バイデン大統領は30日に「ロシア領に届くようなロケットシステムをウクライナに提供しない」と発言したが、翌日の31日に「ロシア領に届かない中距離のロケットシステムをウクライナに送る」と述べた。
参考:Biden confirms U.S. is sending advanced rocket systems to Ukraine
ATACMSは手に入らなかったが、ウクライナは別の手段でクリミア大橋の破壊を狙ってくるだろう
ウクライナのゼレンスキー大統領はロシア軍を追い出すため多連装ロケットシステムの提供、特に米国製MLRS/HIMARSの提供を強く望んできたが、このランチャーで使用できる地対地ミサイル「ATACMS(最大射程300km)」はロシア領に届くため使い方次第では戦いのエスカレーションを招く=戦術核兵器使用の引き金となる可能性も「0」ではなく、この点を憂慮したバイデン政権は米国製MLRS/HIMARSではなく同盟国が保有するBM-21やRM-70の供給に協力してきた。

出典:Генеральний штаб ЗСУ
しかしロシア軍の砲兵戦力を打ち破るにはまとまった数の多連装ロケットシステムが必要で、ニューヨーク・タイムズ紙などは関係筋の話という体で「多連装ロケットシステムのウクライナ提供をバイデン大統領を決断した」と何度も報じてきたが、国防総省は一貫して「MLRSやHIMARSのウクライナ提供は決定事項ではない」と否定、さらにバイデン大統領も「ロシア領に届くようなロケットシステムをウクライナに提供しない」と30日に発言。
この発言にロシア側も「妥当な決定だ」と評価したため「ロシア領に届かないロケットシステムなら問題がない=戦術核兵器の使用はない」というコンセンサスが成立、バイデン大統領は翌日の31日に「ロシア領に届かない中距離のロケットシステムをウクライナに送る、このロケットシステムでウクライナは戦場の重要な場所をより正確に攻撃することができる」と述べ、米政府高官も「提供するロケットシステムでロシア国内の標的を攻撃しないという確証をウクライナ側から得た」と発言している。

出典:U.S. Marine Corps photo by Pfc. Sarah Pysher
噂ではウクライナに提供するロケット弾の射程を70km以下に制限すると言われており、恐らくバイデン大統領が「中距離のロケットシステム」と表現する中身はMLRSかHIMARSのどちらかと277mロケット弾のM26(32km)、M26A1/A2(45km)、M30/31(70km)で構成されるはずだ。
ATACMSが提供されないためウクライナは直ぐにクリミアとロシア領を繋ぐクリミア大橋を破壊することが出来なくなり、ロシアはウクライナ南部地域にクリミア経由で戦力を送り込むことが出来るが、もしウクライナ軍がザポリージャ州のロシア軍をアゾフ海近くまで押し返せば戦術弾道ミサイル「トーチカU」で橋を攻撃(命中するかどうか謎)できるようになる。

出典:Rosavtodor.ru / CC BY 4.0
ただ橋を先に破壊して南部に布陣するロシア軍の兵站を断った方が反攻作戦を行うのに有利なので、何らかの手段でウクライナは橋の破壊(完全に破壊する必要はなく一定期間通れなくすればいい)を狙ってくるだろう。
因みに多連装ロケットシステムを含む7億ドルの新しいウクライナ支援パッケージは1日(現地時間)に発表される予定で、ホワイトハウスの高官は「HIMARSをウクライナに提供する」と明かした。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Army photo by Gertrud Zach
お知らせ:記事化に追いつかない話題のTwitter(@grandfleet_info)発信を再開しました。 |
ウクライナからロシア領の攻撃には使用しないと確証を得たから供与しますとか、
いや確証という文書や言葉尻さえ得られたらいいのならば、ATACMSやっても大丈夫だろうという屁理屈をこねたくなるぞ
ルハンスク州知事ハイダイ氏の昨日のテレグラムに上がったルビジネの空撮を見ると砲撃で街区丸ごと壊滅してる状況が見て取れ、住宅の9割が損傷したと言明するセベロドネツクも差があるとも思えません。
また、ここ2週間ほどはウクライナ側報道のロシア兵器撃破映像がやや減少しているように感じていたところ、censorのドミトリー・リンコ氏のインタビューで語られたロシア軍がキーフ攻略とは戦術を切り換え、迅速に進出せず砲撃を強化して接触を避ける状況はこれらのことと一致しています。
基本的に得られた映像から理由を後付けで素人考えしているところですが、このところのロシア軍車輛の撃破映像の減少は、逆にその少なさが何かを物語っているのではないでしょうか。
また、ロシア軍の焦土戦術を陣取り合戦とみればルハンスク州の”解放”を目指すという方針と齟齬はありませんが、それは砲撃力の乖離で成り立つ戦略であるように思います。
今回の記事の供与にしても砲撃力の均衡はロシアに資するものでないことからすればロシア軍の焦土戦術は選択の結果でなく、やむをえず強いられた結果、つまり戦力の払底を示すものに思えてなりません。
単純に砲兵戦力の枯渇したウクライナ軍に火力制圧を試みるロシア軍を撃破する能力がないだけでは
攻撃を失敗させることは出来ても撃破ではなく撃退なら戦果として誇示出来るようなものも残りませんし
ご見解の通りと思います。
つまりロシア軍が突けるのがウクライナ軍との砲撃力の乖離にあって、力押しできるならしていたとすれば、結果として夥しい撃破車輛を晒してくれていたのではないかと思うのです。
他方、面制圧のロケットは火砲の天敵でもあり、記事は砲兵がロケットに脅かされる事態の甘受がロシアの自信の程、つまりは戦力的な余裕とも受け取れ、その相反する点を不思議に感じているところです。
クラスター弾頭なら良いと認めたようにも。
ロシアの市民の声でプーチンは優しすぎるって意見がテレビで紹介されていた。アメリカに妥協してロシア兵の命を危険に晒したって突き上げが出てくるかも。
ロシア領に届かないMLRSの提供が決まったなら、お次はロシア領に届かない戦闘機と、ロシア領に届かない巡航ミサイルの提供かな?
他にロシア領に届かないものは何があるだろうか。
敵方の承認の下に兵器提供とか、提供する方も承認する方も前線で死傷する兵士や住人を馬鹿にしている。
特に戦争当事者のロシアは、自国の兵士の命を何と考えているのか。
本来なら武器供与、即敵対行動として反撃すべきものを、なめているとしか言えない。
アメリカもロシアも大国のエゴ丸出しで醜い
ウクライナよりも市民の生命よりも縄張りの綱引きが大切らしい
そういうエゴへの反発が、今世紀を脅かしているテロリズムの原因とは考えないのかな、
国家を信用しない市民が増えてさらに不安定化が進むのに
そう言えばロシアとしてもクリミア大橋は破壊されたくないから対空兵器とかを配備しているんだろうか?
鉄道も通ってる物流の要なので相当厳重に防御されてるんじゃないかな
ggったらクリミア大橋の水中防御用に提案された水中銃装備の対ダイバードローンとかいうのが出てきてなんじゃこれってなった
そもそも ロシア領の定義はなんだろう。
ロシアが主張する地域と、国際的に認知された地域は別だと思うんだが。
お前の領土は俺のもの、俺の領土は俺のものなジャイアン基準なのは明確っす。
やっとMLRSが使えるようになるみたいですね。
これから来る” ロシア軍の数の暴力” に対抗するには是非とも必要です。
ついでに言うと、やっと” 橋を落とす” 段になりましたか。
まだ間に合うかと思います。補給を段階的に断ちましょう。
そして、半島内と南部戦域のロシア勢力には、出来れば、自滅してもらいましょう。
先の” 数の暴力に対抗する手段” ですが、空軍も必要です。
今更NATO規格への変更は間に合わないので、
東側製の戦闘爆撃機と制空戦闘機が渡ると良いですね。
Mig23/27/29ぐらいの物は必要と思えます。
ここが一番のツッコミどころでしょ
≫この発言にロシア側も「妥当な決定だ」と評価したため
いいんかい!
ソースとしたサイトにはその記載見当たらないんですよね、どこの情報だろう
これです
これです
リンク
素朴な疑問なんだけど、国境間際で使えば、拳銃でもロシア領に届くんじゃないの?
それともモスクワに届かないってこと?
モスクワじゃないですか?例えば再度キーウへの攻撃が実行されたときにブチ切れたウクライナ側が報復としてATACMSをぶっ放さないとも限りませんし、そうなると首都を直撃されたロシア首脳部が更なる報復として…
というように一気に状況がエスカレートしかねないというのがこれまでの話かと
ロシア本土への攻撃は開戦後何度か行われていますし、国境付近への攻撃については米露ともに何か言うつもりはないと思います
ロシア領に届くのがNGなら、それこそハルキウ東部から榴弾砲撃ってもロシア領内に届きそうなものだが…ロシア側の超えられたくないラインは一体どこなんだ
ウクライナ軍は開戦して間もないときからトーチカUでロシア領内を攻撃していたはずだけど、それは大丈夫なのかな?
トーチカUはOKで、ATACMSはダメという線引きがいまいち分からない……
射程や精密誘導出来るからなのか、武器支援だからダメなのだろうか?
「アメリカがウクライナに、ロシア本土攻撃を唆さない。」というミシン目。
アメリカはもちろん、不義理はできるが、不義理をすると、ロシア側も不義理(=核攻撃)をするパーセンテージが上がる。
アメリカ側の絶対的境界線として、核使用は絶対に起こしたくないので、ウクライナが不利になろうが、アメリカ側にしょうもない上げ足をネタにされて不義理をするメリットが薄すぎる。
むしろウクライナに、上げ足取られないよう、自力でも本土攻撃するなと止めるような立場。
弾頭威力は落ちてもトーチカUより100km以上長い射程と良好なCEPだとロシア的にもやり辛いでしょう。射程が延びれば単純に攻撃出来る範囲は広くなるし、攻撃恐れて100km以上後退とか結構な負担よ。
何より使い所では影響が大きい射程が長い兵器を非交戦国が供給するってのが焦点だろうね。
なんか今回の戦争って、日本のリベラルがこれまで主張してた話し合いで解決、9条維持、攻撃兵器保持否定、無防備宣言都市などを全部なぞっていってそれの現実を結果で見せつけて否定していってるのがすごいな
これ、上手いこと某極東の島国が言い訳でよく使う「島嶼防衛用ホニャララ」的な感じで誤魔化せないかなとか思った。
「ロシアには届かない巡航ミサイル」やら「ロシアには届かない精密誘導爆弾」的な感じで
あと、ここで悲観的に触れられてる「西側の足並みが揃わない」って話だけど、報道されてる内容を注意深くみると現状実施されてる制裁が緩むことはないしと言えると思うんだけどどうだろうか?
今揉めてるのって今以上の制裁をするにあたって各国の利害調整で時間がかかってるのであって各国の意志としては「長期的にロシアを弱体化、あわよくば潰す」という方針は(ハンガリーを除いて)統一されてるのではないか?と思うのだが
…まぁその結果ウクライナにとんでもない犠牲が発生して胸糞悪い結末にはなるが
しかし、ロシア外務省は激おこコメント出したみたいですね。
世にも恐ろしいMLRSの投入で、
ロシア側が「妥当な決定だ」とコメント出すのはあまりに物分りが良すぎるので、単に取材対応した担当者が
「ロシア領に届くようなロケットシステムをウクライナに提供しない」→ MLRSは送って来ない。\(^o^)/
「長射程じゃないMLRSが来る」→ カチューシャくらいなら大丈夫。
と勘違いしていたのでは。
実際は、射程70kmの精密誘導ミサイル(6-12連装)が大量に送られてくるわけで・・。
前にも軽く書いたけど米軍にはM26みたいな不発率が高いロケット弾は残っていないと思うんだよな。アメリカ軍で不発率の高い物を使う場合は仕官だったかの判断が必要。また10年以上前にはM26系を処分する予算も申請されている。ロッキードマーティンですらクラスター弾製造はしていないとも発表している。
アメリカの立場はオスロ条約は批准しないが不発率の高い装備は使用しない、クラスター弾と言うか微妙な兵器は使用するみたいなスタンスだと思う。国防省の目標は残留不発弾(UXO)を排除か1%未満にする事。
M31も代替弾頭(AlternativeWarhead)ターゲット上で爆発、兵士/装甲車両/指揮所/およびその他の戦場のターゲットを破壊するタングステンのエアバーストフラグメンテーション弾頭に変更した物を導入。ただソフトスキン車両を主としているように感じるので装甲車両を潰す事が出来るのかは微妙な感じはする。
米国のクラスター弾に対する動きは下記サイトを読んだ上で判断して貰いたい。
「Landmine and Cluster Munition Monitor United States Cluster Munition Ban Policy Last updated: 24 November 2020」
問題は「ロシア」領にケルチ海峡及びクリミア半島が入るのか?米露の認識にウクライナの認識が合ってない。実現可能か判らないですが、ジャンコイ-メリトポリの鉄道もクリミア-ドンバス回廊も切る、ついでにアゾフ海沿岸からケルチ海峡の分断をしたい。
宇軍の反攻はクリミア半島の西側で起こると勝手に予想してる。
一石三鳥以上の作戦だけど。現状の宇軍ではリスクは大きいし、西側も効果も判ってるしリスクも理解してる。
要は黒海の制海・航空権、この辺が西潟に保証されたら、ケルチ海峡分断で宇軍は無茶をするんじゃないかな?
最初に戻るけど。ケルチ海峡(クリミア)を色んな陣営がどう取るかだと思うのね。
射程を落とすのは簡単でしょうから、トーチカU程度に射程を落としたデチューン版ATACMSを製造して送れば?
アメリカなら短時間で開発製造できそう。