アゾフ連隊のデニス・プロコペンコ司令官は「第36旅団はアゾフマッシュ工場で戦うのに十分な装備と弾薬を持っていた」と証言しており、ますます第36旅団がバラバラになった理由が分からなくなった。
ほぼ戦闘らしい戦闘もなくクリミアからマリウポリの郊外までロシア軍がやって来てしまい、マリウポリは見捨てられたような状況になった
ウクライナメディアの取材に応じたアゾフ連隊のデニス・プロコペンコ司令官は8日、アゾフスタル製鉄所での戦闘状況やマリウポリが包囲されることになった原因について説明しており、一般人にとっては中々興味深い内容だ。

出典:GoogleMap アゾフスタル製鉄所の状況/管理人加工
アゾフスタル製鉄所での戦闘状況は?
4月25日にロシア軍が製鉄所の敷地内に侵入、血なまぐさい地上戦は製鉄所の建物内で行われており、ロシア人はあらゆる兵器(艦砲射撃、航空機による空爆、戦車やMLRSによる攻撃など)を使用して全てのものを破壊している。
政府や参謀本部と連絡は取れているのか?
もちろん連絡は行われている。私達は製鉄所の包囲を解除してくれるよう要請しているが今のところ実現していない。我々はマリウポリに敵を釘付けにすることで戦い全体の流れを変えたと、西側諸国から武器を入手するための時間を稼いだと、他の地域に向けられる攻撃を緩和できたと信じている。

出典:GoogleMap
なぜマリウポリは直ぐロシア軍に包囲されてしまったのか?
もしヘニチェスク、メリトポリ、ベルジャーンシクなどの都市が我々と同じように戦えば、ロシア軍が僅か4日でクリミアからマリウポリに到達することはなかった。ロシア軍はクリミアからココまで何の抵抗もなく進軍してきた。ほぼ戦闘らしい戦闘もなくクリミアからマリウポリの郊外までやって来てしまい、我々は見捨てられたような状況に陥ってしまったんだ。
特にクリミア~ヘニチェスク間の渡河地点は防御側にとって非常に有利な場所で、あそこでロシア軍の部隊を殲滅するべきだったのに何故か実行されなかった。

出典:露メディアRTが公開した動画のキャプチャ
なぜ第36旅団は戦いを止めてしまったのか?
第36旅団の1個大隊が4月4日に自らの意思でロシア軍に投降してしまいアゾフ連隊と第36旅団の連絡網が遮断されてしまった。すると突然、第36旅団のバラニューク司令官が誰にも連絡することなく未知の方向に突破を試み多くの兵士を失った。
そしてアゾフマッシュ工場に残された大半の兵士(約1,000人)も自分達の身を守るためロシア軍に投降してしまい、この調整されていないアクションはマリウポリの防衛に壊滅的な結果をもたらすことになる。なぜバラニューク司令官がこのような決定を下したのかは不明だが、私が知る限り第36旅団はアゾフマッシュ工場で戦うのに十分な装備と弾薬を持っていた。

出典:Украинская правда 4月12日に最後のビデオメッセージを公開した第36旅団
アゾフ連隊が立て籠もるアゾフスタル製鉄所には戦い続けることを選択した第36旅団の生き残りが合流しているので、もしプロコペンコ司令官の主張が正しいのなら第36旅団が4月11日に「弾薬不足のためロシア軍への抵抗は今日が最後になるかもしれない」とFacebookに投稿した内容は間違っていることになり、ますます第36旅団がバラバラになった理由が分からない。
もしかすると第36旅団の司令官を含む兵士の大半は戦いに疲れ果て銃を置きたかったのかもしれない、、、
因みにクリミアに近いザポリージャ州の都市が無抵抗でロシア軍を受け入れたのかについては幾つかの説があり、その一つに「ロシアが事前に各都市の要人から内応を取り付けていた」という主張がある。
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※アイキャッチ画像の出典:Rosavtodor.ru / CC BY 4.0
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単なる戦意喪失か、秘かにロシアから投降を促され懐柔されていたのか、あるいは誤情報に惑わされて判断を誤ったのか
判断材料が少ないから何とも言えないが、マリウポリ陥落はウクライナ側にも織り込み済みとしたら、いちがいに非難もしかねる
みなが勇者ではない
非合理敵な攻勢に出たが故に大損害を被りその後の作戦遂行能力を低下させてしまった沖縄戦の第32軍を彷彿とさせて悲しいなぁ…
ただいろんな情報が錯綜してるしウクライナ側の情報にしても、今回のアゾフ連隊の司令官の証言にしてもどこまで信じていいのかこれもうわかんねぇな(思考放棄)
アゾフ連隊司令官の批判は最もだし、ウクライナ軍最高司令部には司令部の合理的判断があったのだろうし、第36旅団の司令官の決断もその時には合理的に思えたのかもしれない
なんにしても戦場では「正しい決断よりも早い決断」が求められるからなぁ、事後諸葛亮はいくらでもいえるしなぁ、今度の戦争における冷静な分析が出来るのははもう少し時間がたってからかな
一枚岩とはいかないか。
ウクライナ側の腐敗もなかなからしいから、さっさと降伏する指揮官がいても、不思議じゃないか。
むしろ、こんな状態で善戦してると称賛すべきか。
もともとの腐敗も有るんでしょうけど、長年のロシアの内部工作も成功してるしてたりするのでしょう
>ヘニチェスク、メリトポリ、ベルジャーンシクなどの都市
この辺は戦略的に防衛部隊も薄くなかった場所だと思われますが、まったく無抵抗で通過してるので
都市上層部・防衛部隊への寝返り工作が成功した可能性が高いです
ウクライナ軍の第36独立海軍歩兵旅団は元々クリミア半島に駐屯していた第36独立沿岸警備旅団が母体。2014年のロシアの侵攻によるクリミア危機では当時、旅団長だったセルゲイ・ストロジェンコ大佐がロシア軍に寝返ってしまい部隊は戦わずに降伏するといった屈辱を味わった。
その後、裏切らずにウクライナ本土へ撤退したウクライナへ忠誠を誓う隊員たちによって結成されたのが第36独立海軍歩兵旅団(第1独立海軍歩兵大隊<ムィコラーイウ>、第501独立海軍歩兵大隊<ベルジャーンシク>、第503独立海軍歩兵大隊<マリウポリ>で構成)で2019年にはゼレンスキー大統領から「ミハイル・ビリンスキー(ウクライナ海軍少将)」の称号を授与されている。2022年2月にはロシアのウクライナ侵攻で東部のヴォルノヴァーハの戦いに旅団を構成する第503独立海軍歩兵大隊が派遣されロシア軍と熾烈な戦いを繰り広げ司令官であるパベル・スビトフ大尉が戦死している。
自身が称号を授与した部隊の司令官の裏切りについてゼレンスキー大統領が一番失望しているのかもしれない。
クリミアに近いところは、工作活動が行われていたわけですか。だから当初から南部の進軍は順調だったんですね。日本の戦国時代見てる気分です。
現地協力者がいるとなるとドニエプル川東岸側をウクライナが開放するのは大変かもしれません。
アゾフ連隊はすごいな。こんな極限の状態でも耐えてるのは凄すぎる。
投降した後のことを想像すると必死になるでしょう
だから見捨てたって
もとは正規軍じゃないから腐敗したウクライナ軍から嫉妬され切り捨てられたんじゃないの??
下手すると軍よりも信用高いかもな・・・
あと戦後の軍の信用がドベになった瞬間でもありそう。
アゾフ海沿岸はロシアが制海権と制空権を握っている
開戦と同時に空爆・空挺・渡海上陸を受ける恐れもあったから
アゾフ海沿岸部に部隊展開は困難だったと思う。
地峡部での防戦は魅力的だが、制海権なくロシア揚陸艦の所在が不明である以上
背後上陸からの包囲リスクもあり、ここでの防戦も困難だと思う。
ウクライナ軍の部隊展開がない以上、アゾフ海沿岸の都市の降伏は避けれなかったかと。
冷戦中にお金を無視して建造された堅固な防衛施設に恵まれたマリウポリだからここまで防衛できたが
防御施設のない他の都市では各個撃破のリスクもあり、戦うのは困難だったと思う。
アゾフ連隊の勇戦に敬意を表し、内陸からのウクライナの反撃に期待したいところです。
当人たちにしか分からない事情もあるから今は何も言えないが(ロシア側の人間を除いて)アゾフ連隊を罵る奴はいないと思うよ。
ウクライナ東部もそうだったが、ロシア国境に近かったりロシア系住民が多い所にはロシアとの関わりが仕事や生活に直結している人も多かっただろうから、仮にそういう人がヘニチェスクなどにおいて多数派だったら「抵抗しろ」と言う方が難しいだろうに。
以下オッサンの独り言
この戦いが始まってからウクライナの地名や位置に詳しくなれたのはいいんだが、長年キエフとかハリコフとかオデッサとかで覚えていたのに、急にどこかしこも「キーウ」「ハルキウ」「オデーサ」とか現地名に近い発音の表記に変わったもんだから「〇〇市では〜」と言われても、すぐには分からなくなってしまった
包囲され補給もなく友軍からの救援の見込みもないとなれば、無理を承知で脱出に望みを託したとしても悪し様には言えないと思う。
自分がもし、その場に置かれたらどうするか考えるとね、、、、
そもそもあの部隊そのものが、ロシアによるクリミア半島併合後にロシア軍に移籍した人間とウクライナ軍に残った人間で分裂していて、最近になって旅団が編成できるだけの人員が揃ったんじゃなかったけ?
元々士気も能力そのものいうほど高くはなかっただけの話では?
戦後の調査で真実が明らかになればいいと思いますが、現状ロシアによる調略の一貫である可能性が高いという考えです。ウクライナの、特に東部や南部では戦前よりロシアから内通者や工作員の浸透作戦が官民問わず多かったと言いますから。軍部隊へ埋伏の毒が仕込まれていても驚きはありません。
ロシアは兄弟関係にあったウクライナを陸から空から破壊する。プーチンヒットラー独裁者は旧ソ連時代にあったことを夢見てウクライナ国民の夢、生活、人生ね命をめちやくちゃにした。皆さんは自衛のための装備・弾薬当然です。負けるなよ。皆さんの選んだ自由と民主主義は正しい。
戦意喪失の一派(工場に残留し降伏)と全滅を厭わず徹底抗戦主張の一派(アゾフ連隊に合流)がいて、統御しきれず旅団内に抗争が起きそうだったんじゃと想像。
バラニューク司令官自身は降伏を望まないが、戦況が絶望的と判断し独断で包囲脱出に活路を託したのかも。
と解釈すると部隊の行動が3分した状況が納得いきます。
発言の一部を切り取って印象操作なんてのは常套手段ですし、私は現時点ではバラニューク司令官が裏切ったとは断じるのは早計かなと思ってます。
ぶっちゃけた話、装備と弾薬持ってたら戦えるとか極論すぎてもうね。
旅団の兵士がどんな状態だったかも分からないし、飲食に問題なかったか怪我や病気、精神状態と様々なファクターが有る。
人は指示通りにだけ動くロボットじゃないし、考え方がブラックのそれに近いものを感じる。