米国関連

第6世代戦闘機を否定する米空軍、将来の戦場を支配するのはB-21と無人機

米空軍は、過去に水平・垂直尾翼のない次世代ステルス戦闘機のイメージを公開し、盛んに「第6世代戦闘機」とアピールしていたが、このような次世代戦闘機が開発される可能性は無くなったのかもしれない。

参考:“B-21s With Air-To-Air Capabilities,” Drones, Not 6th Gen Fighters To Dominate Future Air Combat

将来の戦場を支配するのはB-21レイダーとステルス無人戦闘機か?

第5世代戦闘機の開発を放棄した欧州では、米国よりも先に第6世代戦闘機の開発が始まり現在、英国主導の「テンペスト」、独仏主導の「FCAS」計画が進められているが、米国は、特に米空軍では最近、第6世代戦闘機という単体のフラットフォーム開発に懐疑的だ。

出典: JohnNewton8 / CC BY-SA 4.0 パリ航空ショーで発表されたダッソーFCASのモックアップ

米空軍は現在、次世代航空支配プログラム「Next-Generation Air Dominance(NGAD)」を研究中だが、8月にミッチェル研究所主催の討論会に出席した米空軍のMichael A. Fantini少将は、空軍が考えるNGADプラグラムにおいて、まったく新たしい航空機は必要としないと語った。

当初、この発言の意図はNGADプラグラム=「F-X」という考え方や、次世代航空支配は「F-X」が実現するという安易な考え方を否定したものであって、米空軍が進めている次世代戦闘機「F-X」開発を否定したわけではないと思われていたが、どうやら本当に新規で第6世代戦闘機「F-X」開発を行わない可能性が出てきた。

米空軍のプレウス少将によれば、第6世代機を戦闘機に限定して定義するのは、あまりにも視野が狭い思考だと指摘し、空対空戦闘も可能なステルス爆撃機「B-21レイダー」が、ステルス仕様の無人戦闘機「XQ-58Aヴァルキリー」と連携するような戦い方がこそが、第6世代機のコンセプトかもしれないと話した。

出典:public domain XQ-58Aヴァルキリー

要するに米空軍は、次世代航空支配は「第6世代戦闘機」というプラットフォームのみで実現できるような簡単な話ではなく、F-15やF-16、F-18などのレガシーな戦闘機や、F-22やF-35などの第5世代戦闘機、完全な自律飛行や戦闘が可能なAIを搭載した無人機、低コストの無人機群など、この全てがネットワークに接続された戦闘戦術こそが第6世代機のコンセプトだと言っているのだ。

さらに現実的な問題として、第6世代戦闘機の開発は財政的にみても不可能かもしれないという報告が挙がっている。

2018年12月米議会は、米空軍が提案している接近阻止・領域拒否(A2/AD)の空域を貫通し、敵の重要施設を攻撃することが出来る新しい戦闘機について、例え400機以上の発注があったとしても、機体の平均単価が約3億ドル(約320億円)になると予想し、これは現在、史上最高のコストが掛かると批判の対象になっているF-35より3倍も高価になると言う意味だ。

出典:米空軍研究所 次世代戦闘機コンセプトアート

このように次世代機戦闘、第6世代戦闘機、敵空域を貫通する戦闘機など呼び方は様々だが、米空軍がこのような戦闘機を新規で研究・開発する可能性は限りなく低く、それよりもネットワーク機能を強化し、無人機の制御や指向性エネルギー兵器などの新しい兵器を取り入れた、F-35の改良型を開発する方が現実味がある。

そして米空軍は当面、F-22やF-35などのステルス機が敵空域に侵入し、搭載されたセンサーで収集したデーターを、敵空域外に待機する重装備な第4世代機に提供し、共同交戦能力を備え長射程化した空対空ミサイル「AIM-260(開発中)」や巡航ミサイルで、中国やロシアのステルス戦闘機や防空システムに対抗するはずだ。

将来的には、XQ-58Aヴァルキリーなどのステルス無人戦闘機が完成すれば、リスクの高いF-22やF-35が行う任務を代行するようになり、ステルス爆撃機B-21レイダーが完成すれば、敵空域外に多量の攻撃兵器を運搬する役割を第4世代機から引き継ぎ、改良されたF-35がこれを補完するという体制を目指しているのだろう。

もし米空軍が主張する第6世代機のコンセプトが正しければ、将来の戦場を支配するのは、第6世代戦闘機と呼ばれる単一のプラットフォームではなく、B-21レイダーとステルス無人戦闘機の組み合わせかもしれない。

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Jordan Castelan B-2ステルス爆撃機

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 9月 08日

    つまりACE COMBAT7のアーセナルバード路線?

      • 匿名
      • 2019年 9月 08日

      片渕さんは気合入った軍オタだけあってフィクションの中にも現実味があるね

    • 匿名
    • 2019年 9月 08日

    B-21をミサイルキャリアーにして高電波妨害の環境で無人機飛ばすとなるとAIを使った自律飛行はもちろんのこと、無人機の火器管制もある程度自動化が必要になるでしょう。

    データリンクが使えるならイージスシステムの完全自動化モードや発射のみ指示を出す半自動モードという前例もありますが、データリンクすら使えない状態を想定するとなると、F-35のソースコード規模を優に超えそうです。

    B-21は順調に開発が進んでいることを考えると、まずはB-2と同等機能+自衛用AAMまでとし、無人機対応は今後の対応ということでしょう

    1
    • 匿名
    • 2019年 9月 08日

    こうしてみると、第6世代戦闘機の開発と言うよりも「次世代の空軍戦術ドクトリン」が何処の国でもまだ十分に練り上げられていないのかなと感じるな。
    特に無人戦闘機は、まだ制御手段が開発途上なのにそこまで期待しても良いのかと思う反面、第6世代戦闘機を作ろうにも開発・製造費用が暴騰して「そもそも作れない」可能性が高まっているのは事実で、これはもう軍用機の新技術で解決すべき問題では無くて「戦い方=戦術ドクトリンの改革」を先にやらないと次世代の戦闘機も見えて来ないかも。

    2
    • 匿名
    • 2019年 9月 08日

    とはいえロシアや中国が開発してきたら対抗せざるを得ないのが苦しいところ。
    核のように絶対的な抑止力がリスク無しに使えるようになったら軍拡競争もなぅなるのかね。

      • 匿名
      • 2019年 9月 08日

      ただ、露中が新型戦闘機の開発を進めて来たとしても、戦術思想的に第5世代戦闘機の延長線上に過ぎない機体になる可能性が高いのですよね…米軍は既に、今回の記事にある様に「これまでとは次元の違う戦術ドクトリンの元で新兵器を開発しないと、露中に勝てない」と思い詰めている節があるけれども、露中はそこまで考えているとは思えないのです。
      あと、核がリスク無しに使えるとしても、今度は冷戦下の様に「核使用=全面核戦争による人類滅亡」のリスクが高まるので、結局通常兵器の軍拡は止まらないと思います。

    • 匿名
    • 2019年 9月 08日

    戦闘機の目的はミサイルキャリアーだ。
    極端な話、基地から発射し即着弾する光速無限距離地対空ミサイルがあれば戦闘機はいらない。
    味方基地上空ならまだしも、敵地のしかもさらに奥深くに有人かつ超高価な最新戦闘機は飛ばしたく無い
    ならば安価かつ無人戦闘機があれば、低リスクで、しかも安価だから大物量で攻勢をかけられる
    軍事の歴史を見ると技術や戦術の進歩で質と量の優位が交互する
    戦後一貫して高価になり続けた戦闘機の歴史が変わるのかもしれない

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