米国のシンクタンク「戦略予算評価センター(CSBA)」は昨年末に発表したレポートで、変化し続ける環境への適応が遅れている米海軍の脆弱性について苦言を呈している。
参考:Неприемлемый уровень уязвимости: ВМС США оказались не готовы к войне
米軍の戦略的アプローチ自体を見直す必要があるのかもしれない
CSBAのレポートによれば、米海軍は変化し続ける環境への適応が遅れているため、敵の攻撃を低下・遅延または無効化することで戦闘自体を抑制するという米軍の戦略的アプローチを効果的にサポートするための規模や能力、戦闘能力に欠けていると指摘した。
敵の攻撃から身を守り、敵の偵察能力に負荷をかけるため水上艦艇を分散運用する必要があるにも関わらず、未だに米海軍は高価で手間の掛かる大型戦闘艦に重きをおいているため、中国やロシアとの戦いで勝利するには艦艇自体の数が少なすぎて分散運用が実行できないことを問題視している。
最も問題なのは、米海軍が大金を投じて調達を続ける高価で複雑なアーレイ・バーク級駆逐艦に頼り切っている点で、今後、中国やロシアとの戦いに備え艦艇の規模を350隻まで増やす予定だが、アーレイ・バーク級駆逐艦が中核を占めるようならば財政的にこれを維持することは不可能だと指摘した。
さらにアーレイ・バーク級駆逐艦は巨大なレーダーシステムを搭載し、90セル以上のMk.41VLSには各種ミサイルが詰め込まれているが、この艦単体では中国やロシアとの戦いにおいて「役に立たない」と警告している。
アーレイ・バーク級駆逐艦が搭載する強力なレーダー(AN/SPY-1)のスイッチを中国やロシアとの戦いで入れれば、暗闇でライトを点灯させるようなもの(敵に位置を知らせるという意味)で、中国やロシアは電波を照射している艦に対し照準を合わせるだけで、米海軍が最も頼りにしている水上艦を無力化することができ、米海軍は高価なアーレイ・バーク級駆逐艦を何隻も消耗することには耐えられないだろう。
結局、CSBAが米海軍に、水上艦から高価なセンサーを切り離せと言っているのだ。
強力なレーダーを搭載したアーレイ・バーク級駆逐艦を分散運用するのではなく、安価な艦艇か無人艦(もしくは無人機)を複数用意し、搭載されたセンサーを統合すれば擬似的にAN/SPY-1に劣らないセンサー網を作り出すことができ、敵の攻撃で何隻かやられても複数で構成されたセンサー網が直ぐにダウンすることはなく、安全な後方に控えている水上艦艇は、もたらされた情報を元に戦闘を優位に進められるという寸法だ。
ただ、この発想は目新しいものではなく、そのような用途に使用が想定されている小型無人艦(偵察用途)と大型無人艦(VLS搭載型)やフリゲート艦「FFG(X)」の開発に取り組んでいるが、ズムウォルト級ミサイル駆逐艦や沿海域戦闘艦の失敗で米議会は米海軍の新規プロジェクトに慎重になっている。
米議会は2種類の無人艦開発予算を承認はしたが、米海軍が無人艦(特に大型無人艦の方)のコンセプトや有用性を証明しない限り、VLSの搭載=本格的な開発へ進むのを制限しており、フリーダム級やインディペンデンス級で失敗した沿海域戦闘艦の後継艦として計画されたフリゲート艦「FFG(X)」は、提案された4つの案を検討中で年内に最終案を決定する予定で、このまま順調に進んだとしても戦力化までには相当な時間がかかるため、当分の間はアーレイ・バーク級駆逐艦に頼らざるを得ない。
さらに、戦力の分散運用やネットワークで結ばれた戦闘環境の構築は絶対的な正解ではなく批判的な意見もある。
このような概念は、今以上に複雑なシステムに依存することになるため脆弱な部分を敵に提供するようなものだという意見や、新たにネットワークを構築し維持するための予算が正面装備の調達をさらに困難にするという意見もある。
管理人の個人的な意見としては、変化し続ける環境への適応に米海軍が遅れているのではなく、変化をリードするためのプロジェクト(ステルス攻撃機A-12やズムウォルト級ミサイル駆逐艦等)が全滅し予算を失ったため、冷戦終結後に存在したリードを中国やロシアに埋められ、追い越された(部分的に)だけだとも言える。
まずは敵の攻撃を低下・遅延または無効化することで戦闘自体を抑制するという米軍の戦略的アプローチ自体を見直す必要があるのかもしれない。
※アイキャッチ画像の出典:Public Domain アーレイ・バーク級駆逐艦 フライトIII
>暗闇でライトを点灯させるようなもの
80年の時を経てとうとう某帝国海軍と同じ境地に達した雨公であった
80年前のは、同等の受信能力なら﹙反射波はリターンロス分だけ余計に信号が減衰するので﹚逆探の方が探知距離は2倍以上になる事から来ていたと思います。
レーダーだけでなく同周波数帯の逆探まで滞った結果から、単なる技術音痴扱いとなってますが。
つまりDDGやDDHではなくFFMとSSを調達する海自は正しい戦略を取っているという……?(なお乗組員不足)
沖縄戦に戻ってレーダーピケット艦を多数配置しろと。
ロシアと中国が追い越した部分というのは極超音速ミサイルに付いてでしょうか。ただあれらの評価については現時点で客観的なものは一切無いし、実物すら有って無いような物としか言いようがないと思います。ステルス戦闘機においては開発・生産・配備を見ても、全く追いていません。
ただ、米軍の戦略が様々な点で岐路にあるのは間違いないでしょう。しかしそれはあくまで米軍自身が抱える問題に起因する部分が大半だと思います。
極超音速ミサイルについては、私も眉唾物だと思います。
何より実射試験の報道が見られません。
公表されていないだけかも知れませんが、西側のミサイルとは全く違います。
しかし、そんなミサイルが本当に「あるかも知れない」ため、AWACSを後方へ退かせたりSPY-1のスイッチを入れるのをためらわせたりさせられるなら、実際の誘導精度はともかく非常に効果的な「口撃兵器」として機能します。
パッシブ式で送信出力の強いSPY-1搭載艦はしかたないかな。フライト3やアップグレードでアクティブ式のSPY-6になるし、他国艦に比べてそこまで悪目立ちはしないと思う。
これは露骨に対中A2/AD戦略の事を意識して言っていますね。
そもそもイージス艦は敵の射程圏に入らず、第一列島線内では無人ドローン索敵を行うのが基本戦略ですから。例えば有事には日本が今回整備する哨戒艦隊は艦隊本体は列島線外に位置し、無人ヘリと哨戒艇、無人潜航艇により列島線内での索敵を行う形になります。
米軍の攻撃主力は西南諸島〜台湾〜フィリピン〜ブルネイ〜(ベトナム)上に配置した米陸軍のミサイルランチャからの対艦対空飽和攻撃で、これを持って中共艦隊を壊滅させます。ですので、イージス艦の相対的な価値が低下し、その代わりに哨戒艦隊を充実させるべきだというのは妥当な指摘です。切ない話ですが米機動艦隊の役割は落ち武者狩りです。じゃあ存在価値がないのかといえば、平時では絶大なプレゼンスを示せますし弾頭ミサイルへの対抗もあるので絶対に必要です。米軍のミサイルのほぼ全てに対艦機能が付与されたこともこの流れですね。
あとよくある誤解なんですが、民主主義国家であるアメリカは国民への報告義務があるのでその不足な点について情報が出ますが、それを根拠に中露の軍備のほうが優れているなどの指摘はナンセンスです。中露が自国に不利な事象を公表していないだけです。そして民主主義国家なら不具合改善に責任を持たされますが、独裁国家においてそれはどうなるでしょうか?ロシア兵器が過大評価される根本的な原因ですね。
高価なイージス艦を離れたところにって、LCSとアーセナルで失敗してこの状況なのに、何を今更。
おおむね同意しますが空母の役割認識が低すぎませんか。敵にとって、無視できない攻撃力を持った高付加価値目標であり、柔軟な移動する索源地であり、索敵リソースを大きく割かざるを得ない。平時のプレゼンスとあわせた見せ金としての役割が抜けてます。だからこそ騎兵とその槍である駆逐艦・対艦ミサイルが活躍できるのですから。
議会、国民への公開義務を逆手に取って、旧ソ連の戦闘機の脅威を誇張してF-15やF-16の開発をジョン・ボイドとファイターマフィアが進めたりと、リスク事項をうまく広報して第4世代機の頃はうまく回ってたんですが、ソ連崩壊後の30年は機能過多や野心過剰で失敗している感が強いですね。
沿海域戦闘艦は当初コンセプトなら安く上がったので方向修正もしやすかったでしょうが、中途半端に機能を足して無駄にカネを使った感があります
机上の空論じゃないかな?
じゃー どうするんだ?という事で答えが分からない。
今こそ軍オタの知恵と知識の見せ所
何をもって「役立たず」だと言ってるのか
本文からではさっぱり分からないですね。
ただ「対レーダーミサイルの的になる」と
言ってるだけですし、そもそも空母に対する
飽和ミサイル攻撃を完封するべく作られたイージス艦が
自分自身が狙われたからってどうなると?
一部の方が言う様に極超音速ミサイルの話なのであれば
そっちについて詳細に書くべきで、
「暗闇でライト」云々の記述は不必要です。
イージス艦が怖いってことでは?
この記事はrg.ru ロシア新聞っす。
ロシア連邦政府が発行してる公式な新聞
中国の人民日報、新華社、中央電視台と同じ(共産党のプロパガンダ、公式メディア
大出力の多機能レーダーと多数のVLSを装備した大型水上戦闘艦を、対艦ミサイルでそんなに容易に始末出来るのかどうか。
052C型6隻、052D型20隻(+6隻)、055型5隻(+3隻)、055A型?…
驚異的な速度で「中華イージス」を作り続ける中国海軍自身が、その回答を示しているのではないでしょうか。
中国やロシアに好意的に解釈するなら、アメリカやその同盟国の極超音速ミサイルの開発ペースならイージスもどきの脅威になるにはまだ時間がかかる、とか?
まぁアメリカの空母怖い!イージス艦つおい!マジ無理!ってのが本音で、精一杯のブラフと虚勢でしか無い気がする
既にかつてのMig25の様に、それを口実に西側が極超音速ミサイルを開発してるけど、それを実用化されたら、中国ロシアがどんな反応するのか楽しみだ
しかもその裏でステルス機を開発していた様に、また何か違うプロジェクト動かしてたりしてw
理論先行で、LCSやズムウォルト級のの二の舞では。文中にもあるが、ネットワークが重要だが、大きな脆弱性にもなりかねない。
陸軍ではGPSが使えない状況下での活動も考慮した装備の開発にも配意しているようですが。
背広組や多くのシンクタンクは非対象戦戦、非対称戦と唱えて先進的な装備の開発や、大規模プロジェクトをつぶしたり、性格付けを変えましたが、今になって露中の後塵を拝する結果になっていますね。
どっちにせよ、強力なレーダーは必要。米国のレポートはSPY-6やネットワーク化へのアップデート予算を獲得するための方便かと。とはいえ、ネットワーク化は必要なので本邦も頑張って。