ドイツのランブレヒト国防相は20日、7月中に15輌の自走式対空砲「ゲパルト」を弾薬約6万発と共にウクライナへ引き渡すと明かして注目を集めている。
参考:Germany to deliver 15 ‘Gepard’ tanks to Ukraine in July
法的な問題に直面していた弾薬についても「59,000発をゲパルトと共に引き渡す」と述べているのが興味深い
ドイツ政府は「ウクライナに50輌のゲパルトを提供する」と4月末に発表したが、これは陸軍の在庫ではなく「ラインメタルが保管する退役済みのゲパルトをオーバーホールを行い引き渡す」という意味で、しかもエリコン製機関砲が使用する弾薬についてスイスがウクライナ移転を拒否するなど問題を抱えていたが、ランブレヒト国防相は「7月中に15輌のゲパルトを弾薬6万発と共にウクライナへ引き渡す」と明かして注目を集めている。

出典:Derwatz / CC BY-SA 3.0
ランブレヒト国防相はレズニコフ国防相との会談後「一日も早いゲパルトの引き渡しをウクライナ側が望んでいることを確認した。我々は最初の15輌を訓練を終えたウクライナ兵士と共に7月中に引き渡せるよう協力しているところだ」と明かし、法的な問題に直面していた弾薬についても「59,000発をゲパルトと共に引き渡す」と述べているのが興味深い。
ゲパルトが使用する35mm機関砲の弾薬はスイス国内のエリコン社(現在はラインメタル傘下)で製造されドイツへ輸出されたものなので最終使用者証明は「ドイツ」だ。
つまり弾薬をウクライナに移転するためには最終使用者証明をドイツからウクライナへ変更する法的な手続きが必要で、4月上旬にドイツはスイス当局に接触して弾薬のウクライナ移転に関する許可=最終使用者証明の変更を打診したが、スイス当局は「戦争状態にある国へ武器・弾薬の輸出を禁止する国内法に抵触」するという理由でこれを拒否している。
今のところスイスが同問題で態度を変更したという話は出ていないので、スイスの国内法が制定される前に輸出されたものや国内法の適応外になる弾薬(スイスで製造されても最終的に海外で完成した弾薬)をかき集めた可能性が高いが、果たして50輌分の弾薬(15輌で6万発なら50輌で20万発)を確保できているのだろうか?
それともスイスがこっそりとウクライナへの弾薬移転を許可したのだろうか?
ロシアとの戦いのターニングポイントは「8月中旬」になるとウクライナ側は予想しているので、弾薬移転にまつわる真実よりも「15輌のゲパルトが7月中にウクライナへ到着する」という事実の方が重要であり、ドイツも相当頑張ってゲパルトの提供に取り組んでいるのだろう。
関連記事:ドイツがウクライナに提供するゲパルト、スイスが使用弾薬の移転を拒否
関連記事:ウクライナ国防省、この戦争のターニングポイントは8月で年内に終結する
※アイキャッチ画像の出典:Hans-Hermann Bühling / CC BY-SA 3.0
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そのスイスですが、先日NATOへの接近を考慮しており、最終的には永世中立の解釈方法も変えるかも知れないとの関係者の発言が飛び出していますから、もしかするとその流れで「こっそりとウクライナへの弾薬移転をドイツに許可した」可能性も有ります。
【参照・Yahooニュース:5/17配信「焦点:永世中立スイスがNATO接近、ウクライナ危機で揺らぐ国是」】
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オーバーホール間に合うのかな?
あの独が、たった2ヶ月で15両も完全整備出来ると言ってることに驚きを隠せない
そりゃメーカー整備と軍隊での整備で結果が変わるのは当たり前では?
ドイツ軍の機能不全は基本的には予算不足のせいで予備パーツの購入ができなかったり人員不足で満足な整備が出来なかったからだと思います。
ゲパルトの実戦てこれが初めて?遅咲きだな
冷戦下から名を馳せた対空自走砲の実力や如何に
8月中旬てことは、その後も長引きそうですね。
弾薬の種類が気になる。ドローン対応の為に導入すると思われるけど、的が小さすぎるから近接信管付きの弾薬じゃないと意味ないんちゃうか?
あとゲパルトのレーダーがオルランみたいな民生用レベルの小さいドローンを検知できる能力があるのか
検知できるとして野鳥とどう区別するのか
お母さん色々心配やわ
もしドローンも鳥もレーダー検知できるなら構わず全て撃ち落とす……って感じになるでしょうね
ミサイルとはコストが異なりますからね。
判別の問題は無印する事で解決するとして、
問題は探知出きるか否かでしょうね。
ゲパルトのレーダーについて詳しい若しくは推測出来る人がいたら、解説して欲しいですが。
ドイツ連邦軍仕様ゲパルトの捜索レーダはKuバンド、追尾レーダはSバンドで小型ドローンも一応探知できます。(空港等に設置されているレーダ式鳥検知装置では省エネ性から主にSバンドが使われています)
しかし、本来は航空機やミサイル等高速飛翔体の迎撃用途ですから、飛行する鳥は邪魔なのでその範疇に入るエコーはソフトウェア上で探知データから除外されます。(推測)
従ってオリジナルの設定では、Group1の小型ドローン(重量9kg以下、高度360m以下、速度185km/h以下)はRCSも勘案すれば鳥と識別できず除外されるでしょう。
水平飛行速度185km/hを超える鳥はいない(最速はハヤブサの約180km/h)ので、検出速度を185km/h以上に設定すれば、それ以上で飛行中のGroup2~5ドローンは検知・追尾可能な理屈です。ハイブリッド型はスティンガーを並装していますので、その射程内なら撃墜も可能かと。
Group1ドローンの排除に使用する場合は、ソフトウェアを修正し更に探知対象を識別するための画像認識センサ等をシステムに追加組込する必要があると思われます。
ウクライナに供与するに当たってそこまでの手間はかけないでしょう。
主に反抗作戦に当たっての機甲部隊の近接防空又は平射対地支援のような本来の用途に使用されるんじゃないか、と私は思っています。
フォローありがとうございます。
自走高射機関砲は対空レーダーを装備しているほか、弾薬切り替え式の機関砲(確かゲパルトは1門あたり対空・軽車両用の320発のFAPDSと、20発の装甲車両用HVAPDS-T)など機構が複雑で、整備のための知識とパーツの供給が欠かせないともいわれていた。
使うだけならなんとかなるだろうが、パーツの供給まで可能なのだろうか。
まあ、弾薬切り替え機能はロックさせておくというのもありだが。
それとも調子が悪くなるたびに、ドイツ人の要員が控えるポーランドまで送り返すのだろうか。
なお他のサイトによれば、スイスが弾薬の移転を拒否した弾薬は、ゲパルトを輸出したブラジル、ヨルダン、カタールから掻き集めている、なんて話もありますね。
納期2ヶ月半あるんだし、ラインメタルが他に生産ライン用意して製造すればいいような気がする。
その10倍は納期が必要では
米国が弾薬5000万発の供与で在庫の1%程度と報道されたり、
榴弾砲の砲弾を20万発供与してたり、
第一次大戦で会戦ごとに百万発単位の砲弾消費してるの見ても砲弾の生産ラインは動けば大量生産なのでは。
一両4000発で足りるのか?ドローンたんまりの戦場に4分間で撃ち尽くせる量しか持ってかないって、もうちょっと頑張れないの。
ウクライナが欲しがってるそうですが何に使うのでしょうね。対ドローン用? 高迎角の機関砲ということでロシアのBMPTみたいに市街戦では使えないでしょうか。
ワシントンポストによると、アメリカ議会が可決した5兆円支援のパッケージにHIMARS(多連装ロケット砲)が含まれるとか。そうやって装備が揃えば7月反攻は現実的になります。
ロシア軍のドローンOrlan-10に対応できると良いのですが、ロシア軍が立て籠もり抵抗する都市なんかが現れるとBMPTのような使い方にもなる予感。
どんな配備方法になるのかに注目ですね。
これ、現代の電子線に対応できますかね?ちょっとしたECMでダメになるんじゃという危惧があります。
宇が本当にほしいのは戦車と航空機では
TB2のような中高度には届かないけど、
低空を侵入してくる標的には使える。
流石に、水平射撃してミートチョッパー再び状態になるほど露軍の練度は低くないよね、きっと。
ロシア軍のターミネーターの本当のコンセプトこそが対人・対物水平射撃にも有効な対空車両を、レーダーなど効果なパーツを取っ払って対人・対物射撃に特化させた車両なのではないかと思ったり
そうですね。BMPTの立ち位置は地上射撃シルカの本業版。
今まで生身の歩兵がやってた市街戦の立て籠もり兵掃討を、装甲車両にさせるやつ。
撃たせる獲る前提だから、武器が似たようなBMPでは装甲薄くてダメで、モリモリ装甲の戦車ベースで、かつ、観察能力を向上させている。
なんで、ターミネーターなんて大仰な名前付けずに、戦車の先祖に立ち返ってオス型とメス型で良かったんではないか。
BTGは歩兵が少ないとバカにされてる面もあるが、脆弱な歩兵を装甲車両に出来るだけ載せておくコンセプトは悪くなくて、
BMPTよりさらに先行する偵察用小型ドローンとちゃんと組み合わせていれば、歩兵に生身で掃討させるよりよっぽど現代的だと思いますがね。
その先にターミネーターな戦場が待っていそう。
ウクライナが望んでるなら良いけど、基本的にはまだ政治パフォーマンスの域を出ないよね
ゲパルト自体の戦闘能力もだけど、弾丸6万発って下手したら一回の作戦で使い果たすんじゃ……
その少ない弾すら使いきる前に、機械的故障や戦況に対応できない欠陥が露呈して返品されたりして
改良改修されてはいても、ぜんぜん実戦経験のないおじいちゃんだから
ミサイルや爆弾を抱えて低空侵入してくる敵の戦闘攻撃機あたりに対しては、有効な武器なんですね。敵の攻撃ヘリなどは、こんなのがあると怖くて近づけませんね。
地上目標を水平射撃、では?
35mm砲だから、戦車の正面装甲以外なら貫通できるはず。
徹甲弾なら貫通できる口径だけど、配備が対空用のHE弾だと、軽車両しか厳しいのでは。
「間に合わなくなっても知らんぞーーっ!!」
こういう事態が発生すると、弾薬も自国生産が望ましくなりますなあ。
集団安全保障の障害になってますからねえ。
日本はダイキンが生産する契約になっているのでは?
日本が危機に陥った時のことも考えないとね。
支援しようとしてくれた国が取り決めで弾薬を出せない、となったら日本がピンチですから。
何か国際的な取り決めが必要かも知れませんね。
何にせよ無いよりはあった方がいいんでしょうけど、この種の車両が現代戦で有効に作用するかというとうーんという感じはありますね。散々言われてますが機関砲の射程は短く搭載レーダーの検出分解能はヘリや航空機に最適化されているので、今となってはミサイルでアウトレンジされる可能性が高い(特に索敵レーダー稼働中は敵からよく見える)ですしUAVの検出もできるかどうか。
良い点を挙げれば機関砲射程内ならミサイルと違って回避できないので、低空攻撃してくる戦闘機や攻撃ヘリをほぼ確殺できる点ですね。重要目標や敵ランディングゾーン周辺に配置しておくと(撃破されない限りは)ミサイルより強力な防空火力を提供してくれますよね。そういう意味でロシア空軍の意思決定や航空機運用に一段とストレスになるのは間違いなさそうです。
NTCでの合同訓練に参加した87式が敵航空部隊を寄せ付けない活躍したとの記事が少し前のAM誌にありました。
実際の程は話半分としても、同様の装備のない国にとっては厄介な相手に感じるのかもしれませんね。
ロシアにはシルカがあるので、そこら辺の訓練は十分されているかもしれませんが…。
ゲパルトの近代化改修時の映像で設計の古さをご確認ください、意外とロシアのツングースカに近いのでビックリ出来ますが・・
ゲパルト
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ツングースカ
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21世紀に登場した脅威に非対応のような気がするのですが・・
ゲパルトの性能が、ドローンやUAVの飛び交うウクライナの戦場に噛み合うのか、
むしろゲパルトの活動を見ることで実際の戦況を理解する手がかりになると思うよ
案外と役に立つならば、それはロシアのヘリや戦闘機が低空で活発に作戦行動してる証拠になる