米国関連

米陸軍、2024年にタイフォン・システムをインド太平洋地域に配備予定

米太平洋陸軍司令官のチャールズ・フリン大将は18日「2024年にタイフォン・ウェポン・システムをインド太平洋地域に配備する」と明かした。このシステムはトマホークやSM-6を地上発射するためのシステムで「中国とのミサイルギャップ」を埋めるためのものだ。

参考:Army’s new Typhon strike weapon headed to Indo-Pacific in 2024

絶望的だった中国とのミサイルギャップ(射程500km以上の地上発射型ミサイル)を埋める準備が整いつつある

ロッキード・マーティンは「MK.41を流用したTyphon Weapon System=タイフォン・ウェポン・システムを陸軍に引き渡した」と昨年末に発表していたが、米太平洋陸軍司令官のチャールズ・フリン大将は18日「2024年にタイフォン・ウェポン・システムをインド太平洋地域に配備する予定だ」と明かした。

出典:ロッキード・マーティン Typhon Weapon System

米陸軍は中距離核戦力全廃条約(INF)失効を受けて射程500km以上の攻撃能力を開発中で、この能力はDark Eagleを運用する「Long-Range Hypersonic Weapon=LRHW」、トマホークとSM-6を運用する「Typhon Weapon System=別名:Mid-Range Capability long-range launcher」、HIMARSで運用する「Precision Strike Missile=PrSM」の3つで構成されているが、LRHWで使用するDark Eagleは弾頭にブースト・グライド・ビークルを採用しているため予想通り開発が遅延し、陸軍で調達を担当するブッシュ次官補は「Dark Eagleの年内配備も難しい」と述べている。

信頼性の高いMK.41を流用した「Typhon Weapon System」は移動式のミサイル発射装置で、ATACMSの後継ミサイル「PrSM(Increment1)」は射程500km以上の弾道ミサイルだが、Increment2では改良型シーカーを搭載して海上の移動目標にも対応した「対艦弾道ミサイル」に進化し、Increment4ではラムジェットモーターを搭載して射程が1,000km以上に拡張される予定だ。

出典:Lockheed Martin Long Range Maneuverable Fires missile(PrSM Increment4のデモンストレーター)

フリン大将はインド太平洋地域の何処に「Typhon Weapon System」を配備するのか明かさなかったものの「西海岸に配備される可能性はない」とも述べており、最も有力なのは米国領の中で最も台湾に近いグアム島だと予想されているが、同システムで運用するトマホークやSM-6(BlockIBの最大到達速度はマッハ5を越えるため簡易の極超音速兵器として機能する)では台湾周辺に届かないため、実戦を考慮するなら日本かフィリピンに配備されるだろう。

ただTyphon Weapon Systemを日本やフィリピンに配備するには当該国の承認(もしくは協定)が必要だと言われており、中国を刺激しかねないため当面はグアム島配備が妥当なのかもしれない。

出典:U.S. Army Typhon Weapon System

因みに12月中にPrSM(Increment1)のテストに関する最終報告書が発表され、問題がなければ年内に初期運用能力の獲得を米陸軍は宣言するらしい。

つまりTyphon Weapon SystemとPrSMを実戦配備する目処がついた=絶望的だった中国とのミサイルギャップ(射程500km以上の地上発射型ミサイル)を埋める準備が整いつつあるという意味で、フリン大将も「PrSMはHIMARSで使用される弾薬に過ぎない。そのためHIMARS配備に同意済みの国と新たな協議は必要ないと考えている」と述べた。

関連記事:LM、米陸軍にMK.41を流用したタイフォン・ウェポン・システムを納品
関連記事:米陸軍、トマホークとSM-6を流用してロングレンジウェポン開発に着手
関連記事:ロッキード・マーティン、精密ストライクミサイル射程延長版のイメージを公開
関連記事:豪州がHIMARSとNSMの購入契約を締結、将来的に1,000km先の目標を攻撃可能
関連記事:米陸軍の極超音速兵器「LRHW」は2,776km先の目標と交戦可能、日本配備も視野に

 

※アイキャッチ画像の出典:US Army Typhon Weapon System

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コメント

    • かませ
    • 2023年 11月 19日

    どう考えても大本命沖縄じゃないですかね
    話はそれますがイージスアショアの計画変更は本当にクソだと思います。
    防衛の面からも財政の面からも

    20
      • 寧々
      • 2023年 11月 19日

      まぁしかしアショアなんて飽和攻撃の的ですからね。
      政治的にはクソでしたが、軍事的にはイージス艦の純増ってことで悪くないかと。
      まぁ人員不足から始まった計画なのに、増えてどうするって話はそうなんですが。

      40
        • 分析
        • 2023年 11月 19日

        アショア基地があれば当然先に潰そうと敵国はする訳で、本来何もなかった秋田の片田舎に飽和攻撃降ってくる恐れはありましたね。
        基地があってもなくても敵が来るとは言いますが、大規模爆撃リスクは基地がある方が確実に高くなると思います。
        東京に降って来るミサイルが秋田に吸われることで、秋田県民の人命を気にしないなら、より多数を助けられるという考えもありますが…
        そんな少数を捨てる考えを現代国家で採用したくはないです

        14
          • 7c
          • 2023年 11月 20日

          アショアを2基設置、だから飽和攻撃喰らうんだから、景気良くダミー合わせて8基程度の計画作りゃ良いんじゃね?

          3
      • 干物
      • 2023年 11月 19日

      経緯は本当にアレなんですが
      市街地へのブースター落下を懸念してSM-6の運用能力が削除された時点で
      国内でのアショアの有用性は無くなってしまったので中止になったのは不幸中の幸いじゃないですかね?

      11
      • Artillery
      • 2023年 11月 19日

      財政的にはアレですが、ミリオタ的には世界最大かつ陸上版フルスペックのイージス艦というのはそそる物があります。
      結果的に防衛費増額と重なって他にしわ寄せも行きませんでしたし、これで良かったんじゃないでしょうか。

      20
    • たむごん
    • 2023年 11月 19日

    日本も、ミサイルやドローンの生産準備・備蓄を粛々と進めて欲しいですね。

    円安により、製造業の国内回帰が進んでいますから、この機会に製造業の基盤整備を進めれば、軍事産業の裾野の強化に繋がります。

    28
      •  さ
      • 2023年 11月 20日

      問題はシェア的な問題から、ドローンを生産する企業が採算取れるかどうかかなり疑問という事かなぁ
      企業だから当然、儲からない、赤字になるような事はできないわけで
      国営でやるならあるいは?だろうけど、それはそれで、左派とかから叩かれそうなんだよなぁ…

      3
        • たむごん
        • 2023年 11月 20日

        まさに、仰る通りです。
        ドローン規制が、あまりにも稚拙で厳格すぎたため、ドローン産業・生産基盤がほぼ死滅してしまいました。

        左翼の方々も、産業現場を知らない方々が高齢化により増えているでしょうから、日本は昭和の製造業大国のまま知識が更新されてないのかなあと…。
        令和の日本の防衛力は、軍事力の基盤となる工業力は凄まじく低下(町工場~大企業まで)しているため、相対的に見て弱体化してる事を理解していないのでしょうね。

        2
    •  
    • 2023年 11月 19日

    先島諸島を沖縄県から分離して先島県にすれば現地の許可を得やすいと思うんですけどね
    先島諸島の石垣や宮古は台湾に近く、漁業関係者は中国から直接嫌がらせを受け危機感が強い
    それに対し沖縄本島は中国より、米軍や基地負担を押し付ける本土を嫌ってる
    沖縄県の人口の9割が沖縄本島なので、先島諸島の人が危機感もってても沖縄本島の左寄りの民意ばかり反映されてしまってる
    先島諸島の人たちのほうが本土と利害が一致してるので、こちらの民意が反映されるようにするのが国益になるんですよね

    32
      • 幽霊
      • 2023年 11月 19日

      先島諸島を分離して先島県した上で沖縄県の米軍基地を移設させれば沖縄県も納得するでしょうね。
      沖縄県も米軍基地が無くなってハッピーですし先島諸島も税収源確保と安全を確保できる両者両得です。

      3
        • Artillery
        • 2023年 11月 19日

        沖縄本島の広大な米軍基地を小さい島々に移設するのは無理がありませんかね…。
        補給の面から米軍も嫌がりそうです。
        また、九州防衛の観点からも先島諸島への移設はマイナスです。

        16
          • 匿名11号
          • 2023年 11月 19日

          となると、メインの移設先は台湾ですかねえ。

          縦深もあるし産業も大きな港湾も近くにあるわけで根拠地としては申し分ない。
          毎年2500~3000屋円の沖縄振興予算を転用することで、基地建設もかなり進むと思います。

          1
            • たむごん
            • 2023年 11月 20日

            辺野古地域のために、沖縄振興予算を介さずに、直接交付金が創設された事例があります(沖縄県庁が差配する権力を低下させたということですね)。
            沖縄本島・反対地域の基地負担を減らすと同時に、基地負担を新たに引き受けてくれる地域に、沖縄振興予算減額分を直接振り分ければいいという考え方でですね。

            馬毛島の基地建設では(鹿児島ですが)、周辺がバブルになっており、喝采しているようですね。
            南西諸島の自衛隊配備についても、若者・子供の増加、地域振興予算により、反対だった方々(地元在住者)も穏健になっているという話もあります。

            9
        • 成層圏
        • 2023年 11月 20日

         沖縄には二重構造があって、江戸時代に薩摩と中国に二重服属しており、そのため二重に税を納める必要があり、沖縄本島(琉球国)は周りの石垣島などの島に沖縄本島よりかなり高額の重課税をしておりました。
        そのためか、沖縄本島の人は他の島の人を下に見て、逆に離島の人は沖縄本島の人を恨んでいた(当たり前か)らしいです。
         今でもこの雰囲気が残っているんじゃないですね?知らんけど。

        8
      • チャイ子腐好き
      • 2023年 11月 19日

      その考え賛成です。
      まず歴史的経緯も含めて、沖縄本島民の宮古島石垣島に対する軽んじる意識があり、特にヤマトンチューにいい様に
      やられてると言う被害意識が強い割には、沖縄本島民の先頭諸島民への無遠慮さはモヤモヤするところがあります。
      まして南大東島は小笠原の開拓民ですから文化的にはマレーシアとポリネシア(赤道直下というくらいしか共通点無いよ)
      ぐらい違います。
      ですので、南大東島は東京都へ、先島諸島は諸島管轄に手慣れた長崎県(佐世保もあるし)の管轄にしては如何でしょう。

      20
    • 折口
    • 2023年 11月 19日

    従来の憲法解釈において限りなく黒に近いグレーだった島嶼防衛用高速滑空弾(事実上のMRBM)がすんなり受け入れられたのは、防衛省が分かりづらい名称をつけて用途をぼかしていたからだけではないそうです。米国は公表以前からLRHWの日本配備を日本政府に打診しており、その下地として日本主導での長射程兵器の配備方針を先に出しておきたい官邸や外務省の意向が働いた結果だとか。似たような話はオスプレイ採用の時もありましたが、米国がそう望むならタイフォンもそのようになるんでしょう。

    9
      • たむごん
      • 2023年 11月 20日

      仰るような装備を積み上げながら、国内法整備・準軍事同盟の推進が、日本が進めている安全保障の方向性に見えますね。

      中国軍の動向を見れば、第一列島線周辺に圧力を掛け続けて、弱い国・弱い場所を探りながら既成事実を積み上げ続けています。
      極超音速ミサイル・中射程弾道ミサイルが中国の強みの1つと言われていますから、抑止力の観点から、日本も配備しておきたい所ですね。

      4
    • SIERRA GOLD
    • 2023年 11月 19日

    このタイフォンシステムって、SM-6撃てるなら地対空ミサイルシステムに転用出来ませんかね?
    もちろんレーダーやFCSの開発は必要でしょうけど…
    Mk41VLSベースなら、SM-3とかも撃てるようにして、一気にロシアのS-400/500クラスの地対空ミサイルシステムにしたりとか。
    アメちゃんの空軍力なら不要かもしれませんけど、日本含め仮想敵国に対して航空劣勢に陥る可能性のある国にとってはあっても良いかもしれません。

    2
      • 半分の防衛費の国から
      • 2023年 11月 20日

      アメリカで同じ物を開発して、それを導入するなら追加費用は掛からないですけれど、アメリカに無い機能を付与しようとすると、開発費用も日本負担になり、金額が凄い事になるので、日本は日本で開発しているはずです。トマホークの購入は繋ぎの意味での購入なので、国産で大型の弾道ミサイル迎撃も可能な移動式の統合防御出来るシステムを希望した方がよさげです。防衛増税もあるし、なるべくお金は日本国内で流通させる方向で考えた方が良いです。

      参考
      日本のミサイル開発史
      リンク

      2
    • 58式素人
    • 2023年 11月 20日

    米陸軍用イージスに見えます。
    悪いとは言いませんが、他のやることないのかな。
    砲弾の増産とか。

    1
      • nachteule
      • 2023年 11月 20日

       良く分からない主張ですね。タイフォンにイージス戦闘システムなんか使いますか?状況次第でトマホークが低速、SM-6が高速の対地対艦ミサイル扱いになりそうだけどロングレンジの対地を主目的とする物で一般で言うような防空用じゃ無いでしょう。
       それともある程度あらゆる脅威に万能に対応できそうだからイージスって考えですかね?
       

      2
    • かず
    • 2023年 11月 20日

    SM-6を筆頭にクソ高い故に数を揃えられないのが最大の欠点だろうか

    3
    • Whiskey Dick
    • 2023年 11月 20日

    「地上発射型巡航ミサイル」
    「対艦弾道ミサイル」
    アメリカ軍が中国・ロシアの真似をするとは興味深い。発射プラットフォームとしてみれば陸上車両の方が航空機・船舶より運用コストが安く、隠蔽性に優れている。また無人機や衛星を使って目標を補足できれば長射程兵器の発射プラットフォームは何でも良い訳だ。
    因みに海兵隊が戦車と装甲車を削減して対船舶ミサイルと地対空ミサイルを配備する計画は「陸上自衛隊を真似ている」と「軍事研究」誌に評されていた。海兵隊も攻めから防御側の軍隊に変貌している。

    2
      • 7c
      • 2023年 11月 20日

      戦果を上げるため、相手の士気を下げるためならマネくらいするでしょ。
      航空空母の運用は日英の方が早いし、ステルスの概念もソ連時代のロシアが発祥だし。
      またまた言うならミサイルが(以下ry

      2
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