米海軍のマイク・ギルディ作戦部長は2日、自国の防衛産業界に対して「海軍が必要としていない航空機の調達を議会に働きかけるを止めてほしい」と訴えて注目を集めている。
参考:CNO Gilday Wants Industry to Focus on Shipbuilding, Readiness Not Lobbying for Aircraft ‘We Don’t Need’
参考:Top Admiral: Defense Firms Are Lobbying Against the Weapons the US Navy Needs
国内の防衛産業企業が集結した全米最大規模の防衛展示会で「防衛産業批判」を行って見せたギルディ作戦部長
ネイビー・リーグ(海軍連盟)が主催する全米最大規模の防衛展示会「Sea-Air-Space 2021」のオープニング講演に出席したマイク・ギルディ作戦部長は「現在の海軍にとって最も必要なのは艦艇のメンテンナス能力と必要ない航空機を買わされることに対する危機感だ」と主張して大きな注目を集めている。
造船業界は利益になる艦艇建造を優先して既存の艦艇や潜水艦の修理を後回しにしており、航空産業界は議会に働きかけて「海軍が必要ない」と言っている航空機を無理やり購入させようとしているとギルディ作戦部長は主張して「このような行為は予算が制約を受ける環境下では全く何の役に立たない」と訴えているのだが、前者は2万7,000日以上とも指摘されているメンテナンス遅延問題のことで後者はF/A-18E/Fの新規調達打ち切りを巡る対立のことだ。
少々古い数字だが2018年にスケジュール通りメンテナンスを終えて港を離れる事ができた駆逐艦はごく少数(メンテンスを受けた駆逐艦の約3割)で、米海軍は2014年から2018年までにメンテナンスの遅れによって「累計2万7,000日以上の時間を無駄に失った=1年あたり5,400日(12万9,600時間)以上の時間を無駄に失ったことになる」と議会に報告しており、1年以上港で修理の順番が来るのを待っているロサンゼルス級潜水艦が3隻もあるのは米造船業界に原因があると言いたいのだろう。
米海軍は次期戦闘機の開発資金を捻出するためF/A-18E/Fのアップグレードバージョン「BlockIII」の新規調達を2022年度から打ち切ることを提案しているのだが、下院軍事委員会は難色を示しており下院歳入委員会は2022年度にBlockIIIを新たに12機調達するため約10億ドルの支出を承認、これが国防権限法(毎年の国防予算の大枠を決める法律)に反映されれ大統領が署名を行えば海軍は「必要ない」と言っているF/A-18E/Fを新規に12機購入することが法律で義務付けられてしまう。
つまりギルディ作戦部長は軍事委員会や歳入委員会の議員に働きかけてF/A-18E/Fを無理やり購入させようとする航空産業界(たぶんボーイング)の動きに「中国海軍とのギャップを埋めるための予算が限られているから本当に邪魔しないでくれ」と訴えているのだ。
同じくオープニング講演に出席した統合参謀本部議長のマーク・ミリー陸軍大将も「新しい戦争に対応して行くには購入を約束した装備品やサービスも見直して変更する必要があり、防衛産業界もニーズの変化を受け入れる必要がある」と主張、さらに今後10年で海軍と空軍の戦力は大部分(航空機の約40%~60%がパイロットレスになり水上艦艇と潜水艦の約30%が無人運用になる)が無人化すると予想して「この技術を使いこなすことかが出来る国が次の戦争で決定的な優位を占めることになる」と語っているのが興味深い。
勿論、こういった技術の開発や新たな装備の調達には大金が必要になるのだがミリー統合参謀本部議長は「戦争を抑止するためのコストよりも大きなコストを要求されるケースが2つあり1つ目は抑止が破綻して実際に戦争で勝利することが要求された時、2つ目は戦争を行って負けた時で最も莫大なコストが要求される」と語り、米軍に費やされる1セント1セントは「戦争を抑止して世界の平和を維持するための投資だ」と訴えているのが非常に印象的だ。
国内の防衛産業企業が集結した全米最大規模の防衛展示会で「防衛産業批判」を行って見せたギルディ作戦部長もあらゆる意味で豪傑だが、民間主導で急速に技術開発が進む第4次産業革命の影響で戦力構成の変化に理解が追いつかず高額な国防予算を批判する勢力に「実際の戦争で要求されるコストよりマシだ」と主張できるミリー統合参謀本部議長も日本人の感覚からすれば規格外の人物だと言えるだろう。
関連記事:F/A-18E/Fの調達を打ち切りたい米海軍、F/A-XXが予定通り進むとは信じていない議会
※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Kaysee Lohmann
余程腹に据えかねるものが有ったんだろうね。
本気で中国牽制しようとしてるんだな
軍事的に質量共無視できない脅威になりつつある中国は、影響力拡大政策が思うようにならない現状に対し、核心的権利と信じるものの獲得に近い将来の武力行使を躊躇わない姿勢を打ち出しています。
中国も現状では米との開戦は決断できないはずですが、近い将来にゲームチェンジャーになり得る戦術システムや兵器体系が研究開発の途上にあるわけで、その競争で遅れをとり優越されれば逆に米側が軍事介入を決断できない軍事バランスになりかねません。
それが国防総省の分析結果であり危機感なのかと。
将来の抑止力構築に寄与しないレガシー装備の新規調達に限られた予算を回す余裕はないという認識なんでしょう。
当面の対中抑止効果を維持するには、事実上機能不全化している海軍の現状を改善し国際協調で補うのが米国にとって最善策なのかと思います。
ギルディ作戦部長、防衛産業をギルティ判定
でると思ったよ!(ギルティ)
ネタにマジレスされた悲しい過去を背負ってるから
これくらい分かり易く書かないと不安なんだろう。
そっとしておいてやれ。
いつぞやの「ギルティ」→マジレス が妙に印象的だったのが、私だけじゃないのがわかってよかったw
やめて下さい作戦部長!これだとF-15EX買わされた空軍が馬鹿みたいじゃないですか!!
あれは現状ならベターな選択肢になると思うが?それ言っちゃ、日本のF-15JSI選択はバカって話で良いのかね?
バカでしょ?態々F-15JSIをやるぐらいなら他に予算回せって話だよ
具体的に何にどんだけ回すの?
F-3はまだ机上、F-35はまだ対艦任務できない。
陸のSSM連隊増はまず人員と駐屯地の確保必要だし船も似たようなもの。
そこでF-2改ですよ…。
いや、それ言うならJSIと同じスケジュールと効果を得られる解決策出せよ。別に対地攻撃だけがメインの話じゃないんだぞ。
もう閉鎖した海軍工廠いくつか復活させる方がいいな。民間企業がより儲かることに向くのは当然のことなので自前で対処するしかない。
そもそも業界に人材が残ってないので工廠復活させてもそこで仕事できる人間がいない。
ネット経営者様は忘れてる奴が多いが、人材は育成するもの。
究極的には金で解決できる話でしかない。
F-14とF/A18は同じようなサイズの双発機なのに、F-14は何故あれほどカッコいいのか?
映画「トップガン」トム・クルーズカッコよかった・・・
厨二心くすぐる可変翼機構
艦隊防空特化というとんがったコンセプト
つまるところロマンあふれすぎな機体だからだよ!!!1
でもF-14はデザインの古臭さは否めないよね。
F/A-18も原型は古いけどそれほど古臭さを感じないのは
垂直尾翼が第5世代機と同じくV字だからかな。
キャノピー先端が分割だったからじゃ無いか?
空自F-4みたいに交換すれば印象が変わると思う。
日本のミリオタからは割と好意的に受け止められている議会の予算権限、議会内の委員会が軍の千ドル単位の物品購入やスケジュール管理にまで首を突っ込んでいく一方、その権限を使って選出地域やメーカーの利益になるように海軍予算を誘導することもできる(いわゆる軍産複合体)闇の側面が軍側の許容範囲を超えたってことなんでしょうね。
最近の米海軍を見ているとシャイローの反乱未遂みたいな統制面での不安定さを感じるので、正面装備の調達だけでなく運用体制を盤石にすることに予算と時間を執行してほしいところ(議会がそれを理解しなければ一生無理だけども)
まあどんな制度も一長一短ですからね
でも利益誘導のダイナミズムを基調としつつ、長期戦略も確実に確保しているアメリカの政治制度はほんとうにすごいと思う。
スパホブロック3ってここまで言われる程お荷物なのだろうか…
お荷物と言うか、時代についていけない機体と認識してるんでしょ
今ある分には使うけど、新規調達してまでは不要ってだけで
その分、新型機なり別の装備なりの予算使いたいんだろね
流石にステルス機以外を航空母艦に乗せられなくなってきたんでしょ。今買ったら3,40年は使うようだし。
と言うか、ここの管理人さんの記事でテスト飛行で不具合があったと出ていたような?
コンフォーマル・フューエル・タンクね。コンフォーマル・フューエル・タンクは諦めたっぽい。
必要ならパイロンに増槽をくっつけて解決。
block IIIの特徴の胴体中央のIRSTが先についた増槽、F-22っぽいステルスインテークは見かけるから、コンフォーマル・フューエル・タンクだけなくなった様子。
F-35Cがグダグタになっていなければ本来は早期退役させてもよかった装備だからな
もともと米海軍はF/A-18E/Fを全機F-35Cで置き換える計画ではないから早期退役はないよ
それはレガホ更新用なので;
もっとも、F-35Cが順調に進んでくれていたらスパホの件はもうちょいスマートに進んでたとは思うけども
00年代半ばの時点で、海軍航空隊は爆弾を戦場に運ぶ任務しか出来ないとか言われていたくらいだから
海軍が新開発を失敗しまくってるから信用なくしたんだろ?
逆ギレしてるだけだよ
米国国防予算の2/3は人件費や年金等の固定費と何かで読んだな
したがって10%の実質予算削減は正面装備費などの3割削減に相当し切れるものは片っ端から斬らねば即応体制を維持出来ないという
私が見ている資料だとアメリカ軍の国防予算に占める人件費の割合は30%弱なのだが
リンク
単純な造船実績だけで言えばもう台湾以下だからなアメリカ…
軍用艦建造技術自体は今尚世界トップだと思うけど、修復作業すらまとも進められなくなってきてるのはヤバイよね
支る部分が消え去ってる
田中角栄もあの世からそうだそうだと言っております
>現在の海軍にとって最も必要なのは艦艇のメンテンナス能力と・・・。
思いやり予算を増額しその分で整備や修理は日本が請け負うってのは?
人件費は日本に戻ってくるし。
世界中に展開してるのに、わざわざ日本に来るとかありえないでしょ
冗談はさておき、とてもさばききれないと思うよ
反論のための反論だなぁ。米海軍全部、なんて誰か言った?
何で頼む方もこなす方も困るほど大量・広範囲に請け負うのよ。
お互い嬉しい範囲で、に決まってるでしょ。
少し前の記事で似た様な事書いたけど真面目にありだと思うんだよねぇ。
ドック待ちの米海軍もパンクしてる米の造船業も助かるし
中韓の国営ダンピングに対抗しなきゃならん国内造船業も助かる。
出来れば思いやり予算名目じゃなくて国内産業支援名目にすでこじつけられれば、防衛費枠を消費しないで済むから尚いいけど。
名目でこじつけ→名目にこじつけ、で迷った挙句修正ミスって謎文になってた…
煽るつもりはないのですが、機密の塊である軍艦を製造国でもない国がメンテナンスさせてもらえると本気で思っているのですか?
スパイ防止法のないこの国で?
米空母の定期整備を横須賀でやっています。
ミッドウェイは横須賀でホーネットに備えて近代化含む大改装して浮きまでくっつけたぞ
浮きは設計ミスだったらしく揺れが激しくなったそうだが
本気も何も、少し事実を調べてから書き込みましょうよ…
こんごうとかほぼ機密の塊の米兵器で、そっから日本製に少しづつ置き換えてるので、機密は平気かな。
それは日本の艦で元々輸出可能な技術しか出してないだろうからまた別の話かな。
米海軍艦艇の製造・整備については横須賀の空母に勝る反論はないと思う。
2019年に在日米軍がイージス艦の整備を三菱に依頼してたよ。
「民間施設で米艦整備」で検索したら出てくるよ。
世情の変化を勘案しないで旧式兵器に入れ込むとか
超蜂の新規導入と艦船の整備みたいな違う分野を天秤に掛けるとか
主流派経済学の影響を感じる話
将来戦に適する新装備とか抜かしてガンダム作っても実際に量産されるのはジム改みたいな状況がここ10年は続いてる海軍さん。
その無謀なレベルの開発費こそロビー活動のせいでは?
いやあの、その例えだと成功した兵器開発になっちゃうんですがそれは…
ロビーで相手国の議会牛耳って弱体化させた方が軍拡競争より安上がりやな
今回言われている県がそれの一環の結果かどうかはわからないが、超限戦にはその手の手段も含まれてるからな。