米国関連

中国の偵察能力を飽和させる方法? 新マンハッタン計画は米海空軍協力の象徴

米海軍の最新鋭「ジェラルド・R・フォード級空母」2番艦が12月7日、洗礼式を迎え正式に「ジョン・F・ケネディ(CVN-79)」と命名されるという話と、米海軍と米空軍の協力を象徴する「新マンハッタン・プロジェクト」と何を意味するのか?

参考:New Gerald R. Ford-class Aircraft Carrier John F. Kennedy to Be Christened Dec. 7

正式にフォード級空母2番艦が「ジョン・F・ケネディ」と命名される

バージニア州ニューポートニューズ造船所で12月7日、米海軍の最新鋭「ジェラルド・R・フォード級空母」2番艦に対する洗礼式(船首にシャンパンボトルを叩きつけて割る儀式)を行い、正式に「ジョン・F・ケネディ(CVN-79)」と命名される。

出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Adam Ferrero/Released 10月29日、空母「ジョン・F・ケネディ」が横たわる乾ドックに海水が流れ込み始めた様子

この洗礼式には、駐日米国大使としても活躍したケネディ大統領(第35代米合衆国大統領)の長女、キャロライン・ケネディ氏(現在はボーイング社の取締役)が出席し、シャンパンボトルを船体に投げつける予定だ。

空母に「ジョン・F・ケネディ」と命名するのは今回で2回目となり、初代は1950年代から60年代にかけて建造された「キティホーク級空母(2007年に退役)」4番艦が「ジョン・F・ケネディ」と呼ばれていたが、2007年に退役した。

ジェラルド・R・フォード級空母「ジョン・F・ケネディ」は洗礼式を受けた後、乾ドックから出渠しニューポート・ニューズ造船所の桟橋に係留され艤装工事が行われ、2024年頃に海軍に引き渡され就役する前後に、ニミッツ級空母1番艦の「ニミッツ」が退役する予定だが、1番艦の空母「ジェラルド・R・フォード」はトラブル続きで未だに実戦任務に就く事ができず、2番艦も予定通り就役できなければ、空母「ニミッツ」の退役が延期されるかもしれない。

新マンハッタン・プロジェクトは米海軍と米空軍の協力を象徴する存在?

米海軍は中国と戦うために、空軍と協力し戦力を相互に繋ぐための戦闘ネットワーク構築を進めている。

参考:The US Navy and Air Force have teamed up on a new ‘Manhattan Project’

このアイデアを簡単に説明すれば、米海軍は空母を中心に艦艇を密集させるのではなく、広範囲に戦力(艦艇を含む)を分散させ相互にネットワークで結ぶことで、戦闘効率は向上し、中国の偵察能力に与える負担は極限化(=飽和)させるというものだ。

出典:public domain

ここで言及された「戦力」とは、水上艦や潜水艦といった艦艇だけでなく航空戦力や無人機も含まれており、ここに空軍の航空戦力も連結することでネットワーク全体で敵を見つけ出し、ネットワーク全体で対処することで個々の性能に左右されない巨大な戦闘ネットワークが誕生するという意味だ。

要するにミサイルの射程を延長しても、その射程を生かした戦闘を行うためには信頼できるネットワークに接続し、目標の情報やミサイルの中間誘導をリレーしあうなどネットワークに繋がれた戦力で戦闘を共有しなければ、中国やロシアに効率良く対抗することができず、これを迅速に実現するため「新マンハッタン・プロジェクト」が登場することになる。

当初、このような戦闘ネットワークを構築するのには約15年かかると言われており、海軍は構築に掛かる時間をもっと短縮するため空軍と協力し、第2次大戦中に原子力爆弾を短期間に完成させた「マンハッタン・プロジェクト」のように迅速にプロジェクトを進めなければならないと主張している。

要するに空軍や海軍といった組織の垣根を越え、共通する敵に対処するための行動や協力を行うことを「新マンハッタン・プロジェクト」と呼んでいるのだ。

このような考え方が浸透すれば、別々に行われている第6世代戦闘機開発が再統合され、再び統一された第6世代戦闘機の開発に繋がる可能性がある。

出典:public domain センチュリーシリーズと呼ばれたF-105 サンダーチーフ

米空軍は第6世代戦闘機について、長い時間をかけて万能な戦闘機を1つ開発するのではなく、過去のセンチュリーシリーズ(F-100番台の戦闘機群の総称)のように、技術的にもコンセプト的にも「特徴」を持った数種類の戦闘機を5年程度のサイクルで次々と実用化し、対応する側の能力を飽和させることを目標にした「デジタル・センチュリーシリーズ」構想を立ち上げた。

出典:public domain AIM-54を発射するF-14

一方で米海軍は、F/A-18E/Fの後継機として「F/A-XX」プロジェクトを立ち上げ、米空軍が求める「敵空域を貫通」し奥深くまで侵攻を可能にする高度なステルス性能など必要なく、どちらかと言えば艦隊防空に特化した「F-14 トムキャット」に近いコンセプトで第6世代戦闘機を開発しようとしている。

両プロジェクトとも第6世代戦闘機に対するコンセプトに違いはあるが、両者とも開発費捻出が問題となっているため、そのあたりの突破口が「新マンハッタン・プロジェクト」にあるのかもしれない。

 

※アイキャッチ画像の出典:pixabay

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