米軍にとって中国やロシアが開発した極超音速ミサイルも問題だが、大半の陸軍装備を輸送する輸送船と航空機の展開を支える空中給油機も悩みのタネだ。
※本記事は2020年2月4日に公開した記事の再掲載です。
参考:Problems with Boeing’s new refueling tanker could cause a much bigger headache for the Pentagon
予算不足の影響は米軍の海上輸送を支える輸送船にも影を落とす
米軍は昨年、有事の際に海上輸送を担う輸送船部隊が上手く機能するか試すためストレステストを実施したが、その結果は無残なものだった。
陸軍と海兵隊が装備する陸上装備の輸送を担当する米海軍傘下の軍事海上輸送司令部は61隻の輸送船を保有しており、有事の際は稼働率85%を確保する計画だったが、61隻のうち22隻はドックから出ることも出来ない、ドックから出ることは出来ても実際に航行することが困難な状態で、ストレステストの為に起動された33隻の輸送船も幾つかの問題を抱え、輸送船の稼働率は40%程度しか確保されていないと報告された。

出典:public domain アルゴル級車両貨物輸送船
この問題の原因は輸送船自体の老朽化にあるのだが、特に問題なのは商業船舶に採用されなくなった「蒸気タービン」を装備している輸送船が多く、これを扱える人員を外部(民間)からかき集めてくることが難しくなっている点だ。そのためディーゼルエンジンやガスタービンエンジンを採用した新型輸送船の調達をすべきだという意見が出ているが、中国との戦いに備え355隻体制を目指す米海軍に予算の余裕はなく事実上、この問題の解決は先延ばしされている。
もう一つの問題は、米空軍が導入中の新型空中給油機KC-46だ。
ボーイングが開発した空中給油機「KC-46A ペガサス」は、空中給油用のリモートビジョンに欠陥があり、空中で燃料を移送するフライングブームは推力抵抗が大きすぎ給油を受けている航空機に悪影響を及ぼす可能性が発覚したため、米空軍とボーイングが対応策を協議中だが問題を修正するには2年~3年は掛かると言われている。
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米空軍は1月の時点でKC-46を30機受け取ったが、KC-46は上記の問題の影響で空中給油を行える機種が限定(F-16、F-35A、F/A-18、AV-8B、C-17、A-10、KC-10、KC-135、KC-46)されているためKC-135やKC-10を早期退役させることは難しくなった。
米空軍は老朽化の影響で運用コストが高いKC-135やKC-10を早期に退役させ、削減した資金を次世代戦闘機「F-X」や無人機の開発などの新しいプロジェクトに投資することを検討していたが、使えないKC-46が納品され続け、KC-135やKC-10の運用も継続しなければならず、空中給油機全体の維持・運用コストは逆に増えるという皮肉な結果になってしまった。
そこで米空軍は空中給油任務(フライングブーム方式)の一部を民間に解放することを検討しているが、空中給油業務を扱う民間企業はプローブアンドドローグ方式にしか対応していないため、実際に委託を実行するには時間がかかることが予想される。
日本もKC-46Aを2021年に引渡される予定だが、それまでに問題が解決する可能性は低そうだ。
※アイキャッチの出典:bptu / stock.adobe.com
KC-767は不具合なかったの?
聞かないね。
隠しているかもしれないが。
自衛隊の対象機材ではたまたま不具合出なかったという可能性もF-15、F-2、E-767だけだし
KC-46でできないのって、
プローブ(海軍):E-2C/D、ヘリ、オフプレイ系
ムーブ(空軍):F-22、B-1、B-2、E-4/E-8、RC-12Xなどその他の偵察機
あたり?
ブーム方式とプローブ方式はなんで統一されないんでしょうね
空母で空中給油機を運用するとなると、機体や空中給油用ユニットを小さくできるプローブ式になるからですね。
スーパーホーネットに空中給油ポッド付けたり、オスプレイに空中給油ユニットを取り付けて艦載機に空中給油できるようになります。
ブーム式は大型機になるので艦載型を作りにくいです。
平時から全世界対応の補給システムを維持してるのは米軍だけだし、それこそ米軍のパワーの源であり世界警察としての中核なんだから
それをお荷物って呼びはじめるのは自己否定でしかないんだけどね
自国最優先なトランプのやり方は矛盾して浮いてるように見えていても、実は弱体化しつつある米国の本音の表れと見ていいんだね