米国はラムシュタイン会議に向けて過去最大級のウクライナ支援を発表する見込みで、米POLITICOは「最大150km先の目標を攻撃可能なGLSDB(地上発射型小口径爆弾)が含まれる可能性が高い」と報じている。
参考:US preps another major Ukraine aid package but Kyiv pleads for tanks
参考:U.S. prepping major military package for Ukraine
ラムシュタイン会議向けの米支援パッケージに「エイブラムス」が含まれていないため、ドイツのレオパルト2提供や移転承認にも期待できない
プーチン大統領はレニングラード包囲の突破記念日(1月18日)にサンクトペテルブルクの軍需企業を訪問し「ロシアが生産する防空ミサイルの数は米国の3倍で、他のミサイルも他国に引けを取らないだけ生産している。ウクライナでの特別軍事作戦は防衛産業を犠牲にしてでもロシアの勝利で終わるのは必然である」と語り、西側諸国が支援するウクライナとの消耗戦で勝利できると力強く宣言したが、米国も過去最大級のウクライナ支援を数日以内に発表するらしい。
この計画に詳しい当局者はCNNやPOLITICOに対して「次のパッケージには追加の砲兵装備、弾薬、ストライカー装甲車、最大150km先の目標を攻撃可能なGLSDBなどが含まれる可能性が高い」と明かしているが、ゼレンスキー大統領が再三要請しているエイブラムス提供については「送る計画はない」と述べているため、CNNは「英国やポーランドが戦車提供を認めると言っているにも関わらず、まだ米国は(戦車提供を)認めるつもりはない」と報じている。
レオパルト2の提供で批判の矢面に立たされているドイツの政府関係者はPOLITICOに「ショルツ首相の武器支援に関する立場はバイデン大統領の決断に大きく依存している」と明かし、ショルツ首相もダボス会議で「ウクライナへの武器提供は同盟国間で調整する必要性を確信している。この戦いをNATOとロシアの戦争にエスカレートさせることを避けなければならない」と述べており、西側製戦車の提供は米国との調整なしには不可能だと意味だ。
つまりラムシュタイン会議向けの米支援パッケージに「エイブラムス」が含まれていないため「ドイツのレオパルト2提供や移転承認にも期待できない」という話で、今回の目玉はHIMARSで運用中のGMLRS弾(80km)より遠方の目標を攻撃できる「GLSDB(地上発射型小口径爆弾)」の提供になるのだろう。
ただ「クラスター弾非活性化のため用済みになるM26弾のロケットモーター」と「アフガニスタン紛争で余ったSDB」を再利用してGLSDBを製造し、これをウクライナに提供してはどうかとボーイングが国防総省に提案しているのシロモノなので「提供までに時間がかかる」と言われており、春の攻勢までに「まとまった数のGLSDBをウクライナに届けられるのか」は蓋を開けてみるまで分からない。
因みにラムシュタイン会議の結果が判明するは20日夜(日本時間)になると思われる。
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※アイキャッチ画像の出典:SAAB GLSDB
上念さんのチャンネルで、渡部元陸将が「提供すればいいのに」と仰っていたものかと思いますが、射程が150kmもありながら命中精度が高く、コストが安く、在庫が豊富なように聞いた記憶があるのですが、何か間違っていますでしょうか?
*こちらの記事にも、そのようなことが掛かれています。
リンク
リンクの記事にも書かれていますが、GLSDBを作るための「ロケットモーター」と「SDB」の在庫は十分ですが、GLSDBは開発しただけで現物も製造ラインもないんですよ。
これをウクライナに提供するなら「ウクライナ安全保障支援イニシアチブ(Ukraine Security Assistance Initiative=USAI)」の資金でボーイングに発注する必要があり、ボーイングも資金供給の裏付けを得てから生産に動くので、大統領権限(Presidential Drawdown Authority=PDA)の支援のように米軍備蓄から直ぐに取り出せる兵器とは違うんです。
構成部品の大半は流用品なので1から部品調達を行う兵器よりも製造にかかる時間は少ないと思いますが、基本的にショーケースに並んでいない武器や弾薬は直ぐに手にはいりません。
詳しく教えて下さってありがとうございます。
昨年11月に「検討」を始めたのに、議会を通さないとゴーサインを出せないのですか。残念。
GMLRS弾だけでは供給が追いつかないとも取れるのかな。
基本的にはロシアは長期化につれて武器の質や量が下がるが、ウクライナは当面は上がっていく可能性もあることが救いか。
一市民目線だとはよ提供して欲しいと思っちゃいますが。
こう言う記事を読むと。
日本はMLRSを用廃するのは勿体無い気がします。
この記事のGLSDB弾はMLRSから運用するのでしょうから。
有事に支援を受けるとして、支援の選択肢を増やせるのでは。
日本が想定している南西諸島方面での島嶼紛争に際しては射程150km程度でも甚だ不十分ですから
部隊の生残性を考えれば本土に展開して直接島嶼部を攻撃できる能力が求められる
人員や予算が有限である以上はその国にマッチした防衛構想が必要です
尖閣諸島〜沖縄本島:410km
尖閣諸島〜石垣島 :170km
尖閣諸島〜与那国島:150km
なるほどですね。
しかし、北方領土はそうではないと思います。
根室のあたりに数両配備するだけでも圧力にできそうですね。
それとは別に、おおすみ型に乗せて洋上ロケット発射台にする案は捨ててしまったのでしょうか。
自衛隊にしてはユニークな発想で効果的に見えたのですが。
M270もM110A2も長距離ミサイル部隊に改編すると、陸戦の長距離砲撃はどうするのだろう?
発射機も共用化していなさそうだし、相変わらす統合した戦略は立てられないなあ。
湾岸戦争でGBU-28バンカーバスターを短時間で開発した実績に期待したいですが
米軍向けじゃないから、厳しいかな。
初期のは大砲の砲身に爆薬を詰めて誘導装置と尾翼つけただけの代物ですから
>開発開始から実戦使用までは1ヶ月弱程度の時間しか要していない。
こういう突貫製造好き