米上院軍事委員会は空軍参謀総長に「追加資金を与えればF-16 Block80で戦闘機戦力を強化できるか」と質問、参謀総長は「Block70/72からBlock80への変更事項を確認して報告する」と回答し、War Zoneは「このアイデアを喜んで検討すると言っているように見えた」と報じた。
参考:Air Force Chief Responds To Possibility Of Buying New ‘Block 80’ F-16s
参考:Air Force Reserve Pilots Short $26 Million for Flying Hours, Putting ‘Proficiency at Risk’
本当に「F-35Aを1,763機購入する」という約束が守られるのか怪しくなってきた格好だ
米空軍はF-15C、F-16C/D、A-10といったレガシーな航空戦力をF-35Aを更新する予定だが、依然として運用コストは高額なままで即応性=ミッション達成率(Mission Capable)も要求値に達しておらず、開発遅延を繰り返すBlock4についても「いつ完成するのか」という初歩的な質問にすら答えられない状況で、ブラウン参謀総長は2021年「全てのF-16C/DをF-35Aで更新すると空軍予算が運用コストの負担に耐えられなくなる」という脈略で「4.5世代もしくは第5世代マイナス」「F-16Vよりも高度でF-35よりは高度ではない」と表現する新しい戦闘機を導入したいと発言。

出典:U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Zeeshan Naeem
2022会計年度の予算要求資料にも第5世代マイナスに該当する「MR-X」が登場し、この資料の中で「ハイエンド任務以外に対応できる手頃な価格の戦闘機がMR-X」「本格的な開発に着手するのは6~8年先」「F-16C/Dを2035年頃からMR-Xで更新する」「運用コストが大幅に削減された場合のみMR-Xの役割をF-35Aが果たす可能性も残されている」と言及。
F-16プログラム・マネージャーを務めるベイリー大佐は「アップグレードされたF-16は2040年代まで飛べるため後継機=MR-Xはまだ必要ない」と、戦闘機プログラムを統括するホワイト准将も「F-16は耐用年数延長プログラム(SLEP)のおかげで2040年代まで空を飛ぶことができ、台湾の資金でロッキード・マーティンがF-16Vを開発して製造しているため、この最新技術を我々のF-16にも適用できる」と述べたものの、両者は「MR-X開発を語るはまだ早い」と言っているだけで検討自体は進んでおり、ベイリー大佐は「新規設計のMR-X」と「T-7ベースのMR-X」の存在に言及した。

出典:PHOTO BY Rev Hess
この話題はウクライナ侵攻の勃発によって優先順位が下がっていたものの、アルヴィン参謀総長は20日の公聴会で「現時点でBlock70/72を購入するつもりはないが、次の10年を見据えるとレガシーな航空戦力を更新するための調達オプションは限られている。(追加資金を与えれば新たに製造されたBlock80=輸出仕様のBlock70/72を米軍仕様に変更したバージョンで戦闘機戦力を強化することは可能かという議会の質問に)Block80への変更に必要な事項を確認して報告する」「産業基盤がBlock80に対して何ができるのか真剣に検討しなければならない」「なぜならBlock70/72の生産能力はFMSの需要で食い潰されているからだ」と証言。
War Zoneは公聴会のやり取りについて「空軍内にBlock80構想が存在するのか、公聴会で議論を行うためBlock80というニュアンスが使用されただけなのかは不明だ」「それでもアルヴィン参謀総長は新型F-16のアイデアを喜んで検討すると言っているように見えた」「アルヴィン参謀総長は公聴会で老朽化したF-16の後継機ニーズが高まっているとの訴えている」「空軍機の中でF-16の即応性は比較的高い部類だったが、2024年のミッション達成率は64%に低下している」と報じ、以下のように述べた。

出典:Lockheed Martin 生産ラインに入ったブルガリア向けのBlock70
“もう空軍は全てのプラットフォームをF-35Aで更新することを考えていないのかもしれない。空軍はF-35に注力しているものの本プログラムには莫大な費用がかかり、これは国防総省史上最も費用がかかるものだ。海外の顧客向けにBlock70/72が製造中であることを考えると、その改良バージョンの採用を空軍が検討していても不思議ではない”
空軍は資金節約のため完全なBlock4が完成するまでF-35Aの調達数を削減しているものの、老朽化したF-16C/Dの後継機ニーズは高まるばかりで、議会は航空戦力の近代化テンポに不満を持っているため「追加資金を与えればBlock80による戦力強化は可能か」と質問した可能性が高く、さらにCCAの登場で「将来の航空戦の形」も不透明になっており、本当に「F-35Aを1,763機購入する」という約束が守られるのか怪しくなってきた格好だ。

出典:U.S. Air National Guard photo by Staff Sgt. Sarah M. McClanahan アップグレードを終えたF-16のレーダー
因みにAN/APG-83を採用したBlock70/72(旧型機からのアップグレードを含む)と、AN/APG-83に換装した米空軍のF-16C/Dは同一仕様ではなく、Block70/72ではなく米軍仕様に変更したBlock80に言及したものそのためだろう。
追記:米空軍は「2025会計年度のパイロット訓練予算が9月上旬までに尽きて飛べなくなる」「このままでは空軍の即応性が低下する」と議会に警告している。
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※アイキャッチ画像の出典:Lockheed Martin フィリピン空軍向けに提案したF-16 Block70
言うほどF-16も取得価格は安くないですからね(運用経費はともかく)
T-7ベースのMR-Xはボーイングがキャパオーバーしそう
しかしケチった廉価版としてF-35を開発したはずなのになんでこんなことに
全然ケチってないからです。
F-16だって、あんなに恰幅が良くなり過ぎて。
F35とF16の稼働率を比較すれば、F35は低稼働率の分だけ、より多くの機体が必要になるという考え方もあるだろうなと。
F35の納期遅れが、力の空白を生みかねない状況ですから、F16最新版の方が武器として使い勝手がいいというのも一つの真理でしょうね。
軍需産業の経営面から見ても、F35のようにまともな納期すら見込みの立たない機体は、非常に厄介な製品なわけでして。
F16最新版の方が、生産プロセスも成熟していて、製造計画が立てやすいわけですから利益率が高くなる可能性すらあると思います。
ハイローミックスで考えた時、ハイ側のF-47とCCAがよっぽど強力でプログラムの進捗も有望なのでしょう。
日本はF-47にコミットしないと、この不良債権化したF-35を押し付けられる可能性がある。
誰がどう見ても今後の航空戦力はCCAのような無人機が主力になるのだから、F-35にさらなる資金を投じるのは無駄過ぎます。
日本に押し付けられるというのが、貿易赤字対策としても、充分に有り得そうなのが辛いところですね…
対中国を考えるとソフトウェアが万全でなくてもF-35にした方が生存性の面で良さそうですが、そうも言っていられないほど運用予算に問題ある…という話なんでしょうね
他にステルス機は…チェックメイト()
自分がチェックメイトになりそうなのでNG