米国関連

米海軍のF/A-18E/F BlockⅢ、唯一の欠点はF-35Cとの情報共有能力

米海軍は先週、ボーイングから新しいF/A-18E/F BlockⅢを2機受け取って性能をテスト中で、これを無事パスすれば海軍はBlockⅢを2021年に正式発注する予定だ。

参考:Naval Strike and Air Warfare Center Receives Unit’s First F/A-18F Super Hornet

大コケすることはない手堅い設計のF/A-18E/F BlockⅢ、問題はF-35Cとの情報共有

なぜ米海軍は第5世代戦闘機F-35Cを調達しているのに、基本設計の古いF/A-18E/Fを調達し続けるのだろうか?

単純にF-35Cの調達価格が高価(ロット14でも9,150万ドルと言われている)であることと、陸上の航空基地とは異なり空母に搭載された搭載機のみでミッションを達成するためには効率を重視しなければならない海軍特有の事情があるため基本的にウェポンベイにのみ兵器を搭載するF-35Cではパンチ不足、それならビーストモード(ステルスを捨てて機外に兵器を携行する仕様)を使用すれば良いという手もあるが、9,000万ドル以上もするF-35Cをビーストモードで運用するくらいなら価格の安いF/A-18E/Fで十分だと海軍は考えてるからだ。

出典:U.S. Navy photo courtesy of Lockheed Martin

さらに付け加えれば、空軍ほど海軍はステルスを重視(専用の電子攻撃機EA-18Gを開発して運用しているのが最たる例)していないことも影響しているのだろう。

以上の理由から、海軍と海兵隊は空母で使用するF-35Cを計324機調達しても600機以上保有しているF/A-18E/F(EA-18Gを含む)は維持する予定で、空母をベースに運用される航空戦力の半数以上は今後もF/A-18E/Fが担うことになる。

そのため海軍は現行のF/A-18E/F BlockⅡをアップグレードしたBlockⅢの開発をボーイングに発注したのだ。

このF/A-18E/F BlockⅢは機体寿命延長(計9,000時間以上)や10×19インチのコックピットディスプレー搭載、大容量のデータを送受信するためネットワーク機能強化や他機からの目標データ受信機能強化、IRST(赤外線捜索追尾システム)を組み込んだ増槽やコンフォーマル・フューエル・タンクの採用、LO塗装による低認識性の向上など多くの改良が加えられているが、今後F-35Cと共同で任務を遂行する上で問題となる欠点も指摘されている。

その欠点とはネットワーク機能が強化されているのに相変わらずF-35Cとの情報共有には標準的な戦術データリンク「Link-16」に頼っている点だ。

F-35には敵に感知されにくく安全性の高い独自の戦術データリンク「MADL」が搭載されており、敵の厳重な防空システムに守られた空域で活動するF-35同士が安全に情報共有を行えるのもMADLのお陰なのだが、F/A-18E/F BlockⅢにはMADLと互換性のある戦術データリンクが装備されていないため、ステルスを活かして敵の厳重な防空システムに守られた空域に侵入したF-35Cと情報を共有するためには危険を冒してLink-16を使用しなければならない。

出典:U.S. Navy photo by Lt. Cmdr. Darin Russell

幾ら海軍が空軍ほどステルスを重視していないとしても、F-35CとF/A-18E/F BlockⅢの間で安全な情報共有が行えなければ戦闘効率の向上は望めないだろう。

この問題は空軍も同じで、F-22が搭載する独自の戦術データリンク「IFDL」とF-35Aが搭載する「MADL」は互換性がないため両機が情報共有を行うためにはLink-16を使用する必要があるのだが、空軍は現在F-22のIFDLとF-35AのMADLとを繋げるためのプロトコル変換装置を開発しているので将来的に問題が解消されると見られている。

しかし海軍はF-35CとF/A-18E/F BlockⅢの間で安全に情報共有を行う仕組みを開発していないので、今後もLink-16に頼るのかもしれない。

但し、この点を除けばF/A-18E/F BlockⅢは実績十分の技術を取り込んだ手堅い設計なので大コケすることはないだろが、同機の最大の障害は海軍がBlockⅢの新規製造機調達(BlockⅡからのアップグレードは継続する予定)を打ち切ろうと考えている点でボーイングにとっては死活問題だろう。

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy photo by Erik Hildebrandt/Released F/A-18F BlockⅡ

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 6月 24日

    アメリカの空母がすべての戦域において、レーダーガチガチの対空すごいとこに行く訳でもなさそうだからいいんじゃない?

    個人的にはボーイングに生き残ってほしい

      • 匿名
      • 2020年 6月 24日

      とはいえ、ここで生き残ったとしても5世代機の開発経験が無いのがね
      旅客の方も厳しそうだし、挽回出来るのかな

        • 匿名
        • 2020年 6月 25日

        X-32「忘れられてる。」

    • 匿名
    • 2020年 6月 24日

    F-22のIFDLやF-35のMADLとの相互間通信が可能で
    空軍がF-15向けにテスト中のTalon HATEポッドをBlockⅢにも搭載すればいいのでは?

      • 匿名
      • 2020年 6月 24日

      ミッションコンピュータを入れ替える必要がある。そうなると全ての搭載品の統合作業や検証作業を一からやる必要があるから、1年や2年では完成させるのは無理だろうね。

    • 匿名
    • 2020年 6月 24日

    MADLをF/A-18に搭載するのは、何がネックだったのだろう?

    • 匿名
    • 2020年 6月 24日

    だったら最初からステルスを捨てたF-35C改を作ればかなり安く作れると思うんだが。
    ウエポンベイを廃止してそこを燃料タンクにして大量のミサイルをぶら下げたF-35Dというのはどうだろうか。
    これなら運用も楽になる。

    ボーイングが潰れてしまうのが問題だが。

      • 匿名
      • 2020年 6月 24日

      重過ぎてカタパルトを離れた瞬間に海ポチャしそう。

      1
      • 匿名
      • 2020年 6月 24日

      新規にドンガラ制作したらソフトウェア開発し直しで余計価格高騰するのでは?
      ましてや、母体が超難産のC型だし。

      • 匿名
      • 2020年 6月 25日

      ドンガラを新設計するのではなく、ウエポンベイと駆動するアクチュエータとミサイルのレールを取り去り適当な補強をした板で塞ぐだけ。
      新たに作るよりもあるものを外すほうがはるかに簡単な作業。
      ステルス塗装などにも気を使わなくて済むから運用もこれまでの機体と同程度の手間になる。
      ウエポンベイを燃料タンクにしたことで戦闘行動半径が倍増したら、F/A18同士で空中給油するこようなとも無くなるから本当に手間が省ける。

        • 匿名
        • 2020年 6月 25日

        いいアイデアだと思いますが、エンジンを変えないため更に加速が悪化する、そもそもF-35は海軍の意向が反映されておらず嫌われてる、2つの問題が残りますね

      • 匿名
      • 2020年 6月 25日

      ただでさえ生産数が少なく単価の高いF35Cの派生型を開発して生産ラインを増やすのに、どうやって9000万(C型)から6000万(FA18E)まで値下げするつもりなんですか。

      陸上でのみ運用されているFA18やE2や艦載ヘリ等が、メーカー側が折り畳み機構や着艦フック等を廃止した派生型を提案しているにも関わらず、艦載装備を残したまま運用していることや、
      エアバスが旅客機のドア配置を変えるだけの作業やラバトリーやギャレーの位置を変えるだけの作業に苦労して、旅客機の納入が数か月遅延したことや、
      エアバスがA380の一部のドアを機能させなくして座席を増やすオプションや螺旋階段を直線階段に変更するオプションを提案したにもかかわらず、最大オペレーターであるエミレーツ航空はオプションを採用せず、ドア無効化はカンタス航空のみ直線階段はANAのみしか採用してないこと等を考えれば、

      米海軍向けのためだけに生産数が300機にも満たないF35Cの「ウェポンベイのランチャーやドアを無効化して燃料タンクを追加するだけの作業」によって、9000万(F35C)から6000万(FA18E)まで値下げなんて夢物語じゃないですかね。

    • 匿名
    • 2020年 6月 24日

    >>実績十分の技術を取り込んだ手堅い設計なので大コケすることはないだろが

    最近のボーイング見てるとこの案件でもやらかしてくれそうだけど
    大コケしないとかほんとでござるかあ~

    • 匿名
    • 2020年 6月 25日

    捕らぬ狸の皮算用ですよね。
    それらアクチュエータのプログラムや配線は不要になるので削除によるバグの洗い出し、燃料タンクを取り付けによる機体バランスの変化に対応するプログラムの作成、配管再設計及び強度の再計算、ざっと出しても目眩が出る作業ですよね。
    これに飛行試験と空母適合化試験をしないといけないのに簡単とはなんなんですかね。

      • 匿名
      • 2020年 6月 25日

      横失でくが流石にそれは揚げ足取りが過ぎないかなぁ?
      まあ妄想というか机上の空論な事は否定しないけど。
      不要コードの削除or無効化は別に必須でもないしやった所でテスト工数は知れてますし
      燃料タンク搭載によるバランスの変化なんて機外兵装搭載に比べりゃ微々たるもんでしょう。
      それより問題はそもそも「ビーストモード(相当の状態)で発着艦ができるのか」に尽きるかと。

        • 匿名
        • 2020年 6月 25日

        細かい話だが、ビーストモードの着艦は要らない。
        ミサイルを打つかどうか分からないパトロールや警戒任務でビーストモードで出す意味は無いので。
        戦闘確実な時だけなので、着艦時は機外ミサイルは無い前提でいい。トラブルで戻って来る時も、勿体無いけど投下しちゃえばいいし。
        電磁カタパルトが成熟すれば、発艦はいけるんじゃ。(それが難しくが)

          • 匿名
          • 2020年 6月 26日

          じゃあ、訓練とかだと模擬弾捨てて着艦するのかな

        • 匿名
        • 2020年 6月 26日

        重心移動は、重心位置からの距離と重量を掛けた、モーメントで考える必要があります。
        そして戦闘機の場合、重心位置の目安として、主車輪の位置が使える様です。

        リンク
        実際には、主車輪の少し前でしょうが。
        F-35Cの場合、主翼下のステーションは、主車輪位置付近に配置されているので、
        機外兵装搭載による重心移動は少ないと思います。
        一方ウェポンベイは、後端付近が主車輪位置に掛かっている感じなので、ここに大重量を載せると結構重心が移動すると思います。

        ウェポンベイので想定されている重量は、Sta.4/8が2500 lb、Sta.5/7が350 lbなので、合計5700 lbです。
        ちなみに、増槽を吊るせるSta.3/9の許容値は各々5000 lbです。
        吊るせる増槽は426Galなので、燃料だけで片側2900 lb位だと思います。

        ウェポンベイのサイズが分からないので、燃料タンクにした時の容積や重量増も見積もれないですが、
        仮に、上記5700 lbを超過した場合は、構造強化も含め色々余計な改造が必要になる筈です。
        逆に5700 lb以下なら、構造や飛行プログラムへの影響は最小限で済むと思います。

    • 匿名
    • 2020年 6月 26日

    どのみちE-2とはLink16で連接するだろうし、最悪受信のみとかで運用しそう
    空自なんて半分以上link16すら積んでないから贅沢な悩みだなぁ…

    • 匿名
    • 2020年 6月 26日

    今後はPre-MSIP機が退役し、F-2がlink16対応になるから、空自も時間経過と共に改善するかと。
    F-2に関しては、もっと早くに対応すれば良かったのに、と少し不満ですが。
    これも予算の問題なのかな?

      • 匿名
      • 2020年 6月 26日

      上の「空自なんて半分以上link16すら積んでないから」に対するコメントです。

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