米空軍は「大気中の二酸化炭素+水+電力のみでE-Jetと呼ばれる航空合成燃料を製造することに成功した」と22日に発表して大きな注目を集めている。
参考:The Air Force partners with Twelve, proves it’s possible to make jet fuel out of thin air
大気中の二酸化炭素+水+電力のみでジエット燃料を生成することに成功した米空軍の狙いは?
米空軍は数十億ドルの費用を負担して何十億ガロンものジエット燃料を購入して空中給油機で戦闘機等に補給したり、航空機、船舶、トラックなどの運搬手段を組み合わせて世界中の基地に供給するためさらに数十億ドルもの費やしているのだが、これを運搬する過程は最も脆弱で敵に狙われやすくアフガニスタン戦争最盛期の死傷者の30%以上は燃料や水を運搬する補給部隊や護衛する兵士達への攻撃で、この伝統的な燃料補給の仕組みに革命を起すため米空軍は大気中の二酸化炭素からジエット燃料を生成する技術の開発に取り組んでいる。
もう少し正確に表現すれば「アクセスが困難な基地に大気中の二酸化炭素からジエット燃料を生成するシステムを設置して燃料補給を不要にする」ことを狙っており、これを実現するため米国のエネルギー企業Twelveと共同で大気中の二酸化炭素+水+電力で航空機が使用可能な「E-Jet」と呼ばれるジエット燃料生成技術の実証実験を2020年に開始、今年8月に二酸化炭素からジエット燃料を生産することに成功したらしい。
米空軍の説明によれば実証実験の第一フェーズ(E-Jet生成技術の実証)は2021年末までに終了、次は合成燃料を大量生産するための技術実証に取り掛かる予定で「このプラットフォームが実用化されれば空軍の作戦能力はより機動的な運用が可能になり、海外産の石油への依存度が低下するとともに二酸化炭素の排出量削減にも期待できる」と話しているが、このような合成燃料の生成技術自体は特に目新しいものではなく第二次大戦中のドイツや日本はフィッシャー・トロプシュ法(FT法)による代替燃料の製造を行っていた。
ではFT法とTwelveが開発した新技術の違いは何処にあるのか?
FT法を活用した代替燃料の生成技術は石炭やバイオマスといった炭素廃棄物に依存しているが、Twelveが開発した新技術によるE-Jet生成技術は大気中の二酸化炭素+水+電力のみで構成されているため「化石燃料が不要」という点が革新的で、Twelveの説明によれば「E-Jet生成に必要な水さえも大気中から得ることが可能だ」と言っているので「電力の問題」さえ解決すれば本当に外部からの補給なしにジエット燃料を生成することが出来るようになる。
勘の良い方ならもう全て点が繋がり答えが見えているかもしれないが、米軍はインフラの整っていない地域の基地で必要とされる電力需要を賄うため移動可能な小型原子炉の開発を進めており、最近空軍はアラスカ州のエイールソン空軍基地で小型原子炉のプロトタイプをテストすると発表しているので、米空軍はE-Jet生成技術と小型原子炉を組み合わせてジエット燃料を前線の基地で大量製造して供給することを目論んでいるのだろう。
勿論、直ぐに実用化される訳でもなくコスト的に実現可能なのかも不明だが「アクセスが困難な基地への燃料供給もしくは有事」という条件なら、戦術的にもコスト的にもメリットの方が上回るのかもしれない。
※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Joshua Hoskin F-15Eへの空中給油風景
第二のハーバーボッシュ法か
移動可能な小型原子炉との組み合わせ・・・
もとから基地があり電力供給も燃料備蓄もできる日本や欧州本土ではなく
離島なんかに有事に設置して燃料と電力供給をするということかな
そうすればタンカー輸送とその護衛部隊を削減し、補給線の維持がしやすくなるから。
その日本や韓国の基地・インフラもターゲットになる可能性があるから、既存の施設に頼らない単独で独立して動けるシステムって言うのは有事を考えるととても重要だと思う
ていうか、アラスカあたりが目的でしょ
水ガソリンが現実のものになるとは
ゲリラ「燃料の補給ラインが狙えないなら、原子炉を狙えばいいじゃない」
しかし移動中の部隊とは違って基地に置いているであろう原子炉を破壊するには相当な規模の防衛戦力との交戦になるのでリスクは段違いだろうとは思う
数多の技術革新が、多額の予算が投入される軍事部門で産み出される。
日本政府は、国防予算を増やし、基幹技術の軍事転用を後押しするべきだろう。
記事にも民間企業出てきてるけど軍事技術の多くは民間転用だよ…
特にここ30年は
まぁモロに脱炭素絡みの技術ですねこれは
>東芝は2021年3月22日、CO2(二酸化炭素)を燃料や化学品の原料となるCO(一酸化炭素)に電気化学変換する「Power to Chemicals(P2C)」を大規模に行う技術を開発したと発表した。一般的な清掃工場が排出する年間約7万トンのCO2をCOに変換でき、CO2排出量が清掃工場の数十倍になる石炭火力発電所にも適用可能だという。
>東芝と東芝エネルギーシステム、東洋エンジニアリング、出光興産、全日本空輸、日本CCS調査の6社は2020年12月、P2Cにより排ガスなどから得られるCO2をSAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能なジェット燃料)として再利用する、カーボンリサイクルのビジネスモデル検討を開始することで合意している。
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二酸化炭素を一酸化炭素に変換するの不味い様な気が。
有毒だし。
エネルギー資源なんて大半が人体には有害だよ。
定期的に話題になるよね大気由来の成分で作る合成燃料。
こういう試み自体は否定しないけど、大気から特定元素だけ選別回収するだけでプラント規模の設備が必要だし、合成効率まで含めて考えると20ftコンテナサイズ(前線作戦基地への展開を考慮すればこのサイズが限度だろう)の系統を1日稼働させて得られるのは軽油相当で数リットル分、となっても驚かない。
さらに言えば機種ごとにおおまかに統一できている固定翼機用燃料や自動車燃料にさらに1系統追加することは、このプロジェクトの発端になった補給負担の軽減に逆行する訳だし、遠い未来のテクノロジーくらいに思っとくべきだろう
未来の話になるかはともかく、
ジェット燃料って触れ込みなんだから、一系統追加というより、そのまま混ぜちゃっても全然構わないようなのを作るのでは…?
というか脱炭素の流れをみるに、これがモノになる頃には、そもそも本国のプラントで作ってる航空燃料も同じ合成品になってそう。
記事にあるように今回成功したのは「実証実験の第一フェーズ(E-Jet生成技術の実証)」で恐らく研究室レベルの話。これから「合成燃料を大量生産するための技術実証」に取り掛かるわけだから、その関連技術は今後の課題てことなんででしょうね。
プラント排ガスからCO2を分離回収する技術は研究開発の進捗度が高いですが、大気を対象とするものは実用レベルに達するのに期間を要すると見込まれているようです。電力供給源に小型原子炉を使えるならばいくつかの問題点はクリヤできるのかもしれませんが。
開発した空軍目線だと、孤立した前線基地に、という内容になるが、どちらかというと原子力空母持ってる海軍がワクテカしそうな内容だよね。
ロシアの水上原子力発電所って完成したのかな
永久凍土掘ってもコレにつっ込めば環境がーって文句言われずに済む?
平和条約交渉の過程で日本から野菜プラントとかゴミ処理技術とか得てるし
ロシアの極地開発が捗るかもしれないな、ろくでもない
と言うか既に原子炉を積んで潤沢な電力供給が可能な上に、旺盛な航空燃料需要を抱えた船があるよね
空母って言う
航空燃料の補給を大きく減らすことができる航空母艦って字面だけでとんでもない化け物のように思える
大型の米空母でも今のところ経戦能力は地上の空軍基地に比べたら微々たるものらしい。
理由は艦載機用の弾薬庫と燃料庫が地上基地に比べて格段に小さいから。
湾岸戦争の時も数回出撃したら弾薬が尽きて、空軍から「えっ!海軍さんはもう終わりなの!?」
と驚かれたとか。
だから、ベトナム戦争の頃から米空母が長期の航空作戦を行う時は、2~3日置きに補給艦がやってきて必要な弾薬燃料等の物資補給をやっているね
現在の米空母が全て原子力なのも、自艦が使う分の燃料補給の手間がいらなくなるから(逆に、自分を護衛する艦艇へ燃料補給をする為の燃料庫がある)
今の米海軍は、サプライ級を最後に本格的な戦闘補給艦が無くなっているので、今回米空軍が発表した合成燃料プラントに興味を抱くかも知れない
燃料補給艦ではなく燃料生産艦か。次は農業艦かな
海上に軍閥が出来そうだな
星界の戦旗とかSFで出てきた艦種が、海上で再現されそうだね。
つまり灯油かガソリンが電力のみで得られるということになる。
もし十分な電力→燃料生成効率が可能なら、これで内燃機関を動かせることになる。
重くて高価で寿命のあるバッテリーが不要になるからEVに注力している世界中の自動車会社は軒並み破産する可能性がある。
カーボンニュートラルが達成される、ガソリンエンジンよ永遠に。
自動車会社の中にもトヨタの様に、水素エンジンや燃料電池等に力を入れている所があるから、EVがオワコンになっても軒並み破産は無い
それに脱炭素を目的とした合成燃料の研究は、他にも日本を含めた世界各国で行われているので、今後の行方次第ではどうなる分からない部分がある(だからこそ、世界中の企業がバッテリーのみならず脱炭素が可能なエネルギーシステムの開発に狂奔している訳だけど)
電力から燃料へのエネルギー効率はそんなに優れたものじゃないだろう
触媒で所要エネルギーを低減させるだろうけど、基本的にエネルギー収支はマイナスだろうね。
還元の場合、酸化の際に生じるエネルギーの他に、﹙安定状態→化学反応への状態遷移でエネルギー障壁となる﹚活性化エネルギー分を常時補う必要があるから。
﹙酸化の方は、活性化エネルギーの分の補充は、出だしだけで済むと対称的﹚
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記事にあるような、他要因でのメリットが大きいケース以外だと、普及は厳しでしょうね。
おそらく水から水素に電気分解して、炭化水素に付いてる酸素を還元してる。効率高いわけがない。でも戦場の燃料はどんなに高コストでも貴重だろうね。だから経済性は度外視でもいい
その電力はどこから来てますか…
そもそも電気→化学エネルギーのエネルギー変換でロスが生じるから電気で動かせるものはそうした方がいい。なぜEVが廃れると思ってしまったのか
保存則壊れてて草
?
普通に発電した電気をEVに充電するか、燃料にして内燃機関に使うか、の比較だから保存則云々は関係ないでしょ?
EVメーカーが破産するというのは変換効率が1を超えないとあり得ないと言うことでは
EVだってエネルギー効率1ではないし、別にエネルギー効率でEVに及ばなくても差が小さくなれば重量・コスト面でのメリットの方が上回るでしょ?
車に原子炉積むんか?
e-fuelは日本と欧米の自動車会社が研究開発してる。
2040年にBEVとFCVにするといってるホンダもe-fuelについては継続して開発してるが、リッター当たりガソリンの3倍以上(現状では6倍以上)と言われる価格がネックで、価格が解決されない限り、軍用や飛行機等完全に電化や水素を使うのが難しい分野での使用がメインになるのではないか?という考え。
二酸化炭素と水て。
植物かよ…
松根油というものがあってだな。
旧日帝軍はエコでSDGsだったわけだw
「豊富な電力」さえあれば解決することって、たくさんあるんですよね。それが出来ないから机上の空論で片付けられますが。
小型原子炉は現代で実現性が最も高い、豊富な電力の解だと思います。
0.5tくらいの小型原子炉とかできれば、宇宙船にも積み込めるし強めのイオンエンジンで超低燃費航行できたりとか、個人的にはそっちの方を考えてしまいます。
あらゆる分野の技術開発の志向に影響すると思うんですよね。
原子力アレルギーがなければ、日本がとっくに開発してたかもしれない。
「むつ」の事故とか痛かったし、もったいなかったですよ。
原子力エネルギーのデビューが原爆じゃなかったら、違った未来もあったかもですね。
でも、原爆投下がなかったらもっと遅れてたかな?
原子力の場合、遅かれ早かれ放射線の問題が出るからダメっぽいと思うけどね…下手すりゃ、未来は世界中でスリーマイル島・チェルノブイリ・福島並みの原発事故が続発する可能性が有るんだぞ?
可能性で語るなら、そうならない可能性もある。
そういう話。
それって、原子力事故を歴史を知っていれば怖くて言えないと思うぞ……
脆弱な燃料補給を小型原子炉で解決しても、小型原子炉が攻撃目標になれば放射能汚染が発生するのでいまいちな気がする。
米軍の活動領域は基本的に他国だから多少はね?
技術的な可能性の話に、失敗すればこうなるよと言われても、「ああそうですね」以上の返答はできないんですよ。
やるべきとかやるべきでないとか、倫理の話をしているわけでもないし。
危険だろうと何だろうと、人間は結局可能性を追求する生き物なので、それが合理的ならそうなるだろうと言う話です。
「歴史を知ってれば怖くて言えない」という人もいるでしょうが、歴史を繰り返さないために失敗しないやり方を考えるアプローチだってあるわけだし。
武器を持ったことがすべて悪いみたいな話をする人だっていますよね?
私に対して「できない理由」言ったって、何の意味もない。(笑)
まずネットで小型原子炉+メルトダウンでググってみ。一部の問題は過去のものになると思うが。
研究はしてたはず。潜水艦サイズのやつとか論文の一部をどこかで見たなぁ。
twlveの記事を探しましたが、少ないですね。最近のプレスリリースの記事がほとんど。
現在の技術だと電気飛行機はエネルギー密度の問題で現実的でないのですが(蓄電器や発電機が重すぎる)、twelveも、だから飛行機を電化する手段としてこの燃料を、みたいな説明をしていますね。
カーボンニュートラルの面で見ると、電力供給が不安定な自然エネルギーでこの燃料を作れば、燃料の形で「蓄電」できるので、天候の変化の影響を吸収するバッファにはなりそうですね。
(カーボンニュートラルで温暖化が止まるとは全く思ってないがw)
ただ、当面は効率の問題で開発段階が続くんでしょうが、燃料供給問題を解決できる軍は有望なパトロンになるんでしょうね。
小型原子炉と併せ、ちょっと楽しみが増えました。
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東北大学系のベンチャー企業が、量子水素エネルギー:要するに凝集系核反応(常温核融合)でボイラーを沸かすっていうのを2024年に実現するって言ってるけど。リンク
この辺のことが何だかわくわくするよ。
ただ、空気中の炭酸ガスって、そんなにないのでは・・・。軍事費の名前を借りたベンチャービジネスでは?
小型原子炉のイメージは5m x5m x10mぐらいの鋼鉄の塊で、出入り口は電力ケーブルのみ。冷却水は封入したものをずっと使う。
地下30mぐらいにコンクリで封印して、故障したら放置(土に熱が逃げて容器は溶解はしない)、故障しなくても燃料補給は無し。故障しなくても設置したら20年ぐらい1000年近く放置するもの。
一応、放射線問題は出ない。はず。攻撃より、そこを放置できなくなるのが大変かな。
20年ぐらい使って、1000年近く放置するもの。
>ただ、空気中の炭酸ガスって、そんなにないのでは・・・。
比率は少ないけど﹙質量比で0.0477%﹚、大気自体5.28×10の18乗kgと量が膨大だし、
世界中で化石燃料を燃焼した形で膨大な量が供給されるしで、結構あるよ。
燃料1リットル(kgでも良いが)作るのにどのくらいの空気吸い込む必要があるんだ?
空気中の二酸化炭素濃度って0.04%程度だし
植物のことを考えると、あまり期待はできないような気もする
やってることは光合成とほぼ同じなわけだし
標準状態の大気が1.3kg/㎥、その約0.048%(質量比)がCO2でその3/11が炭素。
水素は炭素より1桁軽いから無視して、1㎥の空気から1.3×0.048×3/11≒0.017
直そうとしたら暴発した。
1.3×0.00048×3/11≒0.00017kg/㎥
なお空気中の二酸化炭素を漏らさず燃料化できる前提ね。
端折った水素分入れると1kgの燃料生成するのに空気5500㎥ とかそんなん?
50m×100m×1.1m、なら50mプール基準に想像し易いかな?
ダイレクトエアキャプチャーは方々で研究されてますよ
日本政府も脱炭素関係の基金から資金を出してる
燃料を作りながら飛ぶ飛行機ができるのかと
メタンハイドレートの出番は無さそうかな
おいおい詐欺師に騙された山本五十六かと思ったら、研究室レベルとはいえ成功していてびっくり
火力発電所の排気から二酸化炭素を回収するとか、自然エネルギー発電のバッファーとか効率が高まり民生用に利用できる日が来るのを期待したい。ところでこういった研究も日本の大学はできないんだよね。軍事であれば利用可能性があって資金も用意できる分野があると思うけどどうなのかな
CO2の有効利用はどこもやってる。別に禁止されてなんか無い
大気中の二酸化炭素、何割だと思っているの?0.03%だよ。排出という面ではいつも大騒ぎだけど、回収するとなったら話は別だ。絶対に一単位時間当たりの生成量は少ない。朝露集めて飲料水にするようなものだよ。慈善事業としては成り立つだろうけど、軍の前線基地では需要に供給が追い付かない。結局備蓄頼りになるだろうね。そもそも米軍はこれから世界から徐々に撤収していくんだから、それに備えた事業開拓じゃないかな?
燃料をどんどん燃やして二酸化炭素を供給するんだよ?
環境保護の名目でゴミの分別をしても、生ゴミが燃えにくいからプラを混ぜたり軽油をかけて燃えやすくするようなもので、二酸化炭素が不足して燃料燃やして二酸化炭素を供給する本末転倒の結果になりそう。
この手の燃料は空気中の二酸化炭素を取り込んで使用時に放出するから プラマイゼロでカーボンフリーとなる
砂漠地帯みたいに極端に日照がよくて太陽光発電のコストが安いが近くに需要がない場合 液体燃料にして需要地帯に送る 水素などでもいいけどで取り扱いが大ごとなので常温で液体の炭化水素にして使用すると使いやすい 水は行きのタンカーで運んでくる
たしかJAXAも電動のジェット作ろうとしてたなぁ
今後の戦闘機はガンダムSEEDみたく電動で飛ぶのかね?
え?これってコストが下がったら第2の窒素固定法になるんじゃ…