中々、知る機会の少ない米国製防衛装備品の単価が最近公開された国防権限法(NDAA)から読み取れ非常に興味深い。
参考:WILLIAM M. (MAC) THORNBERRY NATIONAL DEFENSE AUTHORIZATION ACT FOR FISCAL YEAR 2021
2009年から始まったP-8Aの調達も今年で終了する米海軍、まだまだ対艦ミサイル「LRASM」の調達コストが相対的に高価
通常、防衛装備品のコストは関連費用が含まれている場合が多く純粋な単価が良くわからない仕組みになっているが、米国の国防予算に関する大枠を定めた国防権限法(NDAA)の内容が公表されたため米軍が2021会計年度に何を、幾つ、幾らで調達しているのかが判明した。
とりあえず今回は米海軍(海兵隊を含む)が2021会計年度に何を、幾つ、幾らで調達しているのかを見ていくことにする。
航空機 | 調達コスト | 調達単価 |
F/A-18E/F(24機) | 17.3億ドル/1,800億円 | 7,200万ドル/75億円 |
F-35C(23機) | 23.7億ドル/2,460億円 | 1.03億ドル/107億円 |
F-35B(10機) | 10.1億ドル/1,050億円 | 1.01億ドル/105億円 |
CH-53K(7機) | 8億ドル/830億円 | 1.14億ドル/119億円 |
MV–22B(11機) | 11.2億ドル/1,160億円 | 1.02億ドル/106億円 |
P-8A(8機) | 14.2億ドル/1,480億円 | 1.78億ドル/185億円 |
E-2D(4機) | 6.1億ドル/630億円 | 1.52億ドル/158億円 |
KC-130J(5機) | 3.7億ドル/380億円 | 7,400万ドル/77億円 |
MQ-4(1機) | 2.4億ドル/250億円 | 2.4億ドル/250億円 |
VH–92A(5機) | 5.9億ドル/610億円 | 1.2億ドル/124億円 |
海軍と海兵隊が調達する航空機に関してはF/A-18E/FとKC-130J以外は全て調達コストが1億ドルを超えているが、2022会計年度からF-35Cの調達コストは1億ドル(推定9,810万ドル)を切る予定だ。因みに米海軍は今回の発注を持ってP-8Aの調達が終了(P-3CからP-8Aへの機種転換は今年の5月に完了済み)する。
ただオーストラリア、インド、ニュージランド、ノルウェー、韓国、英国から受注が相次いでいるためP-8Aの製造ラインは米海軍の受注が終了しても当面は存続可能だが、バックオーダーの残数は20機程度なので新規の受注を獲得しなければ直ぐに閉鎖の危機が訪れるだろう。
弾薬 | 調達コスト | 調達単価 |
AIM-120D(325発) | 3.3億ドル/343億円 | 101万ドル/1.1億円 |
AIM-9X(270発) | 1.3億ドル/135億円 | 48万ドル/5,000万円 |
LRASM(48発) | 1.7億ドル/176億円 | 354万ドル/3.7億円 |
GBU-53/BⅡ(357発) | 7,880万ドル/82億円 | 22万ドル/2,300万円 |
JAGM(203発) | 4,900万ドル/51億円 | 24万ドル/2,490万円 |
トマホークⅤ(155発) | 2.5億ドル/260億円 | 161万ドル/1.7億円 |
NSM(15発) | 3,290万ドル/34億円 | 219万ドル/2.8億円 |
SM-6I(125発) | 4.06億ドル/422億円 | 320万ドル/3.3億円 |
SM-3IB | 1,180万ドル/123億円 | |
ESSM(120発) | 1.2億ドル/125億円 | 100万ドル/1億円 |
RAM(100発) | 9,050万ドル/94億円 | 90万ドル/9,360万円 |
攻撃用の弾薬類については日本も導入を検討している長射程の対艦ミサイル「LRASM」が飛び抜けて調達コストが高価だ。
ただ湾岸戦争時に初使用された巡航ミサイル「トマホーク(当時1発140万ドル)」は高価過ぎると批判を受けたが30年経過した現在でも160万ドルで調達できており、相対的に他の精密誘導兵器のコストが高騰しているためトマホークⅤの調達コストが安価に見てしまうから不思議だ。
あと21会計年度の国防権限法から読み取れるのはSM-2、ハープーン、マーベリックと言った馴染みの深い誘導ミサイルの調達が終了している点だろう。
SM-2の後継としてSM-6が、ハープーンの後継としてNSM(沿海域戦闘艦やコンステレーション級フリゲート向け)とLRASM(イージス艦向け)が、マーベリックの後継としてJAGMの調達が始まっているが、製造ライン自体は閉まっておらず輸出用兵器として今後も暫く生産が続く見込みだ。
因みに21会計年度の予算で承認が下りたアーレイ・バーク級駆逐艦FlightⅢの予算は2隻で約30億ドルなので、1隻あたりの建造コストは15億ドル(約1,560億円)となる計算だが政府支給の装備については含まれていないため調達コストは18~20億ドルに近い数字になると予想されている。
まだ時期を見て陸軍や空軍が調達する装備のコストについても記事にするかもしれないが、こういった数字とFMS方式(対外有償軍事援助)を通じて購入する数字を比較すれば、どの程度の関連費用がプラスされているのか判断する材料になるかもしれない。
※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy photo/Released
こういうの見れるこのサイトが好きです
管理人さんに感謝
外国語の記事って自分ではあまり目にしないので本当に良いですよね。管理人さんグッジョブ!
???
P-8とP-1、気付けば天と地ほどの差が付いてしまったな
ちなみにどんな差か教えてもらえませんか?
返信先の人とは違うけど、個人的にはもうちょっと売れるもんかと思ってたな
ヨーロッパで、ある程度自分でカスタムしたくて、なおかつアメリカ製が嫌な国には売れると思ってたんだけど
悪いもんではないはずだけど比べる相手が悪かったんだろうな
まあ、対潜脅威を感じる国は、そう多くはないということでしょう。
高いけど、他国に売る価格を見れば利益はしっかり乗せてる。AIとかシステムが進化すればするほど価格も上がるけど、経済的に見ればGDPでも確実成長しているアメリカの物価感覚と数十年ひそぼそと低成長の日本の感覚温度差は拡がってるよ。未だに100円で買い物出来る店、500円でお釣りがくる定食になれた日本だから、
意外にアメリカは昔と変わらず今まで通りの感覚で兵器の値段つけてもデフレもどきの日本にとっては年々高く感じるんやろね!
ところがねぇ。購買力平価では日本:米国は100:102なんだよ。つまりOECDさんによると米国と日本はほぼ物価は同じだって。
同じ材の値段が等しくなる仮想通貨レートが購買力平価ですから、異なる購買力平価レートは存在しないはずですが
日本:米国は100:102これって何の事でしょうか?
OECDさん発表の購買力平価を日本を100であらわしたものです。
他の国も出てますよ。
食い物とか着るもの(衣食)の物価は逆転しても、家の値段や家賃(住)はまだ日本は激高やからしゃーない
つーても、最近は欧米諸国の都心部でも住宅難で家賃がヤバイ事になっていると聞くが……
シリコンバレーとか、局地的には酷い有様だとか
日本はアメリカにプラザ合意を飲まされたんだから、こうなるのもやむを得ないでしょう。
アメリカに二度と歯向かえないように、牙を抜かれたですよ。
国防をアメリカに依存してる以上、仕方なかったんですけどね。
一方で、大事に育てた紅い子犬は怪物と化し、今やそれに食われようとしているのは、アメリカの自業自得でしょう。
おお、素晴らしい記事
こういう一覧でまとめてあるのってなかなかないから助かります
トマホークがお安く見えるのがどうもなw
これを中国ロシア兵器の実態調達価格と比較できたら楽しいのに
思うに、世界全体として経済的な結びつきが強まって、科学技術の方向性も似かよってる今日、同じような性能の兵器を片方だけが安価に製造してるとは信じがたい
、
どういうからくりで予算を隠してるのかと
トマホークⅤなんてあったけ?最近開発されたのか?
BlockⅣのシーカーを海上目標攻撃用の新型シーカーに載せ替えた最新型ですね。
中国は全然兵器の調達価格を公開しませんが、中国の軍事専門家が色々と推測されています(以下の通り。)
・第4世代戦闘機(J-10Cなど)は約5000万ドルで、第5世代機(J-20)は約1億ドル。
・055型駆逐艦は10億ドル前後で、052D型駆逐艦は5億ドル前後。
・KD-20巡航ミサイルは約77万ドル。
ちなみに、J-15の価格は中国軍が公式発表したことがあり、4億元(約64億円)だった。
F/A-18E/Fは7,200万ドル/75億円なので、やはりアメリカより安価な兵器が多いですね。
その調達価格が、これから中国が発展するほどに米国並みに鰻登りすると推測してます
経済とはそういうもんだから
つまり中国もまた米国病の症状に陥るだろう
貴重な情報ありがとうございます。
基礎研究とか無くコピーして安く作るのが支那の十八番ときて最新技術も盗用で、そこに物価を加味したら安くて、当たりマエダのクラッカー(古っ
枯れた技術で作るって言われてるFFG(X)はどうなるんだろうね?
本当にどうなるんでしょうね。船体価格より艤装にお金がかかる昨今、イージス積んで9億ドルで収まるんでしょうか?
少数調達だからかもしれんが、NSMがLRASMと比較してもやたら高価な印象をうける。このお値段だと、我が国は何億でJSMを調達しているのかが気になるな。総額は分かるが、何発かは分かっていなかったような気がするが
こいつらと比較したら、トマホークはもうすっかり枯れた技術で比較的安価でお得な兵器。相手がSM-6級の高価なミサイルで迎撃してくれれば、それだけで得するかも?
あと、実装して機能させるのに必要なハードルに大きな差が有るとはいえ、ESSMとRAMの価格差と能力差からくるコストパフォーマンスはどう考えればよいのですかね……
弾頭がチタン合金だから高いんじゃないないか。
ヘリコプター(MV–22B・CH-53K・VH–92A)って高価なんだね。F-35Bより高価。
ベル V-280の価格も気になる。
ヘリには、それなりにメリットがあるから。
ただ。調達単価より調達コスト(2年以内に必要になる交換部品?含む値段か)で見た方が良いのと、MV-22は、調達数が少ないので、調達数が増えるにつれ、価格が下がってるってとこか。
それにしても、陸軍もアパッチよりF-35Bの方がと思うが。
前に(2020.05.8)アーレイ・バーク級駆逐艦フライトIII(約20億ドル)と言っていたがどっちが本当?
艤装等を含めてるかどうかでは?
記事に書いてあるやろ
P-8ライン閉じるのか!?
海外向け合わせて100機。日本でしか採用されてないPー1 70機がP3-C107機を代替予定。(今、36機ぐらい)。
それ以外でどこかで、P3-C 650機の代わりが必要になるだろうけど。能力向上とUAVでいけるのか?
650機って総生産数だよね。
UPDATE含めP3Cとしては製造365機だそうだから、さほど残ってないのでは?
米軍200機常用がP8に全機切り替えになってるけど、一部売却した以外は老朽化で用廃。たしか中華民国に行ったと思う。モスボールも部品取りに使われていってる。
1995年の韓国向けが最後ですでに25年経過と、各国は寿命延長やってるけど元々洋上哨戒機だから痛みも早いみたいだし。。。
P8も買えるところはもう買い終わって、後はP3Cを細々運用ってことじゃないかな。英国みたいにニムロッドからP8に移れるようなとこは移ったろうし。フィリピンみたいにP3C欲しい国はまだあるだろうけど。それらは日本から行くかもと。
ドイツはどうなるんだっけ?
RAMて案外高いのね。24連ランチャー一個で20億円なり
韓国が国産開発したくなる気持ちよくわかるわ。
艦を防御する最後の壁と思えば仕方ないか
撃沈されたら元も子もないし
ミサイルをミサイルでっていう頭おかしい発想の兵器だからな。
ハイテクの塊故に高い
導入当初はH型と比べると高額と言われたC-130J型ですが、随分と値下がりしたものです。
H型の後継でいずれ自衛隊が購入するかもといわれていますが、その頃にはFMS価格も今よりはさらに落ち着いていそうですね。
財務省さえどうにかしたら、不整地試験もした事だし普通にC-2で代替する方向に行くかと
KC-130で給油する相手も、基本は救難ヘリだし、次期救難ヘリ次第では不要になるかもですし
ですね。
調達費が国内に落ちる事、量産効果や乗員・整備士含めたインフラ統一による既存機含めた運用コスト減、国内防衛産業の維持とかを考えれば、経済面だけでもC-2に置き換えた方がメリットが多いでしょう。
MQ-4一機で240億円。たかすぎだろ。
こんな高価な機体、消耗前提で使うには明らかに高価すぎますからね
というか、P-8Aよりも高価やんけ……
調達が一機でもコントロールユニットや整備機材は必要だから高い
ですね。
調達費が国内に落ちる事、量産効果や乗員・整備士含めたインフラ統一による導入済みの既存機含めた運用コストが下がる事、国内防衛産業の維持とかを考えれば、
経済面だけでもC-2に置き換えた方が長期的にはメリットが多いでしょう。
ミサイルって高いんですね、アムラーム1ダースとF-2が同じお値段、維持整備はどれ位かかるんでしょうね?
保管中のミサイルの維持にどれだけの金がかかるのかは謎ですよね
どれ位で入れ替えるとか気になります
F-35BのほうがVTOLだし部品がたんまり乗るからF-35Cよりも高いと思ってたけど逆なんだね。量産効果ってやっぱあるんだね。
>KC-130J(5機) 3.7億ドル/380億円 7,400万ドル/7,700万円
ちょw 単価(円)www