米海軍は建造開始が遅れているコンステレーション級フリゲート1番艦(FFG-62)について「2022年中に開始する」と明かし注目を集めている。
参考:U.S. Navy’s Constellation-Class: New Frigate To Start Construction This Year
1年遅れたコンステレーション級フリゲート1番艦の建造を2022年中に開始する米海軍
建造開始が遅れているコンステレーション級フリゲートのプログラムマネージャーを務める米海軍のケビン・スミス大佐は「1番艦(FFG-62)の建造を2022年中に開始する」と明かし、同プロジェクトの現状について説明を行った。
Detailed design of of 🇺🇸US Navy’s FREMM-based FFG 62 Constellation class frigates underway.
USS Constellation due in service by 2026. pic.twitter.com/A3OP43pqyX
— Navy Lookout (@NavyLookout) January 13, 2022
スミス大佐はコンステレーション級フリゲートについて複数の任務(対潜戦、水上戦、電子妨害戦、空防戦など)に対応できる能力を備えているものの本プラットフォームの主要任務は対潜戦であり、マルチミッション・プラットフォームのDDG(駆逐艦)と異なるため「アーレイ・バーク級と同じ武器搭載量を期待すべきではない」と強調しながら「コンステレーション級は単独行動も可能だが、機動部隊に参加して空母を護衛することも可能で巡洋艦や駆逐艦を補完する存在だ」と語り、同艦の具体的なスペックについても言及している。
コンステレーション級フリゲート | |
全長 | 151.2m |
全幅 | 19.69m |
設計吃水 | 5.48m |
推定重量 | 軽荷時6,016トン/満載時7,291トン |
機関方式 | CODLAG方式/LM2500+G4 48,679馬力 |
耐用年数 | 25年 |
戦闘システム | AEGIS B/L 10 |
レーダー | AN/SPY-6(V)3 |
対潜戦システム | AN/SQQ-89(V)16 |
ソナー | 可変深度式ソナー+多機能曳航式アレイ・ソナー |
兵装 | Mk.110 57mm砲×1門 |
Mk.41 VLS×32セル | |
NSM×16発 | |
Mk.49 RAM BlockIII×1基 | |
MK.53 MOD9 NULKA一式 | |
AN-SLQ-32(V)6 CM (SEWIP) BlockII一式 | |
航空機 | MH-60×1機/MQ-8C×1機 |
複合挺 | 2隻 |
基本的な船体設計はFREMMマルチミッション・プラットフォーム(仏アキテーヌ級駆逐艦や伊カルロ・ベルガミーニ級フリゲートのベース設計)を踏襲しているが搭載品やシステムは全て米国製で、推進システムのアーキテクチャに米海軍固有のものが一部組み込まれているため「オリジナルのFREMMとコンステレーション級では冗長性や信頼性が異なっている」とスミス大佐は説明しており、2029年に予定されている1番艦(FFG-62/就役自体は2026年)の初期運用能力/IOC獲得を支援するため推進システムの陸上テストも同時進行で進められる計画だ。
まぁ推進システムの陸上テストは沿海域戦闘艦やフォード級の失敗に懲りた議会が海軍に義務付けたもので、陸上での検証後に1番艦を建造するのではなく「建造した1番艦のIOC獲得に向けた海上テストと陸上テストを同時並行で行い問題や欠陥のあぶり出しを進める」という内容のため、致命的な問題が見つかって大きな設計変更が必要になっても4番艦以降でしか対応できないという問題があるものの完全な検証が完了するまでコンステレーション級の建造を待つ余裕は今の米海軍にはない。
米海軍の各プロジェクト・マネージャーは気が抜けない日々を過ごしていることだろう
米海軍は2024年~2031年かけて次々と耐用年数に到達するアーレイ・バーク級のフライトI×21隻について「フライトIII建造を優先するためフライトIのオーバーホールは行わず、何とか継続運用が可能な状態を維持して無人航空機(UAV)を運用するプラットフォームとして活用できないか検討中」だと明かしており、老朽化による運用コストの増加と高額なアップグレードを行いタイコンデロガ級巡洋艦を維持するのか?退役させるのか?についても議会は海軍の提案を承認して5隻退役(当初要求は7隻退役)を認めたばかりだ。
つまり米海軍の2031年まで年平均3.1隻ずつ戦闘水上艦(能力的に旧式なフライトIのUAVプラットフォーム化を対潜戦/水上戦/空防戦の戦力と計算しない場合)を失っていく計算なのに、フライトIIIの供給は年1隻~2隻(フライトIIIのIOC獲得宣言は最速で2024年8月以降)なのでアーレイ・バーク級よりも建造が容易なコンステレーション級の建造を大急ぎで開始しないと中国海軍との差が広がり2度と追いつけなくなる可能性がある。
アーレイ・バーク級のフライトIII(現時点までに14隻発注)についても米海軍は2027年までに発注停止、2028年から後継艦「DDG-X」の発注に切り替える意向を表明しているのはプラットフォームの余剰スペースと拡張性が限界(発電・冷却能力の追加や新装備の受け入れ)に達しているためで、何処かのタイミングで余裕のある新しいプラットフォームに切り替えておかないと新しいテクノロジー(次世代センサーやレーザー・極超音速兵器など)受け入れで行き詰まることは目に見ており、DDG-Xの建造が遅れれば遅れるほど拡張性に余裕がある055型駆逐艦(11,000トン)を量産する中国海軍との差は開いていくしかない。
もし米海軍が2020年中に発生する可能性が高い台湾有事(短期的な問題)だけに焦点を合わせるならフライトIII建造を優先するのではなくフライトI×21隻やタイコンデロガ級にアップグレードを行うべきで、南シナ海(もしくは第1列島線付近)で中国海軍と対峙する中期的な問題だけに焦点を合わせるならDDG-Xへのプラットフォーム切り替えというリスクを抱えるよりもフライトIII建造を維持するべきだが、2~3個の空母打撃群を同時運用して太平洋やインド洋に展開してくる中国海軍に対応しなければならない長期的な問題に対応するにはDDG-X切り替えを直ぐにでも進めないと拡張性で有利な055型駆逐艦に能力で押されるという意味だ。
結局、ズムウォルト級駆逐艦の建造計画を中止してアーレイ・バーク級の後継艦開発(DDG-X)をやり直すことになったため資金的なロス(225億ドル)も馬鹿にならないが、失った時間(2001年に開発を開発し2009年に3隻だけ建造して残りはキャンセル)だけは取り戻せないため、このロスこそが中国海軍に対する米海軍の余裕を根こそぎ奪っていた元凶といえる。
システム起動に成功したジャック・H・ルーカス(フライトIII仕様1番艦)は戦力化作業が終盤に差し掛かっているもののコンステレーション級はこれから建造及び戦力化までの長い戦いに突入、6年後の1番艦発注に遅れが許されないDDG-Xの開発もこれから本格化、コロンビア級原潜の建造及び戦力化は始まったばかりでバージニア級原潜の後継艦開発(SSN-X)も始動しており、米海軍の各プロジェクト・マネージャーは気が抜けない日々を過ごしていることだろう。
因みに技術的問題を何とか乗り越えた沿海域戦闘艦(フリーダム級/インディペンデンス級)は南米での麻薬取り締まりと南シナ海への展開を少しづつ行っているが、肝心のミッションパッケージ(対水上戦/対潜戦/対機雷戦)は対水上戦パッケージしか完成しておらず、仮にミッションパッケージが完成しても米海軍の上層部は「沿海域戦闘艦をどう運用すればいいのか?」迷っており、各艦隊司令部に沿海域戦闘艦の運用アイデアを募集していると報じられている。
関連記事:アーレイ・バーク級の正統な後継艦、米海軍が次期駆逐艦DDG-Xを発表
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※アイキャッチ画像の出典:Naval Sea Systems Command
流行りのステルス性は、ほぼ皆無といったところでしょうか。
ステルス性が必要な運用ではないのではないでしょうか?
米海軍は無人艦艇をセンサーノードして運用できる体制を整えようとしています。我が国がFFMをステルス化したように、彼らはそれら無人艦艇をステルス化するものと思います。
レーダーがしょっぱい海賊等の非正規軍相手も想定してるなら意味あるだろうけど
ある程度以上マトモなレーダー備えた国相手では、でかくて遅い艦艇のステルスは意味ないもの
ましてやもう静止軌道に光学衛星を上げようって時代だもの
コストあがるだけ
いやいや、強力なレーダーを持つ相手にはステルス無意味って暴論だろ。
低RCSなほど被探知距離が縮まるし、ASMのレーダーに対してならチャフの効果を最大化できる。
あと光学衛星に過大な期待を持っているようだけど、外洋の艦艇をターゲティングし続けるには数十年後の技術と数百~千の数が必要よ。
いやいや、最大RCS源の船体及び甲板構造は低RCS化設計になってます。
全く考慮していない船形と比較すれば大きな差がありますよ。
ズムウォルト級のような徹底化はコスト増を招くので、費用対効果をリサーチの上で妥協したんでしょう。
まあでも、ズムウォルトやLCSと、コンステレーション級とDDG-Xを並べて一般人に「どっちが新しいフネでしょう?」と質問したらほぼ100%前者を選ぶだろうってくらいに、保守的になったな・・
沿海域戦闘艦こそUAVのプラットホームと割りきって使えばいいのに
建造したあとから運用アイデア募集だの、間抜け組織としか思えない
「バーク級と同じ武器搭載量を期待すべきではない」と言いつつも、対空対水上火力だけ見れば海自DDと遜色ないかやや上回っているあたりはさすが米海軍ですね。船体規模的にもオリジナルのカルロ・ベルガミーニ級よりむしろあきづき型に近いですね。
しかしLCSプログラムの失敗があった後とはいえ、何で統合型マストのステルス船体だったベルガミーニ級をわざわざバーク級に近い旧態依然とした艦影に戻してしまったのか…
サンアントニオ級もマストを普通の形に戻してるし運用結果がコスパに見合わなかったのでは?
>本プラットフォームの主要任務は対潜戦であり、マルチミッション・プラットフォームのDDG(駆逐艦)と異なるため~
そのまんま、海自のDDやね。サイズ感も。
違うところはイージスシステム載せてるところかな?
一方的にボコれる軍隊を夢見て先進的な兵器に挑戦しては、結局、やっぱ堅実なのが一番だよねとなる兵器開発の歴史。
たまにドライゼ銃やバイラクタルみたいなのが現れては初見殺しをするけど、技術というよりアイディアの勝利なので、すぐにパクられるから「他が真似できない技術」で兵器を作りたいのは分かるんだけど、往々にしてロボットアニメみたいには行かない。例外もあるにはあるが。
耐用年数25年って短くないですか?
海自もこのクラスはそんなもん、近頃は予算足りないから延命措置してるけど。
空母で数十年、巡洋艦で30年程度がめど
流石に空母のそれは短すぎる。それが事実ならニミッツ級航空母艦の過半数は退役でしょ。アメリカの主力原子力空母なら25年で燃料棒交換してその次の交換タイミングで退役だから大体50年。
だから数十年と(笑)これは多少幅のある数字表現だから、50年程度ってこと
このデザインだけでいったら20年前かと思うようなポンチ絵が、もう失敗したくないという米海軍の焦りを物語っている。
NSMをたんまり乗せたけどVLSから発射できるLRASMにしなかったのはなんでだろう。UAVランチャーに変えれるようにとか考えてんのかな。
そもそもLRASMが必要な程の性能を要求されなかったから
事実、ロッキード・マーティンもその様に公式回答していたかと
記事中に米海軍のコメントが引用されてますが、同級は複数の任務に対応できる能力を保有するが巡洋艦や駆逐艦を補完する存在、として構想されています。
>マルチミッション・プラットフォームのDDG(駆逐艦)と異なるため「アーレイ・バーク級と同じ武器搭載量を期待すべきではない」と強調
されてるわけで、FFG(フリゲート艦)に類別される所以です。
海自DDと同等の排水量でイージスシステム載せてフリゲート扱いか…
米海軍は敵に回しちゃいけねぇ…