米国関連

英国製射出座席の不具合、英独に続き米国もF-35などに飛行停止を指示

マーチンベーカー製の射出座席問題が西側製戦闘機に大きな影響を及ぼし始めており、英国やドイツに続き米国もF-35、T-38、T-6の飛行停止を決断、現在米軍が運用する大半のF-35が飛行できない。

参考:Most US F-35s temporarily grounded as ejection seat issue threatens jets worldwide

マーチンベーカー製射出座席の不具合に起因した飛行停止が広がりを見せる

この問題を一言で説明すると「米空軍のF-35Aに搭載されていた射出座席にロケット推進剤が欠落していることが発覚、その後の調査で同様の不具合が3件見つかり、マーチンベーカーは特定の製造ロット=F-35向けのみに起因する問題だと報告したが、この問題を察知した英空軍とドイツ空軍は念のためタイフーン、ホーク、トーネードなどの飛行停止と検査を指示、これに続いて米国もF-35、T-38、T-6の飛行停止を決断した」という話だ。

出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Desiree Ware

射出座席にロケット推進剤が欠落している問題は「特定の製造ロット=特定の期間に製造されたF-35のみに発生する」とマーチンベーカーは主張しているが、これを示す確実な根拠がないため飛行停止の範囲が広がりを見せており、国防総省はF/A-18、T-45、F-5などマーチンベーカー製の射出座席を採用する航空機を「どこまで飛行停止する必要性があるのか?」検討中で、さらに飛行停止を命じられる航空機は増えるかもしれない。

米ディフェンス・メディアは「この問題はタイフーンやラファールだけでなくトルコや韓国で飛行する航空機にも影響を与える可能性がある」と述べており、恐らくTFXやKF-21へのマーチンベーカー製射出座席の採用を指しているのだろう。

出典:Royal Navy / OGL v1.0

因みに米海軍や米海兵隊もF-35BとF-35Cの飛行を停止しているが、英空軍がF-35Bの飛行を停止しているのかは不明だ。

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air National Guard photo by Staff Sgt. Mercedee Wilds

バイデン政権がレンドリース法でウクライナ支援を行わない理由前のページ

衰えないHIMARSによる攻撃、ノーバ・カホフカの弾薬庫や鉄道橋を破壊次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    ロシア軍は命を顧みない兵士の波でウクライナ軍を圧倒、春攻勢に影響が出る可能性も

    ニューヨーク・タイムズ紙は「部分的動員で変化したロシア軍の戦術は命を顧…

  2. 米国関連

    拡張性に乏しいF-22の設計、空軍の要望が一向に実現しない理由

    雲行きの怪しいF-22のアップグレード、4.5世代で一般的な赤外線捜索…

  3. 米国関連

    批判に晒されるF-35プログラム、下院軍事委員長がF-35Aに依存した航空戦力の見直しに言及

    下院軍事委員会のアダム・スミス委員長は「F-35Aに頼らない航空戦力の…

  4. 米国関連

    対中戦略を進める米国、インド太平洋戦略強化のため韓国との同盟関係を拡張か

    米国防総省は対中戦略を強化する一貫として「韓国との同盟関係を拡張するこ…

  5. 米国関連

    米軍の生体認証装置をタリバンが押収、協力関係にあったアフガニスタン人特定に悪用される可能性

    米軍が協力関係にあったアフガニスタン人の身分証明代わりに使用していた生…

  6. 米国関連

    米メディア、Su-57の取得コストは9,450万ドル~1億3,910万ドル

    米国のディフェンスメディアがロシア製軍用機の取得コストについて興味深い…

コメント

    • 感謝します
    • 2022年 7月 30日

    F-15とF-2はACESⅡだから空自への影響は心配しなくてもよさそう

    9
      • 全てF-35B
      • 2022年 7月 30日

      自衛隊のF-35Aは大丈夫かな?

      9
    • ななし
    • 2022年 7月 30日

    ロケット推進材が欠落ってどういうことだ?一番肝心なパーツじゃん
    どこぞの現場猫みたいにチェックシートの項目全部OKにチェック入れてるんじゃないだろうな?

    19
      • エニグマ軍曹
      • 2022年 7月 30日

      まさに現場猫案件かもしれません。
      元記事によればロケット推進剤に混ざってるはずのマグネシウム粉末が入っておらず、推進剤を入れておくカートリッジの部品が緩くなっていたそうです。
      発火しなければロケットは噴射しませんからかなり重大な欠陥ですね。

      13
        • クローム
        • 2022年 7月 30日

        米海軍ではX線検査で正常に製造されたと確認した部品と交換して対処するそうです。(NAVAIRのニュースより)
        つまり、特定のロットに不良品が混ざっていて外見や番号では判断できず「確認するには1つずつ現物をX線で確認するしかない」という非常に厄介な問題かもしれません。

        15
    • hogehoge
    • 2022年 7月 30日

    うわー、ヤバイ不具合来ちゃったなぁ・・・。
    これ損害賠償とかどうなるんだろうな。前に見せしめにしたタカタのエアバッグみたいに下手に潰せもしないだろ。

    14
      • hogehoge
      • 2022年 7月 30日

      Martin-Baker Mk.16
      ・Alenia Aermacchi M-346 Master
      ・Beechcraft T-6 Texan II
      ・Dassault Rafale
      ・Eurofighter Typhoon
      ・TAI Hürkuş
      ・Lockheed Martin F-35 Lightning II
      ・Northrop T-38 Talon
      ・Pilatus PC-21
      ・HAL Tejas

      2
        • 76式ダメ人間
        • 2022年 7月 30日

        T-50もじゃなかった?アルゼンチンの戦闘機コンペ、それが原因でコンペ参加止められてたような。

        6
    • 匿名
    • 2022年 7月 30日

    こうなると、俄然国内企業の防衛部門撤で生じるリスクが注目される訳で
    まあM2HMGでヤラかした住友重機みたいな例もありますが…

    6
    •  
    • 2022年 7月 30日

    >射出座席にロケット推進剤が欠落している

    意味がいまいち?なのだが、
    射出座席に本来入っているはずのロケット推進剤が入っていなかった、
    と言う事なのかな?

    2
    • エニグマ軍曹
    • 2022年 7月 30日

    推進剤というより、推進剤に混ざっているはずのマグネシウム粉末が入ってなかったというのが真実みたいです(元記事より)。

    15
      • トーリスガーリン
      • 2022年 7月 30日

      つまり爆発的な燃焼が起きないので加速不足で機体から十分な距離が取れず機体に激突したりコックピットの淵に引っかかったり可能性が出る感じか
      なんにせよ致命的すぎるぞ…

      17
    • 半蔵
    • 2022年 7月 30日

    推進剤の欠落とは?推進剤の成分的な不具合なのか、分量的なものなのか、カートリッジ自体が無くなっているのか、点火しないのか、そのすべてが様々に発生したロットがあるのか
    最後のぽくて飛行停めたなら、かなりやばいですね。

    • 速すぎィッ!
    • 2022年 7月 30日

    T-6とか38とか今まで全く聞いた事ないのが何なんだか全くわかんないですわ。なんとなくこのサイトみていた感じ練習機でええのかな??う〜〜〜ん

      • バーナーキング
      • 2022年 7月 30日

      T-6がターボプロップ、T-38が超音速ジェットでどちらも米海空軍始め世界中で使われてるド定番の練習機ですね。
      T-38はF-5の兄弟機で見た目も非常に似ています。エリア88にも登場してセラやシン+ザク国王の国外脱出等に使われてました。
      なお、同作品序盤で核ミサイルとイナゴの大群から基地を救ったモーリスの「T-6テキサン」は先代のレシプロ機の方です。

      12
    • ナニガシ
    • 2022年 7月 30日

    独占企業だからか?
    死者が出る前に分かって良かった。

    2
    • K
    • 2022年 7月 30日

    とてつもなく大変な事になりましたね。
    因みに日本のF35もやっぱりマーチンベイカー製の射出装置使ってるんでしょうかね?
    アメリカで製造された機体(2019年の墜落機も含めて)は確実でしょうけど国内生産機はどうなんでしょう?

    2
      • 戦略眼
      • 2022年 7月 30日

      ノックダウン生産だから、同じです。

      2
    • 匿名
    • 2022年 7月 30日

    どこの新型機の話題でも射出座席の自製話なんて聞こえずマーチンベイカー一択に見えていたので時間の問題で起きると思ってました

    2
    • 匿名希望
    • 2022年 7月 30日

    そういえば、ラファールにも不具合あったよね。
    あれもマーチンベイカーだったけ?

      • 南極1号
      • 2022年 8月 01日

      あれは素人をドッキリで乗せて射出してしまった事件だっけ?
      あの時は正常に動作することを証明できたわけだが、普通は試し打ちができないよねえ・・

    • 匿名
    • 2022年 7月 30日

    この手の推進薬の製造ってオートメーション化が進んでいるものと思ってたけど、
    もしかして旧態依然なバケツとか使って薬剤まみれのオッサンが手作業で作ってるんとちゃうかw

    3
      • きっど
      • 2022年 7月 31日

      オートメーション化していた所で、その製造設備への材料充填作業で現場猫すれば同じでしょう
      本邦だって、全く関係の無い医薬品に高濃度の睡眠剤が混ざっているという極めて重大な事故が発生していますのでね

      2
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
  2. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
  3. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
  4. 北米/南米関連

    カナダ海軍は最大12隻の新型潜水艦を調達したい、乗組員はどうするの?
  5. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
PAGE TOP