米海軍は設計上の欠陥を理由にロッキード・マーチンが建造しているフリーダム級沿海域戦闘艦の受け入れを今年1月に停止したが、問題を修正した11番艦「ミネアポリス・セントポール」が間もなく海上試験を行うと報じられている。
参考:Navy Will Test Freedom-class LCS Gear Fix Next Month; Years Before Repair Reaches Rest of Fleet
参考:Navy will incur some cost in replacing Freedom-variant LCS combining gears
海軍の心配はフリーダム級のギアボックス交換にかかる費用を誰が負担するのかという点
米海軍が調達中の沿海域戦闘艦は2種類あり、特にロッキード・マーチンが建造しているフリーダム級はディーゼルエンジン(巡航用)とガスタービンエンジン(加速用)の動力をウォータージェット推進システムに伝えるための複雑な構造に設計上の欠陥があると何度も指摘されてきたが、米海軍もロッキード・マーチンも「フリーダム級の問題は修正可能で着実にサービスの向上に向かって前進している」と主張してきた。

出典:Public Domain フリーダム級
この問題の原因はフリーダム級が採用したドイツ企業RENK社設計のギアボックスに使用されている「クラッチベアリング」にあり、ガスタービンエンジンがフルパワーで作動すると想定以上の摩耗が発生して破損、ギアボックスに致命的な損傷を発生させるためで、2番艦フォートワースは不適切な操作で推進機関を損傷、3番艦ミルウォーキーは母港に指定されたメイポート海軍基地への処女航海中に推進機関を損傷、4番艦トロイトは南米派遣からの帰投中に推進機関を損傷、5番艦リトルロックもクラッチに問題が発生してエンジンのオーバーホールを受けるハメになりフリーダム級の信頼性や運用に深刻な影響を与えている。
ロッキード・マーチンとRENKはクラッチベアリングを摩耗から守るための潤滑剤の取り扱いが不適切だったため想定以上の摩耗が発生したと主張していたが最終的に問題を解消するため再設計に応じることで合意、しかし両者は海軍が主張する「設計上の欠陥」を認めておらず、これに業を煮やした米海軍は遂に「設計上の欠陥」を理由にしてフリーダム級沿海域戦闘艦の新規引き渡しの受け入れ停止を今年1月に発表した。
つまりロッキード・マーチンはクラッチベアリングの問題が解消されたと実証できない限り、建造中(実際の建造自体は複数数の下請け造船企業が行っている)のフリーダム級沿海域戦闘艦を海軍に納品できない=引き渡し後に支払いが設定されている建造代金の一部を受け取れないことになる。

出典:U.S. Navy photo courtesy of Lockheed Martin/Released
ロッキード・マーチンとRENKは修正されたクラッチベアリングの陸上テストを今年3月に実施して11番艦「ミネアポリス・セントポール」に工事を行うことを決定したのだが、船体の奥深くに設置されたギアボックスを取り外して交換する作業は障害物が多く非常に困難な作業で沿海域戦闘艦プログラムの担当者は2日「ようやく作業が完了して船を元に戻している最中で9月に海上試験を行う予定だ」と明かした。
因みにミネアポリス・セントポールの修理は五大湖の一つミシガン湖に面した造船所で実施されているため海上試験はミシガン湖で実施される予定なのだが、もし試験に躓くと再び造船所で作業が必要になり大西洋に繋がる航路が凍結してしまう=つまり来年の春まで五大湖に閉じ込められる危険性があるので「ミネアポリス・セントポールは残された時間内に修理と検証を終え大西洋に脱出できるのか?」注目を集めている。
但し海軍の心配はミネアポリス・セントポールの大西洋脱出ではなく「引き渡し済みフリーダム級のギアボックス交換にかかる費用を誰が負担するのか」という点で、両者は交渉を行っているが仮に海軍が主張する「設計上の欠陥」をロッキード・マーチン側が受け入れれば欠陥に関する契約条項を行使して「交換費用の分担交渉」が可能になるのだが、どちらにしても海軍は交換費用の一部(この額は交渉によって決まる)を負担しなければならないらしい。
予算状況が逼迫している海軍としては交換費用の負担を極力少なくしたいところだが、今のところロッキード・マーチンとRENKは「設計上の欠陥」を認めていないため交換費用の交渉はハードものになるだろう。
関連記事:米海軍、設計上の欠陥を理由にフリーダム級沿海域戦闘艦の受け入れを停止
※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy photo by Mass Communication 2nd Class Aaron Burden/Released
使えるようにしたとこで碌な使い道もないしもう全艦退役でよくないっすか
OHP級の後継としては微妙だけどサイクロン級やアヴェンジャー級の後継としては哨戒艦、掃海艇として必要だから相当数は残すみたいですよ
結局、速力の要求値が間違ってた。
任務的にMT30なんて高出力ガスタービン自体が必要ではなく、今からでもディーゼル車に換装して25-27ktぐらいで妥協すれば長く使えそうな気もするんだが・・・。
コール事件への米海軍の一つの回答がフリーダムと30ktという数字だったんだよ。ネームシップ引き渡し後の水上試験だと、最大出力時のモーターボートみたいな加速で接近してくる小型船を回避したり、航跡にできる波で沈めたりしていた。
100%の性能を発揮したフリーダム級を早く見てみたい
もがみ-対潜-対地-対艦-掃海です…
何もできねーじゃん…
それは舐めすぎでは?ちゃんと海上を走れるんですよ?
まともに海上走れない艦艇なんてないやr あっ。
もがみ型がVLSを装備すれば、対空も+されるけれども、フリーダム級には無理よね……
昔の勢いのあるアメリカさんなら、輪切りにして機関丸ごと載せ替えの荒技もやったろうに
今はそこまでの体力は無いのかな
「フリーダム級」がもはや皮肉にしか聞こえない
フリーダム(機能するとは言っていない)とは誰も思わなかったよな
(現実から)フリーダム
米国の話題が多いですね。
活発だな。
ギアボックスとか初歩的すぎるだろと思ってよく見てみたら機関といい推進方式といい失敗する要素しかなかったわ
LMが瑕疵を認めるとF35が高騰とかになるんかな?
江戸の仇を長崎で討つ、みたいなことが起きないように、
自由競争があるはずなんだが….. LMならやるだろうね
最上型って手堅く出来てるんだなってこれ見て思った
まぁこいつのだめっぷりを見て軌道修正をちゃんとかけてたからな
LCSのコンセプト自体が初めての試みで知見が全くない手探りの状態でのスタートだったから、米海軍は全く新しいものを開発しながら、発生した問題に対応しなきゃいけなかったから仕方のない面もあるのだけど、LCSがこんな事になったのはプロジェクト全体を通して、コンセプトから技術に至るまで新しいもの尽くめになってしまったのと中国の台頭やロシアの活発化による非対称戦から正規戦への回帰が重なってしまったのが大きいと思う。
もがみ型FFMはその点、LCSという先達者がいたのはラッキーだったし、海自が優先すべき項目をはっきりさせた上で要求仕様の設定をしたことが功を奏したと思う。
LCSの問題点は新規導入の技術を要素ごとに実地試験しないで、いきなり本番だったからだろ。
普通、デジタルエンジニアリングしてても、ちゃんとある程度の試験は部分部分するもんだよ。
だから、新しいものにチャレンジしたから失敗した、っていうのは間違いで、プロジェクトマネジメントが甘かったからだよ。
まぁぶっちゃけ、そこのところの予算をケチったんだよね。
海自も予算はないけど、リスク回避で新規技術は小出しで導入したり、試験船で試したりしてるから、致命的なミスは少ないね。
その代わり、メッチャ斬新な船は、なかなかできないけどね。自分は手堅い海自艦好きだけど。
「設計上の欠陥」をロッキード・マーチン側が受け入れるかどうかだけど、個人的に仮に受け入れたとしても初期艦だけの費用負担だけで良いやろ。経年でもない隠しても居ない、こんなにちょっと無理させたら簡単に出てくる問題を放置して何艦も導入した海軍の姿勢を疑うわ。
導入推進したのは議会で、未完成+不具合の状態であちこちで大量建造を決めて
地元に利益誘導しただけの必要性が薄い代物
「米国の最新兵器に携わる権利を!」って言って、韓国に請求書回せば良いんじゃないの割とまじで
今さら次郎だけど、WJ4軸なのだから各軸にエンジン一基ずつ割り当ててギアボックス無しの設計にすれば良かったのに。