米国関連

米空軍、第6世代戦闘機開発を否定?次世代航空支配に「新しい航空機は不要」

米空軍は、次世代の航空支配(Next-Generation Air Dominance:NGAD)において、まったく新しい航空機は必要ないと語った。

参考:Next-Generation Air Dominance Doesn’t Mean New Aircraft, Air Force Official Says

米空軍の考える次世代の航空支配において、まったく新しい航空機は必要ない

世界初となるステルス戦闘機F-22や、電波によるセンサーだけでなく、赤外線とレーザーを使用した目標捕捉・照準装置を機体内に搭載し、ネットワーク機能を強化したF-35など、軍事的技術の先進性を示してきた米空軍が次に開発する戦闘機はどんなものだろうか?

ミッチェル研究所主催の討論会に出席した米空軍のMichael A. Fantini少将は、空軍が考える次世代の航空支配(Next-Generation Air Dominance:NGAD)において、まったく新たしい航空機は必要としないと語った。

中国やロシアなど米国に敵対する勢力の挑戦に対し、相手を圧倒する力が必要だが、それを達成するには空を支配する能力が不可欠だ。しかし、空軍が開発している次世代航空支配プログラムは、航空支配の維持を目的にしたもので、必ずしも新しい戦闘機の開発を意味するものではないとFantini少将は語った。

次世代の航空支配プログラムは、ネットワークに接続されたシステムの全体を意味し、航空支配を確保するためには、多くのもが必要になり、それは陸海空に宇宙やサイバースペース間で、全ての情報が共有されることが含まれるとFantini少将は付け加えた。

出典:public domain F-35A

要するに米空軍が考えている次世代航空支配プログラムは、プラットフォームの開発という単純なプログラムではないことを言いたいのだろう。

これは次世代航空支配プログラム=「F-X」という考え方や、次世代の航空支配は「F-X」が実現するという安易な考え方を否定したものであって、これは米空軍が進めている次世代戦闘機「F-X」開発を否定したわけではなく、次世代戦闘機「F-X」は、次世代航空支配プログラムを通じて開発される一部でしか無いという意味だと受け取れる。

一部の海外メディアは、米空軍が次世代戦闘機の開発を断念したと報じているが、恐らくそれはないだろう。

参考:米国空軍 F-35Aにかわる第6世代新型戦闘機の開発を断念する可能性

Fantini少将の「まったく新たしい航空機は必要としない」という発言は、恐らく、第4世代機と第5世代機を区別することになった「ステルス」のような圧倒的な革新性は「F-X」には「ない」と言いたかったのかもしれない。

彼の言葉を額面通り受け取れば、空軍の次世代戦闘機「F-X」は、第5世代戦闘機をブラッシュアップしたもので、ハードよりもソフト面での革新が主体であることを示唆しており、個々の機体性能に依存するのではなく、ネットワークで共有された情報を元に、より効率的な戦い方を追究するというのが、米空軍が考える「次世代航空支配プログラム」の本質なのだろう。

欧州は新たに第6世代機という定義を設定し次世代戦闘機の開発を進めているが、上記のように米空軍の次世代戦闘機は第5世代機+αとして開発を進めており、内容の程度には差があるが、目指している方向は、ほぼ同じと言っていい。

こうなると欧州が主張する「第6世代機」という定義が必要なのかという疑問が湧いてくる。

欧州の第6世代戦闘機が、既存の第5世代機とわざわざ区別が必要なほどの革新性があるのかは、実際のところ「実機」が完成してみなければ何とも言えないが、ほぼ同じ方向性をもった次世代戦闘機を開発している米空軍が、わざわざ「まったく新たしい航空機は必要としない」と発言したのは、欧州の第6世代機マーケティングによる「レッテル貼り」を牽制するためなのかもしれない。

遠い将来、欧州発の「第6世代機」という定義は無事、生き残ることが出来ているだろうか?

 

※アイキャッチ画像の出典:AIRMAN/Future of Fusionのキャプチャ

米空軍は大型爆撃機が足りない?ステルス爆撃機「B-21」追加調達、B-1、B-2退役延期を求める前のページ

ドイツ駐留の米軍をポーランドへ移動?国防費増額を行わないドイツ批判高まる次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    ライトニングキャリアの申し子、アメリカ級強襲揚陸艦「トリポリ」が米海軍へ引き渡される

    ライトニングキャリアに適していたアメリカ級強襲揚陸艦「Flight 0…

  2. 米国関連

    ロシアが旧アフガニスタン軍の特殊部隊を勧誘、既にウクライナ入りした可能性も

    複数の情報源が「イランに逃亡した旧アフガニスタン政府軍の特殊部隊をロシ…

  3. 米国関連

    空母は時代遅れ?米国が「悪魔の兵器」と呼ぶ極超音速ミサイルの脅威

    米国の上院軍事委員会は、極超音速ミサイルの登場で、火力投射ツールとして…

  4. 米国関連

    米軍はターゲットに関する情報を把握せず攻撃を許可? テロ組織関係者ではなく民間人を殺害か

    米軍はカーブル空港付近での爆弾テロに対する報復としてMQ-9による攻撃…

  5. 米国関連

    失敗が許されないボーイング、米空軍向けに製造したF-15EXの初飛行に成功

    ボーイングは今月2日、米空軍向けに製造したF-15EXのプロトタイプ1…

  6. 米国関連

    バイデン大統領が主張した30万人のアフガニスタン軍は一体どこへ消えたのか?

    30万人もの兵士がアフガニスタン防衛の準備を整え終わっているとバイデン…

コメント

    • 匿名
    • 2019年 8月 11日

    >遠い将来、欧州発の「第6世代機」という定義は無事、生き残ることが出来ているだろうか?

    第6世代機の定義をするのは、アメリカ空軍になるでしょう。
    次世代の定義をするのは、先ず世界最強の空軍という自負があること、主たる仮想的であるロシアの次世代制空戦闘機や地対空ミサイルのスペックを見定めてからとなるためです。

    アメリカ海軍の次世代機については、別記事へのコメントで申しましたが空母打撃群を長距離対艦ミサイルから防御する必要が出てきたため、要求スペックが空軍とは異なるものになります。F-14が果たしてきた役割が復活すると推測されます。
    ある程度は、第6世代機開発で得られるメリットは投入されるでしょう。
    第6世代海軍機として分けて開発が進められると見ております。

    • 匿名
    • 2019年 8月 11日

    アメリカの第五世代機の配備が進む中で、今更第五世代相当を開発します!と言うのはプライドが許さなかったって所が真相でしょうね>欧州発の「第6世代機」

    • 匿名
    • 2019年 8月 11日

    第六世代機の予想図の多くは垂直尾翼を持っていない、これまでの常識からするとヨーが不安定になりそうだが、今の機体でさえ負の安定性を持たせてそれをコンピュータ制御で機動性を上げている。
    垂直尾翼が無くてもベクタードスラストの双発エンジンさえあれば、3軸の制御が可能だから全く問題にならないのかもしれない。
    垂直尾翼はデッドウエイトだし大きな電波反射源だから無いに越したことはないのだから。
    その場合はロシア機のようにエンジンの間隔を広げて間にウエポンベイをつけるかもしれないが、エンジンに100%の信頼性が無いと片方が止まった時に必ずスピンして落ちてしまうのが問題かな。
    F-3は最初は垂直尾翼を持っていて、ブロックが上がるとなくしたりすれば面白い。

    • P・J・THOMAS
    • 2019年 12月 13日

    たとえ米空軍が次世代機は不要と言っても新型空母を擁する米海軍は必要であろう。
    海軍まで次世代艦載機は不要と言い出せば同時に空母の存在まで否定してしまいかねない。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
  2. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  3. 北米/南米関連

    カナダ海軍は最大12隻の新型潜水艦を調達したい、乗組員はどうするの?
  4. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  5. 軍事的雑学

    4/28更新|西側諸国がウクライナに提供を約束した重装備のリスト
PAGE TOP