなると思われます。
周辺のパワーバランスに影響を与えるので、何かしらの飴をアメリカがあたえるのかもしれませんがJF-17に搭載しているエンジンがロシア製のRD-93MAという事から躊躇したかもしれません。
これについては直近に迫ったアルゼンチンの大統領選挙が影響するんじゃないでしょうか
今のところの最有力候補は中央銀行廃止・ペソ廃止・あらゆる国有機関の民営化を叫ぶ超々過激なリバタリアンですが
親米親イスラエルなので当選すればウクライナ支援もある程度協力してくれそうです
アルゼンチンはインフレ率が100%を超えて物価高が止まらず政策金利は約100%、国民の4割が貧困状況の末期的な経済状況を背景に台頭したのが極右リバタリアンのミレイ氏ですので、普通に考えればウクライナ支援に目を向ける余裕はないでしょう。
どうせ財政難で中止ないし、途中で中断されるだろうから、正直どちらでもよいのでは。
購入しても維持できるか怪しいですし。
正直アルゼンチンだとF-16 Block10あたりでもそこそこ使えそうな気がする。
当事者のデンマークは、どちらに売ると言っているのだろう。
アルゼンチンへ提案しているJF-17は、イギリスの規制でマーチンベイカーの射出座席を中国製に変更するとのことだったけど、今はロシア製エンジンRD-93から国産のWS-13に変更して提案しているのか。パキスタンのJ-10CPのWS-10といい、国産エンジンに自信があるんだな。