英国防省のジェレミー・クイン調達担当次官は「空対空ミサイルASRAAMの最新バージョンBlock6が2022年に運用開始される」と明かして注目を集めている。
参考:ASRAAM Block 6 to enter service on F-35 and Typhoon by 2024
赤外線シーカーの問題を解消してITARフリーとなったASRAAMの最新バージョンBlock6が間もなく運用開始
米国とNATO加盟国は1980年代に取引を行い欧州は視界外(BVR)空対空ミサイル開発プログラムを放棄して米国製のAIM-120を採用することを約束、その見返りして米国は英独が開発を進めていた赤外線誘導の短距離空対空ミサイル「ASRAAM」をAIM-132として採用することを約束したのだが米国はAIM-9調達を優先、ドイツはワークシェアの配分や要求性能(英国は射程をドイツは機動性を優先することを主張)の食い違いから計画を離脱してしまった。
そのためASRAAMは射程優先を主張した英国の要求に基づいて開発された結果、短距離空対空ミサイルとしては当時異例(1988年運用開始)とも言える30マイル/約48.2kmもの最大射程を備えており、これに匹敵する交戦距離を備えた短距離空対空ミサイルが登場するのは2003年に登場するAIM-9X(40km+)からで海外輸出に期待が掛かっていたが、米国の国際武器規制/ITAR規制に足元をすくわれてしまう。

出典:Geoffrey Lee/MOD / OGL v1.0 ASRAAMを発射する英空軍のタイフーン
ASRAAMは米ヒューズ製の赤外線シーカーを選択したため米国務省の国際武器規制/ITARの規制対象に含まれることになりオーストラリアとインドへの輸出には成功したものの、サウジアラビアへの輸出は米国が拒否したためドイツのIRIS-Tに商機を奪われてしまったのだが、ヒューズ製の赤外線シーカー技術(フォーカル・プレーン・アレイ/FPA方式)や設計は元々「大西洋横断ワークシェア協定」に基づき英国のBAEから移管されたものなのにITARの規制対象になったため英国としては非常に不満で、この問題が解消されたのが最新バージョン「Block6」だ。
Block6が採用している最新の赤外線シーカー(勿論旧型に比べセンサーの解像度が向上している)は全て英国国内で製造されているためITARの規制対象外でオーマン、カタール、インドからの受注が舞い込んでおり、サウジアラビアもBlock6を発注したという噂もあるらしい。
英国にとって待望とも言えるBlock6について英国防省のジェレミー・クイン調達担当次官は「2022年にタイフーンで2024年にF-35Bで運用が開始される」と明かしており、果たしてITARフリーとなったASRAAMは海外市場でどこまで注目を集めるだろうか?
因みに英国とインドはASRAAMをインドで共同製造することで合意しており、この契約に基づきMBDA UKはバーラト・ダイナミクスに技術移転を行い2023年までにインド国内にASRAAMの最終組立・統合・試験施設を設立する予定だ。
関連記事:Win-Winの関係? インドと英国が空対空ミサイル「ASRAAM」の共同製造に乗り出す理由
※アイキャッチ画像の出典:Geoffrey Lee/MOD / OGL v1.0
幾ら設計方針が距離重視ではなかったとは言え
それらの国々は20年近くもの間、IRIS-Tで妥協する気は起きなかったんだろうか…
ところでASRAAMもIRIS-Tもサイドワインダーも透明なガラスかプラスチックのおめめが付いてるのに
なんでAAM-5Bには無いんだろう…
>なんでAAM-5Bには無いんだろう…
可視光を透過しなくても、赤外線透過出来た十分だから、かな?
センサーの稼働範囲が目視出来ないのも、性能秘匿に一定の効果があるかも?
単純に赤外線透過性の高い樹脂かなにかを使っているだけじゃないかな
透明なガラスやプラスチックと違って飛行中の粉塵等による傷うぃ原因とした透明性の低下を気にしなくてよくなるだろうし
日本には市販技術でもこんなんがあるからね。
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透明でない理由だが、上でも挙がってる秘匿性に加えてセンサーの保護にもなるだろう。
光学系センサーはどうしても対象波長域以外の光線の影響も受け易いから、選択的に遮蔽できるならした方がいい。
AAM-5には2波長赤外線(中赤外線、遠赤外線)センサシーカーが搭載されてるが、ウィンドー部材質について解説してる資料はちょっと見当たらないですね。
いずれウィンドー部の素材は不透明ながら中~遠赤外線の透過性を持つものであるのは間違いない。AIM-9Dではウィンドー部にフッ化マグネシウムを使用しているが、透過波長域が近~中赤外線なのでそれとは違う。
多結晶アルミナとかかな? (今調べただけだから全く信用しないで)
「Polycrystalline Yttrium Aluminum Garnet」とか「Polycrystalline alumina」で検索すると出てくる。
参考までに、メーカー資料ですが赤外線カメラ・センサーのウィンドウ素材は次のようなものがあり、中~遠赤外線に適合するものはいくつかあります。
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外部評価報告書「対空誘導弾高速化光波ドームの研究」によれば、同研究では硫化亜鉛結晶体を用いて研究したようです。
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AAM-5Bも海外に売りたいねぇ
ランチャーは同じ物を使っているから搭載だけはできるかも? 実際に撃てるようにするにはFCSとのインターフェースとかインテグレーションとか山のような仕事が待っていて、それは値段に跳ね返ってくるけど、その時まで価格競争力って残っているだろうか?
海外に売る前にさぁ…
F2全機に載せようよ!国防やべぇんだからさぁ!!
ほほほほっほんまやで!!
と言うか、未だにスパローしか撃てず、AAM4Bを発射出来るF15が半分しか居ないのも問題。
現時点での戦力的にはたしかに問題だけれども、順次F-35Aで代替していくのでどうかご勘弁を…
素人的には何か間にあったらその分ロスが生じそうな気になるけどそうでも無いのね
短距離空対空ミサイル以外だと他国も剥き出しじゃないのだから当たり前と言えば当たり前…なのかな
性能的な理由じゃないならコストの関係とかか
そもそもガラスやプラスチックが透明に見えるのはあくまでも可視光範囲の電磁波に関して透明という話で、透明に見えるからシーカー部分に良いというわけではないのでわ?
大気は我々の目から見れば透けているように見えますが、天文学の赤外線観測からすればかなり不透明ですし…
我々から見れば不透明でも別の周波数の電磁波で見ればスケスケですし
他国の短距離空対空ミサイルも剥き出しじゃないじゃん。
先端が透明か不透明かはミサイルの誘導方式によるとしか
赤外線画像誘導方式のIRIS-T空対空ミサイルだと先端は透明なガラス(待機中はカバーつけてる)だし
ちなみにシーカーの動きが直接見えるのでちょっと面白かったり
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ツリーが切れてて分かり難いけど
>短距離空対空ミサイル以外だと他国も剥き出しじゃないのだから
となってるから「我が国の短距離空対空ミサイル」の話で、上の
>ASRAAMもIRIS-Tもサイドワインダーも透明なガラスかプラスチックのおめめが付いてるのに
なんでAAM-5Bには無いんだろう…
を受けてのレス、つまり「同じ赤外線画像誘導なのに」という前提での疑問だと思うよ。