米国関連

米国が長距離攻撃兵器を含むウクライナ支援パッケージを準備中、GLSDB提供か

ロイターは長距離攻撃兵器のGLSDB(地上発射型小口径爆弾)が含まれる20億ドル相当のウクライナ支援を米国が準備中だと報じており、これが実現すればHIMARSでは手が届かない150km先の目標をウクライナ軍は攻撃できるようになる。

参考:U.S. readies $2 bln-plus Ukraine aid package with longer-range weapons -sources

運用が始まればロシア軍の大規模な物資集積拠点を後方に追いやれると予想されているが、ロシア本土とクリミアを結ぶ橋には届かない

米国は前回発表のウクライナ支援パッケージで「長距離攻撃兵器のGLSDB(地上発射型小口径爆弾)を提供するのではないか?」と噂されていたが、発表されたリストにはGLSDBの名前もウクライナ安全保障支援イニシアチブ(Ukraine Security Assistance Initiative=USAI)経由による資金供給の話もなかったため提供が見送られた格好だったが、ロイターは今週中に発表される20億ドル相当のウクライナ支援に「初めて長距離攻撃兵器のGLSDBが含まれる」と報じている。

ある国防当局者はロイターに「17億2,500万ドルのパッケージに含まれる一部に武器はUSAI経由の資金で提供される」と明かしており、これが事実なら米軍備蓄にない武器の提供を意味しているため、今度こそGLSDBの提供が実現するかもしれない。

ボーイングとサーブが共同で開発したGLSDBは「クラスター弾非活性化のため用済みになるM26弾のロケットモーター」と「アフガニスタン紛争で余ったSDB」を再利用した地上発射型の滑空爆弾で、HIMARSで運用中のGMLRS弾(80km)より遠方の目標(150km)を攻撃できるため、運用が始まればロシア軍の大規模な物資集積拠点を後方に追いやれる=補給が複雑になり兵站上の負担が増えると予想されているが、ロシア本土とクリミアを結ぶ橋には届かない。

出典:Rosavtodor.ru / CC BY 4.0

因みにGLSDBは開発されただけで生産されておらず、昨年11月にボーイングがウクライナへのGLSDB提供を国防総省に提案した際「春(4月~6月)までに届けられる」と主張していたため「契約締結から約5ヶ月程度でGLSDBを戦場に届けられる」と解釈でき、今週中にGLSDBを含むパッケージが発表されば夏前にウクライナへ引き渡される可能性(管理人の推定)がある。

関連記事:米国が最大級のウクライナ支援を準備中、150km先を攻撃可能なGLSDBを提供か
関連記事:米国が25億ドルのウクライナ支援パッケージを発表、GLSDB提供は見送り

 

※アイキャッチ画像の出典:SAAB GLSDB

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コメント

    • 半分の防衛費の国から
    • 2023年 2月 01日

    日本もウクライナ農業支援パッケージとか発表出来たらいいですね。穀物と肥料を運ぶ船、車両、耕運機、除雪機、燃料を運ぶ為の船、車両、病院船、緊急医療コンテナ、地雷除去機器、身を守る為のヘルメット、ボディーアーマー等、日本らしいパッケージを希望していますよ、武器は後からでいいと思います。

    19
      • ななし
      • 2023年 2月 01日

      日本のボディアーマーは重いので不評だそうです
      ウクライナではプレートキャリアと呼ばれる最低限の防弾装備が負担が少ないので人気だそうです

      8
        • 半分の防衛費の国から
        • 2023年 2月 01日

        地雷除去するなら、守備範囲が広いタイプの方が良いと思いますよ、ウクライナ側の要望のを後から造れば良いのでは?(ついでに自衛隊でも検討)

        8
      • ポンタ
      • 2023年 2月 01日

      武器が今一番必要なんですがね

      正直こんなモン発表しても日本の情けなさが強調されるだけなので発表しないで欲しいです。
      ヘルメット送ってた頃のドイツ君よりも大分情けない。

      19
        • nachteule
        • 2023年 2月 01日

         防御も救命も軽視するとか自衛隊かよ、そっちの方が情けないわ。

        8
          • samo
          • 2023年 2月 01日

          それも軽視してるでしょ
          医官の派遣も検討はして、結局やらなかった
          検討はするだけしてやらないのは日本のお家芸だよ?

          5
          • ポンタ
          • 2023年 2月 01日

          ”防御も救命も軽視”とおっしゃるが、身を守る武器が無ければ防御する事も命を助けることも出来ませんよ、それに”この手”のロシアと外交的に波風立てない支援は”人気”で既に大量に入っており優先順位も低いです。

          それと激戦の真っ最中なのに”農業支援パッケージ”が”日本らしい”とはあまりにもね・・・

          6
          • STA
          • 2023年 2月 02日

          さらっと自衛隊揶揄するのやめてもらっていいっすか?
          自衛隊は防御も救命も軽視してないよ。

          4
    • 58式素人
    • 2023年 2月 01日

    少し明るい話題でしょうか。
    ロシアとの戦力比に大きな改善が見込めない以上、
    ロシアの補給線の破壊には極めて有効なものと想像します。
    希望としては、S300のシステムで稼働する西側ミサイルが欲しいですね。
    素人の勝手な想像ですが、S300とPAC2の機体の形はよく似ていますね。
    お互い、技術情報の窃取をしていたのですから、当然かなとは思いますが。

    2
      • ポンタ
      • 2023年 2月 01日

      難しいですな、記事にある通り滑空爆弾なので高度も高く迎撃も容易、十分な数があれば防空網も突破可能かもしれませんが、それこそ相手の迎撃能力を飽和するレベルで使わないと厳しいと思います。
      ロシアが使うS-400にはそう言う飽和攻撃に対応したイージスシステムっぽいモードがありますし、これと西側第三世代戦車だけでは厳しいですかね

      結局の所、もう少しウクライナ本土内に引き込んでロシア軍の防空密度を下げ補給線を伸ばさない限り、ウクライナ側のジリ貧な状況は変わらない、そう言った印象を受けました。

      6
        • 58式素人
        • 2023年 2月 01日

        素人考えではありますが、
        ロシア軍の性癖を考えると、自国の領土に引き込むのは良策ではないのでは。
        彼らは、進出した土地に執着しますから。
        それこそ、今回、ウクライナ南部の4州を強引に併合しようとしているように。
        すぐに要塞(?)を作りますよ。
        ロシア人に土地を与えてはならない、と思います。
        のちに交渉しても無理なことは、日本の北方四島が実証している気がします。
        この戦争は、ロシアの膨張政策を抑えるものでもあると思っています。
        彼らに、戦争をしても得る土地がないと思わせねば、ですね。

        13
          • ポンタ
          • 2023年 2月 01日

          土地に執着させて伸びた補給線を叩くのが上策だとは思うのですがね、叩くだけ叩いてから身動きが取れなくなった主力を包囲殲滅し一気に押し込む、ですが現状はバフムトで逆のことをやられてしまってます。
          思えば昨年のロシア軍総撤退はこれを狙っていたのかもしれません。

          バフムトは東部州解放の起点になるので保持しておきたい所ですが、敵防空密度が高い上、向こうからもハイマース相当のGPS誘導弾が飛んでくるのでここで戦うのは得策でないと思います。

            • 58式素人
            • 2023年 2月 01日

            そうですね。
            出来れば、バフムトを保持した状態で、ウクライナに隣接する
            ロシア領内の鉄道施設を破壊すると良いと思います。
            ロシアの兵站は、明らかに鉄道頼みですから。効果はあるでしょう。
            あと、バフムトを渡してしまうと、今回のロシアの最小目的(?)である
            ドンバス地域の割譲につながりかねないと思います。
            ロシアの兵站は、これ以降はあまり伸びないと思います。
            最小目的(?)実現のために、バフムトから横に走るのではと思います。
            ウクライナをドネツク州とルハンシク州から追い出すことですね。
            一度そうなると、挽回は難しいかなと。一方的な戦役終了を宣言するでしょう。
            武力による現状変更を認定させられるように思います。悪い前例ですね。

            1
    • hoge
    • 2023年 2月 01日

    正直、まともに運用できるのか不明な西側戦車提供よりも期待が大きいですね。

    9
    • りんりん
    • 2023年 2月 01日

    先日も書きましたが、高価で人員育成に時間もかかるF16等の航空機よりも、HIMARSやM270にソフトウェアをダウンロード等すれば、訓練もほとんど必要が無く使用可能になるATACMSやGLSDBの供与の方が遙かに現実的。

    とにかくレオ2等の西側戦車を使用した反攻は“何があっても絶対に”失敗が許されません。
    失敗はロシアの侵攻を正当化するプロパガンダに使われ、西側諸国は次のロシアや中国の暴発を抑えることが難しくなりかねない。
    だから航空機は無理でも、機甲師団を支援するための長距離ミサイルの供与は、必然の流れと言えます。

    ただ西側諸国でATACMS以外の地上発射型の短距離・中距離対地ミサイルを保有している国は意外に少ない。
    ATACMSもそれほどの在庫は無いはずです。
    西側で独自の地上発射型短・中距離対地ミサイルを現行で開発、一定以上保持しているのはイスラエルと韓国、台湾(いずれも準戦時国家)くらいでしょうか。他にありましたっけ?
    まあ存在したとしても、そらの供与はほぼ不可能でしょう。
    ですからGLSDBの生産が比較的容易であるなら、急いでラインを組む必要があります。
    空対地ミサイルは多数の国が保有しているんですけどね。
    なお東側諸国はスカッドの系列を始め、多数の国がトーチカUやイスカンデル、中国がDFシリーズ、北朝鮮が有象無象のミサイル群等を保持しています。

    5
    • 折口
    • 2023年 2月 01日

    集積拠点もそうですが、ロシア軍の野戦砲や対地ロケットの射程30~50kmに対してあまり余裕が無かったHIMARSに比べて、最大射程150kmのGLSDBなら対砲兵射撃のカバー範囲も広くとれるんですよね。HIMARSでは即応的に行うのが難しかった、射程ギリギリから撃ってくる敵砲兵への迅速なカウンターを狙いやすくなるのではないでしょうか。いずれにせよ、ロシア軍の砲兵火力の発揮をいっそう難しくする効果が期待できるはずです。

    11
    • panda
    • 2023年 2月 01日

    滑空爆弾故に速度が遅く迎撃されやすいと言う欠点もありますが
    存在するだけで防空体制構築や集積地の整備に負担を与えますからね、意義は大きいでしょう

    17
    • 岩渕喜悦
    • 2023年 2月 01日

    最早、GLSDBやATACMSでは大した効果は出ません。露は1000km,5000km先からミサイルを撃ってきてるわけですから。
     兎に角、NATO・米はプーチンの後追いばかりの小出し作戦、しかもチンタラチンタラやってるから、ウクライナの国民に犠牲は全然減らず増すばかり。ある意味プーチンより罪が深いよ。
    ,

      • 名前
      • 2023年 2月 01日

      プーチンが攻撃するからウクライナ国民に犠牲がでるわけで、どの意味でもウクライナ国民に対してプーチンより罪深い人間などいるはずがない。
      どの国も自国の利害があるのに、国内事情を無視して支援を強要されるいわれはない

      22
    • パセリ
    • 2023年 2月 01日

    ATACMSの供与に一歩前進した感じか
    今まで通り少しずつ有効な武器を提供していってるな感じだし、これもATACMS供与のための観測気球だろうね
    悪い話としては管理人の記述通りならATACMS供与は最短でも夏以降になるということか

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