独シュピーゲルは昨年「ドイツがF-35Aの追加調達を準備中だ」と、ロイターも今月19日「ドイツがF-35追加調達を検討している」と報じたが、独メディアは「トランプ政権の不確実性を受けて追加発注は不透明になってきた」と報じ、ドイツ国防省も「そんな計画も決定もない」と追加調達を否定した。
参考:Exclusive: Germany seeks more F-35 jets as European fighter programme falters, sources say | Reuters
参考:Germany Denies Report on Plan to Buy Additional US F-35 Fighters
参考:Currently no plans to buy additional F-35 jets, Berlin says | Reuters
噂になったF-35Aの追加調達はトランプ政権に対する懐柔策だったのかもしれない
ドイツ空軍のトーネード戦力は戦闘爆撃機のIDSと電子戦闘偵察機のECRで構成され、特にIDSは核兵器共有協定の任務を行うため戦術核兵器B61の運用能力が統合されており、メルケル政権は後継機調達を3種類(IDSの後継機としてタイフーンT4(Tranche 4)、ECRの後継機としてEA-18G、B61運用能力を維持するためF/A-18E/F)に分割することを決定した。しかし、これに反対する国内勢力との調整に手間取っている内に米国家核安全保障局がB61(Mod12)統合機種からF/A-18E/Fを除外してしまう。

出典:Julian Herzog/CC BY 4.0
そのため後任のショルツ政権はF/A-18E/Fの代替としてF-35A、EA-18Gの代替としてタイフーンEK導入を決定、2022年12月「F-35Aを35機購入するための総額84億ドルの契約に署名した」と発表。ドイツはF-35A導入の見返りとしてF-35プログラムへの独企業参加=ラインメタルがF-35A中央胴体の製造に参入し、最低でも400機分の中央胴体をロッキード・マーティンに供給していく計画で、独シュピーゲルは2025年10月「ドイツがF-35Aの追加調達を準備中だ」と報じたことがある。
“連邦議会の予算委員会に提出された文書にはF-35Aの追加調達が記載されている。15機の追加調達費用として25億ユーロを見積もっている。安全保障関係者は「新たなNATO能力要件を満たすにはより規模の大きな航空戦力が必要だ」と述べている。これまでF-35Aの追加調達は財源確保が難しく希望的観測だと考えられてきたが、安全保障関連の支出が債務ブレーキ条項の対象外となったため追加調達の余地が生まれた”

出典:Dirk Vorderstraße/CC BY 2.0
ドイツは2026年12月までに830億ユーロ相当=約15.1兆円の防衛装備調達契約を締結する予定で、2025年末までに連邦議会の予算委員会は約500億ユーロ=約9.1兆円分の調達契約を承認したが、このリストにF-35Aの追加調達は含まれていない。ドイツのディフェンスメディア=hartpunktも今月13日「トランプ政権の不確実性を受けてF-35Aを追加発注するかも不透明になってきた」「欧州にとってグリーンランド占領の脅威はF-35に対する懸念を間違いなく高めた」と報じていたが、ブルームバーグもロイターも「ドイツはF-35追加調達に関する報道を否定した」と報じた。
ロイターは19日「ドイツがF-35追加調達を検討している。フランスとの次世代戦闘機開発が行き詰まる中、ドイツは米国の軍事技術への依存を深めることになる」と報じたが、ブルームバーグもロイターも20日「ドイツ国防省の広報担当者が『F-35追加調達の具体的な計画はなく、そのための政治的決定もなされていない』『我々は連邦議会が承認した調達計画のみについてコメントする』と述べた」と報じ、ロッキード・マーティンの株価も下落してしまった。

出典:Lockheed Martin
ドイツ空軍の次世代戦闘機需要は2040年以降の話で、あくまでF-35A調達は「核兵器共有協定を維持する機体=B61/Mod12運用能力の確保」が目的であり、航空戦力への短期的な投資はタイフーンに、中長期的な投資はドイツが関与する次世代戦闘機計画(FCASもしくは代替案)に、航空戦力自体の規模拡大も無人戦闘機の早急な戦力化に集中し、噂になったF-35Aの追加調達の話も「調達規模」を加味すると、ベネズエラ侵攻やグリーンランド占領の脅威が現実になる前のトランプ政権に対する懐柔策だったのかもしれない。
まぁ、現在のトランプ政権を見てF-35の新規・追加発注を考える指導者は稀で、さらにCCAを含む無人戦闘機の実用化が目前に迫っているため、米空軍のような貫通型ステルスやスタンドイン能力を重視してない国にとっては「CCAを含む無人戦闘機を独自に統合可能なプラットホームへの投資」を優先するのは当然の話だろう。

出典:Helsing
因みにドイツでは「もはや20年後の航空戦において有人戦闘機は副次的な役割しか果たさなくなるだろう。そのため航空戦力への投資を(武器主権が確保できる)無人戦闘機に集中させて主導的な地位を確保すべきだ」と意見も出てきている。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Zachary Rufus





















F-35も、当初の想定通りの能力向上・装備運用が、いつ頃満たされるのかなあと…。
極東(日本周辺)ほど切羽詰まっておらず、ドイツは時間・金銭の余裕がありますから、どういう選択をするのか見守りたいですね。
欧州は伏魔殿ですね。
会議が踊ってる間に、事態が取り返しつかなくならなければ良いのですが。
※欧州は何度も「会議は踊る」を繰り返さないと死ぬ病気に見える。
>F-35Aを35機購入するための総額84億ドルの契約に署名
日本円にして1.3兆円ほど…1機あたり360億円。
胴体製造への参加価格も含まれているのでしょうかね。
F-35だけでなく新しく戦闘機を運用するためのインフラを1から作るとそんな感じですよ。1機あたりの機体単価ではなく取得コストは国によって条件が全く違う上、武器や関連機器を同時に取得する場合、ひとまず機体と関連費用だけにして契約額を抑える場合があるので
だからこそ35機しか買わないって、悪手になりかねないんですよね。
最初は400機生産する算盤はじいてたのに。
脱アメリカ進む中、ドイツのF-35追加調達っていうニュースには違和感があったのでやっぱりねって感じです。
>もはや20年後の航空戦において有人戦闘機は副次的な役割しか果たさなくなるだろう
なんとなく昔のミサイル万能論を思い出しますが今回はどうなることやら
有人戦闘機の方がロマンあるんですけどねぇ…
常識的に考えて核運用能力だけを考えると現状その任務に就いているトーネードが47機ほど存在しているはずで性能が高かろうが予備機を含めて同数規模の維持を考えればプラス15機で似たような数字になる訳で、全然順当な数だとは思いますね。
ちなみにシェアリングの核爆弾数量は保管庫が拡大されていなければ44発で稼働率を考えるとリスク分散で1機につき1発を搭載して運用能力を発揮すると言うなら50機でも足りないと思います。有事に搭載せずとも運用基地から出撃するF-35全てに疑いが掛かるんですから数は多い方が良いでしょう。
それに敵の長距離打撃能力が上がっている以上はリスク分散の為に1カ所での運用を辞めて複数基地での運用を視野に入れてより生存性を上げて相手にリスクを与える位はすべきだと思いますね。
導入計画としては妥当だったんですねF-35追加調達。
当面トーネードを使うとしてドイツはFCASに核搭載能力を求めていないみたいだしこの先の核ミッションどうするつもりなんでしょうね。