英国のウォレス国防相はヒートアップしてきた「アマゾン発言」に関して新たな声明を発表、この中で「これは英国とウクライナの関係がトランザクションではなくパートナーシップであることを強調するためになされたものだ」と説明した。
参考:Ben Wallace
自分たちの主張ばかり訴えるのではなく、まだ説得を必要とする他国の市民に手を差し伸べる努力を忘れてならないと言いたかった
ゼレンスキー大統領はNATOへの即時招待=実質的には戦争終結後の加盟確約を主張したものの、NATOが準備していた文言は期待を裏切る内容だったため「採択される文章には期限が設定されておらず、招待の条件さえも曖昧な表現が含まれており本当に馬鹿げた内容だ」「NATOの強さを信じてリトアニアまで来た。我々の全てが、兵士、市民、母親、子どもの全てが解決策(NATO加盟)を期待している。これは大きすぎる願いなのだろうか?」などと激しく非難。
しかしNATO加盟国が採択した3要素に含まれる「ウクライナ加盟に関する文言」に変更は入らず、ウクライナがNATO加盟国になれることを確認し加盟条件から加盟行動計画(MAP)を除外、これによりウクライナの加盟プロセスは2段階から1段階に変更され、全ての加盟国がウクライナの加盟に同意して条件が整えば「NATOへの招待」を発表すると発表、これを受けてゼレンスキー大統領も「NATOの決定を支持する」と態度を軟化させたが、文言検討を主導していた加盟国の中には激しい非難に怒って「招待」という文言削除を要求したらしい。
ただバイデン大統領が草案維持を支持したため原案通り「NATOへの招待」という文言は生き残ることに成功したものの、今度は英国のウォレス国防相が「新しい武器を要求し続けるのではなく、もっと提供された支援に対して感謝の気持ちを伝えた方がいい。我々は武器を配送するアマゾンではない」とウクライナに忠告。
これにゼレンスキー大統領は「常にスナク首相やウォレス国防相に感謝しているが、彼が何を言いたいのか、これ以上どう感謝を伝えれば良いのか分からない」と述べ、その場に同席していたレズニコフ国防相に「ウォレス国防相と関係が悪いのか?」と尋ね、仲は悪くないと国防相が答えると「今日中に彼に電話して感謝を伝えておいてくれ」というパフォーマンスを披露、刺々しいものになった雰囲気を和らげようとした。
駐英ウクライナ大使も英メディアの取材に「ウォレス国防相とゼレンスキー大統領の皮肉の応酬は不要だったと確信している。もしウォレス国防相が何か気に入らないことがあるのなら公の場で発言するのではなく私に連絡をくれればいい」と述べたが、あるウクライナメディアはウォレス国防相のアマゾン発言について興味深い批判を行っている。
現在のウクライナ人は民主主義と西側の価値観を選択した世代で、現在の英国人のように生まれながらにして自由を手に入れた訳ではなく、自由を手に入れるためなら死さえ覚悟している。貴方達の世代は自由のために戦う必要はなかったが、私たちは自由のために戦っている。貴方達は武器を届けるためのアマゾンではない。同時に我々も武器をテストする実験場ではない。我々は日々の犠牲によって自由世界の価値を強化している国だ。この戦争で貴方達が失うのは金だが我々は命を失っている。
日本人の価値観からすると「???」と感じるかもしれないが、欧米では「国や政権のためではなく自由のために戦う」という考え方を非常に重要視し、基本的に自由はタダではなく犠牲を支払ってでも「勝ち取るもの」もしくは「守るもの」という価値観が根ざしているため、戦争で市民が犠牲になるぐらいなら降伏した方がマシという話にはならず、ウクライナメディアの批判は的を得ていると言えるが、ウォレス国防相はヒートアップしてきた「アマゾン発言」に関して新たな声明を発表した。
ウォレス国防相は声明の中で「いくつかの誤解がある。ウクライナは多くの国で理解や支援が英国(英国国内でのウクライナ支持は欧州最高=70%以上)に及ばないことを認識する必要があり、自分たちの主張ばかり訴えるのではなく、まだ説得を必要とする他国の市民に手を差し伸べる努力を忘れてならないと言いたかった。アマゾンに関する言及は昨年のもので、これは英国とウクライナの関係がトランザクションではなくパートナーシップであることを強調するためになされたものだ」と指摘。
さらに「私自身はウクライナをどこまでも支持していくつもりだが、各国の議会にはしばしば相反するニーズが存在するため、ウクライナと英国は事実と友好関係を駆使して強力な支持を促し続けなければならない」と付け加えている。
配慮を美徳だとする日本人からすると「ゼレンスキー大統領の政治的な要求や非難」が暴走して見えることもあるかもしれないが、欧米にとって最も重要な価値観=自由のために戦うなら概ね許容範囲である可能性(管理人は日本人なのでその辺りの機微を完全に理解できない)が高く、だからこそ支持を失ってないのだろう。
関連記事:英国防相が忠告、我々はウクライナに武器を配送するアマゾンではない
関連記事:ウクライナメディア、NATO加盟に関する文言にはウクライナの即時招待がない
※アイキャッチ画像の出典:PRESIDENT OF UKRAINE
ウクライナメディアも良い文章書くじゃないか
やはりマスコミはこうでなければ
駄文、売文、政府広報に慣らされた身としては新鮮に感じる
私たち日本人の現在の生活は戦って勝ち取ったものではなく負けたことで得られたものです。
そのため、将来中国に負けたとしても同じように豊かになれるのでは?と考える人々がいるのも納得が出来ます。
負けても失うものが無いのであれば、戦争などせずに降伏した方が良いということなのでしょう。
ただ、今回のウクライナ戦争以前からの社会主義国家のやり方、彼らの歴史をしっかりと学ぶべきです。
チェチェンやウイグルに周囲の国が直接的に介入出来ないのは、内政干渉、との批判を受けるからです。
一度取り込まれてしまってから「やれ人権問題がー」と騒いでも遅いのです。
国際社会は助けてくれません、助けられないのです。
ウクライナはそれを良く分かっていたから降伏せずに戦っており、国際社会の支援が続いています。
台湾は同じように戦えるのか?日本はどう対応するのか?現実味が帯びてきた台湾進攻に向けて各国の教育が重要になっています。
日本は降伏した相手がアメリカなのでまだマシでしたがソ連に支配された東欧がどんな扱いだったかを思えばね……そうでなくても朝鮮半島の南北が今どれだけ人権や自由に差異があるのかを認識すれば降伏が常に最善の選択肢とは言えない
皮肉を言えば人命重視で降伏論を語るのに何故かイラクやアフガン、ベトナムではアメリカを非難して抵抗する側には批判しない奇妙なダブルスタンダードがあったりするんですよね……
少なくとも前例があり、そしてソ連を継承したロシアのマインドセットが当時から全く進歩していないことが行動で示されてしまった。今までもそういう行動はあったがここまであからさまにソ連マインドを示されて仕舞えば負けたらどうなるかという答えはWW2の時から変わらないだろうと考えるのが当然ではある。
書こうとしていたことを、全部書いてくれていた。
普通の国では、愛国教育とか、自分の国の正当性を教えるのは当たり前の事だよな。そうしないと、いざという時に国民が立ち上がらないから。
国が、ガンガン教育に介入する(大っぴらには言わないが)。
対して、日本でこれをしようとすると、学校が聖域になっているので、洗脳とか、子供を戦争に行かせたいのかとか、軍国主義の復活とか、間違いなくなるよな。
欧米では国や政権の為では無く自由の為に戦う、その為には如何なる代償を支払う覚悟もある。
この様な価値観は何の対価も支払わずタダで平和が手に入る、自由は当たり前の様に存在すると勘違いしている平和ボケした国家の人間には永久に理解できないだろうね。
そういう価値観が根付いてるからすぐ暴動がおきるんだろうな。
暴動は移民の問題も大きいから、違う問題だと思う。
自由のために戦うという欧米が歴史的に培ってきた文化の外側からの影響がむしろ大きい。
求めよさらば与えられんの精神は同じキリスト圏で共有しているでしょうし、「自由を勝ち取る為の戦い」という大義の下で、支援国が協働体制を構築しているのも事実でしょう。
ただ、「支援国の支持を得るには、相互理解と立場の尊重に根付いたパートナーシップが重要ですよ」とウォレス国防相が諫言しているのを煽りと捉えて煽り返すのは、カルチャーショックを感じますね。
戦時下の高ストレス下とは言え、率直に言えば、軽薄過ぎます。
ロシア側が、これを利用してウクライナに対するネガティヴキャンペーンに打って出る可能性を考えないのでしょうか。
スポンサーに対して無礼な態度を取っても、ウクライナ支援縮小を掲げる政党の支持者が増える事は無いと、支援国の有権者の道徳性を信じるのは、かなり危険な考え方でしょう。
>基本的に自由はタダではなく犠牲を支払ってでも「勝ち取るもの」もしくは「守るもの」という価値観が根ざしている
国王の圧政に対して「我慢ならない!」と市民が団結して王様を処刑して自由や権利が守れる社会をつくったフランス革命の様に欧米では自由を獲得する為に市民が戦ってきた歴史があります。だからこそ労働者は自分たちの権利を守るためにストライキをするし、法律や政権に対して不満があれば市民はデモで抗議の意を示すなど、人が自分の権利を擁護することは欧米では普通のことなのです。
一方、日本では社会集団をつくる際に、その成員である個人が組織に対して恭順を示すことが前提。例えば有給休暇の取得は従業員の権利だから当たり前のこととして行使するのでなく、周囲の人の状況も見計らったうえで「会社から休暇をとらせていただく」といった形態になる。ゆえに日本では欧米の様に自分の権利を擁護することは「自己中心主義的・平和を乱す」として非難されてしまう。
よく外国人が「日本人はなぜそんなに働くんだ?」と不思議がりますが、外国では労働関連の法律が労働者本位の法律になっていて労使交渉によって決められた労働時間(国によっては産業・業種別に目安の労働時間を設定)を超えて従業員を働かせてはいけないと厳しく規制しているからです(破ると会社に対して罰金などの行政処分があるので定時で退勤することが当たり前だし、会社側も定時で職場の電源を落とすなど残業させないように徹底しています)
まあ反攻作戦失敗、弾薬枯渇で、ヨーロッパ諸国のウクライナに対する支援への支持は、失われつつあるということです。
とにかく金にしても、兵器にしても、弾薬にしても、ないものはない、出せないものは出せない、という以外にありません。
イギリス国内であっても、北アイルランドでは分離独立を求めた闘争が続き、スコットランドでも独立運動はあります。イギリス領であった香港は中国に返還されて、今は中国共産党の一党独裁です。アイルランドはNATOに加盟していません。
イギリス自体はEUが不自由だと言って、脱退してしまいました。
イギリスはEUから離脱していても武器供与の議論を主導していますし、そもそも最も武器供与している米国はEUではないんですが・・・。
香港?中国?アイルランド?何かそれらしい事実を並べてあるだけでちょっと何を仰りたいのか分からないのですが。
管理人さんのご意見に納得です
日露戦争当時の大英帝国の戦場ジャーナリストが出した本のタイトルも”Japan’s fight for freedom”でした
ほぼ120年前の本ですが、今も当時もアングロ・サクソンが一番重視する価値観ですね
>この戦争で貴方達が失うのは金だが我々は命を失っている
日本にも「人命は地球よりも重い」と名言(?)を残して語り草になっている御仁が居ましたけど、これを敷衍すると「地球よりも重い人命を賭して戦っているのだ、カネや装備くらいなんだ」という事になる。
「装備提供を早めることにより犠牲が少なくなるのなら、
早く提供してほしい」とも。
このウクライナのスタンスは一貫していて、私にはもっともなことのように思います。
まぁ西側にも色々と政治的なハードルがあるのもまた事実なんですが。
>日本人の価値観からすると「???」と感じるかもしれないが、
なんだかんだで、国を失ったことがないですからね・・・。(先の敗戦だって、政府を存続されてるし、国ごと一度完全消滅したドイツとはまた違う・・)
ちょっと意地悪な言いようですけど・・、元寇で、いっぺん国を失うような経験でも味わった方が、もうちょっと、そこらへんの感覚を理解できる国、国民になったでしょうかね・・・?
意地悪というより不謹慎じゃないですか
ロシアなんて何度も国失ってるのに人の気持ち考えずに侵略戦争仕掛けてるじゃないですか
平和な国でゼレンスキの今回の物言いに傲慢さ感じる人がいてもおかしくないでしょうし、だからこそまずいと思って一旦折れて訂正してNATOの声明を支持したのでは?
元寇が万が一にも成功した場合そこに住むのは高麗人か南宋人、モンゴル人などで日本人は抵抗した報いでホラズム朝やアッバース朝のバグダッドのように皆殺しにされていたでしょう。そうしたら国を失う感覚なんて生まれるはずもなく元朝の侵略意欲を増しただけで終わりでしょう。そもそも国民国家の概念なんてなかった時代を取り上げても全く無意味だと思いますが。
日本人の価値観というよりはヨーロッパとアジアの価値観の違いかもしれません。
新型コロナの時も欧米は「自由」を重視して国のコロナ対策に反抗的でしたが、アジアはお上に従う国が多かったと思います。
アジアには儒教的思想が根付いているのが理由かもしれません。
正直、「命は地球より重い」が是である日本人とは余りにも折り合い悪すぎて根付くとは思えませんわ…
いや、日本国内でも沖縄県や、東京都の小笠原諸島は、30年間、米軍統治で完全にアメリカ領であり、また民主主義もありませんでした。
本土復帰後も沖縄県内の多くの土地はアメリカ軍が支配する土地のままであり、今も日本政府や沖縄県民が自由にできるというわけではないのです。
無謀な外交のツケを払わされてるだけのことを勝手に崇高なイデオロギーの戦いにすり替えないでくれ
ロシアの開戦時のネオナチ認定等、酷いイデオロギーが溢れてましたからね…
それ、ロシアにも同じ事言えますよね
何だったら独裁者とその取巻き共の権力維持のためにダラダラ続けてる分こっちの方がよっぽど酷いですよね?
ロシアの侵攻してからのムーブが真っ当ならイデオロギーの戦いにならなかったんだよなぁ
ウォレスの発言はそもそもボリスジョンソンが率先して現地入りしたり頑張っていた英国の発言だから意味があったと思う。
絶対に戦って勝つから支えてくれというゼレンスキーのようなリーダーシップもそれを支えようとする英国のようなフォロアーシップも大切だけど、現実論としては、自国のことに頭が行き過ぎる国も政治家もマスコミも国民もいるからガス抜きは必要かもね。
仮に、日本がウクライナや英国の立場に陥ったとして、ゼレンスキーのように訴え抜くことも、英国のようなリスクテイクをすることも難しいと思うけど、他人事的な批判や綺麗事はたくさん出てガス抜きだけは必要になりそう…。
もうさ、ウクライナにモスクワに届く核兵器を渡しちゃえよ。
それにつけても、ゼレンスキー大統領のガタイの良さよ…