ニューヨーク・タイムズ(NYT)紙は社説の中で「戦争終結のため痛みの伴う譲歩の決断を迫られるのはプーチンではなくゼレンスキーの方になる」と主張、多くの波紋を呼んでいる。
参考:The War in Ukraine Is Getting Complicated, and America Isn’t Ready
参考:Western resolve set to be tested as key US and EU figures want Ukraine to cede territory to Russia and make peace
どこまでプーチンを追いつめるのか=侵攻前の状態で停戦か、クリミアやドンバスを奪還してから停戦か
巨大なロシア軍相手に勝利を収め続けるウクライナ軍について欧米は「ダビデがゴリアテを倒して以来の大勝利だ」と受け止めているが、問題は米国やEUの中に「西側の支援さえあればウクライナがロシア相手に軍事的勝利を収めることが出来ると信じる勢力」と「核兵器の存在やウクライナ東部・南部の状況を直視してウクライナがロシアを追い出すのは不可能だと信じる勢力」が存在する点だ。
米国のニューヨーク・タイムズ(NYT)紙は社説の中で「局地的に勝利できてもロシア軍相手にウクライナ軍が『決定的な勝利』を収めるのは難しく、この戦争の現実的な結末は領土的譲歩を伴うだろう。そのためバイデン大統領はウクライナに対する支援を明確に制限してゼレンスキー大統領に現実の受け入れを図るべきだ」と主張しており、ロシアが侵攻前から保持しているクリミアやドンバスを軍事的に取り戻すのは不可能で「戦争終結のため痛みの伴う譲歩の決断を迫られるのはプーチンではなくゼレンスキーの方だ」と付け加えている。
この社説について英国のTelegraph紙は「侵攻前にワシントンで議論されていた内容(ミンクス合意で不愉快な譲歩を迫られたとしても外交的解決を図る方が全体的なリスクが低いという考え方)を反映したもので、初戦で勝利したウクライナ軍に武器を支援すればロシア軍に勝てると英国やポーランドは信じているが、まだ米国のエスタブリッシュメント達はウクライナがロシアに勝利する可能性を信じていないことを示している」と指摘した。
ゼレンスキー大統領も戦争は最終的に話し合いで終わると認めているものの「主権問題で絶対に譲歩するつもりはない」と公言、ロシア軍をウクライナから完全に追い出すことを主張しているが、フランスのマクロン大統領、ドイツのショルツ首相、イタリアのドラギ首相も「領土的譲歩を伴う現実的な和平の模索」をゼレンスキー大統領に要求してきたとTelegraph紙は明かしており、このような姿勢は和平交渉においてプーチンに「確保したウクライナ領土の保持」を期待させるものだと批判している。
つまりウクライナとロシアの戦いがやり直しの利く「ウォーゲーム」なら結末を見てから選択肢の変更も可能だが、現実の戦いはウクライナ軍が初戦でロシア軍に勝利したように「絶対な予測」が不可能で、もしロシアが総動員を実行して四方の守りも投げ出し全戦力をウクライナに投入すれば戦いの様相が変わってくるし、ウクライナ軍の本格的な反攻でクリミアやドンバスを失う事態に陥れば戦術核兵器の使用に踏み切るかもしれない。
欧米の政治的指導者は不確定な要素が招くリスクとウクライナ支援のバランスを必死に見極めようとしているのだが、当然全ての国が同じ意見に集約されるはずもなく、ウクライナに近い国(ポーランドだけは例外)ほど極端な結果が招くリスクを警戒しているという意味だ。
Telegraph紙は「この戦いの結末は何からの妥協で終わるかもしれないが、今直ぐにウクライナもロシアも妥協を受け入れる状態にないため、まだまだ両国は戦いで力を示す必要がある」と予測しており、欧米の政治的指導者も「どこまでプーチンを追いつめるのか=侵攻前の状態で停戦か、クリミアやドンバスを奪還してから停戦か」で意見を一致させる必要がある。
関連記事:ロシア軍は反攻準備が整う前に押し切りたい、ウクライナ軍は阻止したい
※アイキャッチ画像の出典:Територіальна оборона ЗС України
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今のゼレンスキーはクリミアはともかくドネツクルガンスクは取り戻したいって感じだけどねえ。
とはいえ開戦前までのラインに押し返しさえすればプーチンが停戦に合意してくれるかっていうとそれはそれで別問題だが。
プーチンが停戦に合意するのはウクライナを征服するか、彼自身が死亡するまであり得ないと思う。
長期戦となったらロシアからやるしかないと思うが。和平交渉の焦点は、クリミア半島ですかね。あとは捕虜の返還。ウクライナの安全保障。意味わかんない法律締結しようとしてる議員の引き渡し(個人的な意見です。)
アルメニアと、アゼルバイジャンみたいに、停戦後4分で、また戦いが始まりませんように。
このままだとウクライナが負ける可能性が高い←わかる
だからロシアに媚びよう←わからない
核で脅して住民虐殺略奪なんでもありの世界がいいとか、自称現実主義者はそれこそロシアに強制移住でいいんじゃない?
それはともかくウクライナが勝つ(ロシアが惨敗する)にはどうすればいいやら
それを主張するならウクライナに武器を送って欧米と同じレベルのリスクを抱えてからでしょ。
何もしない国が安全なところから「なにやってだよ」「日和ったのか」とは簡単にヤジれるけど、現実にはそんな簡単な話じゃない。
おっしゃる通りで…
結局日本は有事に何もできない張りぼて国家ってことなんでしょうかね(;ーー)
そういう話であれば、「現実見てロシアに妥協しろ」という言説も占領された住民の今後の運命という現実や、はっきりと武力で白黒がつかずに妥協する事による今後の再侵攻を防ぐ為の何の担保も無い現実を無視した外野の気軽なヤジですよね?
だから「妥協しろ」という話も、「日和ったのか」という話もどっちも外野の意見は現場の現実を無視したヤジなんですよ。どっちかの意見だけがヤジというのはおかしい。
侵略されてる側に対して妥協を要求する、これはアメリカにおけるどういう利権権益を優先する勢力でしょうね
こうして現実的と称して利己的な論理を展開することで、西側のリーダーとしてのアメリカの地位を貶めていることに気がついてもらわないと
こ奴らはアジアで何か起こってもアメリカの利益しか考えないだろうから
アメリカファーストだよ。モンロー主義ともいえる。開戦直前、プーチンを「天才だ」と言った男を覚えているかな。
「ロシアが交渉を言い出したときに、妥協する心のゆとりを持って」ぐらいだと思う
今はロシアが交渉を望んでないからまだまだ先の話で、このままロシアが交渉を言い出せないうちにウクライナ領からたたき出されるのか、ロシア軍の大攻勢でドンバスを確保し交渉を言い出すのかは神のみぞ知る
そりゃまあ、悲観的な勢力と楽観的な勢力が存在するのは当然。
ウクライナ人の戦う意思と、欧米の支援がどこまで続くかの戦いだからね。
そして戦場の実態としては、アメリカがM1A2やパトリオット、F16の供与を始めた時、ロシア側は戦線を支えられるのか。
ウクライナがロシアにとって、アフガンに続く第二のベトナムになるのかは、まだ不確定要素が多すぎてわからないよ。
仰るとおり様々な勢力があることは当然ですが、問題はその悲観的・楽観的勢力の双方が常に情報戦の影響下にあるということでしょう。現状でも、アフリカや中南米などの非西側諸国において特にロシア側の情報戦が功を奏している可能性があることが懸念されています(西側でも油断はできませんが…)。
現代の戦争がハイブリッド戦であることは確かにゲラシモフの言うとおりで、最終的なこの戦争の着地点はおそらく宇・露両陣営の情報戦の力とその結果によるところが大きく、それぞれがどれほど国際的な支援を受けられるか、どのように停戦仲介を受けられるかにかかっていると言っても過言ではない。
軍事系まとめサイトであるここで政治的な主義主張は場違いであろうかとは存じておりますが、一般論としては、日本がウクライナに軍事支援をしていないからといって決して沈黙していてはいけないと(まだ不確定要素が多く、露骨な虚偽や曲論が横行しているだけになおさら)感じさせられますね。
クリミア半島はロシアにとって戦略上の核心的要衝なんで、ウクライナが奪還作戦を発動し有利に進行すれば戦術核を撃つ可能性は高い。
ドンバス地域は今回の特別軍事作戦発動の大義名分なわけで、その失地はロシアの明らかな敗北と看做され絶対に受け入れないでしょう。
一方、ゼレンスキーが侵攻開始前の状況回復をもって勝利と公言したので、米欧とウクライナ間の協議で着地点について何等かの認識共有があったのかもしれません。
というわけで、ロシア・ウクライナ双方がギリギリ妥協できるラインが侵攻開始前の状態ではないかと。
ウクライナがそれ以上の軍事行動をとらないと米欧に確約すれば、それを実現できるだけの軍事支援は継続されると思います。
仮にですが、アゾフ連隊の名誉ある解散を実施する等ロシアが反ナチズムと看做せる施策をウクライナが打てば、プーチンの面子が立つ(ロシアが勝利宣言できる)かもしれません。
いずれもそのときのロシアの苦境がどれくらいか次第ですが。
逆算して、アメリカにとって「核兵器利用絶対無しで、1番ロシアに出血させる」安全確実な方法(なお、ウクライナは旧ソ連なので捨て石にすることも可とする)が、2/24ロールバック妥結だという、シンプルな見通しなのでしょう。
この戦い、アメリカは核戦争のリスクを取る価値がないんです。自分にリスクが無い範囲でロシアに打撃を与えたい。裏返すと、自らがわざわざリスクを取ってまでロシアに打撃を与える価値がない。
プーチンは西側とのデカップリングを想定して戦争を始めてるんだから、どんな犠牲を払ってでも、他の戦線を縮小してでも東部の二州だけは保持するのでしょう。
対するウクライナがどんな犠牲を払ってでも二州を取り戻せるのかと言えば苦しいし、西側も支援疲れをしてくるだろうから難しいところですね。
クリミア危機のさいに半端な対応をしたせいで今回の戦争を招いたという記事が以前ここで取り上げられていたと思うのですが、ロシアに対して譲歩すればそれが戦争の火種になりそうです…
アメリカは中距離対地兵器やらロシア領の情報を出し渋ってるから、その辺は絶対踏んではいけない虎の尾という認識なんだろうな。ただ、クリミア落すにはケルチ海峡の分断の為に中距離対地兵器と制海権は必要だと思う。クリミア自体の領有経緯は複雑だし黒に近いグレーの様な認識かも。宇軍の現状の兵器と支援兵器で出来るのはヘルソン、東部の武力奪還くらいか。
クリミアやドンバスからロシアを追い出さないまま手打ちにすると、武力による侵略を認めるということになるからそこはどう考えているのやら。
クリミアやドンバスから完全に撤退しないかぎり経済制裁は解除しないのならまだわかるが、ドイツとフランスは本音ではロシアとおおっぴらに貿易をやりたがっているだろうし、バイデンは腰が引けてそうだしなー。
西側にとってウクライナ支援はウクライナを勝たせることではなく、戦争を出来るだけ長引かせてロシアの国力を可能な限り削ぎ落とすこと、を目的にしてるからどこかのタイミングでウクライナの梯子を外すことになるのは予想できる。
しかし中途半端な停戦をウクライナに強制しても火種がくすぶって遠くない未来にまた炎上するだろうし、ロシアも受け入れ可能な停戦協定が全く思いつかない。仮に現時点の支配領域で国境線を確定させるような、ウクライナには全く受け入れ難い大幅な譲歩を強いたとしても、ロシアの「勝利」には程遠い気がするが…
ぶっちゃけアメリカって、この戦争、停戦させる動機もメリットも無いので、停戦交渉が進んだら戦争がグズグズ継続するよう、アメリカは影で机を蹴りだすと思います。(「ロードスという名の島がある。」パターン)
そう。
つまりそれは、西側総力かけてもロシア一国に負けた、ということ。
そもそもゼレンスキーが妥協したらプーチンが戦争止めてくれるのか、という問題点を忘れてるよなぁと
戦争を始める前には着地点を決めるのが攻める側ですが、始めた後の着地点は攻守両方の合意になるから、圧倒的に難しいですね。
今回はプーチンが世界平和への反抗を行った以上、相応の代償を支払うべきですが、そのためにはロシア国民がプーチンを否定できる状況が必要です。
その意味においてロシア国民の戦争責任は重い
終わらせることが出来なければ、始まらせてしまった愚かさと怠慢の責を問われることになる
奮起せよロシア人、独裁者と共に滅んでいいのか?
バルジの戦いやレイテ沖海戦のような『どちらかの決定的な敗北』が起きない限り、双方とも和平はできんよ
そもそも余命の取り沙汰されるプーチン相手にまともな交渉や判断を期待したり計算したり、して良いのですかね。この侵攻すら予測出来なかった大勢の西側の偉い皆さん方?
NYTは予想通りロシアに甘い論説だとして、他紙はどうなんでしょうかね?世論調査的にはNYTが言うほど早めに足抜けしろという声は少ないと思うのですが
ヨーロッパは、支配層の利害ひとつで建前を掛け替えるのはお約束ですが、力ずくを辞さない国々に隣接している国にとっては、はいそうですかと納得できる話では無い。
恐らくこんなこと言い出している連中は、ドイツのシュレッーダーのような、少なからずロシアの支配層と利害を共有している輩でしょう核の使用の脅威を誇張して、体制の意地を望み、既得利権の保持を図っている。
脅威を受けている隣国の立場としては、あくまで建前を看板に立てて、ウクライナがロシアを泥沼に引き摺り込み、ロシア国内が経済的な焼け野原になるまで継続してもらって、体制を自壊さてくれるのが最善でしょう。(悪どいですが)
NYTはアレな新聞だし•••てのは置いといても、ウクライナにしても国土が焦土化されてロシアの勝ち。てのは飲めんでしょ
クリミア以外の奪還が双方の落とし所なきがする
米国は以前から”NATOはもっと負担を増やすべき” と言い続けていたけれど、
この話もその続きということはないだろうか。
ウクライナに対する支援の規模を見ると、やはり米国は圧倒的だ。
米国にしてみれば、仏・伊・独のやる気のなさに腹が立っているのではないかな。
一方ロシアに直面する国々にとっては、クリミアまで含めて、ロシアに対して1mmでも
譲歩したくないだろう。明日は我が身ということでもあるし。
プーチン大統領やその後継者が何と言おうと、NATO側は譲歩はしないだろう。
問題は、仏・伊・独と西の各国の態度ではないかと思う。
ロシアと国境を接する国とそうでない国との温度差が今後戦争が長引くほどNATOの弱さを見せそう…
NYTは一足早く厭戦ムードにやられた一角ということでないの
そもそもプーチンが戦争を終われるラインが分からないので…
譲歩の兆し見せたらロシアはもっと要求してくるんじゃないかなぁ
仮にだが、ウクライナはロシアが戦術核を使用したからとクリミア半島を諦めるだろうか?
核による恫喝に屈した悪しき先例を作り、領土を永遠に失うような屈辱に平気な国がそもそもロシアに必死に抗いますかね
ロシアの核を心配する人々はプーチンに何を期待してるのやら
これからだよ、プーチンの戦争がウクライナだけで終わるはずがないだろ
まあ、いくらヨーロッパが侵略されようが、所詮米国本土を攻められる訳じゃないですから
「対岸の火事」と言えるのは米言論界が健全な証拠とも言えますね
まぁ普通に考えれば落としどころの『一案』という程度だろう。
一時日本の某弁護士や某某テレビ局の記者?単なる社員?辺りが言っていた全面降伏も一案。
ソ連崩壊からくる分裂した各国の領土も一案だし、1954年2月19日のクリミアがロシア・ソビエト連邦社会主義共和国からソビエト連邦時のウクライナ・ソビエト社会主義共和国に移管する前まで戻すのも一案。
要は案はいくらでもあるしどうとでも取れるし、それはウクライナにしろロシアにしろ、援助を送っている各国もそれぞれの思惑もあるわな。
ゼレンスキー大統領がこの社説に怒ってたけど、他国の将来を勝手に指図する傲慢さはなんなのだろう。ローカルな掲示板での将来予測ではなく、新聞の社説だろう。武力に訴えないだけでプーチンとどう違うんだ
ニューヨークタイムズとワシントンポストは昔から上から目線なので、今回もいたって通常営業です。
かつては(中小国の悲哀とはいえ)東西陣営に媚びるフィンランドはけしからんとかほざいていたような新聞なので、また世迷い言を言っている程度に捉えて、ツイッターやフェイスブックで低評価つけとくぐらいの扱いが適当でしょう
まあ朝日新聞の欧米版本店みたいなところですからねえ・・・。
リークされた内部情報だとウクライナどころか西欧全部までロシアは領土的野心を持っているようですが、アメリカへの核戦争が怖いから全ての国が黙って降伏しても良いと言うことになりますね。アメリカだけの安全を考えるなら。
ポーランドの言うようにズデーデンでヒトラーは止まらなかったのですから、最低でも2月まで現状回復は絶対条件ですよ
こういう奴らって普段は人道主義だの理想主義を口にするけど、実際に現実と直面すると驚くほどドライで利己的打算的だよな
個人的には、ウクライナがドンバスはもちろん、クリミア半島も奪還して欲しいと思っている。ゼレンスキー大統領もそのあたりが勝利条件なのではないだろうか?
プーチンが思い描いている勝利は、おそらくヘルソンからオデッサを奪い、モルドバを臨むところまで侵出して、ウクライナを黒海から締め出すことだろう。
ウクライナが望んでいるだろう勝利条件を達成するには、プーチンがその地位から引き摺り下ろされ、ロシア国内の経済がズタボロになる必要があるだろう。そのような状態にならない限り、ロシアには飲めない。2年以上かかるだろう、双方にとってとても苦しい戦いだ。
ロシア軍がいくらズタボロになり、ロシアに敗走したとしても、ロシア国内にまで調子に乗って、追撃を加えないことはウクライナに課せられた義務だ。プーチンに超えてはならない一線を越えさせないために。
NYTの論説はさておき、インターファクスUA通信によると、5月中旬に実施されたウクライナでの世論調査結果は、82%のウクライナ人が戦争の早期終結のための領土割譲に反対 (賛成は10%)を示した模様です。
リンク
ポピュリストとの評価の高いゼレンスキー大統領が、不利な戦況よりも国民感情を優先させるならば、戦争終結はなかなか見えてこないかもしれません。