ロシア軍はバフムート市内のウクライナ軍が保持する最後の区画に対して焼夷弾攻撃を実施、その様子を収めた動画が登場して注目を集めており、ロシア軍は戦勝記念日(5月9日)に向けて最後の攻勢に出たのかもしれない。
参考:Бахмут в огне: враг массово использовал фосфор – ССО
ロシアとウクライナの政治的面子を賭けた戦いは最終的局面を迎えようとしている
露ワグナーのプリゴジン氏が「5月9日の戦勝記念日まで占領する予定だった」と明かしたバフムートでは、ウクライナ軍が保持する最後の一画にロシア軍が焼夷弾攻撃を実施、炎上している「アパート密集地」を映した映像も登場した。
炎上しているのはバフムート市内の西端にあるコンクリート製の建物が密集する区画で、ここを失う(使い物にならなくなる)とロシア軍の砲撃に耐えられる抵抗拠点が無くなるため、市内を保持するウクライナ軍の努力は一層厳しくなるしかなく、ロシア軍は戦勝記念日に向けて最後の攻勢に出たのかもしれない。
あと3日でロシア軍はバフムート市内からウクライナ軍を追い出すことに成功するのか、それともウクライナ軍が街の一画を保持して「バフムート制圧宣言」を阻止するのか、ロシアとウクライナの政治的面子を賭けた戦いは最終的局面を迎えようとしている。
因みにプリゴジン氏の後退宣言を受けてチェチェン共和国のカディロフ氏は「ワグナーの代わりにカディロフツィを派遣する用意がある」と表明した。
カディロフ氏は「私は我が国の運命に無関心でない人々と同様にプリゴジンの発言を不快に感じるが、国防省上層部がワグナーに何も説明しないのもの不快だ。ワグナー部隊のドンバス解放に対する貢献は敬意を払うに値するもので、もし何かが不足しているなら国防省はきちんと説明すべきだ。そうすればワグナーの指揮官は大砲に頼れない戦いのため戦術を調整しただろう」と指摘。

出典:Kadyrov_95
さらに「マリウポリで戦ったチェチェン人部隊も歩兵を支援するため国防省に戦車を5輌要求したが、割り当てられたのは最初の戦闘で兵士が放棄した1輌だけで、私は自らモスクワに電話をかけて1ヶ月後には問題を解決することができた。つまり最初の電話だけで問題を解決出来なかったが、チェチェン人部隊は敵を喜ばせるような動画は撮影しなかった。世間の関心を集めるため戦友の遺体を撮影するのはいけないことで、絶対に止めるべきだ。戦場で問題が起きない日はなく常に誤解が生じるもので国防省とプリゴジン氏が和解することを望んでいる」と述べている。
最後にカディロフ氏は「ワグナーが(バフムートから)去れば、代わりにカディロフツィが向うだろう。しかし兵士の命を犠牲するのではなく、最高司令官であるプーチン大統領の命令を実行するという相互理解、支援、指揮官と兵士の決意の結果して残り2kmの占領を実現してほしい」と書いているので、恐らくプリゴジン氏と国防省上層部の対立は本物で「バフムートでの前進は容認できない死体の上に築かれたもの」と認識している可能性が高い。
追記:ウクライナ軍は「5日夜にロシア軍がバフムートで焼夷弾と白リン弾を使用して街を地上から消し去ろうとした。しかし我が軍の兵士は勇敢に街を守り続けている、この様な状況下でも敵を破壊し続けている」と発表した。
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※アイキャッチ画像の出典:Telegram経由
ロシアは度々焼夷弾攻撃を行っていますね。
スペックだけ聞くと、一度に大量の歩兵を排除できるように思えるのですが、案外有効な攻撃となっていないのは何故なのでしょう?
有効ですけど、建前が解放戦争的なものなので、いくらウクライナ軍の防衛拠点になっているとはいえ、
建物そのものを破壊する行為は躊躇があるのではないでしょうか。
今後防衛の拠点とするなら住宅もできるだけ残しておきたいでしょうし。
これでは答えになってない気がします そもそもロシア軍が本当に拠点として残したいのならばマリンカやバフムトみたいに全てを灰燼に帰すような砲撃はしないと思います 焼夷弾があまり効果的でないという問は塹壕やビルなどの堅固な建物には効果が薄く木造住宅や森林などの延焼しやすいものが都市には少ない(もしくは既に砲撃などで消滅している)ないからだと思います
〉ビルなどの堅固な建物には効果が薄く
自分はそうした情報はよく知らないのですが、ビル等を防御陣地に利用する場合、
只の地面に塹壕を掘るみたいに、コンクリ製の建物の構造内にコンクリ板や鉄板や土嚢なんかで、
耐爆シェルターみたいな爆風や熱波を避けるポケットみたいな場所を作る方法論とか
あるんでしょうか。
元陸自の知人数名から塹壕やタコ壺堀の話はよく聞いたんだけど、
市街戦でそこにある建物を陣地に改造する訓練とかは話に聞いた事も無くて。
何かそういうノウハウが無いとざっくりと一掃されそうですし、
何かあるんでしょうね。
詳しい方いらっしゃいますか?
太平洋戦争時の関東大空襲みたいに、木造建築に対する焼夷弾での爆撃なら火事で被害が広がり効果的なのに対して、コンクリート建築は燃えませんから短期的には建物は破壊されずに保存されます。
焼夷弾は爆発力や破片の炸裂による殺傷力が高いわけではないと思われます。
コンクリの構造体が燃えなくてもデカい爆風は開口部から回っても来るし、
ナパームだのサーモバリックだのの火炎や熱波は、
窓や扉の吹っ飛んだ建物内もなめ回して、
陰に隠れたくらいでは死傷不可避で酸欠もヤバいと思うんですが、
手近にシェルター状のポケット等があれば
すぐに逃げ込んで生存出来てるんだろうか?ってイメージなんですが。
そういう廃ビルとかに退避所的な物を塹壕掘るみたいに即席で作る、
そんなノウハウ集みたいなのがあるかなーって。
そこまで爆風が追いかけ回すのか、どうなんですかねえ。
広島の爆心地近くでも、偶然まどから屈んで生き残った人もいますし。
タコツボに放り込むなら酸欠になるでしょうけど、空気を巻き上げて逆に新鮮な空気で満たされそうな気もします。
もちろん火柱や炎の中心にいたら助からないだろうとはおもいますが。
比較にならない火力の広島の原爆で沢山生き残ってるのに焼夷弾程度がそんな究極兵器な威力があるとは信じられません。
もしそうならベトナムでアメリカは負けないでしょう。
砲弾の破片で攻撃しにくい塹壕だったり掩体だったりを、持続時間の長い爆風の圧力で攻撃するのがサーモバリックで、ポケットみたいなのは効果がないかなと思います。しっかりした扉閉めればいいのかな。
ナパーム弾は基本的には火を付けるための兵器で、建物内に火炎放射器突っ込むとかでなければ微妙そうです。ベトナムでジャングルを焼いたり洞窟を酸欠させたりさせていたのは、それはそれでもちろん非人道的には違いないんですが、湿潤なジャングルが簡単に大火災を起こすということはないので、効率がよくはないですね。
あと原爆は一瞬のうちに発する熱線で火事を引き起こすのでまた原理は違って、最初の直撃を免れて火事に巻き込まれなければ生き残るのかなと。それでも放射能は浴びますし、今の核兵器は広島や長崎で使われたもの以上の威力ですし、当然ながら残虐ではある……
焼夷弾の恐ろしいのは、燃やすことでの酸欠攻撃による歩兵排除ですから、ビルでも焼夷弾まともにくらえば中の歩兵は、酸欠で死にますからかなり有効な攻撃に思える。
バフムトは地下通路がビルにも多いので、地下通路に逃げ込めれば、地下通路の酸素までは奪えないでしょうけどね。
ウクライナ軍がバフムトで反撃に転じているのも、建物で防御する戦術がとれなくなり、動きまわりロシア軍との混戦状態つくりだして焼夷弾使用させないようにしていると思われる。
ウクライナ軍もバフムトで爆撃しているから航空優勢はどちらもとれていませんのが救いで焼夷弾攻撃は少ないでしょうね。
画面見てる分には全滅してもおかしくないように見えるんだけど、
意外と効果薄いのかね。
素人意見としては焼夷効果を最大限狙った使い方をしていないに尽きると思う。白燐弾とか言われているが使っているのは9M22Sクラスターテルミット焼夷ロケット弾だろうし、一般的にテルミット系は高温だが持続時間も範囲も狭く大抵重要な機密を一瞬で処理とか頑丈な物を部分的にとかのピンポイントのイメージしかない。
今回のような焼夷効果で狙うべきは広範囲に効果を及ぼす火事嵐現象(ファイヤーストーム)と燃焼材による中毒死や酸素が奪われる事での窒息死だがロシアにそれが出来ているだろうか?大規模に使っている風景はあるけど開けた地上に綺麗なトーチが点在する状態で部分的な被害に留まっているように思う。
焼夷効果が期待出来る気候タイミングが良くない、敵制圧地域に適当に撃っているだけ、攻撃対象である現地建造物等に対する研究のなさ、攻撃規模が小さいのが積み重なって効果がアップしていない。少なくとも2次大戦時の日本やドイツに対する焼夷弾攻撃なんて真面目な検証とかして大規模な爆撃と何種か爆弾の組み合わせで効果を上げてるんだから。
サーモバリックにしても元が軽防御の車輌、防御拠点内部、開けた地形にいる兵員に対する物。垂直に近い状態で地表に落ち効率よく上下左右に衝撃波を飛ばす(高い建造物に当たって高所で爆発するなら被害なんてしれている)、ガス爆発被害のように密閉空間である建物内部等をピンポイントで狙うとかしないと効果は薄い。
そもそも有効な攻撃になっていないという前提が間違ってると思います。
アゾフスタリ製鉄所制圧の仕上げに使用されたように建物に立て籠った敵には非常に有効な手段だと思います。
流石に対策はされてるでしょ
太平洋・ベトナム戦争の焼夷弾とテルミット焼夷弾は全く別の物
油脂焼夷弾は木造建築に有効であり、油をばらまいて着火する。ナパーム弾も原理は同じ
コンクリートや金属など不燃性の物には殆ど効果は無い
テルミット焼夷弾は高温で一般車程度の金属なら溶かして貫通する事はできるが
コンクリートは溶かせない
そもそも家庭用コンロですら数千度の熱で、アルミを溶かす事が出来るが、アルミのフライパンを溶かすには数十分は加熱する必要がある
さらにコンクリートは熱を吸うため、30秒程度の焼夷弾による加熱ではせいぜい表面が凹む程度で、溶ける前に火が消えるのである
故にテルミット焼夷弾が戦争で活躍した事は無い
確かに人間に直撃すれば死亡するが、テルミット焼夷弾は雨宿りするだけで回避可能。目の前に落ちても大丈夫
クラスター弾なら地面に落ちた後炸裂するので、完全な閉鎖空間に逃げ込むしかない
ただし榴弾なら炸裂して装甲貫通能力があるので、コンクリートや装甲車でもタングステン弾などが貫通して人間を蜂の巣にする事がある
結論としては極めて性能の低い時代遅れの兵器という事
建物を破壊するならFAB-500のように単純に火力の高い爆弾を使うべきで、焼夷弾はめくらまし程度の効果しかない
マリウポリでもコンクリの瓦礫しかない地表に焼夷弾を撒いて、被害はゼロだった。大火傷した兵士は1人もいない
おっしゃる効果の内容的には、正しいやり過ごし方を知っている兵士には効かず、
一般人や新米パルチザンを焼き殺すか退避させてない物資を焼き払う程度という感じですか。
素人的にぱっと思い付いたのが、
デカいアパートやマンションによくある車輪と蓋の付いたゴミ缶を立て籠もる建物に持ち込んで、
ヤバい攻撃を察したら転がり込んで蓋を閉めるとかで火炎と酸欠をやり過ごせるかと思いましたが、
ここで使われる攻撃はそこまでしなくても凌げる感じですか。
ロシアが使ってる焼夷弾はだいたいグラートから発射する9M22Sで、
戦略爆撃で使われた油脂焼夷弾やテルミット焼夷弾と比べると一つ一つの子弾がみかん程度のサイズとはるかに小さく、
屋根を突き破って建物の中に消火困難な火をつけるようにはできてません。
戦術的に塹壕の兵士を攻撃するとか、屋外の燃料などを燃やす(ドラム缶くらいなら溶かす)のが用途みたいです。
なのでコンクリート建造物が多い市街地には、見た目のグロさほどの純軍事的な効果がないのが自然なのですが、心理的な効果を狙ってるのですかねえ。
また、ウクライナ側からの映像に関しては、安全な屋内にいる人しかスマホで動画撮ってる余裕はないというバイアスもありそうです。
おお、プリゴジンの発言ばかり目立っていたからカディロフの事を忘れていましたわ
恐らくは下手に発言したら自分にも火の粉が飛ぶのを恐れて、プリゴジンがバフムート撤退発言をするまで黙っていたんでしょう
発言内容もほぼ真っ当なので、今後ワグネルがバフムートから撤退した場合のカディロフツィの動きに注目です
この状況における100点満点の口上ですな。さすが首長。
説明もなく補給や支援がなくなったら戦えないとなるのは当然だし、疑い深そうなのでロシア上層部が自分らを潰そうとしてると考えるのも普通かなと思ってるので特に陰謀だとかは感じないですね
そもそもロシアはずっと酷い有様で対応が遅くいちいち何か自体が起きて致命的になってから動き出すし、上層部に直でコンタクト取らないと内内で抗議や改善を求めても全く動かないのは容易に想像できる
プリゴジンはそのラインがなくて改善要求が全く効果がなく外にだすようになったではないか
カディロフはあるんだろう
それでも1か月かかるらしいが連絡取れれば説明くらいはされるかもね
9日まではバフムトは落ちなさそうですが、ロシア側戦死者20万人になる前には制圧されるかもしれないですね。アゾフスタリ製鉄所のような要塞が(脱出口のある)西端にあれば1ヶ月くらい粘れるかもしれませんが。
軍事パレードは、戦車がないと格好つかないので戦線から引っこ抜いてパレードするかもしれません。
クレムリンの花火ドローンは、仮にウクライナ側がした、とすると「いつでもモスクワ攻撃できるぞ」とのデモストレーション目的かもしれません。
また、チェチェンはソ連でいうところのバルト三国的なポジションなのでカディロフ隊が前線に出てくるならチェチェン独立派義勇軍と共に叩いておきたいアキレス兼です。
マリンカでも度々焼夷弾が使用されています
マリンカはもうほぼ全域が瓦礫となっていて燃やすものも無いですし
毎日のようにロシア軍が攻撃を加えていますが
一向に陥落する様子がありません、何度も何度もロシア軍は撃退され続けています
もちろん直接当たれば無事では済まないでしょうが
直接兵士に当てて倒す事を目的とした兵器ではないですし
燃えるものもない瓦礫の中では決定打とはならないようです
プリゴジン氏によると、バフムートのウクライナ軍は1日400人ほどの増援が未だに送り込まれているようです。砲撃に耐えるビル群も完全には失われていないので、数的優位にあるウクライナ軍が兵士の血と引き換えにバフムートを保持することはまだまだ可能でしょう。