米国関連

生まれ変わった米戦車エイブラムス、最新のM1A2C/SEPv3配備が始まる

米陸軍の第3旅団戦闘団「グレイウルフ」は29日、最新バージョンの主力戦車M1A2C/SEPv3の引き渡しを受けたことをFacebook上で明かした。

参考:3rd Battalion, 8th Cavalry Regiment

生まれ変わった米陸軍の主力戦車M1エイブラムス引き渡しが始まる

米陸軍第3軍団の第1騎兵師団指揮下、第3旅団戦闘団「グレイウルフ」が受け取ったのは主力戦車M1エイブラムスの最新バージョンM1A2C/SEPv3で、主な変更点は射撃管制装置や前方監視型赤外線装置のアップグレードや弾薬データリンクの導入、新型砲弾(M829E4弾とXM1147多目的弾)への対応、遠隔操作式銃塔(CROWS RWS)の搭載、新しい装甲パッケージの採用やエイブラムス反応装甲タイル(ARAT)を取り付けるためのマウント取り付け、むき出しだった補助動力装置を車体下へ移動などだ。

出典:US Army 米陸軍第3旅団戦闘団「グレイウルフ」に引き渡されたM1A2C/SEPv3

さらに装甲車両の天敵とも言える即席爆発装置(IED)の起動をブロックするための新しい電子装置の採用、イスラエル製アクティブ防護システム「トロフィー」を後日搭載するなどM1A2Cは旧型のM1A2よりも戦場での生存性が格段に向上しており、64.6トンのM1A2よりも2.2トン重量が増加したため足回りの強化も施されている。

出典:US Army 米陸軍第3旅団戦闘団「グレイウルフ」に引き渡されたM1A2C/SEPv3

恐らくアップグレードを受けたM1A2Cはドイツの主力戦車レオパルト2 A7+と同等か、もしかするとそれ以上の性能を有しているかもしれない。

米陸軍はこのM1A2Cを計435両を発注済みで最大786両調達(発注済み分を含む)することを予定している。台湾も米陸軍と同じM1A2CをM1A2T(※)として108両導入することが決まっており2023年から引き渡しを受ける予定になっている。

※1補足:台湾が導入するM1A2TはM1A2C/SEPv3が採用している劣化ウランを使用した装甲パッケージが異なる以外は同一仕様。台湾国防部が提出した予算書類によれば台湾はエイブラムス戦車を2022年に18輌、2023年に18輌、2024年に28輌、2025年に30輌、2026年に14輌発注する予定で国防部長は「2023年に最初のエイブラムス戦車を受け取れることを期待したい」と話している。

因みに台湾が導入するM1A2Tの1両あたりの価格は約20億円(弾薬やスペアパーツ/消耗品取得等の関連費用を含む)だが、米陸軍のM1A2Cは既存のM1Aからのアップグレードされるため1両あたりのアップグレード費用は4.4億円(※2)なので台湾の導入費用と比較すると安価だが、日本の10式戦車が1両あたり9.5億円(調達初年度)と比べると高価に感じる。

※2補足:2019年に米陸軍がM1A2Cを174両発注した際の契約金額が7億1,400万ドルだった。

逆を言えば、それだけ費用を掛けてアップグレードを行い進化する脅威に対応をしていると言う意味で、調達開始から10年が経過している日本の10式戦車もそろそろ近代改修の話が出てきても良いはずだ。

 

※アイキャッチ画像の出典:US Army Photo by Mark Schauer ユマ性能試験場でテスト中のM1A2C

内戦再開か?トルコがロシアとの停戦合意を破ってシリア政府軍を攻撃前のページ

新規開発?F-35Cの改良機?米海軍が選択を迫られる次世代戦闘機の行方次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    米欧州陸軍のホッジス元司令官、米国はロシアの非帝国化を目指すべき

    米欧州陸軍のベン・ホッジス元司令官は4日、ウクライナとロシアの戦争につ…

  2. 米国関連

    スイスの次期戦闘機候補、圧倒的なコストパフォーマンスでF-35Aが優位か

    米国はスイスの次期戦闘機に提案されているF-35AとF/A-18E/F…

  3. 米国関連

    米国の155mm砲弾増産、2025会計年度までに月10万発を達成する

    国防総省の調達担当者は「155mm砲弾の増産は予定よりも早く進んでいる…

  4. 米国関連

    中国の偵察能力を飽和させる方法? 新マンハッタン計画は米海空軍協力の象徴

    米海軍の最新鋭「ジェラルド・R・フォード級空母」2番艦が12月7日、洗…

  5. 米国関連

    バイデン政権、ウクライナ支援のため国防総省の資金活用を検討か

    バイデン大統領はウクライナ支援の継続について「必要な資金は別の方法でも…

  6. 米国関連

    米空軍参謀総長、制空権の常時確保を要求する軍事作戦はコスト的に無理

    米空軍のアルヴィン参謀総長は28日「以前のように航空戦力を増強し『何日…

コメント

    • 匿名
    • 2020年 6月 02日

    M1A3で軽量化するみたいな話はポシャったの?

    2
    • 匿名
    • 2020年 6月 02日

    ・・・また重くなったのか・・・。
    いや、足回りも強化されたってあるし大丈夫なんだろうけど。

    • 匿名
    • 2020年 6月 02日

    IED対応やトロフィーとか側面追加装甲とか昔と違って正面から主力戦車と殴り合いより市街地で戦う為の対応が戦車の重量を重くしている。

    軽量級の10式も同様の市街地戦闘を想定した改修を施せば50t台半ば位にはなるのではないか?

      • 匿名
      • 2020年 6月 02日

      市街地での戦闘を考慮するならロシアのBMPTのような仰角のとれる武装が必要になると思う
      ビルの上からの対戦車ロケット攻撃に対してトロフィーが効くかどうか疑わしいし

        • 匿名
        • 2020年 6月 02日

        >市街地での戦闘を考慮するならロシアのBMPTのような仰角のとれる武装が必要になると思う

        その用途で用意されてるのがCROWS RWSなのでは。
        それともRWSだと不十分なのでしょうか?

          • 匿名
          • 2020年 6月 02日

          完璧には不十分
          rwsは角度や視界で劣る
          メルカバの様に迫撃砲か
          マイクロミサイルが良い

    • 匿名
    • 2020年 6月 02日

    そう言えば10式戦車、制式化して10年になるのですね。
    生産ロット毎に細かい変更入ってたのが、過去にアーマーモデリングとかで紹介されてたけど、最近は見かけないかな。
    どこかのロット準拠での生産が続いているのか、単に変更入っているのに気付かないだけなのか、どちらなのだろう?

    • 匿名
    • 2020年 6月 02日

    ガスタービンエンジンの燃費は改善されてないだろう。
    最善策はポルシェ戦車再びで、ニッサンのe-powerのようにタービンは発電専用にして減速機の場所にモーターを配置すれば、機動力も燃費も大幅に上がる。
    当時に比べればエンジンも発電機のコーターも大幅に小型化されたし制御も進歩した。
    かなり費用が嵩むがタービンをっ使い続けるにはこの手しかない。
    M1は作りすぎた上に丈夫だから砂漠に大量保管されている、だから新型戦車を作る余裕は無くて改良して使い続けるしかない。

    1
    • 匿名
    • 2020年 6月 02日

    やはり戦車は重量が大きい方が正義だね

      • 匿名
      • 2020年 6月 02日

      質量効率の悪い重金属系の装甲は、防御力の割に重くなるから、「重量が大きい方が正義」の評はどうかな?
      デカイのは、後から弄る余地を得やすいから、その部分は小型なMBTより有利かも。
      重くなる事の弊害とのトレードオフだけど。

      1
      • 匿名
      • 2020年 6月 02日

      お前の故郷の黒豹戦車に鉛の装甲でも装備しろよ。
      厚さ10センチくらいで表面全部覆えばかなりの重さになるぞw
      重さが正義なんだろ?やってみろwww

        • 匿名
        • 2020年 6月 02日

        0-32km/h加速が20秒越えそう。黒豹改め二代目マウスを襲名しよう。

      • 匿名
      • 2020年 6月 02日

      10式軽戦車を開発した日本も次世代重量級戦車の構想があるし
      軽い戦車は一時しのぎにしかならないことを理解しているんだろうね

        • 匿名
        • 2020年 6月 02日

        また嘘捏造発言か?
        次世代重量級戦車の構想ね、ソースはどこだ?
        ヒトマルをそこまで嫌うとはな…さすがシナテョンパヨwww

        • 匿名
        • 2020年 6月 03日

        10軽戦車と書いている時点でお察し。

        レールガン装備で重量30tとか妄言を吐いているK3戦車計画を心配した方が良い。

        • 匿名
        • 2020年 6月 03日

        日本の何処で使うんだよ・・・
        つか、何処で「使える」んだよ・・・。

        1
    • 匿名
    • 2020年 6月 02日

    80トンが見えてきてるんだけどいくらなんでも重すぎィ!もうすぐマウスの半分だぞ
    台湾で本当に使えるのかな?
    アメリカ本土や中東みたいな乾燥地ならともかく東アジアの軟土だと埋まらんか?

      • 2020年 6月 02日

      台湾の対上陸戦の理想論としては、上陸した八路軍が少数のうちに寄ってたかって潰しにかかることなんだろうけど、70トンだとインフラ的に迂回もできないし、一度に投入できる数も揃えられない事にならないだろうか。
      少数配備で主力の機動性に秀でた車両が別にいればいいんだろうけど

        • 通りすがり
        • 2020年 8月 25日

        装輪の雲豹ファミリーに火力支援型があるからそいつが16式同様海岸に駆け付け、後からエイブラムスが立ちふさがるみたいな構想なんですかね?

    • 匿名
    • 2020年 6月 02日

    ジリジリと重くなっていく。
    マウス戦車(120トン)まで折り返し。

    ただでも輸送インフラに問題抱えてるのに。

    そういや自衛隊の戦車トランスポンダー足りないって聞いたけど、少しはマシになったのだろうか。

      • 匿名
      • 2020年 6月 02日

      増加装甲を外せば、74式用の73式特大型セミトレーラや、民間の40t級トレーラーでも輸送できるのが10式のウリの一つ
      なので、90式の10式への更新が進むほどマシになるかと
      あと、74式が機動戦闘車へ更新されて戦車自体が減るのも・・・・・・

    • 匿名
    • 2020年 6月 02日

    25年には新戦車の予定があったが
    23年に新エイブラムス…嬉しくねえ

    • 匿名
    • 2020年 6月 02日

    ティーガーIIと同じぐらいの重さかぁ・・・

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 軍事的雑学

    4/28更新|西側諸国がウクライナに提供を約束した重装備のリスト
  2. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
  3. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  4. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
  5. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
PAGE TOP