フランス軍参謀本部はShahed-136迎撃について「ラファールはドローン狩りに不向きだ」「機関砲で迎撃すれば爆発したドローンの破片が自機に当たる」と明かしていたが、フランス陸軍は突貫工事で防空ネットワークに統合したタイガー攻撃ヘリでShahed型ドローンの迎撃に成功したらしい。
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参考:L’armée de l’Air et de l’Espace réalise ses premiers tirs anti-drone, avec un missile Hellfire, depuis un MQ-9 Reaper
参考:Typhoon test fires game-changing low-cost weapon to counter threats from uncrewed air systems
重要な教訓が積み上がっても自身が痛い目に遭うまで真剣に向き合わない、Shahed-136の脅威に直面していない国も対岸の火事と思っているに違いない
米国とイスラエルは2月28日にイランへの大規模な共同攻撃を開始し、イランも弾道ミサイルや自爆型無人機でイスラエル、米軍基地、この戦争を支援する国の基地がある中東諸国に反撃を加え、米国製の高価な迎撃ミサイルを信じられないスピードで消耗させて問題になっているが、中東諸国と防衛協定を締結しているフランスでも同様の問題が浮上し、フランスメディアのLe Mondeは21日「イラン紛争は弾薬備蓄の戦争で、フランスにとってもますます持続不可能になっている」と報じ、この中でラファールはドローン狩りに不向きだと指摘した。

出典:Armée de l’Air et de l’Espace
高度な有人戦闘機がドローン狩りに不向きという指摘は目新しいものではなく、ポーランドのディフェンスメディア=Defence24は「ウクライナ空軍のF-16はShahed-136を迎撃するため第二次世界大戦のような戦闘を繰り広げている」「F-16に搭載されたM61A1バルカン砲でShahed-136を迎撃することは難易度と危険度が非常に高い」と報じ、外交政策研究所も昨年11月に発表した報告書(ドローンと一斉攻撃:米国によるイスラエル防衛から学ぶ教訓)の中で「米英の戦闘機がイランのShahed型無人機を発見して迎撃するのは非常に困難だった」と指摘。
フランス軍参謀本部広報官のギヨーム・ヴェルネ大佐も「固定機関砲を使用したラファールはドローン狩りには不向きだ」「ドローンを撃つにはかなり接近しなければならず、爆発した破片が自機に当たる確率が9割以上だ」と指摘し、MICAを使用すればShahed-136を安全に迎撃できるもののコスト交換比が持続可能なものではなく、仏陸軍のピエール・シル参謀総長もLe Pointの取材に「中東地域に派遣された陸軍部隊の防空能力はポイントディフェンス(射程6km)に限定されているため、まだ陸軍はShahed-136と交戦していない。そのためタイガー攻撃ヘリを4機配備した」と明かしていた。

出典:Armée de Terre
ファビアン・マンドン国防参謀総長は改正軍事計画法案(2030年までの国防支出を360億ユーロ増額する内容)を審議する公聴会で「我々のタイガーが湾岸地域で初の迎撃任務に成功した」「彼らは1週間ほど前に配備されたばかりで、この結果は極めて迅速なチームワークによるものだ」「我々の対応の遅さはよく批判されるが、1週間足らずでタイガー展開のための解決策を見つけ、配備からわずか1週間後にドローンを撃墜した」「これはフランス陸軍航空部隊にとって前例のない成果だ」「ウクライナではヘリコプターがShahed型ドローンの迎撃の25%を担っている」と証言。
中東展開のための解決策とは「対空レーダーを持たないタイガー攻撃ヘリをLink16経由で防空ネットワークに接続する技術的解決策」のことを指し「Shahed-136の位置を把握できるようになったタイガー攻撃ヘリが30mm機関砲で迎撃任務を成功させた」という意味で、マンドン国防参謀総長は「ロケット弾やミストラルの搭載も現在検討中だ」と述べ、これはタイガーMK3規格で予定されていた「レーザー誘導式70mmロケット弾」と「安価な対空ミサイルのミストラル3」を統合することを意味しているらしい。

出典:IMA Media 演習に登場したShahed-136
ドイツのディフェンスメディア=hartpunktは米国や中東諸国がShahed-136に対処できない理由について「装備がShahed-136対処に最適化されていないため」と指摘していたが、ラファールもレーザー誘導式70mmロケット弾を統合するため射撃管制装置の改修作業が進められており、徐々に既存装備もShahed-136対処への最適化が進んでいるようだ。
逆説的に言えば「あれだけウクライナでShahed-136への対処が問題になっていたにも関わらず、米国、フランス、中東諸国は既存装備に対するShahed-136対処への最適化を怠っていた=Shahed-136の脅威を軽視していた」となり、どれだけ重要な教訓が積み上がっても「自身が痛い目に遭うまで真剣に向き合わない」という意味で、まだShahed-136の脅威に直面していない国も対岸の火事と思っているに違いない。

出典:BAE Systems
ちなみに、BAE Systemsも8日「英空軍のタイフーン試験評価機にAPKWSレーザー誘導キットを搭載して射撃テストに成功した」「APKWSレーザー誘導キットが無人機に対抗する効果的で手頃な価格のソリューションであることを実証した」と発表したが、これは手頃な価格の迎撃手段が必要とされる対無人機能力を航空機に統合するための情報提供が目的の試験で、現在のタイフーンにAPKWSを組み込んだ70mmロケット弾の運用能力はない。
正規の統合手続きでAPKWSを組み込んだ70mmロケット弾の運用能力を付与するためには各種試験とソフトウェアの改修が必要になるため「年単位の時間」を要するはずで、たとえ機材の準備が出来ても交戦経験がないShahed-136を迎撃する戦術や手順の開発も必要なはずだ。

出典:Armée de l’Air et de l’Espace
追記:フランス軍事省は8日「空軍はMQ-9 Block5によるドローン型空中目標へのヘルファイア試射を実施した」「ヘルファイアを地上目標以外の標的に使用できるようにするまで3ヶ月を要した」「今回の試射成功によって空軍のMQ-9 Block5は対ドローン能力を獲得した」と発表した。
フランスにMQ-9 Block5の射撃管制システムを勝手に弄くることは出来ないので、あくまで「既存の射撃管制システムを工夫して空中目標へのヘルファイア発射が出来た」という意味だと思うが、ヘルファイアの米軍調達価格は1発あたり10万ドル~15万ドル(FMS経由だと関連費用が含まれるので1発あたりの取得コストは22万ドル~45万ドル)なので、2万ドル~5万ドルと推定されるShahed-136の迎撃に使用するにはコスト交換比が良くなく、あくまで迎撃手段の1つだと思っておくのがいい。
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※アイキャッチ画像の出典:Armée de Terre



















イスラエルのミサイル防衛導入検討 自民・小野寺氏「実戦で成果」記事違いかもですが、これまじでしょうか?いったい何を導入するんだろう?
脅威にさらされていない場合は、シャヘドタイプのドローンを手に入れるところからですね。
米軍はリソースが豊富ですから、(被害をくらいながら)なんだかんだ攻撃ヘリ・A-10サンダーボルト2を使い出してましたね。
他国はそうもいかないわけで、初動で甚大な被害を受けるわけですが、あらかじめ対処できるようにしておいて欲しいものですが…。
日本目線で考えるとあまりにも海岸線が広いうえに、ライジングライオン作戦の潜入工作を考えれば『基地周辺の土地を買われていたり』なんとも頭の痛い限りです…。