ウクライナ戦況

侵攻834日目、ロシア軍がクピャンスク方面でイヴェニフカを占領

ウクライナ人が運営するDEEP STATEは6日夜「ロシア軍がクピャンスク方面のイヴェニフカを占領した」と報告したが、ウクライナ軍参謀本部は「両軍が最も激しく衝突しているのはハルキウやチャシブ・ヤールではなくアウディーイウカ方面のソキル方向だ」と述べている。

参考:Мапу оновлено!
参考:Военная сводка за 5 июня: зона СВО
参考:Генштаб: Наибольшую активность враг проявлял возле села Сокол на Покровском направлении

前線の状況をDEEP STATEやRYBARの報告量だけで判断すると「オチェレティネ方向への突破やハルキウに対する攻勢以前の状態に戻った」と言える

ロシア人ミルブロガーが運営するRYBARは5月26日「ロシア軍がイヴェニフカを解放した」と報告していたが、ウクライナ人が運営するDEEP STATEも6日夜「ロシア軍がイヴェニフカを占領した」と、RYBARも「ロシア軍がシンキフカ方向で前進した」と報告。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

視覚的にもロシア軍がシンキフカから西に約4km離れた森林地帯=でウクライナ軍陣地を掃討する様子、イヴァ二フカから1.5km離れた地点=でロシア軍の装甲車両が爆発した様子、ウクライナ軍がステルマヒフカから2km離れた地点=のロシア軍を攻撃する様子が登場、はRYBARが主張するロシア軍支配地域を裏付けるもので、はロシア軍に占領されたイヴァ二フカ周辺にウクライナ軍が存在しないことを示唆している。

RYBARは「ロシア軍がドネツク西郊外方面と南ドネツク方面での前進した」と報告しているが、前進範囲が誤差レベルなので今回は取り上げない。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

ウクライナ軍参謀本部は連日「戦闘が最も激しいのはハルキウではなくドネツクのポクロウシク方向だ」と言及し、その中でも最大の衝突が起きているは「ソキル地域だ」と述べている。

戦場の交戦レベルは引き続き激しいのかどうかは不明だが、DEEP STATEやRYBARの報告量は「オチェレティネ方向への突破時期」や「ハルキウに対する攻勢時期」よりも少なくなっているものの、ほぼ毎日「全戦線の何処かでロシア軍が前進した=ウクライナ軍が領土を削り取られている」という状況は変わっておらず、ウクライナ軍が反撃を試みていると噂される「ハルキウ北東部」でも前線位置に全く変化が見られない。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

繰り返しになるが、前線の状況をDEEP STATEやRYBARの報告量だけで判断すると「オチェレティネ方向への突破やハルキウに対する攻勢以前の状態に戻った」と言えるが、同時に「ウクライナ軍がロシア軍を押し戻して土地や拠点を奪還したという報告が全くない」という話にもなるため、まだ前線の状況が好転したと解釈するのは時期尚早だろう。

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※アイキャッチ画像の出典:Сухопутні війська ЗС України

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コメント

    • たむごん
    • 2024年 6月 07日

    戦場の膠着中に、新兵の訓練が進んでいるのか、新兵の投入により膠着しているのかは気になっています。

    管理人様が、電力問題を取り上げていましたが、カホウカ水力発電所は復旧に6.7年はかかるようです(おそらく、ダムの構造からのため)。

    (2024.06.3不十分な訓練で戦場に送り込まれるウクライナ人、新兵の射撃訓練は20発 航空万能論)
    (2024.06.06 カホウカ水力発電所の再建は、脱占領後に6〜7年必要=ウクライナ水力発電公社 ukrinform)

    7
      • nachteule
      • 2024年 6月 08日

       新兵訓練は微妙でしょ教育担当が前線行ってちゃね。あくまでウクライナ国内で国民に限るならば傷病者でリタイヤでもした優秀な兵士なり教官にでもしないと回らないと思う。

       膠着しているのは性能を発揮出来る榴弾砲とFPVドローンの成果が大きいし、うまく地形を利用した戦いかたをしているからだと思う。アサルトメインの新兵がどうこう出来るような状態では無いと思う。

      5
        • たむごん
        • 2024年 6月 08日

        仰る通りです。
        生き残っているベテランの影に、死傷した兵が多くいるでしょうからね。

        生存バイアスで何とかなりそうに見えますが、20発の射撃訓練だけでは厳しいだろうなと…

        1
    •    da
    • 2024年 6月 07日

    ウクライナが一番苦しいであろう時期での進捗状況
    …ロシアは勝てんなこれ

    11
      • 2024年 6月 07日

      ここの記事を読んでいればウクライナが1番苦しいときが今ではなくこの先更にジリ貧なのは誰の目にも明らかだが。(兵士、兵器、弾薬、電力、士気等全て)

      79
        • 通りがかりさん
        • 2024年 6月 07日

        武器弾薬は流石に前線には届いたんじゃないですかね。防空はともかくとして。
        それでも砲撃数をタイにまで持っていけてるかは難しい所だと思いますが。

        12
          • a
          • 2024年 6月 07日

          確かに弾薬は供給されましたが…量がそれでも全然足りないし補給手段があやしい。
          電力に大幅な制限がかかった今、社会インフラは尋常ではないダメージを受けているはずです。また、頭をよぎるのは医療インフラのことです。ウクライナは戦前から高齢化社会ですし、もし家族がウクライナに住んでいたら要介護者の私のおばあちゃんは生きていけないと思うと胸が痛くなります。

          27
            • たむごん
            • 2024年 6月 07日

            医療インフラは、仰るように絶望でしょうね。
            医療で、電気やガス、水(電気が必要)が安定しないのは、論外でしょうし…

            実態として、医療がどうなっているのかは少し気になりますね。

            16
          • M
          • 2024年 6月 07日

          砲撃の格差はロシア軍が1日6万発撃ってた22年の時のほうが今より大きい筈。
          今戦線が支えれなくなってきてるのは砲撃より他の要素が大きいようにも思える。
          いちばんは兵力不足かな。
          特に最前線を守る良く訓練された歩兵の不足。
          ロシア兵がFPVドローンの波状攻撃をくぐり抜けて陣地に到達さえすればほぼ制圧されてしまってる。

          42
        • da
        • 2024年 6月 07日

        そらねえ
        ここの記事はウクライナの苦境メインにしか伝えてないからな
        ロシアも根本的に兵力兵器士気の問題は抱えている
        独ソ戦中盤と同じように相手をノックアウトできないグロッキーボクサー同士の殴り合いですよ

        士気や動員逃れ?
        そんな事は歴史的にどこの国でも起きていた事で、誇大に評価しすぎなんだよな
        そんなもので戦線崩壊って近現代国家では非常に稀
        直接に軍事力に大打撃与えないとムリだろうね
        …残念ながらロシアにその力はないので結論見えてるね

        11
          • 774
          • 2024年 6月 07日

          2022年からそうやってロシアの限界を何度も予想してきましたが当たった試しがあるでしょうか?
          過去の予想が当たっていれば今頃はウクライナの戦勝パーティの片付けをしていますよ?

          79
          • 2024年 6月 07日

          すごく不思議なのですが、そうやってロシア不利みたいなことを吹聴するのってロシアを利するだけだと思うんですが。敵を下げてディスって来た結果が今のウクライナなんじゃないですか?

          ウクライナに本当に勝ってほしいなら、敵を過大評価までいかなくても適正評価して、油断しないようにしたほうがいいと思うのですが。

          ウクライナ有利・ロシア壊滅みたいなことを吹聴している人たちって、実は全員ロシアの工作員なんじゃないかと最近思うようになってきました。

          72
          • 名無し
          • 2024年 6月 07日

          負け惜しみ構文もコピペみたいに色々な使い道がある気がしてきたぞ

          31
          • kitty
          • 2024年 6月 07日

          「ロシアも苦しい」という事実はあるのかもしれませんが、その苦しさに耐える力が異常な点も間違いないのですな。

          52
          • 名無し
          • 2024年 6月 07日

          そんな調子で吹聴しながら自滅する国、ウクライナに栄光あれ~

          30
          • 2024年 6月 07日

          今が独ソ戦中盤ならば最終的にロシアが勝つのでは?

          29
          •  
          • 2024年 6月 07日

          ロシアの方が3倍くらい人的コストが高い
          この点非対称なので欧米は粘っていられるし、ロシアは時間掛けてでも人的損失回避方向
          それと恐らく時間はロシアの味方

          15
          • 空飛ぶバタフライ
          • 2024年 6月 07日

          >ここの記事はウクライナの苦境メインにしか伝えてないからな

          去年頃のここ記事を見てきてください。「ウクライナの苦境メインにしか伝えてない」のではなくてウクライナが苦境に陥っているのが事実なだけです。ウクライナ が苦戦していてロシアが押していると言う事実を伝えているだけかと

          53
          • 2024年 6月 07日

          >相手をノックアウトできないグロッキーボクサー同士の殴り合いですよ

          グロッキーかもしれんがヘビー級とバンタム級くらい階級差のあるボクサーの殴り合いだから

          20
    • つぐみ
    • 2024年 6月 07日

    戦況マップの中ではアウディーイウカ方面の進捗はかなり速いけど、それとは対照的にクピャンスク方面は膠着状態に陥っていて支配領域の変化が1番遅いイメージ

    今後もロシアが大勝ちすることは無いけど、ウクライナ側も巻き返すだけの余力が無いという構図は変わらないだろうね

    28
    • jimama
    • 2024年 6月 07日

    これから前線の状況が好転することは奇跡でも起きない限り起こらないんじゃないかな

    2年間みっちり実戦経験積んだ将校団+それなりに訓練&実戦積んだ兵士&空陸フルセットそろった軍
    VS
    場当たり的な対処を繰り返してきた司令部+地面の掘り方すらおぼつかない素人集団

    という構図になってしまってどちらに勝ち目があるのかいう話なわけで
    それにウクライナって一番戦力が充実してた時でも多方面での作戦行動(1か所で攻めて他で防備整えるとか)できてなかったし、今同じ規模の軍がいても同じ形になるだけな気がする
    後今更NATO軍が来ても前線に出るまでにボコられるか、前線のちょっと後ろで準備してる間に焼かれるかで多分結果変わらない

    67
      • 匿名11号
      • 2024年 6月 07日

      あいにく、部隊の練度というものは全体でみると開戦時をピークに一方的に下がるものなのですよ。

      どうしたって長期的に損失は累積するし、部隊の新設や損害部隊の再建を、次第に質の悪くなる補充兵で水増ししなければならなくなるし、訓練期間も十分とれなくなる。ロシアの場合、緒戦で長年訓練してきた部隊をだいぶ磨り潰しましたしねえ。
      それに、戦時生産をとる国は特定の装備品に傾斜生産するから、だんだん装備体系も歪んでくる。

      したがって、
      「2年間みっちり実戦経験積んだ将校団+それなりに訓練&実戦積んだ兵士&空陸フルセットそろった軍」
      などというものは、けしてロシアでは実現し得ぬファンタジーですよ。

      3
        •  
        • 2024年 6月 08日

        随分と斬新な意見ですね

        10
          • 匿名11号
          • 2024年 6月 08日

          いや、結論以外は常識に近いと思うが。

          1
    • F-117A
    • 2024年 6月 07日

    弾薬が切れた素人集団に、2年間みっちり実戦経験積んだ将校団+それなりに訓練&実戦積んだ兵士&空陸フルセットが攻めて、この程度しか進撃できないのがロシアの限界なんじゃね!?

    8
      • baka
      • 2024年 6月 07日

      ウクライナを兵不足にして、法改正まで追い詰めてます
      NATO参戦をほのめかしたり断定的に兵器をロシア領内に使用まで
      これもロシアの実力では

      33
      • うどん粉
      • 2024年 6月 07日

      「この程度しか進撃できないのがロシアの限界なんじゃね!?」
      進撃速度とその軍隊が限界かはそんなに比例しないからその考えは短絡すぎる気がするゾ  

      「弾薬が切れた素人集団に、」
      独ソ戦後半1944年のソ連もそんなに時間に追われてない事もあって時間かかってもベルリン進撃が不可能になる事は無いから進撃は遅かったゾ
      (1944年とは言えドイツ軍は何やかんやで強いから性急な大規模な作戦は大損害につながる)

      42
        • 名無し
        • 2024年 6月 07日

        開戦初期のあのスピードで進軍してもご覧の通り補給にも難アリ、無理に進んでも敵兵力が残存していれば反撃され押し戻されるわけですからね
        進軍スピードがどうのこうのと言っても意味がない気がします
        現にロシア軍はウクライナ軍が押し戻す事が出来ないように火力に物言わせて兵力をあらかた削り取ってから進軍し、その目論見通りに削られたウクライナ部隊は前線を押し戻せず、兵力に甚大なダメージを負ってるわけで

        45
      • 伊怜
      • 2024年 6月 07日

      大規模な正規戦経験のある国が存在しない現代において、比較対象がなくこの程度がどの程度なのかわからない
      同条件下で他国ならこれより結果を出せたのか?

      42
    • もへもへ
    • 2024年 6月 07日

    この進撃速度を見るに、攻守逆転してもウクライナが全土奪還するには数年単位でかかるって事でしょうね。

    全土奪還まで戦いをやめない、支援継続っていってもどうも現実的では無いと思います。
    人口的にも財政的にも。

    適当なところで停戦領土を諦めるしかないのでしょうね。

    31
      • FAB
      • 2024年 6月 07日

      仮に全土奪還したとて戦線が国境になるだけで戦争は終わらん。

      27
    • cosine
    • 2024年 6月 07日

    今のロシアにとって東部・南部の占領地拡大は結果であって主目的ではないことを理解していなければ見誤ります。
    ハリコフ方面は例外的に緩衝地維持が主目的でしょうけど。

    ロシアにとって前進と後退を繰り返しながら漸進するのはウクライナ側に対応を強いて損耗させる手段であり、占領は前進したあと後退しなくてもよくなった場合に付随する結果でしかありません。

    43
    • にほんへ
    • 2024年 6月 07日

    これに加えて、ロシアが兵力を集めてたというスームィ方面でも攻勢が始まったら更に戦力が引き剥がされる

    何かしらの技術革新がない限りこの戦争は消耗戦でしかないのだから、現実的には大規模動員かけるか白旗上げるかの2択しかない

    40
      • nachteule
      • 2024年 6月 08日

       あそこの方面にどんな部隊がいるのかハッキリしたのかな。最近見てないけどオープンソースの部隊配置見る限りそれ程の戦力があるようには見えない。
       聞こえてくるのは越境前にウクライナの攻撃受けて損害出している話ばかり。

      3
    • 名無しくん
    • 2024年 6月 07日

    どんどん政治的駆引きが強くなってますよね。
    航空機援助や教育隊派遣も時間の掛るものばかりですし。
    ロシアとしては、戦線も安定しており、ジリジリ優勢で押し込み、インフラ破壊等含めウクライナの国力を削っているので、占領面積は気にしていない様に感じます。現状維持+αでOK。無理はしないでしょう。

    ウクライナとしては、色々と支援話しが決まり、物は届きだしているが、領土奪還・形成逆転には兵力的に厳しい。

    このまま膠着状態で冬を迎え、アメリカ大統領選次第でしょうが、停戦・休戦協議かなぁ。と思います。

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