国防総省はアフガニスタン軍崩壊を警告していた報告書の機密指定を今月18日に解除、アフガニスタン復興特別監察官は完全撤退の8ヶ月前にアフガニスタン空軍が機能しなくなることを警告していた。
参考:Before pullout, watchdog warned of Afghan air force collapse
SIGAの指摘を知った上で撤退強行し、能力も装備もあるのに戦わず降伏したとアフガニスタン軍に全責任を押し付けているなら流石に酷すぎる
ブッシュ大統領はアフガニスタンにおける米国の取り組みや進捗状況を監視・追跡して問題点を議会に報告するため2008年にアフガニスタン復興特別監察官(SIGA)を創設、アフガニスタンと米国の指導者が犯した失敗、横行する汚職、アフガニスカン軍の欠点などを四半期毎に議会へ報告していたが、2021年1月に提出した報告書だけは国防総省から機密指定を受けて昨日まで公開されてこなかった。
監察官チームはAP通信に対して「SIGAの報告書が国防総省から機密扱いを受けるのは非常に稀で、通常なら2ヶ月以内に解除される機密指定がなぜ1年以上もかかったのかも何も分からない」と語っているが、問題の報告書は米軍完全撤退の8ヶ月前にアフガニスタン空軍が機能しなくなることを警告する内容で、アフガニスタン軍第215軍団を率いてカーブル陥落寸前までタリバンと戦ったサミ・サダト中将の指摘した問題と完全に一致する。
バイデン大統領はカーブル陥落後の会見で「アフガニスタン軍が自ら戦わない戦争で米軍の兵士が命を落とすようなことがあってはならない」と主張、ミリー統合参謀本部議長も「アフガニスタン軍には国を守る能力も装備も規模もあったのに意思とリーダーシップの問題で失敗した」と語っていたが、サダト中将はニューヨーク・タイムズ紙に「アフガニスタン軍が最終的に戦意を失い多くの兵士がタリバンに降伏したのは事実だが、そこ至るまでの現実的な経過を明かすことで我々の名誉を守りたい」という趣旨で記事をカーブル陥落後に寄稿。
サダト中将は記事の中で「空のからの支援を前提にした戦い方を米軍に教えられ我々には211機の航空機があったが、バイデン大統領の発表を受けて保守作業を請け負っていた1万7,000人の請負業者が7月までに去ってしまいヘリコプターや輸送機の補給に頼っていた部隊はタリバンに降伏、航空機に組み込まれていたソフトウェアや兵器システムを請負業者が持ち去ったため精密誘導兵器を用いた航空支援が行えなくなり、タリバンに対する戦術上の優位性を失ったアフガニスタン軍は崩壊した」と生々しく敗戦理由を述べていたが、問題の報告書はサダト中将の指摘が正しいものだと裏付けている。
SIGAは2021年1月に提出した報告書の中で「2010年~2019年の間に米国はアフガニスタン空軍と特殊部隊の創設と育成に85億ドル/9,740億年を支出、2019年以降は自律的な成長と発展に方針を変更したものの米国政府から同取り組みの仕事を請け負った業者がパイロット育成に重点を置いていたため保守要員を含む空軍職員の86%がまともな訓練を受けておらず、保守業務を請け負っていた米業者を排除すれば空軍は重大な支障を来すことなる」と指摘、つまり完全撤退の8ヶ月前にパイロットばかり育成して保守要員を全く育てていない歪なアフガニスタン空軍の構造と請負企業の問題をSIGAは警告していたのだ。
この報告書をバイデン大統領やミリー統合参謀本部議長が目を通していたのか不明だが、もしSIGAの指摘を知った上で撤退を強行し「能力も装備もあるのに戦わず降伏した」とアフガニスタン軍に全責任を押し付けているなら流石に酷すぎるだろう。
成立した2022年度の国防権限法はアフガニスタン戦争の調査を行い議会に報告することを国防総省に義務付けているため、恐らくバイデン大統領が「米軍が撤退してもアフガニスタン軍だけでガニー政権を維持できる」と主張した根拠についても調査が行われる可能性が高く、機密指定が解除されたSIGAの報告書などは今後大きな注目を集めるかもしれない。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo/Staff Sgt. Larry E. Reid Jr., Released
まあある意味そのおかげでタリバンによる元アフガニスタン軍の航空戦力の維持管理ができないと言う結果をもたらしているわけですね。
保守要員育てないのもひどい話だけどいざという時になって航空機のソフトウェア抜き去ってトンズラは鬼畜すぎるだろ…
軍人という公務員の無責任、あるいは政治家というぺてん師のウソ
どっちもあり得る話だから、この先を知りたい
誰が本当のことを隠してたのか
それはそうです。
ソフトウェア抜き去ってトンズラは請負業者の自己判断なのか契約に基づくものなのかアメリカ政府による要請なのかそこら辺も明らかになってほしいですね。
>航空機に組み込まれていたソフトウェアや兵器システムを請負業者が持ち去った
についてだろうけどそもそもそのソフトウェア・兵器システムが
・米軍から請負業者への官給品だったりしたら最後に返す必要あり
・請負業者の所有なら私企業の財産だから一方的に損押し付けられない
なのでそれらがアフガン軍の物でない限りは請負企業責めてもしゃーなしよ
とはいえジェット機なんか1機も無い、ターボプロップのCOIN機とヘリコプターに非武装小型無人機だけの空軍なんて、米軍はおろか周辺諸国に対しても大きな脅威を与えるようなモノではなかったでしょうがね
問題が有るとすれば、少数の練習機しか持たないタジキスタンが比較的貧弱ですが、CIS諸国としてロシアが防空に責任を持っている様ですので、まあ問題無いでしょうし
補給って大切なんだなと改めて思った次第。
ひでぇ話だ
要は車の運転方法だけは教えたけど、教えた本人が母国に帰るからって車内に設置されたナビも電子機器も全部持ち去って
がらんどうの車だけ残された様なもんじゃん
もっとひどいよ。
車で例えるならば、国内にディーラーや代理店が存在しない車で電装類取り外された上に、町工場でも対応出来るメカニックがいないという状態が一番近い…けど、実際はこれでも生ぬるいかな。
現実では車は素人でもある程度整備は出来るし、一部の特殊な車を除いて町工場で整備や修理が出来ない車というのは存在しないけど、航空機は素人に整備出来なくてのはもちろん、大規模な修理はメーカー送りする必要があるからね。
やはり国産…!国産は全てを解決する!!
いや、まぁそれは真理っちゃあ真理なのよw
出来るかどうか、と、費用対効果的に低い(なお費用対効果で全てが決まるわけではない)事もある事があるけども。
米国にかかわると負ける、不幸になる
結局米国製兵器なんて導入しても有事には全く使えず、金と時間と人員を浪費するだけ
日本だってあれだけ買ったのに、政府が親中路線になってるのも不思議じゃないよねw
親米派は軍事力で対中路線が有利に→現実は軍事力が落ちて融和路線に
アフガニスタンはかなり特殊な例だし、
有事には全く使えず、金と時間と人員を浪費するだけなら、なぜこれほど多くの国で米国製兵器が導入されるのか疑問。
日本の米国製兵器は自衛官が整備し運用しているのはご存知で?
アフガニスタンが米軍の戦力を当てにした航空優勢下でしか戦うすべを知らなかったように、日本だって米軍の戦力を当てにしたドクトリンなんだよね・・・
そこが議論の俎上にも登らないのが日本の政治の闇を感じる
ですね。
全部を全部日本だけで何とかしようとは思わないけど、米軍がいなければ何も出来ない現状が正しいのか、議論する必要があると思います。
日本が講和して再独立した当時の吉田内閣以来、ずっと替わらない政府の方針ですよ
軍備は米軍主導に任して日本は経済に専念した方が良いという選択
これを変えようとした総理は一人もいません
国家のありようとして、改憲以前の大きな問題がここにあります