ウクライナとロシアの和平交渉で部分的な合意に近づいていると報じられている中で、合意に近いのは「ウクライナの中立的地位」についてだと報じられ始めている。
参考:ОПУ на заявления РФ по нейтралитету: Модель может быть только “украинской”
参考:В Кремле оценили идею о создании на Украине демилитаризованного государства
参考:Russia and Ukraine ‘close to agreeing’ on neutral status, says Sergei Lavrov
NATO不加盟確約をくれてやるので「NATOとは別の形の安全保障をつけろ」と要求しているウクライナ
プーチン大統領は先月24日、ウクライナでの特別な軍事作戦に踏み切った理由に「8年間キエフ政権によって虐待や大量虐殺に晒されてきた人々(ドネツクとルガンスクに住む親ロシア人)を守るためで、ウクライナの非軍事化とロシア人や民間人に対する数々の血なまぐさい犯罪を犯した者を裁きにかける」と明かしてウクライナ軍に降伏を要求したが、こなんものは所詮建前でありロシアの真の要求はウクライナの中立、クリミアにおけるロシアの主権承認、ドネツクとルガンスクの独立承認の3点だ。
![](https://grandfleet.info/wp-content/uploads/2022/02/234hy3j56-1.jpg)
出典:Первый канал
この3つはワンパッケージではなく個別に交渉が進められておりラブロフ外相が「ウクライナの中立的地位について合意に近い」と、ペスコフ大統領報道官が「ウクライナがスウェーデンやオーストリアをモデルにした中立を提案してきた」と交渉内容を漏らして注目を集めている。
しかしウクライナ代表団は「スウェーデンやオーストリアをモデルにした中立案は我が国の安全保障の要件を満たしていない。しかもウクライナは現在ロシアと交戦中なので中立案はウクライナモデルでなければならず他のオプションはあり得ない。中立を宣言する上で最も重要なのはウクライナの安全保障が法的にも保証されることで、将来ロシアと再び衝突した場合に西側諸国が我々を支援して必ず飛行禁止区域を設定すると合意することが何よりも重要だ」と主張しているため両国間の隔たりは非常に大きい。
![](https://grandfleet.info/wp-content/uploads/2022/03/hygy5h56.jpg)
出典:Михайло Подоляк ネットワークで繋げれた和平交渉の様子
つまりクリミア、ドネツク、ルガンスクという領土問題を抱え現在も交戦中なのに「ロシアが落とし所として誘導したいスウェーデン・オーストリアモデルの中立的地位を守ると到底信用できない」とウクライナは言っているのであり、ロシアが国内向けの成果として絶対に譲れないライン=NATO不加盟確約をくれてやるので「NATOとは別の形の安全保障をつけろ」と要求しているのだ。
ウクライナ国家安全保障防衛会議のダニーロフ長官は「同盟」という表現を使用したものの「NATOに加盟しないなら核兵器を保有する国(英国)による安全保障の提供が必要」との認識を示しており、NATOに加盟しなければプーチンが心配するNATOのミサイルがウクライナに配備されることはない=この辺りまでロシアが譲歩しろと言いたいのかもしれない。
まぁウクライナの中立的地位が今後どのような形で実現するのか今のことろ不明だが、クリミアにおけるロシアの主権承認、ドネツクとルガンスクの独立承認はウクライナが絶対に了承しないため、中立的地位だけで停戦に合意して残りは棚上げするつもりなのだろうか?
追記:ゼレンスキー大統領は米議会でのビデオ演説の中で「戦争を即座に止める意思をもった責任のある国々の連合体の設立を提案する」と述べており、米CNNは「戦争を止めるための新しい同盟だ」報じている。
追記:ウクライナのミハイル・ポドリャク大統領顧問は「停戦が今後数日のうちに成立すると確信している、代表団は両国の大統領が署名可能な文書を作成している途中だ。ロシア代表団は最後通牒のような物言いだったが現在は態度が軟化している」と述べており、これが事実なら今週中にも停戦が成立するという意味なので何とか代表団には頑張ってほしいところだ。
追記:ウクライナが中立を宣言、軍の規模縮小にも応じことでロシアは停戦することに同意、ロシアの軍の撤退を含む15項目の戦争終結文書が準備中だと英国のThe Financial Times紙が報じており、ウクライナが要求している安全保障は米国、英国、トルコなどの同盟国によって提供され、ロシアはウクライナ国内に他国が軍隊を恒久的に駐留させないことを保証するよう要求しているらしい。
※アイキャッチ画像の出典:Генеральний штаб ЗСУ
お知らせ:記事化に追いつかない話題のTwitter(@grandfleet_info)発信を再開しました。 |
NATOに代わる安全保障体制が必要なのであれば、ウクライナとロシアだけで交渉してもあまり意味がないのでは?
最低でもウクライナに核の傘や安全保障を提供する周辺国の事前同意が必要だと思うけれど、その辺の調整は出来ているのだろうか?
NATO非加盟は前提にしても、クリミア、ドネツク、ルガンスクの実質確保の名目だけ棚上げってあたりが妥協点なのかな。
けどそれじゃロシアの兵士の命と引き換えにするには軽すぎるよなあ。ドネツク・ルガンスク両人民共和国の「解放」くらいは土産にほしいところだろう。
国連は微妙だけど常設のアフリカ平和維持軍は割と紛争解決で活躍してるよね
あれをモデルにするとか?
それはそうと地震が凄かったのでみんなもお気をつけを
お、これは今までより少し進展があった言えるのかな。とはいえやはりウクライナがだいぶ譲歩する形になりましたね。ロシア側は制裁の解除と中立化、ウクライナ側は即時撤退と安全保障の制定。そしてド・ル・クリミア承認は一時保留。ここまでがギリギリの妥協点てとこでしょうか?
本来NATO加盟問題もドンパスも建前であってウクライナ全土が欲しいのがプーチンの本音ですが、もはや無理そうなので建前を利用して「この辺で勘弁したるわ」と鉾を収めようということですね。プーチンの首がつながるのはこれしかないでしよう。
ウクライナとしてもNATOに代わる何かを得られたなら、クリミアやドンバスを差し出したとしても一定の成果を得たと言えるかもしれません。しかしそこは最低条件でしょうね。
ロシアが中立を要求するなんて頓珍漢なことしてるようなら、当分はこのままだろうな
ロシアには他国にそんな注文を付ける権利が全く無いし
そんなのを押し付けられている状態は、属国に等しいからウクライナも飲めるわけがない
降伏寸前とかならともかく、むしろロシアが苦戦させられている状況なんだから
焦土戦術を使えばかなり時間は稼げるだろうし、ロシアがどこまで頑張るか見ものだね
とにかく少しでも早い停戦を願う
しかしプーチンは何の成果も無い停戦では失脚待ったなしのはずで、落としどころは難しいだろうな
というか政治生命が失われるだけならまだしも刑事罰に問われたり、今後のロシアの国内状況によってはもっと酷い終焉もありえそうだが・・・
真珠湾攻撃と同時多発テロを同列に扱うような発言について不快感を感じた方は少なくないのではと思いました。
言葉選びを間違えると、得られる協力や同情も失せてしまうと感じました。
抵抗感を軽く覚えましたが、むしろ自分の歴史認識が甘かったんだなと思い直しましたよ
日本人がどう感じようともアメリカ人から見たら、自国にいきなり攻撃してきたやつら、でおんなじでしょ。真珠湾なんて宣戦布告文章の送付が遅れるという大ポカをやらかした結果、”奇襲”とされるのが一般認識なんだからテロと同列に並べられても文句は言えんだろ。
それとも一般人を人質にとるような卑怯な真似はしていない?真珠湾も結局一般人に被害出てるんだから真珠湾攻撃だけを特別視するのは難しいでしょ。
こっちから仕掛けてしかも大負けしてんだ。悔しがるだけ時間の無駄だから、本の一段落ぐらいと思って聞き流したほうが良いぞ。
アメリカの領土が攻撃されたのは真珠湾と9.11だけなんで、自分たちの国土が攻撃されることの衝撃を
表現するために真珠湾を使ったのであってテロ行為と同列に考えたわけじゃないと思います。
数十年前に政治体制の大変革が起きた国家
発展途上の経済に見合わない強大な軍備を持つ
緩衝地帯を求めて傀儡国家の樹立を一方的に宣言
隣国と泥沼の全面戦争に発展する
欧米の経済制裁で継戦が困難になる
うーん、歴史は繰り返すとは良く言ったもんですね
ここで「撤兵した所で制裁が解かれる保証はどこにもない、死中に活を求めるべし」とか言い出さないだけ、まだプーチンの方が理性的かな?もしくは資源大国の余裕と言うべきか?
まず、当のアメリカ大統領が911と真珠湾を並べて演説したことがあるんですよね
これも当時物議を醸しましたが、つまるところアメリカの歴史認識ってのはそういうものなんです
「細かい理屈は置いといて突然の不意打ちで痛い目を見たって大意では同じ」ってやつです
アメリカで演説するならアメリカの価値観に合わせるのは当然でしょう
あらゆる国でナチスを一億回くらい擦られてるドイツよりマシですわぞ
>ウクライナが要求している安全保障は米国、英国、トルコなどの同盟国によって提供され
実質NATOの保護下に入るってことでいいのかな。ロシアは戦争してまで得た具体的な成果ないけどいいのかこれ。
ウクライナやNATOがロシアに攻め込むなんてことはありそうにないので、プーチンの言う「ロシアの安全保障のための戦い」なんて口実だったはずです。
でも口実として生きてはいるので、「今回の特別軍事作戦によってロシアの安全は保障されたのだ!」という成果として国内向けに宣伝はできます。
もちろん成果として最低限で失ったものには釣り合わないですが、これで手を打つしかないくらいロシア軍が限界なのだと思いますね。
とうとう停戦の可能性がでてきましたか。ウクライナの後ろ盾に米英だけじゃなくてトルコが上がるとは。確かにトルコが外相会談の仲介を行っていましたし、TB2の供給やボスポラス海峡の閉鎖など戦争に影響を与えていたのでその資格は十分あるんでしょうけど、東欧のプレーヤーとして復活したと言えるのではないでしょうか。
しかしクリミア半島然り2つの共和国についてはやはり棚上げなんですかね。それに西側諸国の制裁も、いつまで続けるのか考えないとならんので、まだまだ先は長そうです。
ウクライナが求める安全保障の提供のあり方といってもなあ。露によるウクライナ侵攻が起きてから、ウクライナや日本やNATOの軍事同盟における法的地位について調べていたら
「安保条約の真実、米国に日本を守る義務はなかった」
なる記事を見つけた。これ見てたら不安になってきたんだよね。「日米安保があるから日本はウクライナとは違う」というのは怪しいのでは?特に核での恫喝をするにあたっては対NATOよりイージーな覚悟で行えるように見える
私は専門家ではないので分からないなりに考えるしか無いが、ウクライナ支援においてあらゆる理屈をつけてNATOとロシアの直接交戦が避けられたのと同じことならないだろうか
私の理解より詳しい人の考えを聞かせてください
アメリカはウクライナの為に携行ミサイルを供与することも、しないこともできる。警戒機からの情報を渡すことも、渡さないこともできる。ロシアを制裁することも、しないこともできる。なぜなら義務がないから。
でも日米安保では「共通の危険に対処するように行動する」ので、この辺の行動をすることは義務。たとえ中国が核をチラつかせようとも、日本への援助は止められない。
だから「日本はウクライナとは違う」ってのは事実。
NATOは「あなたが攻撃された時に皆で防衛してあげるから、皆が攻撃された時はあなたも一緒に防衛してね」って同盟なんだから、「ウクライナは加盟国じゃないけど守ってあげるね」なんてことしたらNATO加盟国であるメリットが無くなる
逆にアメリカが日米安保条約上の義務を果たさないなんてことがあったら、日本が米軍の駐留を認める理由が無くなる
NATOがウクライナを守らないこととアメリカが日本を守らないことは全く意味が違う
結局、プーチンが最初に言っていた「非ナチ化」や「非武装化」は通すことができなかった、ということですかね。
ロシアはこの戦争を行う意味があったのでしょうか。