インド太平洋関連

韓国がMQ-9相当の国産無人機を量産化、MUAV1号機がロールアウト

韓国の国防科学研究所と大韓航空は2008年に中高度偵察用無人航空機(MUAV)の開発を開始し、中高度を長時間飛行できるMQ-9相当のプラットフォーム開発に苦戦したものの2022年3月に開発作業が完了、防衛事業庁は4月8日にMUAV量産機1号機のロールアウト式典を開催した。

参考:24시간 대한민국을 지키는 ‘하늘의 눈’, 국산 전략급 무인기 MUAV 양산기 공개

今後の輸出市場で生き残るのに必要不可欠と言われる「無人技術を国産化した」という点は、防衛ビジネスの観点から言うと「羨ましい」の一言に尽きる

韓国はイスラエル製の無人偵察機=RQ-2パイオニアを参考にして1990年代に国産無人偵察機=RQ-101(最大離陸重量290kg、最高速度185km/h、滞空時間6時間、運用半径150km)の開発を開始し、2002年に軍団級情報戦力として実戦配備したものの運用半径の小ささが問題になり、盧武鉉政権は米国製無人機=MQ-1の成功を見て「中高度を長時間飛行できる無人機=MALE UAV」の国産開発を2006年に決定、韓国軍も2008年に中高度偵察用無人航空機(MUAV)の開発を大韓航空の航空宇宙部門に発注。

出典:대한민국 국군/CC BY-SA 2.0

大韓航空は国防科学研究所と協力してMUAVの技術検証機を2010年に製造したが、MALE UAVを構成する技術開発は困難を極め、李明博政権は乱立した無人機開発計画を問題視し、米国製無人偵察機=RQ-4の導入も推進していたため2011年にMUAV計画を中止したが、RQ-4の調達コストが2倍に高騰したことでMUAV計画は中止を免れたものの構成技術の開発は時間がかかり、2020年に「MUAVの量産化を2021年から開始する」と報じられたものの、通信システムの不具合と主翼の特定部分に氷結が発生して飛行性能が低下する不具合が見つかり、量産化に必要な全ての開発作業が完了したのは2022年3月だった。

防衛事業庁は2023年8月「MUAV量産事業に9,800億ウォンを投資する」と発表したため「国産MALE UAVの実用化と配備」が確定したが、この頃になると「防衛事業庁がMUAVをMQ-105Kと命名した」「武装したMQ-105KのCGが公開された」「MQ-105Kの偵察バージョンが量産化された後に武装バージョンが量産化される」という噂が登場したものの事実かどうかは不明で、防衛事業庁は4月8日に釜山の大韓航空テックセンターでMUAV量産機1号機のロールアウト式典を開催。

MUAVはMQ-105Kとは呼ばれておらず、公開された量産機1号機にもハードポイントは見当たらないため、MUAVは予定通り「中高度偵察用に特化したMALE UAV」と思うが、大韓航空はMUAVを「Korean Reaper」と呼んでいるためMQ-9を意識していることだけは間違いない。

MUAVはEO/IRセンサーだけでなく機体下部に大きな合成開口レーダーを搭載しているため、MQ-9A Block5ではなく「非武装のMQ-9B」に近い存在で、構成部品やサブシステムの国産化比率も90%に達しているので「武器主権とデータ主権を確保したMALEタイプのプラットフォームを手に入れた」と評価でき、韓国政府や大韓航空がMALEプラットフォームへの投資を続けるなら「武装バージョン」や「対潜戦バージョン」が登場してくる可能性もゼロではないが、韓国企業の海外輸出も視野に入れた無人機分野の競争は非常に激しい。

この分野における国内の主導的立場は韓国航空宇宙産業や大韓航空が握っており、Hanwhaにとって「UAV分野の穴をどうやって埋めるか」が製品ポートフォリオ上の課題だったが、Hanwha Aerospaceは2025年4月「UAV開発の最大手企業=GA-ASIとGray Eagle-STOLを共同開発する」「GE-STOL開発に7,500億ウォン以上=5.1億ドルを投資して国内に開発拠点と生産インフラを整備する」「両社は2027年までにGE-STOLの量産機を初飛行させ、同機を米国、欧州、中東、アジアの国々に売り込んでいく」と発表。

これは事実上「UAV市場への進出宣言」で、GA-ASIも「Hanwhaとのビジネス関係拡大に興奮している」「彼らがUAV事業成長のため投資準備が整っていることを承知している」と述べ、防衛市場関係者も「HanwhaはUAV市場を未来に向けた戦略的支柱に位置づけている」「今回の投資によってHanwhaはUAV分野の全ライフサイクル(計画、設計、生産、統合、販売)をカバーするつもりだ」と指摘し、両社は2025年10月のAUSAでGE-STOLの共同開発・生産契約に署名し「開発作業と平行して潜在的な顧客と交渉している」「生産ラインの立ち上げや量産機の製造と平行して発注が入ることを期待している」と述べた。

出典:Hanwha Aerospace

GE-STOLはプラットフォーム的にMUAVと直接競合する可能性が高いが、国内需要よりも海外需要を重視している戦略なのでMUAVとGE-STOLは棲み分けが可能なのかもしれない。

どちらにしても、今後の輸出市場で生き残るのに必要不可欠と言われる「無人技術のMALE UAV関連技術を国産化した」「それをプラットフォームとしてまとめ上げ量産化して実戦配備する」という点を防衛ビジネスの観点から言えば「羨ましい」の一言に尽きる。

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※アイキャッチ画像の出典:대한민국공군

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コメント

  • コメント (8)

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    • 戦車
    • 2026年 4月 09日

    韓国の衛星コンステレーションってどの程度でしたっけ?ハンファ等が参入してると言うのは聞いてますけど、数まではそこまで把握出来ない感じなので。

    4
      • kitty
      • 2026年 4月 09日

      北朝鮮向けの狭い範囲の軍事衛星を覗けば、NEON-Sat計画の10機計画の1機目が打ち上がった程度で、これからと言ったところでしょう。
      日本もまあ似たレベルですけど。

      7
    • たむごん
    • 2026年 4月 09日

    似たような装備は、ドンドン開発されていきますね。

    中国のスーパーコンピューターから、10ペタバイト(!)の情報漏洩なんて話しがありまして。
    J-20ステルス戦闘機~第6世代戦闘機に関するもの・原子力潜水艦・超極音速兵器・爆発関連のシミュレーション(原爆?)などとの指摘があります。

    事実なのか分かりませんが、軍事技術の水準は、色々な形で上がっていくのかなと感じてしまいますね。

    5
    • もへもへ
    • 2026年 4月 09日

    韓国には国産化に対する必要性もナショナリズム的民意も十分すぎるほどありますので、困難にぶつかってもやりきる土壌があります。
    我が国には韓国ほどの国産化への必要性も民意の土壌もなかったですから、その違いは大きいかなと。

    やはり兵器国産化には幾らバカにされても継続して取り組み続ける継続力が大事なんですね。

    26
      • 負け惜しみは誰だ
      • 2026年 4月 09日

      >今後の輸出市場で生き残るのに必要不可欠と言われる「無人技術のMALE UAV関連技術を国産化した」「それをプラットフォームとしてまとめ上げ量産化して実戦配備する」という点を防衛ビジネスの観点から言えば「羨ましい」の一言に尽きる。

      管理人さんが言われる通りですね。(涙)

      29
      • 寒い
      • 2026年 4月 09日

      空自はともかく、陸上に至っては国産装備の方か多いのですか‥製品化した無人機が無いのは事実ですが、さすがに卑下しすぎでは?

      13
    • gobu
    • 2026年 4月 09日

    軽トラから打ち放せる
    段ボールドローンを想像してみた
    日本に合うはず!

    8
      • 戦車
      • 2026年 4月 09日

      川崎重工が去年のDSEI Japan 2025で、トレーラーに載せた電磁カタパルト、中型車の電池車、無人機運搬用車両の3台での無人機運用案出してましたね。

      4

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