米海軍のグレッグ・ハリス少将は12日、米空母はより遠距離で戦う準備が進んでいると明かした。
参考:The future US Navy carrier air wing will be effective at extended ranges, admiral says
中国やロシアのミサイルが届かない遠距離から航空作戦を展開するという発想は正しいのか?
米海軍航空技術訓練センター(CNATRA)の最高責任者であるグレッグ・ハリス少将は12日、新しく開発のシステムと新しい武器の組合せによって米空母はより遠距離で戦うことが出来るようになると明らかにした。
これは中国やロシアが進めるミサイルの長射程化に対する米海軍の暫定的な回答であり、空母の航空戦力を「より前方に展開させる」ことで長射程化したミサイルの影響下外に空母を逃がすという古典的な手法だなのだが、空母の航空戦力を「より前方に展開させる」ということは今以上の空中給油の需要が高まるという意味で、これは口で言うほど簡単な話ではない。

出典:public domain F-35Aに空中給油を行う米空軍のKC-46A
米空軍は議会に空中給油機(KC-10、KC-135、KC-46)を479機保有すること義務付けられている(保有すべき最低ライン=米空軍が勝手に空中給油機を479機以下に削減することを議会が禁じている)ため、航空戦力の長距離展開が容易だが、米海軍には空母の艦載機に空中給油を行う専用機を保有していないためバディポッドを搭載したF/A-18E/Fが空中給油任務を担当しており、空母に搭載されたF/A-18E/Fの20%~30%が空中給油任務のみに使用されている。
さらに付け加えれば、艦載機への空中給油は発艦重量の関係で燃料を十分搭載できない艦載機に対する燃料補填という意味合いが大きく、空軍機にように空中給油を多用して長距離展開を行うと空中給油任務に必要なF/A-18E/Fの数が増えるため、攻撃に投入できるF/A-18E/Fが減るというジレンマに悩まされるのが欠点だ。
この問題を解消するため開発中なのが空中給油任務を担当する無人航空機「MQ-25 スティングレイ」で、2025年までに初期作戦能力を獲得すると言われており、グレッグ・ハリス少将はMQ-25が完成すれば米空母は中国やロシアのミサイルが届かない遠距離から艦載機による航空作戦を行うことが出来るようになると言いたいのだろう。
ただし、この方法は根本的な問題の解決方法ではなく非常に効率が悪いと批判されているのも事実だ。
要するに米海軍は高価な空母を中国やロシアのミサイルから守る方法(MQ-25を使用して空母の航空戦力をより前方に展開させる)を議会に提示することで、大型空母の存在意義を守ろうとしているのだが、MQ-25プログラムコストは150億ドル(約1兆6,000億円/R&D費用+72機調達費用:当初見積もり130億ドルから20億ドルコストが増加)と見積もられており、F/A-18E/Fを追加導入したほうが費用対効果が高いのではないかと指摘されている。
MQ-25(全長19m×全幅12m:推定値)はF/A-18E/Fと同サイズで空母から500海里先に約15,000ポンド(約6,800kg)の燃料を届けることが出来ると言われているが これはF/A-18E/Fの機内燃料タンク(8,063L)を満たす程度の量しか運べないという意味で、複数のF/A-18E/Fを「より前方に展開させる」ためには相当数のMQ-25が必要になるため空母からF/A-18E/Fを相当数降ろす必要があり、空中給油を行う専用機を空母に導入したところで複数の航空機に燃料を給油可能なKC-46(燃料搭載量72トン)ほど劇的な長距離展開支援能力は見込めないという意味だ。

出典:Public Domain F/A-18による空中給油の様子
これはMQ-25が悪いというよりも空母のサイズや発艦支援能力(=カタパルトの射出能力)に依存した艦載機の限界で、陸上運用機のような長距離展開能力を空母で実践すれば非常に効率が悪いと言わざるを得ない。
果たして約1兆6,000億円もの費用を掛けてMQ-25を実用化するのが正しいのかは米国の納税者が判断することなので触れないが、中国やロシアがミサイルの射程を更に延長してくれば米空母の航空戦力はMQ-25だらけになるという意味で本当に笑えなくなる。
補足:米国でもMQ-25を空中給油機として開発するのなら150億ドルのプログラムコストでF/A-18E/Fを追加調達して、残りの予算を第6世代戦闘機プログラム「F/A-XX」に回したほうが賢いと言われているが、もしMQ-25が空中給油任務だけでなく攻撃や偵察にも対応できる無人攻撃機として開発されるなら150億ドルもの投資に意味があると言う意見もある。
因みに2年以上の歳月を掛けて練られた米海軍の新たな艦隊構成計画案が近々、マーク・エスパー国防長官に提出されると報じられているので現在進められている計画に大ナタが振るわれるかもしれない。
※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy photo courtesy of The Boeing Co. 無人空中給油機MQ-25
変な笑いが出た
(そして、またしてもボーイング…やばいよやばいよ)
KC-46が艦船から飛び立てば良い(福島ミズポ風)。
80年代に90機近く搭載していた時と比べ、現在の米空母の艦載機数はかなり少なく、給油専用機を大量に積むスペースはあるので、一時的な対応としては良いのではないかな。
じゃあF/A-18をもう1小隊載せとけばいいじゃないですか
現在の米空母の艦載機数が減少したのは、艦載機が大型化したせいです。
例えば、昔はA-4やA-7といったコンパクトな攻撃機がありましたけど、その後継機がF-18では艦載機数が減るのは当然です。
空母の格納庫のスペースは余っていません。
昔は大型のF-14×20,FA-18C/Dx20,A-6×20,S-3×10,EA-6Bx5,E-2Cx5合わせて80機とか積んでましたけど?
こうなると、90年代に米海軍で検討されていたアーセナル・シップ(船体に可能な限りのVLSを積み込んだミサイル艦)を復活させた方が効果的かもね
アーセナル・シップは90年代では早過ぎた発想だったと思うけど、これだけ長距離かつ極超音速のミサイルが発達して信頼性も増せば建造する意義が出て来る
兵器の歴史を振り返ってみても戦闘機対戦闘機、戦車対戦車と、戦力の高い兵器には同じ種類の兵器をぶつけるのが基本なので、ミサイルを倒すのもミサイルと言う発想で行くしかないだろう(レーザー・ビーム兵器は対ミサイル兵器として未だ充分な威力が担保されていないと、ここでは考える)
あと、アーセナル・シップが否定された理由の一つである「被弾時の安全性」に関しては、1隻当たりのミサイル搭載量をある程度絞る替わりに小型化しつつ多数建造すれば、コスト削減にもなると思う
F-35をピケット代わりにしてミサイル艦で迎撃する感じかな?
ピケットにするのは、CECに代表される様な共同交戦能力を持つ兵器なら何でも良い
勿論F-35でも良いし、それ以外にも米海軍の装備ならE-2D早期警戒機やイージス艦等が使えるだろう
必要なら空軍や陸軍の部隊から情報を貰って戦っても良いし(勿論共通のネットワークが必須だが)、以前海自関係者の勉強会で出て来た「艦隊作戦支援機(FOS)」の様な専用の情報・通信・指揮ネットワーク支援用の機材を開発したって良い
要は、昔のASWで実在したハンター・キラーグループの様に敵を探す役と攻撃する役を分けてしまえば、敵はどっちもやっつけないといけなくなるので、それだけ敵に負担を強いる事が出来る
空母そのものが航空基地の前方展開の意味合いのはずだが、さらにその前方を考えるとなると迷路に入り込みそう
長期的には空母不要論も認めるしかない感じ
空母は既に戦艦大和のような存在になっているのかも知れませんね。
あとは海軍の既得権益がどこまで認められるかという予算獲得の争いになりそうです。
イージス艦守るために、LCSを前方展開させようとしていたコンセプトに近い物がありますね。
まるで大日本帝国海軍みたいだあ
非人道的レベルの連続飛行時間を誇る長距離艦載機を開発しよう
いざとなれば潜水空母作るのもいいな
まあ、対魚雷用魚雷が実用化されればなんとか?なお予算。
相手は空を飛んでくるミサイルだから、魚雷では無意味ではないか?
すまん。海中にいれば航空機の発着艦時以外(極超音速ミサイルでも時間的に対処できない?)は基本的にミサイルの脅威は解決できるから、残る問題は魚雷をどうするかだけと思って書いたんだ。
アトラスロケットに搭載して全機アメリカ本土から戦力投射しよう! マッハ20で迎撃不可能だしな。
帰路はUS-2改造給油機を洋上待機させておくから心配するな。
なら、給油用のUAVは潜水艦発着艦式にしてしまえばいいのでは?
さらにその潜水艦も無人にしてしまえばいいのでは。
これで空母や艦載機はいじらずに済む。
潜水空母いいですね。
伊-400の夢、再び。
なんなら給油用の無人機のみを潜水空母から運用するのでよいのでは?
これで空母も艦載機もいじらずに済む。
できればもうちょっと給油能力を増やしてほしいかな。
もう空母やめてこっちもミサイルを長射程化すればいいんじゃない?潜水空母もいいけどいくら金かかるかわかんないし、航空優勢取りたいんだったら戦場化する地域周辺に友好国があれば基地を作れるんだからそこから戦闘機だせばいいじゃん。先制攻撃?やられる前にやるんだよ。
長射程ミサイルをF/A-18自体が迎撃することを考えるほうがベターな気がする。
超超音速ミサイルでも、直進して来れば固定目標だろう。反論を待つ。
それって、SM-3を戦闘機から打ち出すってこと?
そりゃ凄い!
でも、SM-3クラスになると、1機に1発しか持てないと思うから、効率悪いよね。
パック3艦載すればよくね。
要は艦さえ無事ならいいんだし、もっと安いミサイルやレーザーでも良いとも思うが
ロッキード・マーティンのERINTミサイルをパトリオットで運用できるようにしたのがPAC-3ですけど、ERINTミサイルをイージス艦で運用できるようにする計画があったはずです。
地上基地から海軍の給油機飛ばそう
そこに日本っていう不沈空母があるじゃろ
無人給油機って考えはいいじゃんと思ったがF-18一機分の給油能力しかできないってなんだよ・・
もうサポート役としてミサイルキャリア能力も付与してのF-35C随伴機として売り込んだ方が筋がいいんじゃないかって思えてくる
もう笑うしかない。X-47Bで敵ミサイル基地や重要施設に先制するとか何とか言ってなかった?それをパイロットの反対がどーやらこーやらでキャンセルして更に1兆6000億かけて小型の給油機取得とか…。
F/A-18はダッシュが遅く燃費が悪いと言われている、つまり空力特性(抗揚比)がわるい。
そろそろステルスを捨てて空力と兵装・燃料搭載に全振りした足の長い新型艦載機機を開発する頃合いじゃないのかな。
ミサイリアーかな?
これはかなり厳しい問題です。空中給油は戦闘機の作戦行動範囲を広げますが弾薬の補充はできません。小規模の紛争や破壊作戦は行えても敵正規軍との衝突は避けざるを得ないでしょう。空母不要論がチラホラ見えますが基地航空隊だけでインド太平洋のシーレーンを防衛するのは困難です。やはり将来的に米軍は退いていくものとして長期的な安全保障戦略を練る必要があります。
空母艦載機が正面戦力を務める時代は終わったが、海洋覇権国家アメリカの場合は空母以外の飛行隊を海外展開させても限度がある。恒常的な制空支配を達成する為には空母の装備を全て刷新するしかない。それが出来なければ飛行甲板を有した只の航空機輸送艦。
本当に海軍は最近ろくな目にあってないな・・・
何をしても酷い目にあう
ブラックバック作戦センパイ「空中給油の悩み、相談に乗ろう。為せば成る、だ!」
強襲揚陸艦を有人機の軽空母に使うのでなく
無人空中給油機母艦として使うのは?…
カタパルトは無いけど、スキージャンプ台を設置するか、発艦用ロケットブースターを装備するかして…
艦載機に増槽を増やせばいいだけじゃね
それか、低燃費のエンジン開発とか
最近米軍はトンチンカンな事ばっかりだな
だから増槽を増やしても発艦重量の制限で空母から飛び立てなくなるんだって・・・ 陸上機と艦載機の運用は別ものと考えた方がいい
頓珍漢なのはどっちだよっていう
X-47そのまま開発継続しておけば……
油槽船をエクラノプラン化して、発艦直後の給油は油槽船から直接貰うこととし、空中給油機はもっと前線での給油に廻して総数削減する机上の空論とかどうよ。
ブラックバック作戦…英国面…うっ、頭が…
誰も触れないがカタパルトの出力を上げる策は無いのだろうか。カタパルトの加速度は3Gと言うから倍ぐらいまでパワーアップできないもの?
その加速Gに耐えるために機体を強化したら重くなって航続距離が落ちるという…
ロケットの容積の大半は燃料のジレンマみたいなことになりそうね
MQ-25Aがこれから実戦配備化ですね
定率のF/A-18E/Fが給油任務「のみ」にという部分は不適切では?
地味にバディポッドでの給油母機任務は機体寿命に効く任務で、ローテーションで特定機体に集中しないよう、機体寿命が残り短い機体は避けるよう運用されているはずで、20~30%の機体がそればかりとはなっていないはずです
ボーイングに関わると、ろくなことがない
あれ?やけに批判されてるけど能力自体は空中給油時のスーパーホーネットと大差無いんだが…
スパホも900キロ近く展開したら給油できる燃料6.5トンくらいしか残ってないぞ。
空中給油特化の無人スパホ純増と考えたら中々安牌なスペックだと思う。
ただ欲を言えば燃料搭載量を1.5倍にしてスパホ比2倍の空中給油能力付与してもよかったんじゃないのとは思う。
機体重量を12トンまで減らせてりゃ艦上運用も大丈夫だろ。
積載量的に有利な無尾翼全翼機な割に随分給油量が少ないなと言う印象だな。下手にステルスにしたのが良くなかったんじゃないかと疑っているが。
MQ-25はF-35Cと組み合わせてステルス機どうしで、より敵前方で給油する為のものじゃなかったの?
いつの間にF-18との組み合わせになったのだろうか?