2022年秋のハルキウ反攻に参加していた第80独立空中強襲旅団のエミル・イシュクロフ大佐は「クレミンナ奪還をジャーナリストとマリャル国防次官が妨害した」と言及し、先走った発表が前線での戦いを難しいものにしていると示唆した。
クレミンナと同じようなことがクリシェイフカで起こったと明かしている
Ukrainska Pravdaの取材に応じた第80独立空中強襲旅団のエミル・イシュクロフ大佐は約2年間に渡る戦いについて(話せる範囲で)赤裸々に語っており、同旅団も参加していた2022年秋のハルキウ反攻に関する言及は他のウクライナメディアも一斉に報じるほど大きな注目を集めている。
当時のロシア軍は侵攻初期に準備された戦力のみで1,000km以上の前線を維持していたが、広大な占領地域を守るに戦力不足だったのは誰の目にも明らかだった。さらにドニエプル川右岸地域(ヘルソン方面)の反撃が確実視されていたため南部戦線の守りを強化するか、現状まま反撃を迎え撃つか決断を迫られ、最終的に「侵攻で確保できた唯一の州都を保持する」という政治的な要請もあって東部戦線からの戦力転用を開始。
空挺部隊等の精鋭を南部に移動させるという決定は「ハルキウ方面の戦力密度低下」を招き、ウクライナ軍も「ロシア軍が東部から南部に戦力を移動させたこと」「ハルキウ方面の予備戦力が減少したこと」「この方面を守る戦力が十分な重火器を持たないロスグヴァルディヤやBARSであること」と把握しており、兵士や従軍記者らは8月に入ると「敵がハルキウに集結しつつある」「敵の大部隊がバラクレヤ方向に移動している」と警告したものの、ロシア軍は特に手を打つことなく運命の日を迎えてしまう。
ウクライナ軍はバラクレヤを突破することで敵防衛ラインに突破口を作り出し、ここから浸透した機械化部隊が信じられない速度でクピャンスク方向に前進したため、大混乱に陥ったロシア軍部隊は後退を強いられ、頼みの綱の航空支援もウクライナ軍が防空システムを前進させて前線上空を保護したため機能せず、あっという間にクピャンスク(左岸部分のみ)やイジュームを失ってしまった。
ロシア軍はオスキル川沿いで戦線が安定することを期待したものの、ウクライナ軍は体制を建て直される前に渡河して右岸に橋頭堡を確保、勢いに乗ってリマンやクピャンスク(右岸部分)を解放することにも成功し、ウクライナ軍の前進が撤退するロシア軍を追撃する形で続いていたため誰もが「クレミンナ解放も時間の問題だ」と確信。
ルハンシク州知事も当時「スバトボ、スタロビルスク、トロイツクから敵が逃げ始めた」「ルハンシクやコムナルスクでも荷物をまとめている」「クレミンナからも占領者が消えたためパルチザンが行政庁舎に掲げたウクライナ国旗を引きずり下ろすこともでない」「ルハンシク州全体が直ぐ解放されると期待しない方がいいが、明日にでもスバトボ、クレミンナ、ルビージュネから素晴らしいニュースが届くだろう」と述べていたが、ウクライナ軍の前進はクレミンナに到達することなく止まってしまう。
このクレミンナを巡る戦いについてイシュクロフ大佐は「我々は当時そこで成功を収めてクレミンナから1.5kmの地点に迫っていたが、メディアが突然『ほぼクレミンナは我々のものだ。我々は全てを奪還して成功した』という映像を流し始めた。敵がこれに反応して大砲や人員を大幅に増やし予備戦力を投入してきた。たった数日で敵の攻撃回数は60回から250回へと急増して我々は前に進めなくなった」と言及。
イシュクロフ大佐は「軍が投稿した映像をジャーナリストが広めたのか」と質問に「(軍は映像を投稿しておらず)ジャーナリストだ」と、この映像をどうやってジャーナリストが入手(撮影)したのかという質問には「マリャル国防次官だ」と回答し、同じようなことがクリシェイフカで起こったと述べている。
イシュクロフ大佐は「状況が確実になるまで『クリシェイフカ解放』を最低でも1週間は伏せて起きたかったが、またしても「クリシェイフカは我々のものだ」と言われてしまい反発が起こるだろうと確信していた。敵は予想通り3方から我々を攻撃し始めて陣地や観測所を失ってしまったが、何とか耐え抜いて現在も集落を保持し続けている」と明かし、先走った発表を行う政府高官や国防省が前線での戦いを難しいものにしていると示唆した格好だ。
他にもバフムートを巡る市街戦、この戦いに投入されたワグネルとの戦い、本格的侵攻から2年もあったのにアウディーイウカに防御ラインが追加されなかったのか理由などにも言及しており、興味がある方はぜひ原文に挑戦してほしい。
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※アイキャッチ画像の出典:93-тя ОМБр Холодний Яр
ジャーナリストとか関係なくクレミンナとその北方のP66道路沿いにはそれなりの規模の要塞線が準備されて待ち構えられていたわけで、純粋にロシア軍の防衛計画通りに受け止められただけだろ
オスキル川で受け止めることを期待してたっていうのもウクライナ側から見た希望的観測だわな
たしかにオスキル川渡河にあわせて反撃が行われてウクライナ軍
先鋒が押し戻される場面はあったけどあくまでも戦術的な次元の話でロシア軍はその後すぐ撤退してる
政争としか思えない
ウクライナ軍が攻めてきた事をロシア軍は当然把握しており、陥落しそうだから増援を出したのは当たり前の事で、マリャルが報じたのはロシア軍も知ってる当然の事実でしかない
敗北を身内のミスのせいにして引きずり下ろそうという動き
戦力も物資も足りてないのにまるで団結出来ないとは勝つ気はもう失せたんだろうか
そういう精神論では何も解決しないのを、先の世界大戦から日本は学ぶべきではありませんか?
物資が不足して上手くいかないからこそ前線から離れた場所で政争が激しくなるわけで、団結を促すためにも諸国からの支援は重要なのだと思います。
クレミンナへの攻勢失敗はリマンの戦いでの遅延、露側の部分動員兵やBARS予備隊などの投入開始、オスキル川方面の渡河地点の安定化失敗などが大きく、ジャーナリストは関係ない。
何故報道によって敗走していたはずのロシア軍が大反撃に出ることができる様になるのか。
戦況が思わしくない今になって軍人がこの様なことを言い出すのは、背後からの一突き論に思える動き。
また、ハリコフ攻勢が「成功しすぎる」状況は核エスカレートの懸念から米国も望んでいなかったであろう点は指摘しておこう。
大統領府と軍部は以前から言及されてますけど相当拗れてますね…
呉越同舟は状況次第で爆発する火種がたまたま発火してないだけで別に喜ばしい状況ではないという意もあるそうですが、他国からの支援といい危機的状況における已む無しの団結に甘えてしまった節がありますね
管理人様いつも情報ありがとうございます、ウクライナ戦争が3年目を迎えるため、様々な情報が出始めているように感じています。
ウクライナにとって、当時は待望の反撃であったため、上層部がリップサービスを行っていたということでしょうか。
ロシアにとって、沿ドニエストル共和国への回廊・オデッサ・黒海沿岸の全てを占領(ウクライナが内陸国に転落する)など、当時の部隊移動も分かりやすかったです。
プーチン大統領が、撤退・損切りの決断したことは、意外性があり驚いた記憶があります。
ご紹介の記事を拝見しましたが、前線の兵士は、年に30日休暇(15日間×2回)とありますが、月2.5日間しか休暇のない計算になります。
現場作業・工場労働であっても、フラフラになりますから、ウクライナ軍の前線兵士はよくぞ耐え抜いたなと…。
>プーチン大統領が、撤退・損切りの決断
私も驚きました。それまでのキエフがグダグダだっただけに「ああ、こういう判断ができるんだ」と、私たちとは異なる価値観・倫理観でリスクコントロールができるんだなと評価を新たにしましたね。
にしても、前線兵士からの不満はどの程度たまっているんでしょうね。上級将校だけではなく、下級将校からも不満が出てくるとなると、現場は結構厳しい状況かもですね。
仰る通りです。
プーチン大統領が、トップリーダーとしてのリスクコントロールできる人間、決断できる人間であると改めて感じました。
プーチン独裁というように言われていますが、ロシアの色々な派閥をまとめて、自分の仕えた人・古くからの知人を裏切る事はしないと言われていますからね(裏切り者は許さないでしょうが…)。
前線兵士の現状は気になりますね。
手足欠損など、大怪我をするまで復員できないと言われれば、腹が立つという感情も理解できます。
前線兵士は、スマホを通じて家族・友人との連絡をとっており、士気の維持に不可欠と言われています。
徴兵逃れの人間が、キエフ・西部など後方で遊んでいるのは周知の事実ですから、当然を知っているしょうからね…。
はて、プーチンはロシアという「国のトップリーダー」じゃなかったんですかねえ。ヒトラーの向こうを張って、前線の作戦指導に乗り出すようではまずいでしょうに。
>トップリーダーとしてのリスクコントロールできる人間、決断できる人間
そうであれば、数日で終わる筈の戦争が1カ月続いた時点で軍を引き揚げるべきだったでしょうね。国のトップとして政治レベルで必要なのはそちらの決断でしょう。軍事能力が優れているというなら、さっさと大統領は辞めて一将軍に天下りすれば良い。
マリャルは当時から現場に嫌われてたよな。
てめえのせいで俺たちの仲間がたくさん死んだぞとか言われて。
女性が武装している者たちにこんなこと言われるの恐怖でしかない。
彼女はゼレンスキーの考えたことを伝えるだけのただの演者なのに矢面に立たされて
私はファンだったから彼女がクビになり任務から解放されて良かったなと思ってる
>>女性が武装している者たちにこんなこと言われるの恐怖でしかない。
うーん、これはセクシズム丸出しのヘイトスピーチですねぇ
>>女性が武装している者たちにこんなこと言われるの恐怖でしかない。
じゃあ前線で戦えばいい
ただぶっちゃけた話クレミンナは要衝のためロシア軍としても何としても守備には力を入れるつもりだったでしょうし、例えメディアが先走った映像を流さずとも奪還は難しかったのではないかと思いますね
現在はクレミンナ奪還どころか大幅に押し返され、ディブロバ周辺の森林地帯に過剰なまでの戦力を投入することで辛うじて持ち応えているような状態ですし
後は正直なところ、この反攻作戦での強烈な成功体験が皮肉にも南部反攻やバフムート反攻での無謀な攻撃を強行した大きな原因に政治案件と並んでなってしまっているように感じるんですよなあ
西側やウクライナの報道を見てロシア軍が動くなんてことは考えづらいから、マリャル国防次官と報道のせいでロシア軍が集結したというのは八つ当たりじゃないかな
「ウクライナ軍が重要拠点のクレミンナを狙って猛進する → (国防次官が「もうすぐ奪還できる」と言及するするほど肉薄する) → ロシアも重要拠点クレミンナを失わまいと戦力を回した」だけな気がする
ただの内輪揉めでしかないと思われ
政治闘争ってやつの可能性が高い
闘争なんて高等なものではなく末端で実際に汗(血)を流してる人間が見てる世界と、上の人間が見てる世界が違うだけだと思う
もし本当にロシア軍への情報提供が疑われるなら、もっと大きな騒動になってるはず
ウクライナ軍に限った話ではなく、現場の人間とそれを動かす指揮官クラスの人間で見ているものが違う事は大いにあることですよね。
別に現場も指揮官もそれぞれが間違ったことをしている訳ではなく、各々の職務の中で最適解であろう事をやろうと努めていたら、お互いの仕事に支障が生じる事はあります。
個人の最適解が全体の最適解であるとは限らないというか…
しかもそれが1分1秒の情報の速さが生死すら左右する有事となると、全体の最適解を探していたら手遅れになるかもしれませんから、各々で動くしかないと思います。
拙速は巧遅に勝ると孔子も言っています。
>別に現場も指揮官もそれぞれが間違ったことをしている訳ではなく
そういうこともありますが、今のウクライナの場合「それぞれが間違ったことをしている」状況のほうが多いのではと推察します。
要害でもない低地に防衛線を作ったり、まともな運用計画のないまま数合わせで囚人兵を動員しようとしたり。ちぐはぐな印象が強い。
ウクライナ軍ゼレンスキー政権ともに一枚岩でないということです
ロシア軍は奪取したバフムート要塞、アウディーイウカ要塞を拠点に
ドネツク州の主要都市を攻略することで東部の工業地帯が破壊され
ウクライナは政情不安定に陥り、クーデターで政権転覆するかも
こういうのは台湾有事とかでも日本のマスメディアに要注意
必ず自社のスクープや視聴率や販売部数を優先するヤツが出るよ
世界一小さい国家ながら世界一の人口を持つバチカンのローマ法王。
本当に戦争を止めさせるのなら、何故ロシア正教に声を掛けないのか知らん?
ゼレンスキー政権が東方正教会を国内で弾圧して、キリスト生誕祭をカトリックの日付に合わせたりしたからじゃないでしょうか。
その状況でロシア正教会に声をかけても、ゼレンスキー政権は反発するだけで逆効果でしょうし。
書いてある意味が良くわからん
ウクライナ正教会はコンスタンティノープルに承認されてとっくに独立してるが
何もかもうまくいかないな、きっと国内にロシアのスパイがいるに違いない!
みたいな感じですかね
精力的にウクライナ軍の実態を報道してるジャーナリストとか本当に危ないかも
交通事故で消されたり、逮捕されたり・・・
独裁暴力国家ロシアからの独立を守るために戦ってるはずが、政治実体はロシア化していく・・・・
政敵の暗殺まで頻繁に起こるようになったら、ロシアとの政治的相性はどんどんよくなっていきますね
囚人を徴兵する法案がもうすぐ通るみたいなので皆前線送りにできますよ。
政府に反発するウクライナ人はドンドン逮捕、徴兵忌避者はドンドン逮捕、前線送りで砲弾の餌。
これが「正義の民主国家」と祭り上げられた国の末路です。
これが出来るから囚人兵はヤバいんだよね、徴兵+囚人兵のコンボは容易に政敵抹殺を可能にし得る。
本邦だと1佐(大佐)は連隊長クラスの駐屯地の司令官でここら辺から政府のお偉いさんがたまに来て何か話してる半分政治家みたいな人って認識だったのですがウクライナにおいてはどういった立ち位置か分からないので政治的な話をしてるのか現場の話をしてるのかイマイチ分からないですね。
もしくは本当は旅団長以上の将官の口から言いたいがそれだと角が立つからギリギリ現場と言えなくも無い大佐に言わせているのか
Cornel は単なる佐官最上位というだけではなく。
国家代表権や外交権を委任されることも可能な、特別な職級なんですよ。なのでカダフィ大佐は「大佐」なんですね。暴れるランボーを宥めて連れ帰るのもトラウトマン大佐ですし、ケンタッキーにチキン帝国を作ったのもサンダース大佐です。
カーネルという言葉と地位には,日本語の大佐という機械的な序列が与える印象より強い意味があり。
この記事にも、当然本人の政治的な野心が多分に含まれていることでしょう。
イシュクロフ大佐は、ご自分の苛立ちや不満をジャーナリストとマリャル国防次官に転嫁していますね。ここで分かることは、彼のいる地域の戦況が良くない、作戦がうまく進まないということだと思います。
ハルキウ反攻については、圧倒的な兵力差でウクライナ軍の人海戦術が成功したものです。ロシア軍は、ほとんど戦わずに重火器も置いてどんどん兵士だけは退却しました。
ウクライナ軍は、ほとんど戦闘もなく道路をどんどん追撃していって、やっとリマンなどでロシア軍のしんがりに追いつき撃破して、クレミンナあたりで止まりました。クレミンナには、ロシア軍の防衛線がありましたからね。
だから、クレミンナで止まったのをジャーナリストやマリャル国防次官のせいにするのは、筋違いてす。
ただ、思うのは、ウクライナ軍のプロの将兵はわりとしっかり戦う意識があるということです。イシュクロフ大佐も戦闘での勝利や軍人意識が強くて、それが国防次官やジャーナリストへの批判に向いたという感じも受けました。
ウクライナ人やロシア人は、軍隊に親和性のある人が多いのかもとか、そんな妄想を持ったりしました。
報道によってロシア有利になる可能性は普通にあると思うんだよな。
ロシアの通信網の貧弱さや現場レベルで都合の悪い話は上に上げないとかで、ウクライナ側の報道を受けて状況把握して対応が変わったと言われてもロシアなら有り得そうと思ってしまう。
勿論、当たり前の対応した結果ウクライナが防がれたとは思うが戦場では何が起こっても不思議じゃ無いので戦後に情報開示されたら事実でしたなんてオチがついたりして。
責任転嫁にしてもお粗末すぎるような……?
何で今更こんな言い訳をし始めたんだろう。