ミュンヘン安全保障会議に出席した米下院軍事委員会のアダム・スミス委員長(民主党)は「人々の間で『ウクライナがクリミアを軍事的に奪還するつもりはない』というのが共通認識になってきたと思う」と明かした。
参考:‘Ukraine is not going to militarily retake Crimea,’ top Democrat says
最低でもクリミアが非武装化されない限りウクライナは安全にならない
ウクライナのゼレンスキー大統領や政府高官は「クリミアを含む占領地域の隅々まで奪還する」「主権に関わる領土問題で譲歩はしない」「和平交渉は占領地域からロシア軍が完全に撤退した後で」と主張し、これに必要な武器や装備の支援を西側諸国に訴えているが、ミュンヘン安全保障会議に出席した米下院軍事委員会のアダム・スミス委員長(民主党)は「人々の間で『ウクライナがクリミアを軍事的に奪還するつもりはない』というのが共通認識になってきたと思う」と明かした。

出典:U.S. Air Force photo by Tech. Sgt. Jensen Stidham
スミス委員長は「どこかの時点で交渉による戦争の終結があると思うが、最高のシナリオは『一つのウクライナ』を交渉で実現することだ。ただ本当の問題の戦いが終結した後、再びロシアが同じことを繰り返さないための安全保障をウクライナが得られるかどうかだろう」と語り、クリミアを奪還するための戦いを仕掛けるかどうかについても「ウクライナ次第」と述べており、この発言を受けて米POLITICOは「この戦争を終わらせるため何らかの合意を実現する必要があるという見方がワシントンで強まっている」と報じている。
このような発言の背景は国防総省の極秘ブリーフィングが関係している可能性が高く、先月末に国防総省の高官は下院軍事委員会に対して「短期的にウクライナ軍がクリミアを奪還できる可能性は限りなく低い」と報告しており、スミス委員長の発言をわかり易く噛み砕くと「主権と領土の一体性を軍事的手段で達成するのは現実的ではないため交渉で実現した方がいい」という意味で、最も良いのは2月24日以降にロシア軍が獲得した占領地域、独立を主張するドネツク・ルガンスクの両人民共和国、2014年に併合を宣言したクリミアをウクライナが回復するシナリオだ。
ヌーランド国務次官はカーネギー国際平和基金主催のイベントで「最低でもクリミアが非武装化されない限りウクライナは安全にならない」と語っており、これを交渉でどのように実現させるは不明だが、少なくとも準備を進めている反攻作戦で何らかの軍事的成果を示さなければ「交渉で戦争終結を図る」というプランは絵に描いた餅に終わってしまう。
因みにロシア軍は命を顧みない兵士の波による攻撃でウクライナ軍側は「不公正な命を交換(訓練も装備も未熟な兵士と質が高い兵士の交換は割に合わないという意味)」を押し付けられているが、NATOの高官は「ジレンマを押し付けられているのはロシアも同じだ」と述べ、ゼレンスキー大統領がクリミアを諦める素振りを全く見せないため「ロシアはクリミア防衛に一定の戦力と装備を割かなければならず、この現実は軍事的にも経済的にもクレムリンに犠牲を強いている」と主張しているのが興味深い。

出典:Telegram経由
まぁ西側諸国は表向き「ロシアの侵略と戦うウクライナが求め続ける限り支援を続け、どこまで戦って和平交渉をいつ始めるのかはウクライナ人が決めることだ」と述べているため、クリミアを軍事的に奪還するつもりはないというニュースが聞いてもロシアは到底信じることができず、どれだけ資金と物資を投入してクリミアの防衛を強化しても本土とクリミアを結ぶ橋を破壊されると兵站的に孤立してしまうので、ザポリージャ戦線の戦いは戦争の結末を左右する可能性を秘めている。
おまけ
NATO加盟国は「ドイツはレオパルト2のウクライナ移転を承認すべきだ」と迫り、少なくない加盟国が提供に関する合意が形成されれば「レオパルト2を提供してもよい」と主張もしくは示唆していたものの、いざゴーサインが出ても集まりが悪く、今度はドイツから「この種の戦車を提供できる国は直ぐ行動すべきだ」と呼びかけ始めた。

出典:Photo: SGM Marco Dorow, German Army
ショルツ首相はミュンヘン安全保障会議で「パートナーの提供決断を後押しするためドイツ国内での訓練、物資やロジスティクスの面でも支援を提供するなどあらゆる対策を講じてきた」と訴えており、1ヶ月前とは立場があべこべだ。
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※アイキャッチ画像の出典:Генеральний штаб ЗСУ
調子いいこと言ってドイツを責めたけど今度は自分がツケを払う場面になったらモジモジ
みっともねぇなぁ?
NATO諸国で戦車を新造している国はないので、こういう事になる。
Leopard1でもAMX-30でもかき集めて、改修して送るしかない。
M48/60系列は、残って無いのか?
Leopard2はまだ新造しているし、自称「改修」も実際には車体の新造も行っている。
M1も改修という名目なだけで実際は相当部分の部品を製造している。
トルコならレオ1やM60を大量に保有しているがキナ臭いから戦力減はしないだろうな。台湾もM60をかなり保有しているし、これは新型の供給次第だろうが中国の方がキナ臭いし放出は出来るが即応性はなく先の話。
まだ早いと思われるのがカナダやドイツが保有するレオ1ぐらい。M48なら貴方が大好きな韓国が運用もしているけど、放出しろって書かないの?
民主主義擁護のために血もカネも流すつもり皆無の極東のネット民は、民主主義のためウクライナはプーチンが死ぬまでやっつけろー、西側は無限に何でも軍事兵器を供与しろー、論調もヤツも居るし、
責任がないやつは、言う事も本当に無責任。
結局みんな自国の利益を第一に考えてるって事やいね
自国の負担を少なく
かつ他国によるウクライナ支援は出来るだけ大きく引き出したい
ドイツくんは例の如く貧乏くじを引かされ良い迷惑やし
アメリカ様に至ってはキレちゃうんじゃないのこれ
「ドイツが承認すればすぐにでも渡せるのに残念だなぁ」みたいなのはやっぱ建前だったんだなw
「ヘルソン取るぞー!」って言いながらハルキウ反攻した時のパターンかな?
千島列島全部と南樺太を返せ
と言い続けてたら今頃は4島どころか千島列島の半分ぐらいは返還されてたでしょうね。
ロシアは全部失わず半分ゲット出来て日本は4島以上が返ってきてWINWIN
ゼレンスキーがクリミアを諦めるそぶりが全く無いのは交渉における基本のキであって、当たり前の話であり
記事にもある通り、それでクレムリンに有効打を与えてるわけです。
日本が北方領土返還を求めて行うべき手法も基本的に全部返還に固執し、ソ連・ロシアが一笑に付した場合は、
沖縄で反基地運動で騒ぐ外国人のように、極東ロシアで「シベリア共和国」成立を叫ぶ見るからに胡散臭い連中を明らかに日本の影をチラつかせながらロシア国内に育成したり、
中国と沿海州について今後の領土配分について交渉を始めたりして「日中が組む素振り」を見せたりして揺さぶりをかける事で
カードを作っていき、日本との不可侵条約を破って侵攻した事を後悔させてロシア側に「日本から奪った土地さへ日本に返せば日本のストーカー行為から解放される」という動機付けをしていくのがセオリーです。
日本では驚くほど頭の回らない素人集団が戦前から戦後一貫して国の外交を仕切ってた実態がゼレンスキーの振舞いを見てもわかりますね。
根本的な話として、日本人は外交は「相手と仲良くする事」だと勘違いしていますが
世界は外交は「相手の嫌がる事を突くことだ」と考えている位に認識に差がありますからね。
一応、これでも明治期には比較的まともな外交が出来たのだから、本当に追い込まれない限り
他人を信用し、嫌なことから目をそらそうとするナイーブ性格が表に出てくるのでしょう。
外交とは、武器を用いない戦争である
お花畑さんには永遠に理解できない真理です
千島と南樺太全部要求したら、今頃千島の半分帰ってきてたなんて話こそお花畑でしょう。
相手に渡すインセンティブがあれば帰ってくるだけで、ロシアには返還の十分なインセンティブがないだけです。
外交は別に日本に都合のよいことだけが起こる魔法ではないので、相手に何かを要求したら、何かを失うのです。
外務省に至らぬ点は多々ありますが、少なくともこのツリーの人たちよりはまともでしょう。
何を言ってんだか。返す理由がない以外に理由があるとでも?
そもそも日本は千島も樺太も”放棄”していることはご存知?「千島列島全部と南樺太を返せ」なんて言ったら、ソ連は堂々と安保理で非難したでしょうね。何ならそれを北海道へ攻撃したかもしれない。だからこそ条約上では2島返還論の方が説得力があるんですから。
それに、”中国と沿海州について今後の領土配分について交渉を始めたりして”
こそ西側から爪弾きにされる行為であり、中露が非難されているど真ん中の行為でしょ。
つまんないプライドのため、大事な西側市場を捨てる意味はあるとでも。
>カードを作っていき、日本との不可侵条約を破って侵攻した事を後悔させてロシア側に「日本から奪った土地さへ日本に返せば日本のストーカー行為から解放される」という動機付けをしていくのがセオリーです。
なんのセオリーだか知らんが、要は嫌がらせをされてるから中国に尖閣は渡せっていってるのと変わらん気がするがな。
レジームチェンジの際には日本にとって本来あるべき論で考えればよいのですよ。はなから相手の土俵だけで自国に不利な環境に閉じ込め続ける必要はないのです。
日露の邂逅以来、樺太含めた領域に侵略してきたのは日本ではなくロシアの側です。日ソ中立条約を破り、ポーツマス条約で確定して平和的に続いていた国境線を一方的に侵略したのはロシア帝国の末裔ソビエト連邦です。
日本にとり不公正なサンフランシスコ条約を、日本が放棄した側面ばかり強調されるのには違和感があります。機を見てひっくり返せばいい話じゃないですか。ロシアだってやってきてますし。ブレスト=リトフスク条約しかり。
安易な突撃バカも困りますが、したり顔で取り戻せる機会やモチベーションまで潰そうとする考えには賛同しかねます。国際社会の過剰な反発を喰らわない程度に徐々に日本の『確信的利益』な領域に理解を得る様にしていってもよいかと。卑近な例としては、クリミアはロシアのものと言う考えが国際社会のオピニオンリーダー層でも一定の浸透が見られるように。
戦争やってるんだから領土は交渉ではなく武力で取り返さなければならない・・なんてルールは存在しない。最終的に取り返せれば無問題。第四時中東戦争の時のエジプトを見よ。
クリミアも含めた全占領地区を、即時両軍撤退の上で、ベラルーシの信託統治領にすることを提案します!!
ルカ狸「(椅子からズッこける)」
その狸はズッコケてるけど、「極限の状態においてロシアとは同調しなかった実績がある」ロシア寄りの緩衝国管理というのは、西側的にはかなり上々な妥協範囲じゃないですかね。変にトルコやイランがイキるより、よっぽどいい。
プーチンも、「ロシアのポチ」ベラルーシ管理なら妥協の範囲じゃない。
ゼレンスキーも、クリミア、ドネツク含めた上で、割譲ではなくロシア以外の国による信託管理というなら、国内世論を妥協させる余地があるんじゃない。
・・・狸さん?オシッコちびってるけど大丈夫?
非武装化ってのは支配するって意味でしょ。ロシアがウクライナに対して言ってる事と同じ意味さ。
仮にクリミアを軍事的な手段で奪回しようとすると民間人の死傷者が跳ね上がるから、西側支援国としては甘受できないだろう
ロシアはクリミアを本土と見なしておるので
ここに地上部隊で侵攻されるような事態になれば
核兵器の使用も躊躇しないだろう
戦争前から親ロシア系住民が過半を占めており
軍事能力的にも政治的にもウクライナの奪還の目は無さそうに見える
でも落ちぶれて疫病神と化したロシアに対して親ロシアでいられるかどうかはわからんよな
鉄のカーテンの向こう側に行く覚悟があるのかどうかだし
戦前とはロシア側につく意味が完全に変わってくる
民族的にはロシア語話者のロシア人が大半であるクリミアの住民が
経済的にはもはや外国の支援なしで成り立たず
言語や音楽や文学などロシアに繋がるもの全てを排斥抑圧している
今の民族主義が荒れ狂うウクライナに属したいと思うとかお花畑だよ
生活の苦しさで言えば制裁下のロシアのほうがウクライナよりよほどマシだし
この戦争終わってロシアが何得るかと言ったら弱い独裁国ですからね…
2014年から占領地域でまともに経済成長できてないし、戦争終わってからが地獄になりそうで大変そうです。
ミュンヘンでの発言を見るにショルツは戦車提供を渋り出したヨーロッパ諸国に相当苛立っているようですね。
また、別の記事ではドイツ国内でのウクライナへの軍事支援に反対の声が多く、ドイツ国内でも一体性がないことをショルツ自身が認めたようです。
一部ではショルツとマクロンの不和の可能性も報じられています。
そりゃそうですよね。
あれだけ圧力かけられて国内世論の反対を押し切って承認したのに、承認後になると急にどの国も消極的になって。
ドイツの政権を不安定化させただけじゃないかと。
冷戦終結後の経緯の中でクリミア州議会はウクライナからの独立を決議してます。その際ロシアは独立を後押ししようとしましたが第一次チェチェン紛争の影響等で挫折。1996年のウクライナ憲法によりクリミア自治共和国という地位が確立しましたが、当時クリミアでロシア語を母語(≒ロシア系ないし親露派)とする人口は7割超に及びました。
2014年、ヤヌコーヴィチ(ドネツィク州出身)大統領が政権を追われたのをきっかけに親露派の反ウクライナデモが拡大。その後の経過は周知の通りです。
つまり、もともとクリミアはウクライナ独立当時から親露派が大多数を占める。たとえ武力奪還できたとしても、ウクライナ政府に従属させるのは困難を伴いそうです。八方が妥協できる何らかの妙案が必要と思います。
少なくともドンバス・クリミアには高度な自治を認めなければなりません。
しかしそれをドンバスにすることで合意したはずのミンスク合意を、ウクライナ
政権は守らず、保証者として参加したドイツフランスの元首脳が「ウクライナの
武装を強化する為の時間稼ぎだった」と自白しているのです。
これでは信頼関係が破綻するのは当然です。
残念ですが、もはや全当事者が納得する未来はないですね。
この地域は朝鮮半島に近い状況になるかもしれません。
昨年のハルキウ州攻勢みたいなのを何度もできるなら一息でクリミアまで取り戻すロードマップもあったのかもしれませんが、ヘルソン州の右岸攻略以降は戦線が固まっていますからね。こういう予測が出てくることもあるでしょう。
それこそ一度停戦して、数ヶ月か数年か10年以上か分かりませんが戦力補充をする選択肢もあると思うんです。時間はロシアに有利に働くのは然りですが、短期決戦で勝利する見込みが減ってきている以上はロシアに回復を許しつつも自国の回復力にかけるしかないでしょう。停戦はウクライナ側にも利点はあります。今までは戦時下で短期で出来ることばかりにリソースが割り振られてきたところを中期長期での戦力再建が出来ますし、戦時下ということで締結できなかった外国との武器取引契約や防衛条約も結べるでしょう。仮に停戦したとしても、ウクライナが失地をロシア領と認めない限りはロシアによる侵略の違法性も揺るがない訳で、現在国際社会がロシアに科している制裁の全てが無くなる訳ではありません。当然ロシアはその事も見越して早期に再侵攻に出るでしょうし、国際社会と連携してそこをどのように対処するかという課題は残りますが。